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ラカトリア学園 高等部
36 メインヒロインが? 1
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初日でこんなことになるとは予想外の結果だった。
これだけの小さなダンジョンに、一階層に一週間という時間があり、木管を取りに行くのに一ヶ月という長い時間。
それは、初めてのダンジョンを甘く見ないということだ。
ゲームだから、だからこうするのが得策で、有効な手段の一つだと決定づけてきていた。
実際には、ぼろぼろになりながらも戦い、二人を守り通したハルトは称賛されるべきことなんだと思う。
だとするのなら、これから先一体どうなるんだ?
この反応は!?
一つの反応が、複数の魔物に取り囲まれていた。逆であれば問題ないのだが、囲まれているのは人だった。
「まずいぞこれは……」
「い、いやーー!!」
あれは、パメラか? ほかの学生はどうした?
それよりもまず魔物を、四体に囲まれていたパメラの前に風の刃が通り過ぎなぎ倒していった。
パメラは恐怖に怯えているのか、目をギュッ閉じていた。
「おい、無事か?」
「あ、貴方は……?」
「お前以外のメンバーはどうした?」
「向こうの方で倒れていて……」
「分かった。いいか、そのままじっとしていろ」
奥の方から近づく魔物に魔法を放ち、倒れていた二人は俺の知らないやつだったが、ポーションを飲ませる事でなんとか乗り切ったようだ。
緊急事態として大目に見てくれると良いのだけど、俺は倒れていた二人を両脇に抱え、パメラの元へと行く。
「二人共大丈夫だ。一度戻るぞ、いいな?」
戻ってきた俺をパメラは座ったままポカンと口を開けてみていた。
何度か声を掛けてようやく戻ってきたパメラは、慌てて立ち上がり頭を下げていた。
「はい。有難うございます」
「礼はいらない。早く出るぞ」
一部を除いて学生たちが真剣になるわけだ。命がけじゃないかこれは……とはいえ、王子のように大人数というのも、これからは増えそうだな。
父上と一緒にダンジョンに潜った時に、数人の私兵を連れていたけど。こういうことだったのか?
『アレス、たしかに君は強い、だけどその強さを過信してはいけないよ。いいね?』
『しかし、アレス。誰もが君のように強いとも限らないからね。その事を覚えておくんだよ?』
そういうことだったのか父上。
これがこの世界での現実……魔物が弱いと思っていたのは、ゲームの知識による歪んだものだ。
その中でもレベルアップという概念を持って居るのは俺ぐらいなものだ。
ここにいる全員は今日がダンジョンに初めて入った者たちばかり。
ゲームだから、この魔物ならと、初めての戦闘で皆が戦えるとは限らない。ゲームのようにやり直しなんて無い、だから死ねばそれで終わる。
もしあの時助けなければ、パメラも……ミーア達もどうなっていたのかわからない。
「パメラ。大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
パメラの様子からして大丈夫と言うには程遠い。
肉体的と言うよりも、精神的な疲れが大きいのだろう。持っている槍を杖代わりにしてなんとか立っているに等しい。
「少し、休憩するか?」
「ですが……」
俺は二人を、壁に凭れさせその場に座った。パメラも俺の隣に座り息を整えていた。
いまポーションを使ったところで気休めにもなりそうにないな。
周りに居た生徒たちも初めての戦闘だからか、それほど時間も経っていないというのに、続々とダンジョンから離脱をしている。
俺と同じように魔物との戦いというものを、見誤った者たちなのだろう。
ゲーム的な考えは一人で居た頃から捨てるべきだったな。
「ありがとうございます」
「ちっ……いいか、すぐに戻る。そこを動くなよ」
「え……?」
来た道へと戻り、こちらへと向かってきている魔物へ魔法を打ち込む。
半数以上は戻っているか……俺の周辺で残っている魔物に対し、次々と魔法を打ち込み殲滅をしていく。
これだけの小さなダンジョンに、一階層に一週間という時間があり、木管を取りに行くのに一ヶ月という長い時間。
それは、初めてのダンジョンを甘く見ないということだ。
ゲームだから、だからこうするのが得策で、有効な手段の一つだと決定づけてきていた。
実際には、ぼろぼろになりながらも戦い、二人を守り通したハルトは称賛されるべきことなんだと思う。
だとするのなら、これから先一体どうなるんだ?
この反応は!?
一つの反応が、複数の魔物に取り囲まれていた。逆であれば問題ないのだが、囲まれているのは人だった。
「まずいぞこれは……」
「い、いやーー!!」
あれは、パメラか? ほかの学生はどうした?
それよりもまず魔物を、四体に囲まれていたパメラの前に風の刃が通り過ぎなぎ倒していった。
パメラは恐怖に怯えているのか、目をギュッ閉じていた。
「おい、無事か?」
「あ、貴方は……?」
「お前以外のメンバーはどうした?」
「向こうの方で倒れていて……」
「分かった。いいか、そのままじっとしていろ」
奥の方から近づく魔物に魔法を放ち、倒れていた二人は俺の知らないやつだったが、ポーションを飲ませる事でなんとか乗り切ったようだ。
緊急事態として大目に見てくれると良いのだけど、俺は倒れていた二人を両脇に抱え、パメラの元へと行く。
「二人共大丈夫だ。一度戻るぞ、いいな?」
戻ってきた俺をパメラは座ったままポカンと口を開けてみていた。
何度か声を掛けてようやく戻ってきたパメラは、慌てて立ち上がり頭を下げていた。
「はい。有難うございます」
「礼はいらない。早く出るぞ」
一部を除いて学生たちが真剣になるわけだ。命がけじゃないかこれは……とはいえ、王子のように大人数というのも、これからは増えそうだな。
父上と一緒にダンジョンに潜った時に、数人の私兵を連れていたけど。こういうことだったのか?
『アレス、たしかに君は強い、だけどその強さを過信してはいけないよ。いいね?』
『しかし、アレス。誰もが君のように強いとも限らないからね。その事を覚えておくんだよ?』
そういうことだったのか父上。
これがこの世界での現実……魔物が弱いと思っていたのは、ゲームの知識による歪んだものだ。
その中でもレベルアップという概念を持って居るのは俺ぐらいなものだ。
ここにいる全員は今日がダンジョンに初めて入った者たちばかり。
ゲームだから、この魔物ならと、初めての戦闘で皆が戦えるとは限らない。ゲームのようにやり直しなんて無い、だから死ねばそれで終わる。
もしあの時助けなければ、パメラも……ミーア達もどうなっていたのかわからない。
「パメラ。大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
パメラの様子からして大丈夫と言うには程遠い。
肉体的と言うよりも、精神的な疲れが大きいのだろう。持っている槍を杖代わりにしてなんとか立っているに等しい。
「少し、休憩するか?」
「ですが……」
俺は二人を、壁に凭れさせその場に座った。パメラも俺の隣に座り息を整えていた。
いまポーションを使ったところで気休めにもなりそうにないな。
周りに居た生徒たちも初めての戦闘だからか、それほど時間も経っていないというのに、続々とダンジョンから離脱をしている。
俺と同じように魔物との戦いというものを、見誤った者たちなのだろう。
ゲーム的な考えは一人で居た頃から捨てるべきだったな。
「ありがとうございます」
「ちっ……いいか、すぐに戻る。そこを動くなよ」
「え……?」
来た道へと戻り、こちらへと向かってきている魔物へ魔法を打ち込む。
半数以上は戻っているか……俺の周辺で残っている魔物に対し、次々と魔法を打ち込み殲滅をしていく。
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