251 / 310
強者討伐 失われた武器
250 アレス・ローバンという巨大な壁 2
しおりを挟む
レフリアは正面の通路へ進み、ぎりぎりメアリが見える場所に立つ。
「ベール、ラン」
「おう」
「はい」
ベールの手にレフリアには見慣れた剣が握られている。
ランの両手には、小振りの片手剣。
現状において一度に六体、それも二手に分かれての戦いとなれば多少不利な展開になる。
「私も出ますか?」
「メアリはそのまま索敵を、スミアとロイはメアリの護衛をして、何かあればアルルさんに頼って」
「分かりました」
レフリアは向かって来る魔物に飛び込み初撃をリザードマンの頭から切り下げていく。
剣を砕き、頭、胴体へと、ダインスレイブによる斬撃はレフリアの想像を遥かに超えていた。
「なっ!?」
呆気にとられるレフリアの代わりにベールが魔物の攻撃を受け止める。
力で押し負けまいと懸命に力を出すが、蹴り飛ばされてしまう。
「ベール!」
我に返ったレフリアが、剣を薙ぎ払い盾ごと腕を落とす。
手首を返しながら一歩踏み込み、魔物の胴体を両断する。
「ベール大丈夫?」
「アトラス様に比べれば、これぐらい屁でもねぇぜ!」
強がりを見せるベールに対して、レフリアは手を差し伸べる。
しかし、ベールはその手を取ること無く立ち上がり、両手を上げて満面の笑顔を見せていた。
「ごめんなさい、無茶させて」
「レフリアお姉さま、一度戻られたほうが?」
ランの言葉に頷き、メアリの所まで後退する。
「アルルさん、正面に移動してくれますか?」
「いいわよ。それと、私のことはアルルで良いわ」
アルルは、斧を構え正面の通路を塞いでいる。
「スミア、ベールの手当をお願い。メアリ状況は?」
「ハルト様は交戦中ですが、すぐに戻られると思います。しかし……奥の方にどれだけの魔物が居るかまでは」
ハルトたちが戦っている魔物は残っているのは二体だが、それはメアリの索敵の限界であり現状を全て把握できるものではなかった。
戦っていることで、新たに魔物が襲ってくる可能性は十分考えられる。
「左来ます!」
正面にアルルが居て守りを固めている。
「数は?」
「五体です。正面にも二体来ます」
「ようやく私の出番というわけね」
そう言って、斧を持つ手に力を込める。
ベールが受けた攻撃を回復するまでまだ時間がかかる。
だからと言って、ロイをここから連れ出せない。
「ハルトたちが来たら、お願いね」
「レフリア様? 無茶です、わたくしも参ります」
レフリアは首を振って左の通路へ進む。
数は五体。一人で相手をするには、かなり厳しい戦いになる。
一人進む通路に、口角を上げて小さく息を漏らす。
「ハルト、待っているからね」
ハルトの所にも魔物が向かっていた。
ミーアとパメラがハルトの前に出ている。
二人は武器を構え、魔物の姿が見えると同時に駆けていく。
「ハルト様は、レフリア様の所に行ってください。ここは私達で!」
「いいから行って。すぐに戻るから」
二人の連携によって、魔物の一体が塵になって消える。
奥にどれだけの魔物が居るのかわからない。
「わかった、無理だけはしないでね」
二人は通路を塞ぎ、パメラが先に前に出て二体の魔物に攻撃を繰り出す。
浅い攻撃は、かすり傷でしかないが、距離を取って攻撃を交わすためのもの。
「パメラ」
ミーアの声に、追撃を止めミーアの後ろへと下がっていく。
「ブレイズウォール!」
通路全体に炎の壁が天井まで覆い尽くす。
その炎に一体の魔物が塵となる。魔物は行く手を阻まれるものの、ミーアたちにとっては好都合だった。
「ライトアロー」
「ファイアーアロー」
二人から放たれる矢は、炎の壁をそのまま貫き魔物たちへと突き刺さっていく。
ある程度打ち込むと、魔法が解除されるまでその炎を見ていた。
「メアリ、状況は? リアは?」
「ハルト様?」
ミーアたちの所には後三体。レフリアの所に四体の魔物が残っている。
メアリは自分が索敵できる範囲の狭さが情けなく思っていた。
「左でレフリア様が戦ってます。あと四体」
「分かった!」
顔を歪ませていた、メアリにランが手を握りしめていた。
目を開けたメアリは、「大丈夫」と言ってランの手を握り返す。
「ごめんなさい。ありがとうございます」
