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転生した異世界の生活
15 魔獣討伐からの出会い 2
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この頃にもなると、体付きも変わっていて、少し歩いただけで疲れ果てていたのがまるで嘘のようだった。
午前中の授業では、メイドの一人が追加され……恥をかかないためにもダンスを嗜む必要があると言われた。
冒険者にはそんなのは不要だと思っていたが、両親としてはその道に進んで欲しくはないのだろう。しかし、普段は優しいメイドなのに、ダンスへと切り替わると厳しすぎる。
訓練の休憩をしていると、珍しいことに父上がやってきた。
「アレスの調子はどうかな?」
「これは旦那様。筋は大変よろしいかと。ですが、剣術に於いてはアトラス様にはかないますまい」
「あの子を基準にしても仕方がないだろう?」
兄のアトラスは、剣術に関してはかなり評価が高い。まさに、天才と言ってもいいぐらいだ。
二人がこういうのも、初等部へ入学する前に父親であるアークを打ち負かしていたらしい。それにも関わらず、有頂天になることなく、未だ真面目に剣術の訓練をこなしている。
学園を卒業してからは次期当主として、周辺警邏と、ローバン領を把握するため各所を回っている。
俺が兄上に会うことも二ヵ月に一回あればいいほうだ。
父上は携えている剣を抜いて、剣先をこちらへ向けてきた。
「どうだろう、アレス。今度は私と手合わせを願おうかな。実力次第では、魔獣討伐ぐらいなら許可してあげるよ」
「本当ですか?」
「嘘は言わないよ」
剣を構え、呼吸を整える。
これに勝てば魔獣討伐が許可される。冒険者たちはダンジョンへと向かうが、今の俺に許可されるはずもない。
しかし、一歩前進できるのは正直に言って嬉しい。
使える魔法は少ない、けどこれに勝てば俺は冒険者に一歩近づける。
父上の出方は分からないが……勝つつもりで行くしか無い!
「行きます」
俺は真っ直ぐ父上に突進する。父上が剣を構えると、右へ飛び氷の魔法を打ち出す。
セドラの時とは違い、つらら程度の氷を無数に浴びせる。だが、父上は躱すこともなく剣によって全て撃ち落とされる。
焦る様子もなく、邪魔だから、飛んできているから、きっとそんな程度に思われている。
今はそれでいい……
「おっと、残念。話には聞いていたけど、魔法をこれほど早く打ち出してくるとは」
アイスニードルで足止めし、上空では氷の柱を作り出していた。
当たればそれなりには痛いはず……それに、剣ではどちらかに避けるしかない。
「これは、すごいね」
しかし、俺が作り出した氷の柱は真っ二つに切り裂かれ、父上の両脇に落下する。だが、こんなにも早くチャンスが訪れるとは思いもよらなかった。
「これは……まさかね」
「父上、僕の勝ちです」
父上が上に気を取られていたとしても、この距離なら剣だけでは届かない。しかし、俺が作り出した氷の剣先が、父上の前にある。
つまり、俺が魔法を止めなければ貫くことも出来ていた。
この勝負は俺の勝ちという事になる。
「本当にすごいよ。剣に魔法を付与して、距離を縮めたのか……だけどね」
「なっ、消えた!?」
「はい、私の勝ちだね。いいセンスなのは認めるけど。私にはまだまだ到底及ばないね」
頭をコツンと軽く叩かれ、満足そうに笑顔を浮かべる。
納得がいかない。俺のほうが先に決定打を出していたはずだった。
父上をじっと睨みつけ、俺の足元には無数に俺の身長ほどはある氷の棘を出現させていた。
それは、周囲へと広がり、確実に父上を捉えていた。一番端の棘はどんどんと伸びていき、左右にも棘を張り巡らせ大きな檻へと変化していく。
「これは……」
「今の勝負は僕が勝っていた!」
「分かったよ。これだけのことができるんだ。この辺りの魔獣程度なら大丈夫なのかもね」
「それでは!」
「ただし、セドラが同行するのならという条件だけどね。近くの森ぐらいなら良いだろう。セドラも良いね?」
展開していた氷は粉々に砕け、セドラは俺を抱きかかえて喜んでいた。
父上も諦めたのか困った顔をしつつも笑ってくれている。
「かしこまりました。おめでとうございます、アレス様」
「やったーー!!」
魔獣討伐を許可してもらった俺は、次の日から近くの森へくりだした。
猪や鹿といった魔獣だけど、地球と比べて大きいし、何より好戦的だった。
鹿は草食動物ではなかったのだろうか?
