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ラカトリア学園 高等部
129 メアルーン・ロンダリア 1
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雨が降りしきる中、慌ただしく空からアレスが突然やって来て、メアリを残してさっさと去ってからも、二人は見つめたまま動くことがなかった。
どちらとも一歩たりとも動くことはなく、互いを見つめ合っていた。
その状況の中、先に動きを示したのはレフリアだった。ただ腕を組み、なぜアレスが彼女をこの場所に連れてきたのかを考えていた。
突拍子もない事を当たり前のようにしてくるのがアレス。
それが分かっていたとしても、レフリアにとって今は最も会いたくもない人物の一人だった。
彼女の名前は、メアルーン・ロンダリア。
今回の事件の首謀者の一人、ロンダリア伯爵の娘。その彼女は敵陣ともいえるドリアン男爵の屋敷にいる。
アレスが彼女のことを理解し、ここにわざわざ連れてきたという事は、レフリアの頭の中には想像すらしていない。アレスが訳ありだから匿ってくれと、そう言っていることで何も知らないまま連れてきたと予想していた。
レフリアはため息を漏らすものの、メアリは姿勢を正したままじっと見つめているだけだった。お腹の前で手を重ね凛と立ち、レフリアと対峙したまま視線を反らさず雨に打たれていた。
「中へどうぞ」
雨に打たれる彼女を見て、このままにもして置けず屋敷の中へ招き入れた。
メアリは深く礼をしてから、レフリアの横を通り過ぎ部屋の隅に佇んでいた。
レフリアが彼女にタオルを差し出すと、メアリは再度深く頭を下げて、両手を差し出していた。
だけど、その礼儀正しい所作に激しい嫌悪感をレフリアは抱いている。
これまでとは違うそんな彼女を見て、自身の髪を拭く手に自然と力が入り、髪が数本小さな音を立ててちぎれていた。
受け取ろうともしないメアリの手にタオルを渡す。
彼女から違和感しか感じ取れない。
事情を聞かされていないレフリアは、彼女が敵であると認識していた。
しかし、彼女を連れてきたのはアレスであり、更には匿って欲しいと。
そのためレフリアにはどう接するべきか……どう、対処するべきかを判断しなければならなかった。
「お気遣い頂き、深く感謝申し上げます」
「!?」
以前の彼女であれば、頭を下げることは勿論。下位爵家に対して礼を言うなんてありえなかった。
レフリアは距離を取り、自然と剣の柄を握っていた。
それは反射的なものであり、彼女の低姿勢そのものが何かの企みにさえ思えていた。
レフリアにとって彼女は最も忌むべき相手であり、憎悪の塊のような相手だから警戒するのも当然の行動だ。
幼少から彼女に何度も虐げられ、持っている物を取り上げられるのが当たり前だった。
そして、取り上げられたとしても、感謝の言葉を口にするのはレフリアの方だった。『お使い頂き有難うございます』と……。
何度も何度も搾取され、事あるごとに良いように使われてきた。
「剣を抜いても構いませんが、わたくしは何もすることはありません」
「それはどういうことなのですか?」
「言葉通りにございます。わたくしの事を警戒されるのも無理はありません」
その真っ直ぐな視線に、レフリアは掴んでいた剣の柄から手を離す。
「ソファーにお掛けになったらどうですか?」
「そう、仰るのでしたら、失礼致します」
レフリアは置かれているベルを鳴らすと、ミーリアがやってくる。
中にいる人物を見せないようにドア越しに、お茶を用意してもらうように告げる。
カップを二つということに、疑問を抱くも快く引き受けていた。
重要人物である彼女を、このままにしても置けず、雨に打たれ冷えた体を温めるためお茶を用意させた。
レフリアは何時でも剣を抜くことができる。レフリアは対面に座ることもなく、睨みつけていた。
こんなことをすれば、彼女にとって腹立たしいことだったが……レフリアのことを気にする様子もなく、ただ一点を見るだけで、何もすることはなかった。
そんな対立のなか、ミーリアが部屋に戻ってくる。
ワゴンを押し、中へ入るが……座っている人物を確認し、彼女の体は何かを拒絶するように震えだしていた。
レフリアを見るが、一度だけ頷くだけで……震える手でお茶の用意をする。
「お茶をお持ちいたしました……」
ミーリアは、震える手でメアリに紅茶を差し出す。それは、また熱い紅茶を掛けられる恐怖によるものだった。
あれは、メアリの誕生日での出来事だった。
