174 / 310
強者出現
173 アレスは三人に弱い 2
しおりを挟む
メアリは目を伏せ、ミーアは、身に付けているであろうあの指輪を服越しに握り締め、パメラは見るからに怒っているご様子。
それを何で姉上は言ってしまうんだよ。絶対に揉め事にしかならないことを分かって……言ったんだろうな。
「アレスさん……」
「アレス様」
「本当だ、信じてくれ。俺は本当に何もしていないんだ! 信じてくれよ! なぁ、頼むよ」
あれ? なんだろう。
これって俺の浮気がバレたことみたいになってない?
『本当だ』とか『信じてくれ』だなんて常套句にしか聞こえん。
今思えば、どっかのおっさんが、俺のことをスケコマシとか言ってたよな?
いやいや、断じて違うぞ。
しかし、何もしていないのは事実だから、どう言えばいいんだ?
「それは良かったです」
「はぁ!?」
「冗談ということも存じております。アレス様のお心があちらの方にへと傾いて居ないことが安心できたのでホッとしましたわ」
お、おう。メアリさん怖い。知っていたのに何であえて聞くんだよ。
こっちの心臓にすごく悪いんだけど!!
俺は、背中はズルズルと滑り、大きく息を吐き「よかった」と、ついでてしまった。
そんな俺を見て、クスクスと笑っている。
「な、なんだよ。何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「いえ、安心しただけです。最初にお勤めを果たすのは私ですから」
お勤めって……いや、ここで否定しようものなら余計なトラブルになりそうだな。
分かってて言ったのなら、俺を誂うことで、機嫌が治ったのか?
各々いつもの表情へと変わっている。何で笑っているのかについては、俺には何も教えて貰えず、三人だけは何か分かっているようだった。
バセルトン公爵家に辿り着くと、必要もないのにバトルアクスを持って待ち構えていた。
あのさ、そこの窓からだと俺達のことが分かるのだろうけどよ。
周りの景色を見てからにしてくれないか?
ガドール公爵は、このクソ寒いのにも関わらず、薄着でまたあの場所に立っている。
「よく戻ったな!」
「ええ、おかげさまで。姉上は無事ですよ」
「そうかそうか。お前ならやってくれると思ったぞ! ならばっ!」
おっさんが……いや、ガドール公爵はそのまま飛び降りて、ニヤッと口角を上げて歯を見せてくる。
毎回思うのだけど、一々そういう登場をしないと気がすまないのか?
俺たちを出迎えるにしても、その斧は何のために持ってきているんだ? パフォーマンスにしては酷いぞ。どうせなら雪で滑ってくれたら良いものを……。
「よく帰ってきたな。メアルーン」
「は、はい。お父様」
お父様と呼ばれて嬉しいのか、ニカッと歯を見せている。そう言えば、養子になったんだっけか。とはいえ、こんなおっさんの娘がメアリというのもいまいちピンとこない。
バセルトン公爵家。
ここはハルトだけじゃなくて、メアリの実家になっている。
メアリを俺の婚約者にまでしやがって、きっと迷惑していたんじゃないのか?
そう言えば、ハルトが言っていたけど、弟がこの爵位を継ぐということになっているだったな。
このおっさんみたいなやつだと……はっきり言って会いたくはないな。
「この度は、私の我儘を聞いて頂きありがとうございます」
深々と頭を下げているメアリの頭を、ゴツゴツとしてそうな手で撫でていた。
メアリの我儘は……聞くだけ無意味だよな。
教えてくれる気がしない。ある程度の察しはつくが、合っているというわけでもない。
「お前たちも、無事で何よりだ」
「バセルトン公爵様。誠に有難うございました」
「有難うございました」
俺の無事は心配しないんだな。
ガドール公爵は、メアリたちの肩に手を置き屋敷の中へと入っていく。
何とも腹立たしいおっさんだ。
「どうした、アレス。すぐに食事の用意をさせる」
「おおっ。ありがとうございます」
それを何で姉上は言ってしまうんだよ。絶対に揉め事にしかならないことを分かって……言ったんだろうな。
「アレスさん……」
「アレス様」
「本当だ、信じてくれ。俺は本当に何もしていないんだ! 信じてくれよ! なぁ、頼むよ」
あれ? なんだろう。
これって俺の浮気がバレたことみたいになってない?
『本当だ』とか『信じてくれ』だなんて常套句にしか聞こえん。
今思えば、どっかのおっさんが、俺のことをスケコマシとか言ってたよな?
いやいや、断じて違うぞ。
しかし、何もしていないのは事実だから、どう言えばいいんだ?
「それは良かったです」
「はぁ!?」
「冗談ということも存じております。アレス様のお心があちらの方にへと傾いて居ないことが安心できたのでホッとしましたわ」
お、おう。メアリさん怖い。知っていたのに何であえて聞くんだよ。
こっちの心臓にすごく悪いんだけど!!
俺は、背中はズルズルと滑り、大きく息を吐き「よかった」と、ついでてしまった。
そんな俺を見て、クスクスと笑っている。
「な、なんだよ。何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「いえ、安心しただけです。最初にお勤めを果たすのは私ですから」
お勤めって……いや、ここで否定しようものなら余計なトラブルになりそうだな。
分かってて言ったのなら、俺を誂うことで、機嫌が治ったのか?
各々いつもの表情へと変わっている。何で笑っているのかについては、俺には何も教えて貰えず、三人だけは何か分かっているようだった。
バセルトン公爵家に辿り着くと、必要もないのにバトルアクスを持って待ち構えていた。
あのさ、そこの窓からだと俺達のことが分かるのだろうけどよ。
周りの景色を見てからにしてくれないか?
ガドール公爵は、このクソ寒いのにも関わらず、薄着でまたあの場所に立っている。
「よく戻ったな!」
「ええ、おかげさまで。姉上は無事ですよ」
「そうかそうか。お前ならやってくれると思ったぞ! ならばっ!」
おっさんが……いや、ガドール公爵はそのまま飛び降りて、ニヤッと口角を上げて歯を見せてくる。
毎回思うのだけど、一々そういう登場をしないと気がすまないのか?
俺たちを出迎えるにしても、その斧は何のために持ってきているんだ? パフォーマンスにしては酷いぞ。どうせなら雪で滑ってくれたら良いものを……。
「よく帰ってきたな。メアルーン」
「は、はい。お父様」
お父様と呼ばれて嬉しいのか、ニカッと歯を見せている。そう言えば、養子になったんだっけか。とはいえ、こんなおっさんの娘がメアリというのもいまいちピンとこない。
バセルトン公爵家。
ここはハルトだけじゃなくて、メアリの実家になっている。
メアリを俺の婚約者にまでしやがって、きっと迷惑していたんじゃないのか?
そう言えば、ハルトが言っていたけど、弟がこの爵位を継ぐということになっているだったな。
このおっさんみたいなやつだと……はっきり言って会いたくはないな。
「この度は、私の我儘を聞いて頂きありがとうございます」
深々と頭を下げているメアリの頭を、ゴツゴツとしてそうな手で撫でていた。
メアリの我儘は……聞くだけ無意味だよな。
教えてくれる気がしない。ある程度の察しはつくが、合っているというわけでもない。
「お前たちも、無事で何よりだ」
「バセルトン公爵様。誠に有難うございました」
「有難うございました」
俺の無事は心配しないんだな。
ガドール公爵は、メアリたちの肩に手を置き屋敷の中へと入っていく。
何とも腹立たしいおっさんだ。
「どうした、アレス。すぐに食事の用意をさせる」
「おおっ。ありがとうございます」
0
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる