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ラカトリア学園 高等部

108 ルーヴィア令嬢 2

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「ルドラ・ルーヴィアと申します。アレス・ローバン殿とお見受けします。ですか、娘とはそれなりに仲が良いと聞かされておりましたが……これは一体どういうことでしょうか?」

「どういうこと? なら、タシムドリアン。ベセリーア、ミケントあれは一体どういうつもりだ?」

「報告は本当だったのですな……感謝申し上げたいところですが、私にはその資格すらないのでしょう」

 報告が来ていたにも関わらず、俺が出向いたというのにここで座っていたのか。

「民を苦しめ、何を考えている?」

 子爵は眉をひそめ、机を拳で叩いていた。
 俺にその真実を知られたことによる怒りだというのか?
 それとも、俺のような小汚い子供に、窮地に追い込まれたことによるものか?

「ダンジョンを暴走させ、あの街を滅ぼしてどうなる? それが貴族のすることか?」

「まさか……そのようなことが……」

「ダンジョンに私兵を置き、封鎖をする行為は未開拓だけに限られているのは、当然知っているよな? そして、あの街に対し重税をかけ、略奪さえ行っている。こんな事が本気で許されると思っているのか?」

 それだけの事をしてきたのだから、それはレフリアに対しても同じだ。知らなかっただけではもはや済まされない所まで来ている。
 子爵は涙を流し、何度も誰に向けたのかもわからない謝罪を繰り返していた。

「泣いてどうなる。ふざけるなよ! あの街をお前はその目で何を見ていたというんだ! 多くの者が生きる気力を失い、ダンジョンは暴走の寸前まで追い込み、どれだけの絶望を味合わせれば気が済むんだ!」

 子爵の胸ぐらを掴み上げ、そのまま壁にへと投げつける。
 殺したい、今すぐにでも殺してやりたい。だが、俺にこいつを殺す権限はない……少しでも気を紛らわせるため、風で窓を吹き飛ばした。
 レフリアが駆けつけたが、今の惨状を見てドアの縁を掴みなんとか立てている様子だ。
 だが、俺と目が合うと力なくへたり込んでいる。

「ルーヴィア子爵。ロンダリア伯爵、そして、バセルトン公爵家。俺はお前達を王国への反逆として父上に報告させてもらう」

「かしこまりました。ですが一つだけ、レフリアとハルト君をこの二人だけは助けて欲しい。どうか……」

 額を床に擦り付け、俺に懇願していた。娘のレフリアは分かる話だが、しかしなぜハルトまで?
 この二人に一体何が?
 こいつを信用することはできそうにもない……。

「それを決めるのは俺ではない。それは分かるよな?」

「分かっております。ですが、ローバン公爵様にお願いしたく思います」

「くっ……アレス! お父様が一体何をしたというの!」

「レフリア、やめろ! やめなさい……」

 レフリアは俺と目が会うと一瞬たじろぎはしたが、それでも服を掴み子爵から遠ざけようと引っ張る。
 レフリアの腕を掴み、服から手を退かせる。無理やり掴んだことで顔を歪めているが、それでも片方の手を離そうとはしなかった。

「俺は今からローバンへと戻る。だがすぐに戻ってくる逃げるなよ?」

 ここに居るだけで、俺はこれ以上本当に抑えが効かない。
 庭や門を破壊し、屋敷の壁にも大きな穴を開けようとも、憎悪が膨らむだけでしか無かった。

「待ちなさい。一体何があったの?」

 部屋から出ていくが、レフリアは俺の前に立ちふさがる。
 そのまま歩き、腹の肉が触れようとも逃げることはなかった。

「聞きたいのか? 自分の愚かさに絶望することになるぞ? お前がお前自身に失望すらするかもしれないぞ?」

「アンタは突き放すくせに、肝心な所はそうやって守ろうとする。私が自分の愚かさに絶望する? 今のアンタがなんでそんな事を気にするの? アンタは何時まで自分を犠牲にするつもりなの!」

 余計なことを喋ったか……。
 いくら気丈なレフリアとは言え、あんな事を伝えたいとは思わない。
 心の何処かでは、こいつはそういう人間でないと信じたいからだ。
 それは結果だけでも良かった、あえて知らせる必要があるのか?
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