招かれたミーリアは、彼女に挨拶を済ませると態度が気に入らないと、火傷はしなかったもののまだ熱い紅茶を掛けられドレスを台無しにされたことがあった。
どちらとも一歩たりとも動くことはなく、互いを見つめ合っていた。
その状況の中、先に動きを示したのはレフリアだった。ただ腕を組み、なぜアレスが彼女をこの場所に連れてきたのかを考えていた。
突拍子もない事を当たり前のようにしてくるのがアレス。
それが分かっていたとしても、レフリアにとって今は最も会いたくもない人物の一人だった。
彼女の名前は、メアルーン・ロンダリア。
今回の事件の首謀者の一人、ロンダリア伯爵の娘。その彼女は敵陣ともいえるドリアン男爵の屋敷にいる。
アレスが彼女のことを理解し、ここにわざわざ連れてきたという事は、レフリアの頭の中には想像すらしていない。アレスが訳ありだから匿ってくれと、そう言っていることで何も知らないまま連れてきたと予想していた。
レフリアはため息を漏らすものの、メアリは姿勢を正したままじっと見つめているだけだった。お腹の前で手を重ね凛と立ち、レフリアと対峙したまま視線を反らさず雨に打たれていた。
「中へどうぞ」
雨に打たれる彼女を見て、このままにもして置けず屋敷の中へ招き入れた。
メアリは深く礼をしてから、レフリアの横を通り過ぎ部屋の隅に佇んでいた。
レフリアが彼女にタオルを差し出すと、メアリは再度深く頭を下げて、両手を差し出していた。
だけど、その礼儀正しい所作に激しい嫌悪感をレフリアは抱いている。
これまでとは違うそんな彼女を見て、自身の髪を拭く手に自然と力が入り、髪が数本小さな音を立ててちぎれていた。
受け取ろうともしないメアリの手にタオルを渡す。
彼女から違和感しか感じ取れない。
事情を聞かされていないレフリアは、彼女が敵であると認識していた。
しかし、彼女を連れてきたのはアレスであり、更には匿って欲しいと。
そのためレフリアにはどう接するべきか……どう、対処するべきかを判断しなければならなかった。
「お気遣い頂き、深く感謝申し上げます」
「!?」
以前の彼女であれば、頭を下げることは勿論。下位爵家に対して礼を言うなんてありえなかった。
レフリアは距離を取り、自然と剣の柄を握っていた。
それは反射的なものであり、彼女の低姿勢そのものが何かの企みにさえ思えていた。
レフリアにとって彼女は最も忌むべき相手であり、憎悪の塊のような相手だから警戒するのも当然の行動だ。
幼少から彼女に何度も虐げられ、持っている物を取り上げられるのが当たり前だった。
そして、取り上げられたとしても、感謝の言葉を口にするのはレフリアの方だった。『お使い頂き有難うございます』と……。
何度も何度も搾取され、事あるごとに良いように使われてきた。
「剣を抜いても構いませんが、わたくしは何もすることはありません」
「それはどういうことなのですか?」
「言葉通りにございます。わたくしの事を警戒されるのも無理はありません」
その真っ直ぐな視線に、レフリアは掴んでいた剣の柄から手を離す。
「ソファーにお掛けになったらどうですか?」
「そう、仰るのでしたら、失礼致します」
レフリアは置かれているベルを鳴らすと、ミーリアがやってくる。
中にいる人物を見せないようにドア越しに、お茶を用意してもらうように告げる。
カップを二つということに、疑問を抱くも快く引き受けていた。
重要人物である彼女を、このままにしても置けず、雨に打たれ冷えた体を温めるためお茶を用意させた。
レフリアは何時でも剣を抜くことができる。レフリアは対面に座ることもなく、睨みつけていた。
こんなことをすれば、彼女にとって腹立たしいことだったが……レフリアのことを気にする様子もなく、ただ一点を見るだけで、何もすることはなかった。
そんな対立のなか、ミーリアが部屋に戻ってくる。
ワゴンを押し、中へ入るが……座っている人物を確認し、彼女の体は何かを拒絶するように震えだしていた。
レフリアを見るが、一度だけ頷くだけで……震える手でお茶の用意をする。
「お茶をお持ちいたしました……」
ミーリアは、震える手でメアリに紅茶を差し出す。それは、また熱い紅茶を掛けられる恐怖によるものだった。
あれは、メアリの誕生日での出来事だった。
招かれたミーリアは、彼女に挨拶を済ませると態度が気に入らないと、火傷はしなかったもののまだ熱い紅茶を掛けられドレスを台無しにされたことがあった。
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