公爵家次男はちょっと変わりモノ？ ～ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました～

強者討伐 失われた武器

200 ローバン流 １

　俺は後何回この運送業をするのだろうか？
　安全のためにと、のんびりと飛行していれば、レフリアからは遅いと怒られ飛ばすと早すぎるとまた怒られる。
　そんな理不尽に耐えつつもミーアの実家であるシルラーン家の屋敷に辿り着く。

「ミーア悪いな。できるだけ早く戻るようにするから。メアリもパメラのことを頼んだぞ」

「はい、かしこまりました。お気をつけて」

　二人からは挨拶をされるが、相変わらずパメラは肩を落としたままだ。
　これからどうなるか分からないが、絶対にこのままにさせないからな。
　少しだけ、待っていてくれよな。

「ああ。またな三人共」

「やれやれ、私達のことは眼中になかったみたいね」

「何で気にしていないのにそんな事言うのさ」

「ううん。ちょっと、素直なアイツが見れて良かったのかもね」

　クーバルさんと挨拶をしたかったが、今は時間が惜しいのでそのままローバン家へと向かう。
　庭に誰もいないので、そのまま玄関の前に降り立つ。
　扉を開けるとガゼルが居た。

「父上を知らないか？」

「旦那様でしたら恐らく執務室に居られます。それにしてもアレス様。随分お早いお帰りですな」

　全くこの爺さんは、俺に対してズケズケと言ってくれるよ。

「事情は大体は知っているんだろ？」

「アレス様。ようやく素直になられましたな」

　まったく……そういうことは平然と言うなよ。
　俺は逃げるように階段を駆け上がっていく。

　こんなに早く戻って怒られたりしないだろうか？
　また正座させられるというのか？
　有り得そうな展開で嫌だな……そんなことよりもパメラのことが先決だ。
　気持ちを切り替えて、ドアをノックする。

「父上。アレスですが……入ってもよろしいでしょうか？」

　中からは返事もなく、ゆっくりとドアを開けると誰も居なかった。
　ガゼルからはここにいると聞いていたのだが？
　いつもであれば、いろんな書類が積まれているはずの机には何も残っては居ない。
　仕事がないということなのか？

「だとしたら、何処に行ったんだ？」

　索敵を展開し屋敷周辺を調べていく……姉上様ではなさそうだな。
　父上もそろそろいい年だと言うのに元気で何よりだ。
　窓を開けて、周りを一応確認する。それから下へ降りる。

　訓練室へ行くと、二人の激しい剣撃が室内に響き渡っていた。
　そろそろ五十近いと言うのによくもまああれだけ動けるものだな。

「父上。アレスが居るようですが？」

「やっぱり駄目だったようだね」

「そのようですね……まったく、なんて顔をしているんだ」

　二人は剣を止め、兄上から木剣を放り投げられる。
　足元に転がる剣を取ると、父上は俺に対して一気に距離を縮め、初撃を受け止めた。

「俺は別に、剣の訓練がしたいわけじゃないのだけど！」

「まあまあ、たまにはいいじゃないか」

　全然全くもってたまにじゃない。数日前に兄夫婦に散々やられたんだ。
　剣を押し返し、負けじとこちらからも攻撃を開始する。
　だけど、剣で受け止められることもなく、どの攻撃も右へ左へとかわされる。
　簡単に見切られているということだ。

「それじゃ、もう少し上げるよ」

　そう言うと、さっきとは比べ物にならないほどの速度で打ち込まれる。

　捌ききれない！

　何度も攻撃を喰らい、俺はその場で倒れた。
　あちこちが痛い、全く加減ぐらいしてほしいものだ。
　なんだコレ？　何で俺は……こんな事をしているんだ？
　それに俺は……。

「くっ、はぁはぁ。相変わらずえげつないな」

「随分と酷い言われようだね。鋭い攻撃といいなさい」

「それじゃ、訂正して相変わらず、容赦という言葉を忘れているようだな。父上！」

　ふっ、と父上が笑い。剣を構え直した。
　どんなに早く動こうが父上には届かない。
　どれだけ重い攻撃を繰り出そうが父上には当たらない。
　攻撃をすれば、その度に打たれる。
　回避をしようにもあの速度には対応できない。

「だぁー！！」

「無駄だよ」

　剣は弾き飛ばされ、喉元には剣先が突きつけられていた。

「参りました」

「アレス、らしくないな。どういうつもりだ？」