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転生した異世界の生活

06 執事たちの企み 1

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「あれ? 寝たのは……たしか、昼前だった気がする」

 姉から言われた通りに大人しく寝ていたのだけど……青空だった空は夕焼けで朱色へと変わっていた。
 夕方近くので寝るつもりはなかったが、寝不足だったということもないし、自分が思っている以上にこの体では些細なことでも疲労が大きいのかもしれないな。

 あるくというだけで疲れるほどに基礎体力が少ないため、今のままではまともに走ることすら怒られる可能性もある。
 現段階として必要なのは、この世界の知識を学ぶ前に、少しでも動けるように体力作りから始めるのもいいかもしれない。

「おや、おはようございます、アレス様」

「セドラさん? おはよう」

「私めのことは、どうぞセドラと呼び捨ててください。ところで、お加減はいかがですか?」

「うん、大丈夫だよ。セドラ」

 年上の人を呼び捨てって、やっぱり抵抗ある。
 貴族の立場からすれば、執事や使用人を呼び捨てにするのは当たり前だ。それが俺のように小さな子供だろうと例外はない。
 寝起きの背伸びをすると、くぅと小さく腹の虫がなった。

「ふふっ、少し早いでしょうが。アレス様は先に夕食にいたしましょう」

「あ、ありがとう」

「ときにアレス様」

 彼を抱えようとしたセドラの表情が一変し、目を限界まで見開き額がくっつく程に近い。
 なんだろう、何かやらかしたのだろうか?
 もしかしたら寝言で何か言ってしまったのだろうか?
 その可能性は十分にあるよな。

「な、なに?」

「今後、お昼寝をされる時は、セドラにも一言お声をかけて貰ってもよろしいですかな?」

 なるほど、昼寝をする時は誰かの断わりが必要ということだな?
 姉上はまだ子供だから、その対象から外れるのか?
 意味はよく分からないけど、貴族とはそういうものなんだろう。

「うん? 分かったよ。でもどうやってセドラを呼べば良いのかわからない」

 そう、寝るのに一声かけるのは良い。
 しかし、四六時中隣りにいるというわけでもないので、報告しようにもできない。
 セドラは、ベットの脇に置いてあったベルを持ち俺に渡してきた。

「私でなくても構いません。このベルを鳴らせば、私かメイドの誰かが参りますので」

 これはそういうものだったのか……用があればベルを鳴らせば誰かが来てくれるのか。
 ベルから聞こえる音は、透き通るように突き抜けてくる音を立てていた。

「お呼びでしょうか?」

「え、あ。ごめん」

「アレス様に、ベルの事をお話していただけです。でも、これでお分かり頂けましたでしょうか?」

 呼び出されたメイドは頭を下げてから出ていく。
 なんて便利な……いや、ここではこれが普通なのか。

「うん、何かあったらベルで知らせるね」

「では、早速絵師の準備をしておきましょう」

「えしって何?」

 セドラは態とらしく、顎に手を置き俺には見えない顎髭を撫でているような仕草をしていた。目が合うと俺に背を向け遠くを見つめるかのように天井を見ている。
 目を閉じ、左手を胸に置き、だけど口元が少しだらしない。
 何かをごまかそうとしているのか?

「今から一刻ほど前に、アレス様のご様子を拝見したときのことですが……」

「うん?」

「それはそれは、可愛らしい寝顔に我々は心打たれまして、どうにかその光景を残したく思います」

 ああ、えしって、絵を書く人の、絵師のことだったのか……で?
 わざわざその絵師を呼んで、俺の寝姿を書いてもらう?
 なんだその、無駄な金の使い方は……と言いたい所だけど、アレスがこんなにも元気で居られたということはないらしいので、俺の強くは出られない。

「それぐらいなら別にいいと思うけど……我々ってセドラ以外に誰がいたの?」

「ローバン家に仕える全ての使用人にございます」

 おふっ。なんでそこまで過保護なんだよ。このくらいの年齢なら昼寝なんて当たり前だろ?
 それに使用人全員って、仕事しろよ。寝顔を見ている暇ぐらいはあるかもしれないけど、そんなものを見て何が楽しいんだ?
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