172 / 310
強者出現
171 姉との別れ 2
しおりを挟む
何もないのかもしれないが、何かがあってからでは遅い。
ここには俺だけでなく皆が居るのだから。
「ダインスレイブ。コイツならどうだ?」
欠片を斬るとスッと塵となって消えて無くなった。欠片が無くなったことで皆の顔が安堵している。
左手に持つダインスレイブをじっと見ていた。黒い刀身の片刃剣で背には炎のゆらめきを象っているようだ。これはこれで、十分面白い武器だ。
問題なのは、使用者のHPを奪うということだけど……試してみるしか無いよな。
「それにしても……この武器」
心をくすぐられるいい武器だよな。
一方、ドゥームブレイドはただ漆黒の真っ直ぐの両刃の剣。
具現化したことで、皆は一斉に距離をとった。
何をそんなに慌てているんだ?
「ど、どうした、アレス。まだ何かあるのか?」
「どうもしないけど。いや、かっこいいかなって。ほら、どうだ?」
二つの剣でかっこ良くポーズをとってみせたのだが、全員が壁に背を当てて逃げていた。
逃げることはないだろ?
ミーアたちですら、俺から距離を取っている。そんなにダメなのか?
そういうのは……ちょっとぐらい期待をしてなかったわけじゃないが、そこまで嫌がられるとも思わなかった。
「何をするのかと思えば、いいからその禍々しいのをしまいなさい」
そういうと、三人とも揃って首を縦に振る。侍女の二人も同じ様に何度も頷く。おかしい、ハルトがいれば分かってくれるのだろうか?
ダインスレイブは性能はともかくとして、見た目はかっこいいと思う。禍々しい辺りが。
それよりも、皆が怖がるのはこのドゥームブレイドなんだよな……具現化を解いただけで、胸をなでおろしていた。
「できればその剣は見たくはないですね」
「ええ、そのとおりですわね」
「アレス様。お体は平気なのですか?
散々な言われようだよな。
何がそんなにダメなんだよ。
それにしても、このダインスレイブ……そして、あの時聞こえた声。あの人は何を期待しているんだろうな?
『失われた武器は全部で六本ある』
それなら知っている。
これがダインスレイブであるのなら、後五本は同じような強者が持っていることぐらい。
だけど、失われた武器なんて言われるような代物じゃなかった。
『それを集めてどうかあの人を救って欲しい』
ベルフェゴルは本来ミーカトのみに出現する。それがこんな所にいるのだから、他の五本の場所も違う所にあるのだろう……それをどうやって集めろと? 出来るわけ無いだろう?
俺にはできそうにもないよな。
そんな事を言えばこの三人が黙ってはいない。
「アレス様?」
肩の怪我のこともあって、俺たちはそのまま療養を余儀なくされたのだが……姉上がやたらと唆すものだから、三人からのアプローチにより安心できる時間がない。
食事は朝昼晩と代わる代わる俺に食べせてくる。
ベッドに横になる時は、膝枕をされていたり、挙句の果てには風呂さえ入ってこようとする。
夜になれば……俺は、先に結界を張ってから寝袋で寝るようにしていた。
そんな生活が三日過ぎた。
「アレス、いつでも遊びに来ていいからね」
「うん。姉上も元気で」
レフリアたちは王都に居るため、このまま王都へ向かうことになった。
バセルトン公爵には、姉上から報告をしてくれるらしいが……とはいえ、俺たちが行かないと何を言われるかわからないしな。まあ、なんとかなるだろう。
そう言えば結局、ダンジョンを攻略できていないけど、大丈夫なのか?
強者がいないだけ、まだマシと思うしか無いよな。
「お世話になりました、お姉様」
「えっと、お姉様もお元気で」
「うん、昔は弟も可愛かったけど、今は妹達のほうが可愛いわね。皆、馬鹿な子だけどよろしくね」
間違ってはいないとは思うけど、一言余計だと思う。
義兄さんが用意してくれた馬車へ乗り込む。
そして、三人から向けられる目から逃げるように外を眺めていた。
何か企んでいたりしないか?
ここには俺だけでなく皆が居るのだから。
「ダインスレイブ。コイツならどうだ?」
欠片を斬るとスッと塵となって消えて無くなった。欠片が無くなったことで皆の顔が安堵している。
左手に持つダインスレイブをじっと見ていた。黒い刀身の片刃剣で背には炎のゆらめきを象っているようだ。これはこれで、十分面白い武器だ。
問題なのは、使用者のHPを奪うということだけど……試してみるしか無いよな。
「それにしても……この武器」
心をくすぐられるいい武器だよな。
一方、ドゥームブレイドはただ漆黒の真っ直ぐの両刃の剣。
具現化したことで、皆は一斉に距離をとった。
何をそんなに慌てているんだ?
「ど、どうした、アレス。まだ何かあるのか?」
「どうもしないけど。いや、かっこいいかなって。ほら、どうだ?」
二つの剣でかっこ良くポーズをとってみせたのだが、全員が壁に背を当てて逃げていた。
逃げることはないだろ?
ミーアたちですら、俺から距離を取っている。そんなにダメなのか?
そういうのは……ちょっとぐらい期待をしてなかったわけじゃないが、そこまで嫌がられるとも思わなかった。
「何をするのかと思えば、いいからその禍々しいのをしまいなさい」
そういうと、三人とも揃って首を縦に振る。侍女の二人も同じ様に何度も頷く。おかしい、ハルトがいれば分かってくれるのだろうか?
ダインスレイブは性能はともかくとして、見た目はかっこいいと思う。禍々しい辺りが。
それよりも、皆が怖がるのはこのドゥームブレイドなんだよな……具現化を解いただけで、胸をなでおろしていた。
「できればその剣は見たくはないですね」
「ええ、そのとおりですわね」
「アレス様。お体は平気なのですか?
散々な言われようだよな。
何がそんなにダメなんだよ。
それにしても、このダインスレイブ……そして、あの時聞こえた声。あの人は何を期待しているんだろうな?
『失われた武器は全部で六本ある』
それなら知っている。
これがダインスレイブであるのなら、後五本は同じような強者が持っていることぐらい。
だけど、失われた武器なんて言われるような代物じゃなかった。
『それを集めてどうかあの人を救って欲しい』
ベルフェゴルは本来ミーカトのみに出現する。それがこんな所にいるのだから、他の五本の場所も違う所にあるのだろう……それをどうやって集めろと? 出来るわけ無いだろう?
俺にはできそうにもないよな。
そんな事を言えばこの三人が黙ってはいない。
「アレス様?」
肩の怪我のこともあって、俺たちはそのまま療養を余儀なくされたのだが……姉上がやたらと唆すものだから、三人からのアプローチにより安心できる時間がない。
食事は朝昼晩と代わる代わる俺に食べせてくる。
ベッドに横になる時は、膝枕をされていたり、挙句の果てには風呂さえ入ってこようとする。
夜になれば……俺は、先に結界を張ってから寝袋で寝るようにしていた。
そんな生活が三日過ぎた。
「アレス、いつでも遊びに来ていいからね」
「うん。姉上も元気で」
レフリアたちは王都に居るため、このまま王都へ向かうことになった。
バセルトン公爵には、姉上から報告をしてくれるらしいが……とはいえ、俺たちが行かないと何を言われるかわからないしな。まあ、なんとかなるだろう。
そう言えば結局、ダンジョンを攻略できていないけど、大丈夫なのか?
強者がいないだけ、まだマシと思うしか無いよな。
「お世話になりました、お姉様」
「えっと、お姉様もお元気で」
「うん、昔は弟も可愛かったけど、今は妹達のほうが可愛いわね。皆、馬鹿な子だけどよろしくね」
間違ってはいないとは思うけど、一言余計だと思う。
義兄さんが用意してくれた馬車へ乗り込む。
そして、三人から向けられる目から逃げるように外を眺めていた。
何か企んでいたりしないか?
0
お気に入りに追加
555
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる