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強者討伐 失われた武器
223 目が覚めたアレスは? 2
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ダンジョンにいた時の食事は、野菜や果物はほぼそのまま。肉は焼いて塩ばかりで流石に飽きる。
そのためちゃんとした味付けをされているだけで、こんなにも美味いとは思わなかった
元々少なかった肉は数秒でなくなり、当然足りないため腹の虫はより一層鳴り響く。
周りにいた冒険者達も、その音で笑い始める。
「やっぱり足りねぇか。ま、もう少し我慢するんだな」
「そうするよ。そうだ、これ受け取ってくれ。美味かったよ」
「なぁに、気にするこたぁねぇよ」
金を受け取らないということは、コイツは本当に善意でやったということなのか?
そういうことならありがたく受け取っておくか……さっきのやつは後で注文するか。
三皿はせめて欲しいものだ。
「おまたせしました」
「おお。待って……いたよ」
俺の前に出されたのは、野菜の入った透き通るスープだけだった。
じっとスープを見つめても何かが変わるということはない。
チェルを見るが、ニッコリと笑うだけでトレイには何も乗っていない。
「ああ、そうだよな。前菜というやつだな」
「いえ、これだけです」
まてまて、これは何の冗談なんだ?
俺の姿を見ればどんなやつかは理解できるだろ?
「何だ? 金か? これだけあれば足りるよな?」
俺はすかさず何枚もの銀貨を机の上に置いた。
チェルは持っていたトレイをブンブンと振り回している。
これだけじゃ足りないというのか?
チップとして、渡した程度では物足りないということなのか?
考えてみれば宿の代金と手当とかなら当然この程度で済む話ではないのだろう。
今度は金貨数枚を銀貨が並べられて上に追加していく。
「これならどうだ?」
何が気に入らないのか、持っていたトレイで軽く肩を叩かれる。
「あのですね。お金を払えばいいとか思っているんですか?」
「ならどうすれば……いいと言うんだ?」
「全く……貴方はもう少し、いい人だと思っていたのですが。残念です」
そう言って、また奥へと戻っていった。
置かれたスープを飲み干すが、全くもって足らない。右へ左と視線を送りまだいくつもの料理が残っている。
俺は、金貨を一枚持ち隣に居た冒険者に合図を送る。
これをやるからその料理をよこせと……目が合ったはずだと言うのに、視線を反らされ周囲には俺を見ようとするものは居なくなり、足早の店を出るものすら居る。
「本当にお願いします。腹減っているんだよ。少しぐらい分けてくれよ」
「おい、坊主! 俺の店で舐めた真似するんじゃねぇぞ!」
奥からは強面の主人が現れ、チェルが後ろにいることからして父親なのだろうか?
指を鳴らし、腕からしてもかなり鍛えているようだった。
「俺はただ、飯が欲しくてだな。頼むからなんか作ってくれよ」
「へっ、そんなに飯が食いたいのか」
俺はその言葉に何度も頷き、親父さんの手招きをしていた。
チェルからは、まずはお金をしまえと怒られるが、どうだっていい。テーブルに並べた硬貨をそのままにして親父さんと後に続いていく。
あれだけ美味い飯が食えるのなら、何処へだって行くさ。
「これは一体……」
「意外と似合いますね」
俺はエプロンと三角巾を被せられている。
そして、目の前には大量の食器が流し一杯に積まれている。
親父さんからはやれと言わんばかりに指差している。
「まずはですね……」
チェルは隣で懸命に、洗い方の説明をしている。
何よりさっきから腹を鳴らしているのになんで無視しているんだ?
腹が減っていて飯が食いたいだけだと言うのに、何でこんな事をする必要がある?
食事をするというのなら金を払えばいい。食い逃げをして掴まったわけでもなく、俺がこんな事を指示される意味が理解できない。
「いいですか?」
「なんで俺が……」
「それが、終わったら飯だ」
いや、先によこせと殺意すら覚えたが、チェルも助けてくれたことだし、とりあえずここは大人しくするしかないか。
そのためちゃんとした味付けをされているだけで、こんなにも美味いとは思わなかった
元々少なかった肉は数秒でなくなり、当然足りないため腹の虫はより一層鳴り響く。
周りにいた冒険者達も、その音で笑い始める。
「やっぱり足りねぇか。ま、もう少し我慢するんだな」
「そうするよ。そうだ、これ受け取ってくれ。美味かったよ」
「なぁに、気にするこたぁねぇよ」
金を受け取らないということは、コイツは本当に善意でやったということなのか?
そういうことならありがたく受け取っておくか……さっきのやつは後で注文するか。
三皿はせめて欲しいものだ。
「おまたせしました」
「おお。待って……いたよ」
俺の前に出されたのは、野菜の入った透き通るスープだけだった。
じっとスープを見つめても何かが変わるということはない。
チェルを見るが、ニッコリと笑うだけでトレイには何も乗っていない。
「ああ、そうだよな。前菜というやつだな」
「いえ、これだけです」
まてまて、これは何の冗談なんだ?
俺の姿を見ればどんなやつかは理解できるだろ?
「何だ? 金か? これだけあれば足りるよな?」
俺はすかさず何枚もの銀貨を机の上に置いた。
チェルは持っていたトレイをブンブンと振り回している。
これだけじゃ足りないというのか?
チップとして、渡した程度では物足りないということなのか?
考えてみれば宿の代金と手当とかなら当然この程度で済む話ではないのだろう。
今度は金貨数枚を銀貨が並べられて上に追加していく。
「これならどうだ?」
何が気に入らないのか、持っていたトレイで軽く肩を叩かれる。
「あのですね。お金を払えばいいとか思っているんですか?」
「ならどうすれば……いいと言うんだ?」
「全く……貴方はもう少し、いい人だと思っていたのですが。残念です」
そう言って、また奥へと戻っていった。
置かれたスープを飲み干すが、全くもって足らない。右へ左と視線を送りまだいくつもの料理が残っている。
俺は、金貨を一枚持ち隣に居た冒険者に合図を送る。
これをやるからその料理をよこせと……目が合ったはずだと言うのに、視線を反らされ周囲には俺を見ようとするものは居なくなり、足早の店を出るものすら居る。
「本当にお願いします。腹減っているんだよ。少しぐらい分けてくれよ」
「おい、坊主! 俺の店で舐めた真似するんじゃねぇぞ!」
奥からは強面の主人が現れ、チェルが後ろにいることからして父親なのだろうか?
指を鳴らし、腕からしてもかなり鍛えているようだった。
「俺はただ、飯が欲しくてだな。頼むからなんか作ってくれよ」
「へっ、そんなに飯が食いたいのか」
俺はその言葉に何度も頷き、親父さんの手招きをしていた。
チェルからは、まずはお金をしまえと怒られるが、どうだっていい。テーブルに並べた硬貨をそのままにして親父さんと後に続いていく。
あれだけ美味い飯が食えるのなら、何処へだって行くさ。
「これは一体……」
「意外と似合いますね」
俺はエプロンと三角巾を被せられている。
そして、目の前には大量の食器が流し一杯に積まれている。
親父さんからはやれと言わんばかりに指差している。
「まずはですね……」
チェルは隣で懸命に、洗い方の説明をしている。
何よりさっきから腹を鳴らしているのになんで無視しているんだ?
腹が減っていて飯が食いたいだけだと言うのに、何でこんな事をする必要がある?
食事をするというのなら金を払えばいい。食い逃げをして掴まったわけでもなく、俺がこんな事を指示される意味が理解できない。
「いいですか?」
「なんで俺が……」
「それが、終わったら飯だ」
いや、先によこせと殺意すら覚えたが、チェルも助けてくれたことだし、とりあえずここは大人しくするしかないか。
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