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ラカトリア学園 高等部

99 スォークラン再び 2

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 屋敷の近くに出現した、一度も探索をされていない未知ダンジョンであれば兎も角、こんな横暴は例え公爵家であろうとも、処罰の対象になりかねない。
 ここの領主にどんな理由があるのか知らないが、俺も公爵家の末席にいるのだから見過ごすことは出来ない。

「どういうつもりなんだ。この辺りの領主は誰だ?」

「答えるつもりはない」

「話にならない。抵抗するのであれば力づくでも通るぞ! 覚悟は出来ているんだろうな?」

 氷の大剣を作り出し、その剣先を三人の兵士へと向けた。
 相手も持っていた剣を抜き構えたが、こうなることを想定していなかったのか、かなり怯え剣先が震えていた。

 わざわざ私兵まで使って、しかもこの対応とはな……冒険者達にも同じような対応をするつもりなのか?
 だとしたらそれは、紛れもなく王国に対しての反逆だ。

「こんな事をするなんて、全く何がどうなっているんだか」

 エアスラッシュを放ち、周辺にあった木を粉砕させた。
 その光景を見た兵士たちはガタガタと震えだし、氷の剣で兵士たちが構えている剣を両断する。折れた剣を捨て全員頭を抱えただ震えていた。
 ここまでする必要は無いとは思うが、こんな命令に従っている時点で救いようすら感じない。

「答えろ。これは誰の命令だ?」

「い、命だけは。命だけは」

「質問に答えろ。誰がこんな命令をした?」

「ロンダリア伯爵様です」

 ロンダリア? なるほど……誰かすら分からない。
 しかし、伯爵がこんな事を?

「他のダンジョンにも配置しているのか?」

「はい。そうです」

 はい、そうですって。ロンダリア伯爵、まさか子爵や男爵はこんなのに賛同しているというのか?
 ここの公爵は……誰だっけ? ゲームでのダンジョンのことならある程度は覚えているけど、こっちに来てからはローバン以外のことは深く考えたこともなかったな。
 しかし、爵位が相手なら俺がどうこう出来ない。

 ここを終わらせたら父上に報告する必要があるな。両親からの小言はあまり聞きたくもないんだけどな。そうも言ってられないか……実家に帰る前にやることは山積みになっていくな。

「俺はダンジョンに入る。お前達は報告するのなら好きにしろ」

「ひっ……」

「だが、その先、お前達がどうなるかまでは知らないがな」

 さて、一悶着はあったが、久しぶりとは言えまだ一ヶ月も経っていないんだよな。
 やれやれ、放置は継続か……あのまま二いや、半年もあれば確実に暴走していたかもしれないな。
 索敵を展開するが、残っている魔物の数はでたらめな数というわけでもない。
 こんな状況を放置して、街ですらあの有様。
 ロンダリア伯爵、他のダンジョンにも同じようにしているのなら裏は何かがあるんだろう。

「ぐおおっ」

「はいはい。今回はあまり相手をしてやるつもりはないぞ」

 風魔法を使い、近くにいる魔物をすべて倒していく。
 倒せば倒すだけ、ギルドから報酬の額は増えるが今はそれを気にしている余裕はない。
 タシムドリアンの現状は、見るからに危険だ。

「バーストロンド!」

 大爆発に巻き込まれ魔物を一掃するが、その音に反応する魔物もそれほど多くはない。
 ここのダンジョンの危機レベルは、かなり下がっているのかもしれない。

 ダンジョンで過ごしていくうちにある程度のことは理解している。
 魔物はある一定時間が経過することで、魔物が出現していく。
 その数には限度というものがあって、そこから魔物が増えるにはかなりの時間が必要となってくる。

「二階層も、この程度か……」

 索敵で頭を狂わされるほどの数がいた場合。
 魔物の反応力が飛躍的に上がるのか、かなりの数がこちらへと向かってくる。
 あのバーストロンドを使ったときがいい例だった。

「どうせ同じだと思うけど……バーストロンド!」

 ここでは、その反応が確実に薄くなっている。
 奥の方では、魔物の出現の確認も把握できる。
 だから……ここを放置して他に行くべきか、突き進むべきかを迷っていた。
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