183 / 222
聖女編
183 お嬢様の活躍
しおりを挟む
冒険部隊はダンジョンの探索も終わっているから、警護のために一部隊を戻しているから、そのままここに居させても大丈夫かしらね。
しかし、どうせ戻すというのなら適任はバナン達よね……絶対に納得はしないだろうけど。
「お嬢様。何をお考えなのですか?」
「メルが聖女だった時のことよ。それで、この屋敷に住まわせれるのなら安全かなと思っただけ」
「そうですね。それは一理あります。であれば、部隊をこのままに?」
「そのつもりだけど……適任はバナンと思っているのだけどね」
戻すのは一部隊でいい。バナンをとなると、ドゥルグも一緒になる可能性がある。それでは数が多すぎる。この辺りには隣接する家もあるから、数が多いと見張りの数も増やせるだろうし問題もない。
しかし、ただでさえ要塞とまで言われているこの屋敷に、それだけの人数が並んでいるとしたら近所迷惑だよね。
いや、寄り付かないことは良いことなんだろうけど……私は精神的に辛いわよ。
「本当に聖女であれば、グセナーレ家として総力を上げることに何ら問題はないかと思われます」
「言いたいことは分かっているわよ。ここの部隊は私に対しての扱いがね」
「ああ、お察しします」
バナンとドゥルグを筆頭に、私に対しての崇拝度が群を抜いているのよね。隊長自ら、私のためにと遠征してまで進んで魔物の討伐へと向かい、私の安全のためだけに何でも尽くしてくれる。
昔に比べて、部隊の中で最強と言っても過言ではない。
また、上級冒険者ですらバナンの率いる私の奴隷たちに恐れをなしてしまっている。バナンとドゥルグの二部隊は合わせて四十人近くはいる。
その奴隷たちでさえ、上級冒険者が苦戦する魔物を難なく倒してしまうものだから。
奴隷に助けられた冒険者たちは、肩身の狭い思いをさせてしまったという話もあるぐらいだ。
そんな化け物じみた皆だけど、私を崇拝しているものだから……何をしてもヨイショしてくるのよね。
聖女のことを考えたら、私の我儘を言ってもしょうがないわよね。
あの本に書かれている内容が正しいのなら、聖女の力というものは、聖女の願いそのものなのかもしれない。
傷を治したことも、国を一つ滅ばしたのも、彼女たちの意思で決まっているのかもしれないわね。メルが何を思うかによって、どんな聖女になるのか……そして、私に守れるのだろうか?
「そもそも……聖女をここに招き入れていいものだろうか?」
聖女となったメルは……いや、メルティアは何を願っていたのだろう?
クレア達の話からだと、そういった描写は誰かを助けるために使われている。しかし、全ていい話というわけでもないのかもしれない。ゲームだとしても、ゲームだからこそ、バッドエンドも用意されているはずだ。
ゲームのタイトルは『エンドレスワルツ』だったかしら?
果てしない……ワルツはダンスのワルツでいいの?
「い、いや……これはあくまでもゲームのタイトルなのよね?」
なら私に一体何が出来るのだろうか?
本当に守れるというの?
私は急激な不安にかられてしまった。そんな事を考えていたとしたら、その製作者の異常者でしか無いわよ?
* * *
「お姉さま。こうしてイクミ様のお屋敷で一緒に過ごすのも、なんだか懐かしく感じますね」
二人が始めて泊まった日から、この部屋は二人のために用意されている。
何度もこの屋敷に泊まるものの、最近では並べられた二つのベッドに一人で眠る。
隣にメルティアが居ることで、クレアは自然と笑みが溢れる。
「そうね……クレアは不安じゃないの?」
「聖女のことですか? 私は何も、不安に思っていません。だって、聖女はお姉さまですから」
クレアの言葉に、メルティアは困った顔をしていた。
ゲームを何度もプレイし、聖女として認定されたことで始まる物語の中心に、メルティア・レイネフォンがいる。
ヒロインが選ぶ選択肢により、物語は変化を繰り返していく。
しかし、その物語は全て用意されたものであって、今のような自由なものではない。
バッドエンドは、誰とも結ばれることがなく、一人国のための聖女となり過ごしていく。
クレアの様子を見ていたメルティアは、あの話を見ていないのだろうかと悩んでいた。最悪のバッドエンド……破滅の聖女の話を。
しかし、メルティアはゲームとは全く関係のないジェドルトとの婚約者となり、今はあのクレアローズとともに夜を過ごしている。
この世界で用意されていたゲームのイベントの数々。設定ですら、今となっては少しだけしか残されていない。そんな状況へと変わってしまったは、その設定をことの如くイクミが崩壊へと導いている。
ダンジョンから魔物たちの大量出現。
黒の狼による聖女暗殺。
攻略者であるマガーレン伯爵領の没落。
各地に広がる魔物の襲撃によって領地の疲弊。
魔石の大量売却、魔法石や遊具による経済の活性。
イクミ・グセナーレ。
登場しないキャラでありながらも、彼女の持つその力は聖女ですら足元にも及ばないほど強大なものになっている。
何より前国王の養子となって、現国王も承知している。事実上、王妹殿下であるイクミにはその事実を知らされてはいない。
何故そんな事になっているのか、メルティアは疑問に思っていた。
しかし、どうせ戻すというのなら適任はバナン達よね……絶対に納得はしないだろうけど。
「お嬢様。何をお考えなのですか?」
「メルが聖女だった時のことよ。それで、この屋敷に住まわせれるのなら安全かなと思っただけ」
「そうですね。それは一理あります。であれば、部隊をこのままに?」
「そのつもりだけど……適任はバナンと思っているのだけどね」
戻すのは一部隊でいい。バナンをとなると、ドゥルグも一緒になる可能性がある。それでは数が多すぎる。この辺りには隣接する家もあるから、数が多いと見張りの数も増やせるだろうし問題もない。
