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聖女編

204 お嬢様とリンド達

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「いくつか方法はあるとは思うけど……その前に少し聞きたいことがあるのよ」

 正直に言ってそんな方法があるのなら私が聞きたい。
 居場所も今何をしているのかもわからないあの三人をどうやって誘き出すっていうのよ。
 ギルドを使って誘い出そうにも、ギルドに行っているとは限らないでしょ!
 だいたい、好き勝手にさせていたのは私だ。
 彼らは主に魔物の討伐。貴重になる素材になりえそうなものが主となっている。それを未だ実行しているのなら、ギルドに顔を出すのかもと考えたのだけど……

「お聞きしたいとは、どのようなことですか?」

 リンドたちの動向は不明だけど、セラフィを助けることになったのかということよね。
 どこかでの情報を知りえた?
 そんな物はギルドの当然出回るはずがない。それともただの偶然によるものか?
 だとするのなら、助けたからと言ってわざわざ私の名前を出す必要があるの?

 ランドならともかく、リンドの場合なら無言で立ち去ってもおかしくはないわね。

「セラフィ。貴方が拉致をされていた期間どれぐらいなの? そして、その話は何時頃になるのかしら? あと、その情報は何処かから漏れたという話は?」

「捕らえられていたのは二日ほどになります。今から大体四ヵ月程前ですね。リンド様が仰るにはたまたま私を助けに来たと、お父様や屋敷にいた者以外で情報が漏れたというのも考えにくいです。その様な事実が知れ渡れば……」

 セラフィが連れ去られて二日。予想以上に早いわね……それに四ヵ月も前なら今もそこの地域にいるとは考えにくいわね。
 流石に情報が漏れようものなら、公爵家としても面目が潰れかねないよね。
 なら、セラフィの言うように、ただ捕まっている人を助け出しているというのなら、何かしらの組織を探っていたということも……まだそれらを追っていたのなら、まだ居るのかも?

 今はその事を考えるよりも、セラフィがリンドたちを探している。
 それにしても、思いつくことはあっても、かなり危険な話よね。
 背もたれに頭を載せて天井を見上げていた。

「イクミ様?」

「大体の話はわかったけど、正直どうしたものかってところね。例えばだけど、私をクロセイル家が拉致したという情報を流せば、リンドたちがやってくるかも知れない」

「それはあまり良くない方法ですね」

 そんな情報を流した場合、ソルティアーノ家に対して先に根回しも必要になるし……そんな事よりも、セラフィを助けるために、リンドたちは容赦なくその連中を皆殺しにしている。
 リンドたちを誘い出すために、余計に犠牲者は出すわけにもいかない。

「リンド達と連絡を取れる手段は残しておくべきだったわね」

 セラフィは肩を落として顔を覆っていた。
 そんなにも思いつめていたのね。リンドに直接お礼を言いたかったのだろう。
 なんとかしてあげたいところだけど……私にできることはあまりないわね。

「イクミ殿。少しよろしいですか?」

「どうしたの?」

「リンド達を探すのであれば、なんとかできるかも知れません」

 ルキアの言葉にセラフィは慌てて詰め寄っている。
 彼女がすがりつこうにも、そう簡単にルキアが捕まるはずもなく、私の後ろに立っていた。
 クレアといい勝負しているのかも取れないわね。獲物を狙う肉食動物みたいね。

「セラフィ。落ち着きなさい、ルキアそれはどういう事なのかしら?」

「イクミ殿も知っているとは思いますが、あの者たちにクレスが同行しています。であれば、魔法を使って位置を探すことも可能です」

 そうか、忘れていたけど子供の頃のティアとクレスはルキアの弟子だった。それで何かしらの方法で探すことが可能というわけね。 
 私が詳しく聞いた所で理解は難しそうね。

「リンド達と同行していないにしろ、クレスを探してきなさい。私は、数日後にセラフィと一緒にクロセイル公爵家に行く。セラフィもそれでいいわね?」

「はい。私は構いません」

「そう。先に言っておくけど、この話は確実ではないこと。リンドと同行している可能性があるということだけは忘れないで」

 ティアと同じように、今は離れている可能性は当然ある。
 クレスが何でティアと離れてまでリンドたちに付いて行ったのか分からないのだけど。うまく行けば、セラフィ……いや、クロセイルにとっては恩を返せる話になりそうね。

「リンドたちもいたら必ずつれてきなさい」 

「了解しました。では、イクミ殿の護衛は、クロとチロに任せます」

「ええ、分かったわ」

 あれ? ティアがいないのはどうせ連れて行くからなんだろうけど、チロってあのチロ?
 でもまあ、黒のなんたらという暗殺集団を壊滅させたわけだから、問題はないわよね?

「ルキア様。どうか、よろしくお願い申し上げます」

「かしこまりました。では、イクミ殿、私はこれで」

「ええ、気をつけてね」

 セラフィは執務室から出ていき、私はテラスから月を眺めていた。
 クロセイルに行くとは言ったけど……学園は、まあ大丈夫でしょうね。
 そんな事よりも、クレアたちに話が伝わってないといいわね。こればかりは、メルに期待をするしか無いわね。
 
 少しの不安を覚えつつも、クロセイルという場所の興味も出ていた。

「それは師匠が一人で行けば、何で! 今からなんですかーーーーーーーー!!」

 ふと、何処か聞き覚えのあるエルフの少女が、奇声のような悲鳴を上げる、そんな幻聴が聞こえた気がした。
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