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強者討伐 失われた武器

216 打倒アスタロト 1

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 本来の姿に戻ったアスタロトは、俺の行く手を塞ぎ何も持っていなかった手には、巨大な槌が握られている。
 道理でムキムキなわけだ。あんな物をまともに喰らえば、それだけで一発アウトでしかない。
 だけど、攻撃回数がもし減ってくれるのなら逃げられる可能性も高いし、何よりどう頑張ってもあの姿では階段を登ることは出来ないだろう。

「ニンゲン。貴様は逃さない」

「なんだ、その姿だと普通に喋れるのか?」

 こいつはとんでもなくやばいな……こいつの特化しているのはあの腕力なのか?
 どう見てもあの大きさからして、相当な重さがあるというのに軽々と持っていやがる。

 俺のシールドを貫通したのは、アイツの攻撃力がとんでもなく高いということなのか?
 そんな事が今更分かった所で、大した役にも立たないな……。

「ここで殺すまし」

「そこはせめて直せよ! でかくなっても頭の方は変わらないのかよ」

 氷の槍とエアスラッシュを打ち込むが、さっきほどの効果はなかった。
 分体で同等の強さというのなら、魔法の抵抗も五分の一になっていたということか? だとしたら、あれだけ打ち込んでいた魔法も今はかすり傷でしか無いのかよ。
 アイツは俺を逃がすつもりはないようだけど、階段へ逃げ込めば助かる可能性はある。

「これならどうだ!」

 エアスラッシュを、顔を目掛けて放ちバーストロンドで煙幕を作り出す。
 俺はそのスキに階段を目指す。風魔法を使い、低空で飛ぶことによってなんとか階段へ逃げることが出来た。
 正面にはコアの扉が見えていたから場所を間違えようもない。
 そして、上の階へ戻ることで逃げることが出来たと思っていたのだが……。

「これは洒落にならないぞ」

 階段を登りきると、遠くには巨大なアスタロトの姿があった。
 この階層にもギミックがあり、降りてきた所を戻ったとしてもこの場所へ戻ってしまう。
 逃げるには何個あるかわからない階段を見つけ、それにかけるしか無いようだ。
 とはいえ、一度逃した俺をアスタロトが許してくれるのだろうか?
 ベルフェゴル同様に、アスタロト……いや、強者は俺と同様に相手の居場所がわかるようだ。
 その証拠に、俺を狙っているかのように手を向けている

「戻るべきか、他を探すべきか……」

 しかし、さっきの場所に続くのならアスタロトに対して至近距離になる。今ならそれなりに離れている分、逃げられる可能性もある。
 アイツの攻撃をかわしつつ、階段を探すって本当に可能なのか?
 とはいえ、今の状態でアイツを倒す方こそ無理な話でしか無い。

 万全でなら倒せるのか?

 さっきまでなら倒せると確信していたが、こうなってしまうと倒せるという見込みが全く見いだせない。
 たとえ、ドゥームブレイドが効いたとして、巨体の化け物に通用するだろうか?

「ここで、戦意喪失とは情けないよな」

 アスタロトの手から無数の魔法による攻撃が始まり、アイツも遊んでいるのか、威力は弱く手数だけやたらと多い。
 いくら早く移動しても、俺の場所は特定されているので攻撃の手を緩めることもなく、俺を目掛けて放たれる。
 こちらもエアスラッシュを打ち込むが、さっきと威力は同じなのに効果がまるで無いように見える。
 いくら魔法が効いたとしても、このままでは埒が明かない。

「逃げるか倒すか……覚悟を決めるしか無いよな」

 どっちにしても望みは薄い。
 なら、倒すしか無いだろう。

 俺が強者に対して唯一倒せる武器があるとするのなら、ドゥームブレイドにかけるしか方法はない。
 ブレイブオーラを掛け、エアスラッシュを腕のみに集中して打ち続け、距離を縮めていく。
 あの武器でもなんとかできればと思ったが、槌を振り上げ地面に叩きつけると地震のように地面が揺れ動く。
 見た目通りのとんでもない力だ。

 しかし、身体が大きいこともあってか、今の攻撃でアイツの動きは思ったより遅く感じた
 バーストロンドを打ち込みつつ、俺は動き出す。
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