しかし、ただでさえ要塞とまで言われているこの屋敷に、それだけの人数が並んでいるとしたら近所迷惑だよね。
いや、寄り付かないことは良いことなんだろうけど……私は精神的に辛いわよ。
「本当に聖女であれば、グセナーレ家として総力を上げることに何ら問題はないかと思われます」
「言いたいことは分かっているわよ。ここの部隊は私に対しての扱いがね」
「ああ、お察しします」
バナンとドゥルグを筆頭に、私に対しての崇拝度が群を抜いているのよね。隊長自ら、私のためにと遠征してまで進んで魔物の討伐へと向かい、私の安全のためだけに何でも尽くしてくれる。
昔に比べて、部隊の中で最強と言っても過言ではない。
また、上級冒険者ですらバナンの率いる私の奴隷たちに恐れをなしてしまっている。バナンとドゥルグの二部隊は合わせて四十人近くはいる。
その奴隷たちでさえ、上級冒険者が苦戦する魔物を難なく倒してしまうものだから。
奴隷に助けられた冒険者たちは、肩身の狭い思いをさせてしまったという話もあるぐらいだ。
そんな化け物じみた皆だけど、私を崇拝しているものだから……何をしてもヨイショしてくるのよね。
聖女のことを考えたら、私の我儘を言ってもしょうがないわよね。
あの本に書かれている内容が正しいのなら、聖女の力というものは、聖女の願いそのものなのかもしれない。
傷を治したことも、国を一つ滅ばしたのも、彼女たちの意思で決まっているのかもしれないわね。メルが何を思うかによって、どんな聖女になるのか……そして、私に守れるのだろうか?
「そもそも……聖女をここに招き入れていいものだろうか?」
聖女となったメルは……いや、メルティアは何を願っていたのだろう?
クレア達の話からだと、そういった描写は誰かを助けるために使われている。しかし、全ていい話というわけでもないのかもしれない。ゲームだとしても、ゲームだからこそ、バッドエンドも用意されているはずだ。
ゲームのタイトルは『エンドレスワルツ』だったかしら?
果てしない……ワルツはダンスのワルツでいいの?
「い、いや……これはあくまでもゲームのタイトルなのよね?」
なら私に一体何が出来るのだろうか?
本当に守れるというの?
私は急激な不安にかられてしまった。そんな事を考えていたとしたら、その製作者の異常者でしか無いわよ?
* * *
「お姉さま。こうしてイクミ様のお屋敷で一緒に過ごすのも、なんだか懐かしく感じますね」
二人が始めて泊まった日から、この部屋は二人のために用意されている。
何度もこの屋敷に泊まるものの、最近では並べられた二つのベッドに一人で眠る。
隣にメルティアが居ることで、クレアは自然と笑みが溢れる。
「そうね……クレアは不安じゃないの?」
「聖女のことですか? 私は何も、不安に思っていません。だって、聖女はお姉さまですから」
クレアの言葉に、メルティアは困った顔をしていた。
ゲームを何度もプレイし、聖女として認定されたことで始まる物語の中心に、メルティア・レイネフォンがいる。
ヒロインが選ぶ選択肢により、物語は変化を繰り返していく。
しかし、その物語は全て用意されたものであって、今のような自由なものではない。
バッドエンドは、誰とも結ばれることがなく、一人国のための聖女となり過ごしていく。
クレアの様子を見ていたメルティアは、あの話を見ていないのだろうかと悩んでいた。最悪のバッドエンド……破滅の聖女の話を。
しかし、メルティアはゲームとは全く関係のないジェドルトとの婚約者となり、今はあのクレアローズとともに夜を過ごしている。
この世界で用意されていたゲームのイベントの数々。設定ですら、今となっては少しだけしか残されていない。そんな状況へと変わってしまったは、その設定をことの如くイクミが崩壊へと導いている。
ダンジョンから魔物たちの大量出現。
黒の狼による聖女暗殺。
攻略者であるマガーレン伯爵領の没落。
各地に広がる魔物の襲撃によって領地の疲弊。
魔石の大量売却、魔法石や遊具による経済の活性。
イクミ・グセナーレ。
登場しないキャラでありながらも、彼女の持つその力は聖女ですら足元にも及ばないほど強大なものになっている。
何より前国王の養子となって、現国王も承知している。事実上、王妹殿下であるイクミにはその事実を知らされてはいない。
何故そんな事になっているのか、メルティアは疑問に思っていた。
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
異世界でもプログラム
北きつね
ファンタジー
俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。
とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。
火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。
転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。
魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる!
---
こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。
彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。
注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。
実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。
第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる