公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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強者討伐 失われた武器

202 パメラの選択とメアリの決意 1

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 俺は寝転んだままストラーデ子爵がパメラに対しての行いを、そして王子のやっていることを伝えた。
 二人はいつものように冷静な表情のまま静かに聞いてくれた。
 話を終えると同時に大きなため息を吐いた。

「殿下は後宮をどうするつもりなんだろうね。正直、頭の痛い話だよ……」

「際限なく側室を要求するなど、仮に攻略者といえどそう簡単な話ではないはず」

 確かに王子が仮に国王となったら、その代はそれでもいいが、問題となるのはその後の話だ。
 婚約者だったラティファとは既に婚約破棄されている。現在は后候補もないまま側室だけ用意する。
 これは、どう考えても危険でしかない。

「それは今考えても仕方がないことだから。まずは、パメラ嬢をどうするかだね」

「しかし父上。アレスは了承すらされていないのに、婚約なんて出来るのでしょうか?」

「難しい所だね。だけど、可能性ならあるとは思うよ」

 現状において、側室を集めている状態でパメラが選ばれる可能性は高い。
 なにより、光魔法が使えるというのも選ばれる可能性を高くしている。

「こんな事になるぐらいならもっと早くに行動していれば……」

「婚約破棄とか言っていた人間の言葉だとは思えないね」

「それは……」

 父上の言葉が突き刺さる。最初から受け入れてさえおけばよかった。
 だけど今更嘆いたところで状況は変わらない。

「だけどね、君は何かを守ろうとしていたのは知っているんだよ」

「!?」

 そんな事がバレているとは思っても見なかった。
 俺が飛び起きたことで、寝てろと言わんばかりに二人して肩を押してくる。

「それがミーアだったのか、私達家族なのかそこまでは分からないけどね。君は今までにいくつもの間違いや失敗をしてきた。それは決して褒められることじゃないよね」

「それに加え問題行動の数々。だけど、それすらどうでもいいと思わせるほどの功績」

 だからと言ってお腹の肉を摘むのは止めませんか?
 兄上の場合、加減を間違えれば激痛が確定している。

「私やアトラスもいつかは失敗してしまう。だからね、アレス。一人で抱え込み過ぎなんだよ。こうやって頼ってくれるのが何よりも嬉しい」

「父上、兄上……ありがとう」

 そんなふうに思っていてくれたなんて思っても見なかった。
 俺はただ表面上怒っていないだけで、本心では諦められていたと思っていたから……その言葉が今になって本当に嬉しく思えた。

「まだ時間はあるから、休憩はそろそろいいよね?」

「アレス。次も手加減してもらえるなんて思わないことだ」

「あの……え?」

 相談にのってくれていたよな?
 俺を励ましてくれていたし、俺のことを心配してくれていたよね?
 それなのに、何で二人して剣を俺に向けているんだ?

「いつまでそうしているつもりなのかな? アレス」

「どうやら、錆はまだ落としきれていませんね。父上?」

 じょ、冗談だろ?


   * * *


 アレスが屋敷で二人にこってりと絞られている頃。
 レフリア率いるパーティーはシルラーン領にあるドルメラダンジョンに来ていた。
 このダンジョンにはミーカトよりも上位のリザード系の魔物が出現している。

「一階層だとしても、結構強いわね」

「私が一体をひきつけます。皆は、先に倒してください」

「パメラ。その提案には乗れません」

 ミーアはパメラの前に立ち、エストックを構えて刀身に炎が付与されていた。
 攻撃は受け止められ、殴打によって地面へ叩きつけられる。
 メアリの放つ風刃によって、追い打ちから逃れるが、魔物の額には血が流れていた。
 戦況は劣悪。それなりに強くはなっていたが、連戦ともなると疲労は重なり少しずつ追い詰められていた。

「くっ。はぁぁー!」

 パメラの槍が魔物の腹部に突き刺さり、同時に爆裂を発動させた。
 内部からの攻撃で、魔物は塵となるがその大きな音によりさらに魔物を呼び寄せるきっかけにもなる。

「こいつを倒して、一度脱出するわよ」

「一気に倒すよ」

 ハルトはブレイブオーラを発動させ、大剣は防がれることもなく両断していく。
 レフリアもハルトに合わせて残っていた魔物を倒していく。ミーアは、地図を確認しながら入り口へと向かっていく。

「こちらです」

「はぁぁっ! バースト!」

 パメラの爆裂はリザードマンにとってかなり有効だったが、パメラ自身の疲労はかなり深刻だった。
 一体だけだったからいいものの、パメラは膝を付き槍を持つ腕は震え、立つことさえつらい状態になっていた。

「パメラ? メアリ様、手を貸してください」

「分かりました。さ、行きますわよ」

「置いて行ってもいいんだよ。私なんて別に……」
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