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強者討伐 失われた武器
225 一応怪我人なのだが? 2
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駄目だ見るな。
これ以上見ていると食欲すら消え失せてしまう。
「あ、あんたが助けてくれたんだな。ありがとう、いくら払えばいい?」
「そんな事よりも自己紹介するべきじゃないかしら?」
ローバンの名前は伏せたほうがいいのだろうか?
適当偽名でも別にいいか?
「俺の名前は、イースだ」
「イース? 家名は?」
「それは名乗りたくはないんだよ」
「あら、そうなの?」
何度も何度も顔を覗き込んでくるのだが、そのたびに視線をそらす。
こいつの目的は何なんだ? 寝ていた俺をこんな所に運んだりして、貴族に対して恩を売るつもりなのか?
「まあ、元気そうで良かったわ。ここに運んでから四日も寝ていたのよ?」
「四日? 四日も寝ていたというのか?」
昨日かと思っていたのだが、どうやら俺の勘違いのようだったらしい。
もしあのままずっとあそこに居たとなると、今頃かなりやばかったかもしれないな。
「そうよ。それよりも何があったの?」
「助けて貰ったことには感謝をしている。だけど、俺にだって言えないことはあるんだ」
俺が持っている殆どの金を机に並べる。
百万ルーリはあるとは思うが……アルルはこの金を前にしても動じることもなく鼻で笑っていた。
「それは何のつもり? もしかしてお礼だったりするの?」
「足りないというのなら、後日倍は出そう」
アルルは手の甲を頬に当てて、ため息をついている。
俺からすればこの金よりも、俺から持ち出したロンギヌスの行方が優先だ。
あの部屋には、制服はあっても槍の姿は見えなかった。
俺を助けたというこいつなら、その所在を知っている可能性は高い。
「どういうつもりだ? クソガキ」
甲高い声は一変して、やたらと低い声に変わる。
目つきも変わり、俺を威圧してくるが……色んな意味で目を合わせられない。
俺としては、槍を回収してからさっさと公爵家に戻る必要があるというのに……。
「喧嘩を売るというのなら相手を選べよ? 俺が持っていた槍を何処にやった?」
アルルの威圧を押し返し、こちらからも殺気を込めて威圧する。
近くに居たチェルは持っていたトレイを落とし、俺を睨みつけていたアルルも戦意喪失していた。
一息をついて、威圧を無くすと二人も同じように息を吐いている。
「それで何処にあるんだ?」
「アレならちゃんとした所にしまってあるわよ」
「この金はやるから返してもらおうか……」
「それはまだダメよ。ちゃんと傷が癒えたのなら返してあげるわ。お金もいらない」
「せめてこのぐらいなら受け取ってくれ。助けてくれてありがとう」
そう言って差し出したお金を、アルルはやれやれと言った様子で受け取った。
チェルにも迷惑をかけた分とお礼を含めて金貨を一枚だけ手渡した。
「とにかく腹が減ったんだけど……」
「後三時間は駄目ですよ。何も食べていなかったのですから……」
チェルはそう言って、袖を引っ張っていた。
断食をした後なら、そういうこともあるのだろう。チェルや親父さんはそういう事を気にしているのだろうが、俺としてはそんな事を気にする体ではない。
「そうよね。いきなり何でも、そんな体でガツガツと食べるのは良くないわよ?」
「ふ、ふざけるなよ……さっきの親父だって洗い物が終ったら飯くれるって」
「誰もあんな事をするなんて、思っていなかったですよ?」
俺はテーブルに項垂れていると、気になったのかアルルは、俺が何をしていたのかをチェルから事情を聞き出していた。
色々と文句を言われるが、頬杖をついて聞き流していた。
そんな中、店の扉が開き見知った面々が現れすぐさま顔を反転させた。
「やあ、アレス君。目が覚めたんだ」
「大丈夫だったか? アレス?」
「ひっさしっぶりー、だね?」
何でコイツラがここに……いや、ヘーバイン公爵領だからしょうがないか。
俺の偽名はなんでこうも簡単に意味を無くすんだ?
呪いなのかこれは?
これ以上見ていると食欲すら消え失せてしまう。
「あ、あんたが助けてくれたんだな。ありがとう、いくら払えばいい?」
「そんな事よりも自己紹介するべきじゃないかしら?」
ローバンの名前は伏せたほうがいいのだろうか?
適当偽名でも別にいいか?
「俺の名前は、イースだ」
「イース? 家名は?」
「それは名乗りたくはないんだよ」
「あら、そうなの?」
何度も何度も顔を覗き込んでくるのだが、そのたびに視線をそらす。
こいつの目的は何なんだ? 寝ていた俺をこんな所に運んだりして、貴族に対して恩を売るつもりなのか?
「まあ、元気そうで良かったわ。ここに運んでから四日も寝ていたのよ?」
「四日? 四日も寝ていたというのか?」
昨日かと思っていたのだが、どうやら俺の勘違いのようだったらしい。
もしあのままずっとあそこに居たとなると、今頃かなりやばかったかもしれないな。
「そうよ。それよりも何があったの?」
「助けて貰ったことには感謝をしている。だけど、俺にだって言えないことはあるんだ」
俺が持っている殆どの金を机に並べる。
百万ルーリはあるとは思うが……アルルはこの金を前にしても動じることもなく鼻で笑っていた。
「それは何のつもり? もしかしてお礼だったりするの?」
「足りないというのなら、後日倍は出そう」
アルルは手の甲を頬に当てて、ため息をついている。
俺からすればこの金よりも、俺から持ち出したロンギヌスの行方が優先だ。
あの部屋には、制服はあっても槍の姿は見えなかった。
俺を助けたというこいつなら、その所在を知っている可能性は高い。
「どういうつもりだ? クソガキ」
甲高い声は一変して、やたらと低い声に変わる。
目つきも変わり、俺を威圧してくるが……色んな意味で目を合わせられない。
俺としては、槍を回収してからさっさと公爵家に戻る必要があるというのに……。
「喧嘩を売るというのなら相手を選べよ? 俺が持っていた槍を何処にやった?」
アルルの威圧を押し返し、こちらからも殺気を込めて威圧する。
近くに居たチェルは持っていたトレイを落とし、俺を睨みつけていたアルルも戦意喪失していた。
一息をついて、威圧を無くすと二人も同じように息を吐いている。
「それで何処にあるんだ?」
「アレならちゃんとした所にしまってあるわよ」
「この金はやるから返してもらおうか……」
「それはまだダメよ。ちゃんと傷が癒えたのなら返してあげるわ。お金もいらない」
「せめてこのぐらいなら受け取ってくれ。助けてくれてありがとう」
そう言って差し出したお金を、アルルはやれやれと言った様子で受け取った。
チェルにも迷惑をかけた分とお礼を含めて金貨を一枚だけ手渡した。
「とにかく腹が減ったんだけど……」
「後三時間は駄目ですよ。何も食べていなかったのですから……」
チェルはそう言って、袖を引っ張っていた。
断食をした後なら、そういうこともあるのだろう。チェルや親父さんはそういう事を気にしているのだろうが、俺としてはそんな事を気にする体ではない。
「そうよね。いきなり何でも、そんな体でガツガツと食べるのは良くないわよ?」
「ふ、ふざけるなよ……さっきの親父だって洗い物が終ったら飯くれるって」
「誰もあんな事をするなんて、思っていなかったですよ?」
俺はテーブルに項垂れていると、気になったのかアルルは、俺が何をしていたのかをチェルから事情を聞き出していた。
色々と文句を言われるが、頬杖をついて聞き流していた。
そんな中、店の扉が開き見知った面々が現れすぐさま顔を反転させた。
「やあ、アレス君。目が覚めたんだ」
「大丈夫だったか? アレス?」
「ひっさしっぶりー、だね?」
何でコイツラがここに……いや、ヘーバイン公爵領だからしょうがないか。
俺の偽名はなんでこうも簡単に意味を無くすんだ?
呪いなのかこれは?
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