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強者出現

157 ベルフェゴル 2

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 魔法でダメなら物理で殴れって……正気かよっていいたくなる話だ。
 今の現状に置いて、アイツにダメージを与えるのなら、一度近接に持ち込んで斬りつけるか。
 それで倒せないようなら、俺の打つ手はもう無いのかもしれない。

「これが効くかどうかわからないけど。ブレイブオーラ」

 シールドもいつものではなく、更に強度の高いものへと作り変える。
 このシールドははっきり言って燃費の悪いことこの上ない。
 今までならあれでも十分だったが、アイツには出し惜しみは命取りになる。

 クリムゾンブレイド。
 灼熱の剣を具現化し、一気に距離を縮める。
 振り上げていた手を狙うことで、何かの攻撃を阻害した。

「ニンゲン?」

「切り落とせないか……」

 俺の攻撃は、少しだけ傷をつけることは出来ていた。
 このまま対峙していた所で、この距離で攻撃されるのは危険だ。
 クリムゾンブレイドの灼熱の炎は、黒い瘴気へと変わっていく……。

「別にこれだけとは限らないだろ? ドゥームブレイド!」

「ニンゲン? ハイジョ?」

 瘴気はクリムゾンブレイドの灼熱の剣から漆黒の剣へと変化する。
 いろんなゲームを参考にしたオリジナルの魔法で、破壊力も高く、具現化しているだけで消費する魔力も膨大だ。
 短期決戦型の最強の剣。

 あの上位アンデッドのダンジョンで、ようやくまともに具現化に成功しているが……強者が相手だと、維持をするというだけでも精一杯だった。

 今度は頭に狙いを定め、剣を振り上げで突進する。
 振り下ろした剣は、両腕で顔を守り右腕に大きな傷が残っていた。
 切り落とすつもりでいたのだけど、これを使ってその程度なのかよ。
 剣術は得意じゃないから剣を持って戦うのは避けたい。
 なにより、近距離は危険すぎる。

「イタイ? イタイ?」

「の飛んでいけ、は勘弁してくれよ」

 ドゥームブレイドを止め、自前の剣を抜き魔力を流して、そのまま剣を魔力糸を繋げて吹き飛ばす。
 腹に突き刺さり、剣を手元まで引き寄せた。この剣が折られると兄上に怒られるからな。
 収納からダガーや剣等を取り出して、同じように次々と攻撃を繰り出す。多少の怯みがあったため、距離を取りつつ攻撃を繰り出していく。

「イタイ? ニンゲン?」

「人間、排除に痛いって、他に言えることはねぇのか!」

「チカラ? ツヨイ?」

「はいはい、強いよお前……というか、馬鹿にしているのか?」

 一体何のことを言っている……さて、そろそろ階段があっても良いのだが、右肩がそろそろ限界だ。
 こんなことなら一つぐらいはポーション残しておくんだった。あとは何が使える?
 くそっ、また棘の攻撃か!?

「氷の壁、五重壁!」

 氷の壁を作りつつ距離をとるが……二枚を残しなんとか耐えることが出来たのだが、このままじゃ埒が明かない。
 これだけ離れると、アイツの姿は見えなくなってしまう。

 それにアイツは、スウォークまで行ってたらそこそこ戦える相手なんだぞ? 変な所を修正するなよ。
 攻撃回数が少ないのが有り難いが、こっちの攻撃も有効なものがない。
 あるのはどうやら物理だけのようだが……さっきの武器は壁を作ったことで魔力糸が切れている。

「やっぱ物理か……あんな攻撃を前にして物理なんて無理ゲーだろ。いくら兄上でも……いや、どうなんだろうな?」

 剣が効く相手なら、兄上の方が強いんじゃないのか?
 ただ、条件としては、アイツの攻撃を全て回避できるのならという話だ。
 あの無数の攻撃を至近距離だったら、俺のシールドもどうなるかわからない。
 肩の怪我を考えると、この程度で済んでいるだけマシというものだ。

「動きは遅い。これならどうだ! サンダーストーム・レイジング!」

 あのダークリッチに使った魔法。
 この魔法ならある程度のダメージは期待できるよな?

「チカラ? ニンゲン? ハイジョ?」

 夥しい数の雷撃を浴び続けているにも関わらず、アイツは怯むこと無くこちらへと同じ速度で歩いてきている。

「じょ、冗談だろ?」

 再び手を振り上げると、さっきの魔法を撃つつもりだろうか。
 今いる所は直線の道だから、くそっ、逃げ場なしか!
 さっきの仕返しのつもりかよ!

 これで、防ぎきれるのか?
 氷の五重壁を展開させるが、アイツが薙ぎ払った衝撃に壁は耐えきれず砕かれる。
 いくら弱まった衝撃とはいえ、シールドさえも貫かれ俺は吹き飛ばされてしまう。
 自慢の体には幾つもの切り傷を負い、地面に背中を殴打する。

「ぐっ。この程度でよく済んだほうだな……こんなやつ、勝てる気がしねぇ」
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