175 / 310
強者出現
174 運送業はじめました 1
しおりを挟む
バセルトン公爵家で出される料理は結構うまい。
以前にも思ったが、タッパーに入れて収納して出されたものを全部お持ち帰りにしたい。
木の箱で作った弁当というのも良いかもしれないな。
今度、ローバンに戻ったら相談してみるか?
セドラならきっと何かいい案をくれるかもしれない。
「アレス様。もう少しゆっくりと」
「何言っているんだ、こんなに美味いのに、早く食べておかないと満腹中枢が刺激されてからでは遅いんだ」
「は、はぁ……」
ミーアたちは、ため息を同時に漏らしている。
俺の食べっぷりにガドール公爵はがははと豪快に笑っているだけだった。
それにしても……あの肖像画。
あれがガドールの亡くなった奥さんか。あの二人の間にハルトが生まれたというのも納得だな。
どっちもでかいな。
「あ、アレス様。こちらのお料理もすごく美味しいですよ」
「お? どれ」
差し出されたフォークを何の躊躇もなく、口にしてしまう。
気がついたときにはもう遅かった。ミーアが使っていたフォーク。
そして、そのまま自分の口に料理を運んでいる。
嬉しそうな顔をして……そんな事をしておいて、他の二人が黙っているはずもない。
「アレス様、どうぞこちらも召し上がってください」
「こっちも美味しいですよ」
ミーアはじっとこちらを見ている。
食べるべきか食べないべきか……しかし、後者はかなりの地雷だということも理解している。
それからというもの、食べきれないと言うまで彼女たちから攻撃や攻防が続いた。
それでも、三人が満足ならまあ良いか。
「ガドール公爵。あのようなご馳走ありがとうございます」
「それは良かった。それでどうだった?」
「どうだったですか……正直、何から話すべきですか?」
夕食を終えて、俺はガドール公爵に呼び出された。
今回の件もだが、バセルトンで起こったことだから報告する必要はある。しかし、何を何処まで話すべきかを迷うところだ。
そんなことよりも、久しぶりに際限なく食事ができたことで、満腹になった腹を擦りつつ思い耽る。
「だらしない顔をしおって。あのダンジョンの報告はある程度は聞いている」
「それなら敢えて俺からの話は不要では?」
「お前の言う、『アイツ』とは何だ?」
ベルフェゴルのことか……そう言われても、何とも答えようがないな。
名称はゲームの物であって、この世界でどう呼ばれる存在なのか分からない。
禁書の中にはアイツの名前が入っている可能性もある。
この世界の神話とかに出てくるのだとしたら、この名前は口にするべきじゃないと思う。
「分からないから、『アイツ』と呼んだまでです。強さに関しては、予想以上でした」
「お前程の者がか? そういえば、二度に渡り大怪我をしたらしいな」
「ええ、まあ、仰る通りです」
「それとお前はそうかしこまった話し方をしなくていい」
俺が怪我をしていたことを知っている。俺達がここに来た時に、御者から姉上の書状ぐらい渡っているよな。
だとするのなら、どう言えば良いのかわからないな。姉上が何処まで書いているのだろうか?
何を話して良いものか全くの見当がつかない。
「話せないこともあるというわけか」
「無いわけでもないが……問題にもなりかねないと言ったところだな」
「構わん。だが、しかしだ。俺ぐらいには何があったかを話してくれないか? もちろん公になどはせん。約束しよう」
ガドール公爵はそれなりに信用はできると思う。父上と友人関係にもあるから、俺のこともよく理解してくれている。
その屈強な体は、これまでのバセルトンを守ってきたのだろう。
しかし、ベルフェゴルの事を話せば、各地にいる強者に挑む可能性も出てくる。
そんな事をすれば冒険者は居なくなり、各地で暴走するダンジョンで溢れかえる。
以前にも思ったが、タッパーに入れて収納して出されたものを全部お持ち帰りにしたい。
木の箱で作った弁当というのも良いかもしれないな。
今度、ローバンに戻ったら相談してみるか?