「それにしても、この辺りでもだいぶ余裕で戦えるようになってきたな」
一ヶ月も経つと、魔獣相手だろうと俺一人でも対抗できるようになっていた。
午前中の授業では、メイドの一人が追加され……恥をかかないためにもダンスを嗜む必要があると言われた。
冒険者にはそんなのは不要だと思っていたが、両親としてはその道に進んで欲しくはないのだろう。しかし、普段は優しいメイドなのに、ダンスへと切り替わると厳しすぎる。
訓練の休憩をしていると、珍しいことに父上がやってきた。
「アレスの調子はどうかな?」
「これは旦那様。筋は大変よろしいかと。ですが、剣術に於いてはアトラス様にはかないますまい」
「あの子を基準にしても仕方がないだろう?」
兄のアトラスは、剣術に関してはかなり評価が高い。まさに、天才と言ってもいいぐらいだ。
二人がこういうのも、初等部へ入学する前に父親であるアークを打ち負かしていたらしい。それにも関わらず、有頂天になることなく、未だ真面目に剣術の訓練をこなしている。
学園を卒業してからは次期当主として、周辺警邏と、ローバン領を把握するため各所を回っている。
俺が兄上に会うことも二ヵ月に一回あればいいほうだ。
父上は携えている剣を抜いて、剣先をこちらへ向けてきた。
「どうだろう、アレス。今度は私と手合わせを願おうかな。実力次第では、魔獣討伐ぐらいなら許可してあげるよ」
「本当ですか?」
「嘘は言わないよ」
剣を構え、呼吸を整える。
これに勝てば魔獣討伐が許可される。冒険者たちはダンジョンへと向かうが、今の俺に許可されるはずもない。
しかし、一歩前進できるのは正直に言って嬉しい。
使える魔法は少ない、けどこれに勝てば俺は冒険者に一歩近づける。
父上の出方は分からないが……勝つつもりで行くしか無い!
「行きます」
俺は真っ直ぐ父上に突進する。父上が剣を構えると、右へ飛び氷の魔法を打ち出す。
セドラの時とは違い、つらら程度の氷を無数に浴びせる。だが、父上は躱すこともなく剣によって全て撃ち落とされる。
焦る様子もなく、邪魔だから、飛んできているから、きっとそんな程度に思われている。
今はそれでいい……
「おっと、残念。話には聞いていたけど、魔法をこれほど早く打ち出してくるとは」
アイスニードルで足止めし、上空では氷の柱を作り出していた。
当たればそれなりには痛いはず……それに、剣ではどちらかに避けるしかない。
「これは、すごいね」
しかし、俺が作り出した氷の柱は真っ二つに切り裂かれ、父上の両脇に落下する。だが、こんなにも早くチャンスが訪れるとは思いもよらなかった。
「これは……まさかね」
「父上、僕の勝ちです」
父上が上に気を取られていたとしても、この距離なら剣だけでは届かない。しかし、俺が作り出した氷の剣先が、父上の前にある。
つまり、俺が魔法を止めなければ貫くことも出来ていた。
この勝負は俺の勝ちという事になる。
「本当にすごいよ。剣に魔法を付与して、距離を縮めたのか……だけどね」
「なっ、消えた!?」
「はい、私の勝ちだね。いいセンスなのは認めるけど。私にはまだまだ到底及ばないね」
頭をコツンと軽く叩かれ、満足そうに笑顔を浮かべる。
納得がいかない。俺のほうが先に決定打を出していたはずだった。
父上をじっと睨みつけ、俺の足元には無数に俺の身長ほどはある氷の棘を出現させていた。
それは、周囲へと広がり、確実に父上を捉えていた。一番端の棘はどんどんと伸びていき、左右にも棘を張り巡らせ大きな檻へと変化していく。
「これは……」
「今の勝負は僕が勝っていた!」
「分かったよ。これだけのことができるんだ。この辺りの魔獣程度なら大丈夫なのかもね」
「それでは!」
「ただし、セドラが同行するのならという条件だけどね。近くの森ぐらいなら良いだろう。セドラも良いね?」
展開していた氷は粉々に砕け、セドラは俺を抱きかかえて喜んでいた。
父上も諦めたのか困った顔をしつつも笑ってくれている。
「かしこまりました。おめでとうございます、アレス様」
「やったーー!!」
魔獣討伐を許可してもらった俺は、次の日から近くの森へくりだした。
猪や鹿といった魔獣だけど、地球と比べて大きいし、何より好戦的だった。
鹿は草食動物ではなかったのだろうか?
「それにしても、この辺りでもだいぶ余裕で戦えるようになってきたな」
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