再び、索敵を展開し魔物は残り一体になっていた。
アルルもメアリの近くへ戻り、レフリアとミーアたちも戻って来た所でようやく皆は一息ついていた。
「レフリア様、地図を貸して頂けますか? それと新しい紙を出してください」
「ちょっとまってね……はい。どうするつもりなの?」
メアリの使う索敵は魔力反応だけで、アレスのように地形まで把握することは出来ない。
レフリアたちが戦っていた様子を思い出し、地図の上に紙を置くと、円を描きその周りにある紙を切り取っていた。
「おおよそですが、これが私が索敵できる範囲のようです。以前から思っていたのですが……あまりにも狭いと思われます」
レフリアは頭を下げるメアリに、肩を掴んで顔を起こさせる。
「貴方はあの馬鹿を基準にし過ぎよ。さっきだって十分対処できていたわよ」
首を横に振り、メアリは納得できないと言うよりも、このままでは危険にさらしてしまうことを懸念していた。
教わった内の一部だけだと言うのに、アレスが言っていたことを、今から実行するべきだと思っていた。
「レフリア様。この紙は、無くさないでください。そして、アレス様が行なっていたという訓練を皆さんにお勧めします」
「ベール、ラン」
「おう」
「はい」
ベールの手にレフリアには見慣れた剣が握られている。
ランの両手には、小振りの片手剣。
現状において一度に六体、それも二手に分かれての戦いとなれば多少不利な展開になる。
「私も出ますか?」
「メアリはそのまま索敵を、スミアとロイはメアリの護衛をして、何かあればアルルさんに頼って」
「分かりました」
レフリアは向かって来る魔物に飛び込み初撃をリザードマンの頭から切り下げていく。
剣を砕き、頭、胴体へと、ダインスレイブによる斬撃はレフリアの想像を遥かに超えていた。
「なっ!?」
呆気にとられるレフリアの代わりにベールが魔物の攻撃を受け止める。
力で押し負けまいと懸命に力を出すが、蹴り飛ばされてしまう。
「ベール!」
我に返ったレフリアが、剣を薙ぎ払い盾ごと腕を落とす。
手首を返しながら一歩踏み込み、魔物の胴体を両断する。
「ベール大丈夫?」
「アトラス様に比べれば、これぐらい屁でもねぇぜ!」
強がりを見せるベールに対して、レフリアは手を差し伸べる。
しかし、ベールはその手を取ること無く立ち上がり、両手を上げて満面の笑顔を見せていた。
「ごめんなさい、無茶させて」
「レフリアお姉さま、一度戻られたほうが?」
ランの言葉に頷き、メアリの所まで後退する。
「アルルさん、正面に移動してくれますか?」
「いいわよ。それと、私のことはアルルで良いわ」
アルルは、斧を構え正面の通路を塞いでいる。
「スミア、ベールの手当をお願い。メアリ状況は?」
「ハルト様は交戦中ですが、すぐに戻られると思います。しかし……奥の方にどれだけの魔物が居るかまでは」
ハルトたちが戦っている魔物は残っているのは二体だが、それはメアリの索敵の限界であり現状を全て把握できるものではなかった。
戦っていることで、新たに魔物が襲ってくる可能性は十分考えられる。
「左来ます!」
正面にアルルが居て守りを固めている。
「数は?」
「五体です。正面にも二体来ます」
「ようやく私の出番というわけね」
そう言って、斧を持つ手に力を込める。
ベールが受けた攻撃を回復するまでまだ時間がかかる。
だからと言って、ロイをここから連れ出せない。
「ハルトたちが来たら、お願いね」
「レフリア様? 無茶です、わたくしも参ります」
レフリアは首を振って左の通路へ進む。
数は五体。一人で相手をするには、かなり厳しい戦いになる。
一人進む通路に、口角を上げて小さく息を漏らす。
「ハルト、待っているからね」
ハルトの所にも魔物が向かっていた。
ミーアとパメラがハルトの前に出ている。
二人は武器を構え、魔物の姿が見えると同時に駆けていく。
「ハルト様は、レフリア様の所に行ってください。ここは私達で!」
「いいから行って。すぐに戻るから」
二人の連携によって、魔物の一体が塵になって消える。
奥にどれだけの魔物が居るのかわからない。
「わかった、無理だけはしないでね」
二人は通路を塞ぎ、パメラが先に前に出て二体の魔物に攻撃を繰り出す。
浅い攻撃は、かすり傷でしかないが、距離を取って攻撃を交わすためのもの。