セドラならきっと何かいい案をくれるかもしれない。
「アレス様。もう少しゆっくりと」
「何言っているんだ、こんなに美味いのに、早く食べておかないと満腹中枢が刺激されてからでは遅いんだ」
「は、はぁ……」
ミーアたちは、ため息を同時に漏らしている。
俺の食べっぷりにガドール公爵はがははと豪快に笑っているだけだった。
それにしても……あの肖像画。
あれがガドールの亡くなった奥さんか。あの二人の間にハルトが生まれたというのも納得だな。
どっちもでかいな。
「あ、アレス様。こちらのお料理もすごく美味しいですよ」
「お? どれ」
差し出されたフォークを何の躊躇もなく、口にしてしまう。
気がついたときにはもう遅かった。ミーアが使っていたフォーク。
そして、そのまま自分の口に料理を運んでいる。
嬉しそうな顔をして……そんな事をしておいて、他の二人が黙っているはずもない。
「アレス様、どうぞこちらも召し上がってください」
「こっちも美味しいですよ」
ミーアはじっとこちらを見ている。
食べるべきか食べないべきか……しかし、後者はかなりの地雷だということも理解している。
それからというもの、食べきれないと言うまで彼女たちから攻撃や攻防が続いた。
それでも、三人が満足ならまあ良いか。
「ガドール公爵。あのようなご馳走ありがとうございます」
「それは良かった。それでどうだった?」
「どうだったですか……正直、何から話すべきですか?」
夕食を終えて、俺はガドール公爵に呼び出された。
今回の件もだが、バセルトンで起こったことだから報告する必要はある。しかし、何を何処まで話すべきかを迷うところだ。
そんなことよりも、久しぶりに際限なく食事ができたことで、満腹になった腹を擦りつつ思い耽る。
「だらしない顔をしおって。あのダンジョンの報告はある程度は聞いている」
「それなら敢えて俺からの話は不要では?」
「お前の言う、『アイツ』とは何だ?」
ベルフェゴルのことか……そう言われても、何とも答えようがないな。
名称はゲームの物であって、この世界でどう呼ばれる存在なのか分からない。
禁書の中にはアイツの名前が入っている可能性もある。
この世界の神話とかに出てくるのだとしたら、この名前は口にするべきじゃないと思う。
「分からないから、『アイツ』と呼んだまでです。強さに関しては、予想以上でした」
「お前程の者がか? そういえば、二度に渡り大怪我をしたらしいな」
「ええ、まあ、仰る通りです」
「それとお前はそうかしこまった話し方をしなくていい」
俺が怪我をしていたことを知っている。俺達がここに来た時に、御者から姉上の書状ぐらい渡っているよな。
だとするのなら、どう言えば良いのかわからないな。姉上が何処まで書いているのだろうか?
何を話して良いものか全くの見当がつかない。
「話せないこともあるというわけか」
「無いわけでもないが……問題にもなりかねないと言ったところだな」
「構わん。だが、しかしだ。俺ぐらいには何があったかを話してくれないか? もちろん公になどはせん。約束しよう」
ガドール公爵はそれなりに信用はできると思う。父上と友人関係にもあるから、俺のこともよく理解してくれている。
その屈強な体は、これまでのバセルトンを守ってきたのだろう。
しかし、ベルフェゴルの事を話せば、各地にいる強者に挑む可能性も出てくる。
そんな事をすれば冒険者は居なくなり、各地で暴走するダンジョンで溢れかえる。
0
お気に入りに追加
554
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
【完結】転生したら登場人物全員がバッドエンドを迎える鬱小説の悪役だった件
2626
ファンタジー
家族を殺した犯人に報復を遂げた後で死んだはずの俺が、ある鬱小説の中の悪役(2歳児)に転生していた。
どうしてだ、何でなんだ!?
いや、そんな悠長な台詞を言っている暇はない!
――このままじゃ俺の取り憑いている悪役が闇堕ちする最大最悪の事件が、すぐに起きちまう!
弟のイチ推し小説で、熱心に俺にも布教していたから内容はかなり知っているんだ。
もう二度と家族を失わないために、バッドエンドを回避してやる!
転生×異世界×バッドエンド回避のために悪戦苦闘する「悪役」の物語。
貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す
名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~
フルーツパフェ
ファンタジー
エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。
前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。
死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。
先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。
弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。
――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる