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ラカトリア学園 高等部

34 学園ダンジョン開始 1

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 俺にとっては長い長い一ヵ月の授業パートが終わり、今日から学園の敷地内にあるダンジョンへ入ることになる。大体三カ月振りのダンジョンだったため、俺は気分が良かった。
 今の俺ではこの初級ダンジョンはすぐに目的を達成して、何の問題もなくクリアできるが……ゲームと同じように、この一ヵ月で三階に用意された木管を手に入れること。

 しかし、今日行けるのは一階層のみ、週が明けることで二階、三階へ行けるようになる。
 本来であれば、ここで少しはレベルを上げていないと、次のダンジョンで苦戦する。
 俺が気にしているのは、ここにいる学生がどれぐらい戦えるのかということ。ゲームキャラではないとはいえ、特待生は他にもいる。

 そんな奴らとも今後交流があるかもしれないし、主要メンバーにも何らかの繋がりも出てくるだろう。
 俺が抜けたことによって、ミーアのパーティーは大丈夫なのだろうか? 
 初期パーティーは分かっているけど、問題はあの三人は戦えるのかということだ。
 あの時のように怯えなければ良いのだけど……魔獣から助けた時は、屋敷に着くまで恐怖に怯え、震えていた姿が脳裏をよぎっていた

「大丈夫だ、ミーア。俺は皆の足を引っ張らないように一人で行くから」

 この言葉のどこら辺に、大丈夫だと思われるかわからないよな……案の定というべきかミーアは袖を掴み、引き込むように引っ張っていた。
 しかし、細い腕では俺の巨体はやすやすと動くものではない。
 ダンジョンの前に集められた俺達は、各自パーティーを募り、ミーアが先程から引っ張って離さない。

「アレス様の強さは知っております。多くの生徒がいるとはいえ、魔物は危険です。せめて私だけでも」

「ルーヴィア嬢と一緒なんだろ? 俺なんかが居るとかえって迷惑だろう。ほら行って来い、俺みたいなやつは一人のほうが気楽なんだよ」

「ですが……」

「あー、やっと見つけた。またコイツに捕まっていたの? もういいから、ほら行くよ」

「レフリア様……分かりました」

 レフリアは俺を睨みつけると、ミーアは手を離した。どう見ても俺が捕まえていたわけではないんだが、こういう強引さに救われている。
 強引に連れ去られるミーアに手を振ると、諦めたのか少し落ち込んだ表情をしていた。

 ハルトは通りすがりに「ごめんね」と言って、彼女たちの後を追っていた。
 ここにいる学生たちは、特待生とAクラスの生徒たちだ。他のクラスたちは来月から開始されるらしい。
 他のダンジョンならともかく、学園の中にある初級ダンジョンに、一学年が入れば鮨詰め状態になりかねない。
 
 そういや、初級のダンジョンってゲームのアレスも一人だったのだろうか?

 主人公は、ミーアだったから、アレスの動向を把握できているわけでもない。
 一緒にダンジョンを同行できるようになったのは、初級をクリアして何かイベントがあった気がするけど、詳しくは思い出せないな。
 でもまあとりあえず、あの三人なら問題はないと思う……多分だけど。

「パーティーを組んだな。危険度は低いがくれぐれも注意するように」

 俺は一人だけど、見た目からして教師からも相手にされていないようで何よりだった。
 それでも一人だけ、俺をじっと見てニヤリと笑っている爺の姿も見える。本当に嫌な奴だ。
 兄上には、俺の行動は予測されているし、あの爺は何かがあれば兄上に報告する可能性もある。

 生徒たちの中心にかなり騒がしい集団が現れたのだが……何なんだあのパーティーは?
 思っていた通り、ゲームと違い特に人数制限はない。だがしかし、あれはどうかと思うぞ。
 あの馬鹿王子様は十人を超す女子生徒に囲まれていた。彼女たちはアホを持ち上げそのアホもそれでいい気になっている。
 男子生徒はあの手下A君だけのようだ。このことで、やっぱり訓練場でミーアを見ていたのは、そういう理由だったのかと……またしても、怒りがこみ上げてくる。

 まるでダンジョンの中に遊びに行くような感覚で、王子の集団はぞろぞろと入っていった。
 それ以外には特におかしなメンバーは他にも居た。

「お前は一人か?」

「はい。私でしたら何も問題はない。足手まといならいらないから」

 そう、悪役令嬢ことラティファだった。俺と同じく一人、というかあの集団から外れて一人というのもわからない。
 パメラのライバルとして出てくるのだから、今はあの王子と一緒にいるはずとは思った。いくら婚約者だとしてもなんせあのアホ王子だ。
 悪役令嬢とはいえ、付き合いきれなかった可能性も十分にある。
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