「パメラ」
ミーアの声に、追撃を止めミーアの後ろへと下がっていく。
「ブレイズウォール!」
通路全体に炎の壁が天井まで覆い尽くす。
その炎に一体の魔物が塵となる。魔物は行く手を阻まれるものの、ミーアたちにとっては好都合だった。
「ライトアロー」
「ファイアーアロー」
二人から放たれる矢は、炎の壁をそのまま貫き魔物たちへと突き刺さっていく。
ある程度打ち込むと、魔法が解除されるまでその炎を見ていた。
「メアリ、状況は? リアは?」
「ハルト様?」
ミーアたちの所には後三体。レフリアの所に四体の魔物が残っている。
メアリは自分が索敵できる範囲の狭さが情けなく思っていた。
「左でレフリア様が戦ってます。あと四体」
「分かった!」
顔を歪ませていた、メアリにランが手を握りしめていた。
目を開けたメアリは、「大丈夫」と言ってランの手を握り返す。
「ごめんなさい。ありがとうございます」
再び、索敵を展開し魔物は残り一体になっていた。
アルルもメアリの近くへ戻り、レフリアとミーアたちも戻って来た所でようやく皆は一息ついていた。
「レフリア様、地図を貸して頂けますか? それと新しい紙を出してください」
「ちょっとまってね……はい。どうするつもりなの?」
メアリの使う索敵は魔力反応だけで、アレスのように地形まで把握することは出来ない。
レフリアたちが戦っていた様子を思い出し、地図の上に紙を置くと、円を描きその周りにある紙を切り取っていた。
「おおよそですが、これが私が索敵できる範囲のようです。以前から思っていたのですが……あまりにも狭いと思われます」
レフリアは頭を下げるメアリに、肩を掴んで顔を起こさせる。
「貴方はあの馬鹿を基準にし過ぎよ。さっきだって十分対処できていたわよ」
首を横に振り、メアリは納得できないと言うよりも、このままでは危険にさらしてしまうことを懸念していた。
教わった内の一部だけだと言うのに、アレスが言っていたことを、今から実行するべきだと思っていた。
「レフリア様。この紙は、無くさないでください。そして、アレス様が行なっていたという訓練を皆さんにお勧めします」
0
お気に入りに追加
554
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
【完結】転生したら登場人物全員がバッドエンドを迎える鬱小説の悪役だった件
2626
ファンタジー
家族を殺した犯人に報復を遂げた後で死んだはずの俺が、ある鬱小説の中の悪役(2歳児)に転生していた。
どうしてだ、何でなんだ!?
いや、そんな悠長な台詞を言っている暇はない!
――このままじゃ俺の取り憑いている悪役が闇堕ちする最大最悪の事件が、すぐに起きちまう!
弟のイチ推し小説で、熱心に俺にも布教していたから内容はかなり知っているんだ。
もう二度と家族を失わないために、バッドエンドを回避してやる!
転生×異世界×バッドエンド回避のために悪戦苦闘する「悪役」の物語。
貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す
名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。
通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~
フルーツパフェ
ファンタジー
エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。
前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。
死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。
先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。
弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。
――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる