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ラカトリア学園 高等部

104 ゲームでない現実の絶望 1

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「これぐらいなら少しぐらいは持つよな?」

 ダンジョンから出てくると、あたりは完全に夜になっている。
 日付の感覚はかなりずれていた。

 大量の魔物を倒しているので、ある程度のお金にはなっていると思う。
 このまま、バセルトンで換金するのはあまり良くないかもしれないな。
 だとするのなら……やっぱりあそこしか無いよな?

 朝になり、ギルドの前には多くの冒険者達が待っていた。
 この辺りのダンジョンは、それほど強い魔物は居ないので、きっと新米の冒険者なのだろう。
 平民からの冒険者なのか、持っている武器からしてかなり危ういものを感じる。

「皆さんおまたせしました……あ!? ギギギギギ、ギルド長!!」

 俺の姿を見るなり、立てかけようとしていた看板を放り投げて中へと入っていく。
 何が起こったのかわからない連中は、このまま入っていいのかと戸惑っていた。
 建物の外だと言うのに、中からはドタドタと大きな音が鳴り響く。
 勢いよくドアが開かれる。

「まじでいやがる……皆すまなかったな、どうぞ入ってくれや」

 ギルド長の言葉で待っていた冒険者たちはぞろぞろと中にはいっていく。
 俺もその流れについていくのだが……。

「で?」

 俺がギルド長の脇を過ぎようとすれば、案の定声をかけられる。
 ここは俺にとって今のところ口止めが効いている。
 それなりの対価を払っているのだから、それが何時まで適用されるのかはわからない。

「それで?」

 いつものごとく別室に案内され、ギルド長はタバコに火をつけている。
 最初こそは低姿勢だったものの、今となってはこの有様だ。

「か、換金を頼みたいのだが……」

「そうか、そうか。で?」

「いや……魔物を討伐すれば、報酬が出るだろ?」

「そうだったな。ふぅーー」

 俺と話をまともにする気がないようだな……。
 ギルド長の言葉を待っていたのだが、一向に話しかけてくる様子もなく、俺の質問には、最後に「で?」と言って返される。

「あのな、いつまでもこんな事ができると思うなよ?」

「それは、俺の不正を疑っているということか?」

「ちげーよ。不正が出来ないための腕輪だろうが!」

 そう言って俺たちの間にある机を叩いていた。
 魔物を倒したものにだけ討伐の記録が残る。パーティーであれば、当然後方に居る者たちは討伐数が当然少なくなる。
 だけど、ギルドから得られる報酬は均等に配られるのが当たり前だ。

「だったら……いつものように頼みたいんだ。頼む」

「たった一人の学生が、千や二千。それをたったの数日で……お前は自分がしていることを本当に自覚しているのか?」

「それはどういうことなんだ? 魔物を倒すことなら皆やっているだろう?」

 はぁーっと大きくため息を付き、背もたれに両肘を乗せて天井を見上げている。
 俺の回答に納得がいかないのだろう。
 だとするのなら……何が正解だ?

「何のためにカネを稼いでいる?」

「正直な所俺が話をしていい内容かわからない。どうすれば納得して貰える?」

「お前という存在を、認めているという者をここに連れて来い。話はそれからだ……まっ、ここを離れて他のギルドを頼るのもいいだろう。だけどな、誰もが俺のようなやつだとは思うなよ?」

 たった一日で、あの騒ぎだったんだ……。
 それでも換金をしてくれたのは、あの人がある程度俺を信用してくれたからであって、他の人も同じとは限らない。
 ましてや、口止めの話をしている。

 俺を認めている存在……ミーア達? それとも父上か?

 ミーアはすでにシルラーン家に居ることだろう。
 だとするのならクーバルさんを説得してここに連れてくる? まともに話をして通じることなのか?
 なら……父上か?

「ふん、どうした? 随分と困っているようだな?」

「いきなりそんな事を言われれば当然だろう?」

「おい、爺さん。こっちに来てくれ」

 そう言って、奥のあるドア越しから声をかけていた。
 爺さんと呼ばれた人物は、学園長だった。

「久しぶりじゃな」

 久しぶりって、先月目の前であったよな?
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