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強者出現
172 アレスは三人に弱い 1
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馬車に揺られ、俺達は会話のない時間が過ぎていた。
窓の外を見ると、民が行路の雪を取り除いていた。
彼等は、俺達の馬車を見かけると、頭を下げる者、手伝いをしている子供たちは手を振っていた。
今できることは、ダンジョンを攻略することだけ。
俺の行動は、彼等の生活に何か役に立てているのだろうか?
こんな所までわざわざ来てくれたこの三人には心配ばかりかけているな。
ここに来るだけでも大変だったはずだ……。
「今回は本当にすまなかった」
そう口に出しても、誰も何も言わなかった。
不思議に思い視線を戻すと、ミーアはまっすぐ俺を見ていた。
メアリもパメラもただ、見ているだけだった。
俺は直視できず床へと逃げた。
「それは、何についてでしょうか?」
メアリの口からは何処か冷たさを感じる。
他の二人も、俺が謝ったことで少しだけ瞼が下がり、空虚な眼差しへと変わっていく。
「は? い、いや、ええっと」
「アレスさん。今のは、何に対しての謝罪だったのですか?」
「それは……だな」
俺なんかのためにこんな所まで来て、心配をかせさせたからか?
俺は何に対して謝りたいのだろうか?
皆には迷惑を掛けている気がして言葉が出た。
「差し出がましいことを申し上げますが」
「メアリ?」
「アレス様は、あの侍女二人とただならぬご関係に? そういうことでございますか?」
考えていたのはこの三人に心配や迷惑をかけたこと。しかし、想像もしていない事を言われ、俺の思考が完全に停止した。
「お答えできないのですか?」
メアリはこの期に及んで何をトンデモ発言しているんだよ。俺がそんな事するはずは……もしかして、姉上は余計なことを言ったということなのか?
二人の視線が一気に変わり、険しいものへと変わっていた。
「ちがっ、何でそんな話に……俺は別に、何もしていない」
姉上からは夜伽とか言われたが、勿論丁重に断った。
そもそもあの二人は、俺に対して結構塩対応だったぞ?
話しかけようにもすすっと居なくなってたし……お礼は結局受け入れて貰えないわで散々だったんだけどな。
「わたくしは何か出来る立場ではございませんでしたので、使用人の真似事をさせて頂いておりました」
「そうだったのか、いろいろとありがとうな」
そういや目が覚めた時から、メアリだけはメイド服を来ていたな。
アレはアレで中々に似合っていたけど。
いやいや、今はそんな話じゃないよな。これ以上余計なことを言って、怒らせるのはまずい気がする。
「なんでも、あのお二人はアレス様に命懸けで助けて頂いたと。それはそれは、何度も言っておりましたので、ああ、これは何かあるなと、わたくし……いえ、わたくしたちはそう思うのですが?」
「無いから! 全く何も……ないからな」
助けたら恋に落ちるとか、どんなハーレムゲームだよ。
いや、パメラやメアリも似たようなものか……?
まともに話をしたって記憶がないのですが? それなのに何でメアリにはそんな事を言うんだよ。新手の嫌がらせなのか?
「アレス様がそう仰るのであれば……」
「ミーア様。お話はこれだけではないのですわ」
まだ何かあるというのか?
正直この手の話題はそろそろ終わって欲しいのだけど。
「フィールお姉様から、夜伽にどうだとお誘いもあったとか。これは事実でしょうか?」
「アレスさん……まさか!?」
「アレス様。どうかお答えください」
ミーア、その笑顔がすごく怖い。さっきまでそんな顔をしてなかったよね?
メアリさん、もしかしなくても結構怒ってます?
そもそも姉上がただの冗談を言っただけだから……だいたい俺のようなデブが、なんでこんな事になっているんだ? おかしくないか?
「待て待て、そんな冗談は言われたが、俺は断ったぞ! 本当なんだよ!」
馬車の中は重い空気で満たされていた。
窓の外を見ると、民が行路の雪を取り除いていた。
彼等は、俺達の馬車を見かけると、頭を下げる者、手伝いをしている子供たちは手を振っていた。
今できることは、ダンジョンを攻略することだけ。
俺の行動は、彼等の生活に何か役に立てているのだろうか?
こんな所までわざわざ来てくれたこの三人には心配ばかりかけているな。
ここに来るだけでも大変だったはずだ……。
「今回は本当にすまなかった」
そう口に出しても、誰も何も言わなかった。
不思議に思い視線を戻すと、ミーアはまっすぐ俺を見ていた。
メアリもパメラもただ、見ているだけだった。
俺は直視できず床へと逃げた。
「それは、何についてでしょうか?」
メアリの口からは何処か冷たさを感じる。
他の二人も、俺が謝ったことで少しだけ瞼が下がり、空虚な眼差しへと変わっていく。
「は? い、いや、ええっと」
「アレスさん。今のは、何に対しての謝罪だったのですか?」
「それは……だな」
俺なんかのためにこんな所まで来て、心配をかせさせたからか?
俺は何に対して謝りたいのだろうか?
皆には迷惑を掛けている気がして言葉が出た。
「差し出がましいことを申し上げますが」
「メアリ?」
「アレス様は、あの侍女二人とただならぬご関係に? そういうことでございますか?」
考えていたのはこの三人に心配や迷惑をかけたこと。しかし、想像もしていない事を言われ、俺の思考が完全に停止した。
「お答えできないのですか?」
メアリはこの期に及んで何をトンデモ発言しているんだよ。俺がそんな事するはずは……もしかして、姉上は余計なことを言ったということなのか?
二人の視線が一気に変わり、険しいものへと変わっていた。
「ちがっ、何でそんな話に……俺は別に、何もしていない」
姉上からは夜伽とか言われたが、勿論丁重に断った。
そもそもあの二人は、俺に対して結構塩対応だったぞ?
話しかけようにもすすっと居なくなってたし……お礼は結局受け入れて貰えないわで散々だったんだけどな。
「わたくしは何か出来る立場ではございませんでしたので、使用人の真似事をさせて頂いておりました」
「そうだったのか、いろいろとありがとうな」
そういや目が覚めた時から、メアリだけはメイド服を来ていたな。
アレはアレで中々に似合っていたけど。
いやいや、今はそんな話じゃないよな。これ以上余計なことを言って、怒らせるのはまずい気がする。
「なんでも、あのお二人はアレス様に命懸けで助けて頂いたと。それはそれは、何度も言っておりましたので、ああ、これは何かあるなと、わたくし……いえ、わたくしたちはそう思うのですが?」
「無いから! 全く何も……ないからな」
助けたら恋に落ちるとか、どんなハーレムゲームだよ。
いや、パメラやメアリも似たようなものか……?
まともに話をしたって記憶がないのですが? それなのに何でメアリにはそんな事を言うんだよ。新手の嫌がらせなのか?
「アレス様がそう仰るのであれば……」
「ミーア様。お話はこれだけではないのですわ」
まだ何かあるというのか?
正直この手の話題はそろそろ終わって欲しいのだけど。
「フィールお姉様から、夜伽にどうだとお誘いもあったとか。これは事実でしょうか?」
「アレスさん……まさか!?」
「アレス様。どうかお答えください」
ミーア、その笑顔がすごく怖い。さっきまでそんな顔をしてなかったよね?
メアリさん、もしかしなくても結構怒ってます?
そもそも姉上がただの冗談を言っただけだから……だいたい俺のようなデブが、なんでこんな事になっているんだ? おかしくないか?
「待て待て、そんな冗談は言われたが、俺は断ったぞ! 本当なんだよ!」
馬車の中は重い空気で満たされていた。
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