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転生した異世界の生活
18 婚約者は早くないですか? 2
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「あれ、ここは……そうでした。王都へと行く途中で……きゃっ」
「ううん? 誰?」
「あ、あの……ミーアです」
「ミーア? えーと……うわっああ」
俺は飛び起き、ベッドから飛び出した。ミーアは恥ずかしそうに、布団で体を隠している。
そんな仕草もかわいいっじゃなくて。俺寝てた? 一緒に?
俺の声が聞こえたからなのか、後ろの扉は開かれると、困った顔をしている父上と俺を睨みつける男の姿があった。
「やぁ、おはようアレス君」
「お、おはようございます」
「ミーアが世話になったね。私は、クーバル・シルラーン。君の隣に寝ていたミーアの父だ」
俺の前に腰をかがめると、ガッチリと両肩を捕まれ親指が食い込んでいた。
目を見開いたまま、鼻が当たりそうなほど近い近い、肩が砕ける。
しかし、ここで痛いとか言えば何されるかもわからない。
「ミーア。無事で良かった」
「お、お父様」
さっきまでとは違い、とても優しい顔をしていた……が、俺をまた見ると顔つきが変わる。
こ、殺されるんじゃないのかな?
「私は! このアレス! 君と、少し話が! あるので失礼するよ」
「は、はい。アレス様。ありがとうございました」
「いえ……いだっ」
俺は、肩を掴まれたまま持ち上げられ、荷物のように脇に挟まれた。
抵抗もなくじっとしていると、ソファへ降ろされる。
開放されたのも束の間で、さっきよりも少しは離れているが、クーバルさんは眉間にシワを寄せじっと睨みつけている。
視線をずらしても態々俺の前まで顔を近づけてくる。
「クーバル。私の息子が怯えているじゃないか」
「大丈夫だ。殺そうかどうしようか迷っているところだ、気にするな」
わ、笑えねぇ……
俺は何もしていない、何もしていないよと言いたい。
怖くて声も出ないけど……
「それこそ大問題になるからね。それよりもアレス、昨日はお手柄だったね。私も父親として嬉しいよ」
「い、いえ。僕はただ……」
「ただ、何かね?」
一々突っかからないでくれよ。
父上の前で殺すとか何考えているんだこの人は……ミーアの父親らしいのだけど、きっと母親に似たんだろうな。
「彼は、シルラーン伯爵家当主、クーバル・シルラーン。古い私の友人でもあるんだよ」
「はじめまして、アレス・ローバンです。ミーアのお父さんですよね」
「そうだよ。ほらクーバル。いつまでもそんな事をしてないで、アレスにお礼を言うんだね」
ようやく対面のソファへと腰を下ろしてくれた。
俺はほっと胸を撫で下ろすことが出来た。
「アレス君。ミーアを助けてくれたことは感謝している……ありがとう」
「偶然居合わせただけですが、無事助け出せてよかったです」
「無事だと? ミーアを傷物にしておいて無事だと?」
傷物……? 何処か怪我をしていたというのだろうか?
「嫁入り前の娘と閨を共にしておいて、無事だと言い張るつもりか?」
「ち、父上」
「ミーアを助けたまでなら、私も褒められるのだがね。まさか、一緒に同じベッドで寝るなんてね。君はどう責任を取るつもりなのかな?」
一緒って……俺も疲れていたからつい手を握っている間に……
子供が一緒に寝るぐらい、一体何の問題になるんだ?
「僕は決して疚しいことなんてしません」
「つまり、アレスくん。君は、ミーアが婚約者だと不服というわけか?」
「責任をとって結婚するのが妥当だよね」
まってまって。おかしくない? その話の飛び方は!
「結婚!? いくら何でも話が飛びすぎていて……ですが、責任を取れと仰るのであれば従います」
貴族ならこういう所はしっかりと守らなければいけない。
何もなかったにしても、何もしていないは通用しないのだろう。
だとしても……こんな子供に婚約者をあてがうのもどうかと思うのだけど?
「手を握る以外何もしておりませんが、このことで責任を取れというのなら取ります。ですが、ミーアが納得しないのであればこの話はなかったことにして頂きたく思います」
そう言うと、二人は目を合わせ二人して吹き出すように笑っていた。
一頻り笑った後、二人は別の所を見ていた。その視線を追っていくと、部屋の入口には頬を赤くしたミーアの姿があった。
「ということだが、ミーア。お前はどう思う……」
「これは、聞くまでもなさそうだね」
二人に言い寄られミーアは、耳まで真赤にして恥ずかしそうに俺をチラチラと見ていた。
何度目かには俺とバッチリ目が合い、一歩後ろへと下がられてしまう。
「ミーア。えっと……」
「末永く、よろしくお願いします。アレス様」
そう言い残して、ミーアは何処かへ走り出していった。
「ミーアのことよろしく頼んだぞ。アレス、いや、我が息子よ」
魔獣の件は別として……クーバルさんはがははと嬉しそうに笑っている。父上も嬉しそうに笑っている。
この脅しは二人によって仕組まれていたのではないのだろうか?
「ううん? 誰?」
「あ、あの……ミーアです」
「ミーア? えーと……うわっああ」
俺は飛び起き、ベッドから飛び出した。ミーアは恥ずかしそうに、布団で体を隠している。
そんな仕草もかわいいっじゃなくて。俺寝てた? 一緒に?
俺の声が聞こえたからなのか、後ろの扉は開かれると、困った顔をしている父上と俺を睨みつける男の姿があった。
「やぁ、おはようアレス君」
「お、おはようございます」
「ミーアが世話になったね。私は、クーバル・シルラーン。君の隣に寝ていたミーアの父だ」
俺の前に腰をかがめると、ガッチリと両肩を捕まれ親指が食い込んでいた。
目を見開いたまま、鼻が当たりそうなほど近い近い、肩が砕ける。
しかし、ここで痛いとか言えば何されるかもわからない。
「ミーア。無事で良かった」
「お、お父様」
さっきまでとは違い、とても優しい顔をしていた……が、俺をまた見ると顔つきが変わる。
こ、殺されるんじゃないのかな?
「私は! このアレス! 君と、少し話が! あるので失礼するよ」
「は、はい。アレス様。ありがとうございました」
「いえ……いだっ」
俺は、肩を掴まれたまま持ち上げられ、荷物のように脇に挟まれた。
抵抗もなくじっとしていると、ソファへ降ろされる。
開放されたのも束の間で、さっきよりも少しは離れているが、クーバルさんは眉間にシワを寄せじっと睨みつけている。
視線をずらしても態々俺の前まで顔を近づけてくる。
「クーバル。私の息子が怯えているじゃないか」
「大丈夫だ。殺そうかどうしようか迷っているところだ、気にするな」
わ、笑えねぇ……
俺は何もしていない、何もしていないよと言いたい。
怖くて声も出ないけど……
「それこそ大問題になるからね。それよりもアレス、昨日はお手柄だったね。私も父親として嬉しいよ」
「い、いえ。僕はただ……」
「ただ、何かね?」
一々突っかからないでくれよ。
父上の前で殺すとか何考えているんだこの人は……ミーアの父親らしいのだけど、きっと母親に似たんだろうな。
「彼は、シルラーン伯爵家当主、クーバル・シルラーン。古い私の友人でもあるんだよ」
「はじめまして、アレス・ローバンです。ミーアのお父さんですよね」
「そうだよ。ほらクーバル。いつまでもそんな事をしてないで、アレスにお礼を言うんだね」
ようやく対面のソファへと腰を下ろしてくれた。
俺はほっと胸を撫で下ろすことが出来た。
「アレス君。ミーアを助けてくれたことは感謝している……ありがとう」
「偶然居合わせただけですが、無事助け出せてよかったです」
「無事だと? ミーアを傷物にしておいて無事だと?」
傷物……? 何処か怪我をしていたというのだろうか?
「嫁入り前の娘と閨を共にしておいて、無事だと言い張るつもりか?」
「ち、父上」
「ミーアを助けたまでなら、私も褒められるのだがね。まさか、一緒に同じベッドで寝るなんてね。君はどう責任を取るつもりなのかな?」
一緒って……俺も疲れていたからつい手を握っている間に……
子供が一緒に寝るぐらい、一体何の問題になるんだ?
「僕は決して疚しいことなんてしません」
「つまり、アレスくん。君は、ミーアが婚約者だと不服というわけか?」
「責任をとって結婚するのが妥当だよね」
まってまって。おかしくない? その話の飛び方は!
「結婚!? いくら何でも話が飛びすぎていて……ですが、責任を取れと仰るのであれば従います」
貴族ならこういう所はしっかりと守らなければいけない。
何もなかったにしても、何もしていないは通用しないのだろう。
だとしても……こんな子供に婚約者をあてがうのもどうかと思うのだけど?
「手を握る以外何もしておりませんが、このことで責任を取れというのなら取ります。ですが、ミーアが納得しないのであればこの話はなかったことにして頂きたく思います」
そう言うと、二人は目を合わせ二人して吹き出すように笑っていた。
一頻り笑った後、二人は別の所を見ていた。その視線を追っていくと、部屋の入口には頬を赤くしたミーアの姿があった。
「ということだが、ミーア。お前はどう思う……」
「これは、聞くまでもなさそうだね」
二人に言い寄られミーアは、耳まで真赤にして恥ずかしそうに俺をチラチラと見ていた。
何度目かには俺とバッチリ目が合い、一歩後ろへと下がられてしまう。
「ミーア。えっと……」
「末永く、よろしくお願いします。アレス様」
そう言い残して、ミーアは何処かへ走り出していった。
「ミーアのことよろしく頼んだぞ。アレス、いや、我が息子よ」
魔獣の件は別として……クーバルさんはがははと嬉しそうに笑っている。父上も嬉しそうに笑っている。
この脅しは二人によって仕組まれていたのではないのだろうか?
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