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強者討伐 失われた武器

268 ダインスレイブの継承者 1

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 俺は魔物を見つけると、身動きができないように魔力糸で何匹も捕まえていた。
 きっとメアリの探査範囲が広がっているから、この辺りまでは近づかないようにしてあっちの奥にそこそこの数がいるな……。
 ズルズルと魔物達を引きずりながらその数を増やしていた。

 レフリアたちの動きを観察して、メアリがどの程度探索の範囲を持っているのかを確認していく。
 もし俺の魔力を感知されると一発で分かるだろうから。慎重に動く必要があるな。
 おびき寄せて戦っているものの、手付かずの所にはそれなりに魔物の反応がある。

「こんなものか……」

 さてと……そろそろ向かうとするか。

「れ、レフリア様!」

「どうしたの?」

「魔物の群れがこちらへとやってきます。数は二十、いえ三十はいます」

「冗談でしょ?」

 きっと、今頃慌てているんだろうな。
 メアリのことだから、この数に驚いて魔力感知は閉じたか?
 全員が通路に取り囲んで、先頭にいる二人はミーアとパメラ?

「ハルトも出てきたとなると、本気で立ち向かう気のようだな」

 だいたい、入り口を塞いでどう対抗するつもりなんだ?
 こんな時こそミーアの……範囲魔法を覚えていないからそうなるか?

 集めた魔物をゆっくりと、通路を進んでいるように見せかけ、離れていた俺は風魔法を使い一気に皆の所へ飛んでいく。
 ハルトたちの脇を抜け、レフリアの前で停まる。

「よう、お疲れさん」

 親指を立てて腕を突き出し、ニッコリと笑顔らしきものを見せる。
 俺が姿を表した所で、全員がポカンと口を開けていた。
 あの子供たちの魔力量からして、皆はそれなりにレベルが上っているようだな。関心関心。
 皆、結構驚いているな。だけど、俺はその顔が見たかった。

「今のは? あ、アレス様?」

「アンタが何でここにいるのよ!? さっきの魔物の群れは嘘だったの?」

「いえ、そんなはずは……これは? アレス様ご説明頂けますか?」

 目を閉じたということは、後ろの状態を見たということだな。
 中央まで行き、これをどうしたものか?
 レフリアにはダインスレイブがある。
 ガーランソードはベールが持っているのか……ハルトやミーアが使うには剣の種類がダメだよな。
 ベール、もしくはロイか?

「ちょっとどういうつもりなのよ?」

「アレス様。魔人の討伐にいかれたのでは?」

 ミーアが背中に手を当てて、そのまま頬も当ててくる。俺が本物なのかを確かめているのか?
 今回無事だったけど……やっぱり心配はするよな。
 頭をポンポンと撫でてやると、恥ずかしそうに俯いていた。久しぶりだからな、これぐらいなら許してくれるだろう。

「きょ……魔人は倒した。心配掛けただろうけど、見ての通り傷もない。それで、これなんだが誰が使えばいいと思う?」

 装備したくなかったので、ぐるぐる巻きにしていた布を取り去ってエクスカリバーの剣身が姿を現し床に転がる。
 聖剣ということもあってか、剣を前に皆が唖然としている。だけど、一人だけ明らかに怒っている。

「その剣よりも、魔物の群れについてご説明をお願いしますわ。アレス様?」

 近づいてきたメアリは、俺の服を左手で掴み、右手は通路を指差し、キッと睨みつけている。
 魔力糸で縛っているのだから、何も問題はないのだが……メアリの表情は間違いなく怒っている。メアリはこう言った冗談は通用しないのか。

「そ、それはだな……」

 視線を左右に揺らしていると、両頬を捕まれ視線を合わせるように至近距離まで顔を近づけていた。

「もしかして、私達を、驚かせるためですか?」

 ランの鋭い言葉に、皆の顔色が変わっていく。

「アレスさんが? でも、そんな事言われると、そんな気がしてきた」

「アンタならやりかねないわね」

 レフリアの言葉に反応するかのように、子供たちも俺は睨みつけている。
 ハルトも同様に目を合わせるが首を横に振るだけだった。

「アレス様?」

 メアリの言葉に、ミーアの声色が変わる。
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