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強者討伐 失われた武器
257 それぞれの思惑 1
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アレスがラストダンジョンを探索している頃。
アークは単身でバセルトン公爵家へ辿り着いていた。
王国主催の式典があるにも関わらず、五つ公爵のうち三公爵、ヘーバイン、バセルトン、そしてローバン公爵家が出席していない。
王宮では王子に対しての不敬と捉えられていた。特に、アレス・ローバンを抱えるローバン家に爵位の剥奪を、王子自らが議題に提案していた。
ヘーバイン公爵家に対しては、ラティファとの婚約破棄が足枷となり強く言えない。
またバセルトン公爵家では、いまだ復興の最中であるために不問とされていた。
だから、現時点において何の問題も抱えておらず、出席を拒否したローバン家が標的とされていた。
「中でも、アレス・ローバンは、皆は知っているか分からんが、貴族であれば誰もが通うはずのラカトリア学園をなんの理由もなく休学している」
「病気やダンジョンによる怪我という線は如何でしょうか?」
「それはない。アイツが休学した、その日にこの俺が会っているのだからな。だが、問題はそれだけではない。これを見てみろ」
べファリスが、集まっていた侯爵達に提示する紙にはアレスに賛同し、同じ日付に休学をした人物の名前が書かれている。
その名前に誰もが驚きを隠せないでいた。
「アレス・ローバン。ハルト・バセルトン、パメラ・ヘーバイン。この意味が分からないとは言わせないぞ?」
「こ、これは一体……殿下、何を掴んでおられるのですか?」
「王国に対しての反逆か、国家転覆を目論んでいるに違いない。考えても見ろ、次期国王は俺になった。しかし、三つの公爵家がこの式典に欠席をして、その子供が学園を休学する。こんな偶然があると思うか?」
ベファリスの周りに居る者たち。
貴族の中でも、王宮に仕えこの王都で暮らす。法律や財政、王都の設備、そして、各公爵家と様々な交渉を担う仕事を任されているのが、七つに分けられた部門を取り仕切っている侯爵家。
王国で決定づけたことを、侯爵が問題点を洗い出し、公爵家へ打診する。
中央貴族とも言われる彼らに対し、ベファリスは自分が導き出した結論を述べていた。
「それだけではないぞ。ローバン公爵は、バセルトンで起きた伯爵による蛮行を、鎮圧するために手を貸している。そして、ヘーバイン公爵家にも赴き、ヘーバイン公爵と供に自分の屋敷へ招いたという情報もある」
「なんと……さすがは次期国王となられる御方」
「世辞はいい。まだ確約は出来ない話だが……少しでもいいから念頭においておくのが良いだろう。今後のことも踏まえて、今は泳がせておくしか無いが。だから少しでいい、これは命令ではない。俺個人からの頼みだ、どうか力を貸して欲しい」
頭を下げるベファリスに対し、侯爵たちは一斉に立ち上がり「仰せのままに、殿下」そう言い一礼をして退出していく。
「いつまでもいい気になるなよ……アレス・ローバン!」
* * *
一方、バセルトンへと到着したアーク。
友人ガドールからの手厚い抱擁に包まれていた。朝早くから鍛錬に励んでいた肉体からは熱と汗を帯び、アークは息さえ躊躇う。
「よく来たなアーク。一人で来るとは、大丈夫だったか? お前ならそんな心配もいらないか」
そう言って、アークの背中をバシバシと叩く。
アークもすかさず、しゃがみ込み後ろに下がって距離を取っていた。
「悪いのだけど……この暑さもあってね。先に湯浴みをいただけるだろうか?」
「そいつは悪かったな……なら、行こうか」
ガドールはアークの肩を掴み、屋敷の中へと入っていく。
アークは抵抗もなく、これ以上余計なことに巻き込まれないためにも今は大人しくしていた。
「ふう、熱い時にはこれに限るな」
「昼間からそんなに飲むものじゃないよ」
「それで? 今日はどうしたと言うんだ? 何の連絡も無くお前が来るなんて余程のことか?」
アークは持ってきていた幾つかの書類を並べると、テーブルの横には魔晶石を置いた。
魔晶石を起動させると、周囲に結界が展開される。
「こいつは?」
「あの子が使っている魔晶石。攻撃も音さえも通さない、何であの子がダンジョンに寝泊まりできるのかその一つの理由だよ」
アークは単身でバセルトン公爵家へ辿り着いていた。
王国主催の式典があるにも関わらず、五つ公爵のうち三公爵、ヘーバイン、バセルトン、そしてローバン公爵家が出席していない。
王宮では王子に対しての不敬と捉えられていた。特に、アレス・ローバンを抱えるローバン家に爵位の剥奪を、王子自らが議題に提案していた。
ヘーバイン公爵家に対しては、ラティファとの婚約破棄が足枷となり強く言えない。
またバセルトン公爵家では、いまだ復興の最中であるために不問とされていた。
だから、現時点において何の問題も抱えておらず、出席を拒否したローバン家が標的とされていた。
「中でも、アレス・ローバンは、皆は知っているか分からんが、貴族であれば誰もが通うはずのラカトリア学園をなんの理由もなく休学している」
「病気やダンジョンによる怪我という線は如何でしょうか?」
「それはない。アイツが休学した、その日にこの俺が会っているのだからな。だが、問題はそれだけではない。これを見てみろ」
べファリスが、集まっていた侯爵達に提示する紙にはアレスに賛同し、同じ日付に休学をした人物の名前が書かれている。
その名前に誰もが驚きを隠せないでいた。
「アレス・ローバン。ハルト・バセルトン、パメラ・ヘーバイン。この意味が分からないとは言わせないぞ?」
「こ、これは一体……殿下、何を掴んでおられるのですか?」
「王国に対しての反逆か、国家転覆を目論んでいるに違いない。考えても見ろ、次期国王は俺になった。しかし、三つの公爵家がこの式典に欠席をして、その子供が学園を休学する。こんな偶然があると思うか?」
ベファリスの周りに居る者たち。
貴族の中でも、王宮に仕えこの王都で暮らす。法律や財政、王都の設備、そして、各公爵家と様々な交渉を担う仕事を任されているのが、七つに分けられた部門を取り仕切っている侯爵家。
王国で決定づけたことを、侯爵が問題点を洗い出し、公爵家へ打診する。
中央貴族とも言われる彼らに対し、ベファリスは自分が導き出した結論を述べていた。
「それだけではないぞ。ローバン公爵は、バセルトンで起きた伯爵による蛮行を、鎮圧するために手を貸している。そして、ヘーバイン公爵家にも赴き、ヘーバイン公爵と供に自分の屋敷へ招いたという情報もある」
「なんと……さすがは次期国王となられる御方」
「世辞はいい。まだ確約は出来ない話だが……少しでもいいから念頭においておくのが良いだろう。今後のことも踏まえて、今は泳がせておくしか無いが。だから少しでいい、これは命令ではない。俺個人からの頼みだ、どうか力を貸して欲しい」
頭を下げるベファリスに対し、侯爵たちは一斉に立ち上がり「仰せのままに、殿下」そう言い一礼をして退出していく。
「いつまでもいい気になるなよ……アレス・ローバン!」
* * *
一方、バセルトンへと到着したアーク。
友人ガドールからの手厚い抱擁に包まれていた。朝早くから鍛錬に励んでいた肉体からは熱と汗を帯び、アークは息さえ躊躇う。
「よく来たなアーク。一人で来るとは、大丈夫だったか? お前ならそんな心配もいらないか」
そう言って、アークの背中をバシバシと叩く。
アークもすかさず、しゃがみ込み後ろに下がって距離を取っていた。
「悪いのだけど……この暑さもあってね。先に湯浴みをいただけるだろうか?」
「そいつは悪かったな……なら、行こうか」
ガドールはアークの肩を掴み、屋敷の中へと入っていく。
アークは抵抗もなく、これ以上余計なことに巻き込まれないためにも今は大人しくしていた。
「ふう、熱い時にはこれに限るな」
「昼間からそんなに飲むものじゃないよ」
「それで? 今日はどうしたと言うんだ? 何の連絡も無くお前が来るなんて余程のことか?」
アークは持ってきていた幾つかの書類を並べると、テーブルの横には魔晶石を置いた。
魔晶石を起動させると、周囲に結界が展開される。
「こいつは?」
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