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強者討伐 失われた武器

269 ダインスレイブの継承者 2

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 お腹の駄肉を力強く掴まれ少し痛い。
 ミーアの腕を掴むと、更に力を込められ左手が別の箇所を掴んでいた。

「待て待て、早とちりだ。ぐふっ。こ、この剣の実用性を試すのに、必要かと思いまして……」

 そんな言い訳じみたことを並べても、皆からは白い目で見られ、ミーアは駄肉を離そうともしない。
 誰一人して、俺を庇ったり助ける気はなく、ガキども主にベールは俺を見て大笑いしている。

「どうしてアレス様は、このような子供じみた真似をなさるのですか?」

「だから、この剣の実用をためすぅ、痛いミーア。下に下げるな」

 ミーアは更に体重を乗せ下げていくものだから、掴まれている駄肉からはとてつもない痛みが走る。

「正座です!」

「ぎゃーー」

 無理やり引っ張られたことで、バランスを崩し前に倒れる。その弾みによって俺の魔力糸がエクスカリバーの剣身に触れたことで魔力糸が切断された。
 刃の部分なら理解できるが、剣の腹だというのにどういうことなんだ?

「あ、やばっ。魔物がこっちに来るぞ。こら、ミーア離れろ」

「ダメです。そうやってすぐに私から逃げるおつもりですね」

「本当に来るから! 俺が捕まえていた魔物が、こっちに向かってきている」

 俺の言葉に、全員から白い目と、レフリアからは剣先が向けられる。
 向けられた剣をシールドを当てて弾き飛ばす。

「バーストロンド!」

 俺が置いていた魔物がいる通路に向けて魔法を放つ。 
 複数の爆発とともに周囲のいた、魔物たちは当然その音に反応している。
 風球を、それぞれの通路に飛ばし、こちらへ向かってきそうな魔物を討伐する。
 やれやれ、人の忠告は素直に……聞いてくれるわけ無いか。
 
 いたずらが過ぎたのだろうか? 結局俺はダンジョンの中で正座させられる。そして、三人に主に二人からだけど懇々と説教を聞かされる。
 その間ずっと、クソガキ代表格のベールは俺を見下すように、顔を歪め笑っている。
 ベールの奴め……こいつだけは許さんぞ。

「はぁ、やっと開放されたか……」

「アンタは何であんな事したのよ」

「おどろ……」

 二人からの鋭い視線が俺に突き刺さる。

「さっきも言ったが、あの剣の性能を試すためだ」

 俺の魂胆は見破られているだろうし……メアリは、ちょっと落ち着いてくれると助かるのだけど。
 怒らせるのはこれっきりにしたほうが良いな。
 パメラは相変わらず大した事はないけど、あの二人はダメだな。

「この剣。私が使ってもいいわよね?」

 レフリアはエクスカリバーを手にすると、持っていた剣に目を輝かせていた奴に手渡す。
 長剣だから、使い勝手は悪くはないと思うけど。
 ダインスレイブも中々使える武器だとは思う。見た目は別として……。

「大剣ってほどでもないが、ハルトに持たせたほうが戦力としてはよくないか?」

「僕にはちょっと小さすぎるかもね」

 ハルトの武器は新調をしているとはいえ、使っている大剣は以前とあまり変わらない。
 大剣の動作からすれば、かなり戦い方も変わってくる。そのため、ハルトの言い分もわからなくもない。
 だけど、他の武器と同様にデメリットがないのであれば、前線で戦うハルトが使うべきだと思う。

「お前はダインスレイブがあるだろう?」

「あの剣は……」

 レフリアが見ている方向に、ダインスレイブを持ったベールが目を輝かせながら振り回している。小さい体だと言うのに……あんな物を今から持たせれば拗らせるかもしれないぞ?
 レフリアに渡した時もあまり嬉しそうにしていなかった。
 ダインスレイブの形状からして鞘は作れないから、アレを持ち歩くのが嫌だったということか?

 皆がそれで良いのなら俺は構わないんだけど……ダインスレイブのほうが禍々しくていいと思う。
 しかしだ、俺の友人Hくんも、あの武器は好きじゃないらしい。
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