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聖女編
176 お嬢様はもうすぐ二年生
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後二週間もすれば、二年生として学園に行くことになるのだけど……相変わらず私の成績で特待生が守られているのは不思議な話だ。
揉める要素の多い私を、隔離している可能性もある。それが必ずしもいい結果になるとは思えない。
三月には最優秀の生徒が発表されるのだが……そこに当然のように私の名前が書いてあった。
学園長に詰め寄ろうとしても、逃げ回られ結局そのまま春休みになってしまったのよね。
「私、学園に行く必要ってあるの?」
「お嬢様は学園の生徒ですので当然です」
「それはただの建前でしか無いんじゃ? 学園に名前だけ残して、屋敷でだらだらと過ごしていたいわよ」
「なるほど。お嬢様は旦那様のお約束を、反故になされるおつもりという事でよろしいですか?」
それを持ち出させると何も言えなくなってしまう。
だけど、その肝心のお父上様とは全く連絡というか、ふらっと来ては、すぐに何処かへ行くし。まともに話をする時間もないのよね。
正直、縁談の話だけでもなくしてしまいたい。
「それは分かっているんだけどね。その話が残っているから、私は従うしか無いのよね」
「では、学園にはちゃんと登校してください」
「はい……こんな時にフェルでも居てくれたら、少しは慰めにもなるのにね」
「あれから随分と経ちましたが、クレアローズ様の一件がありますので、まだこちらへと戻すのは難しいでしょう」
ソルティアーノ領にいる分には問題ないと認識されていているのだけどね。そんなフェルをまるで守り神のように扱っているのはどうかと思うわよ。
魔獣から、聖獣のような崇め方なのよね。
フェルとしては、箱に詰め込まれてここに来るよりも、公爵家でそのまま居たほうが楽なのもわかるけど、迷惑かけてないわよね?
私といるよりも、そっちが良いとか言わないよね?
「イクミ様、そろそろ私は帰ります」
「分かったよ……ティアはそのままお泊りでもするの?」
「え!? いいんですか?」
ティアの様子からして、クレアと一緒にいるのが本当に嬉しいみたいね。
あの頃はもっと可愛げがあってよかったのにね。
「言いわけがない」
「まって、ルキア。今は春休みだからさ、学園が始まるまではクレアを護衛することをお願いするわ」
「了解しました」
胸を軽く叩き、かなり嬉しそうな顔をしていた。
あの子はやっぱり護衛向きという感じがしないわね。ルキアがいてくれるおかげで私は助かっているし、何より護衛としてよく似合っている。
融通はそれなりに聞くし、ティアのように我儘はないしね。
「いいのですか?」
「ティアには我慢をさせているからね。ルキアが居てくれるから大丈夫よ」
「わかりました。しばらくの間よろしくおねがいしますね」
「任せてください、クレア」
ティアがクレアの護衛ね……そもそも、クレアに護衛が必要なのかという疑問のほうが大きいけどね。
エルフということもあって、魔法もそれなりに使えるみたいだし、クレアの発散も出来て良いかもしれないわね。
泣き言は許さないけどね?
「お嬢さーまー、愛しのトパーズが参りましたわよ」
「呼んでいないから、自分の部屋に戻ってもいいわよ」
「酷い! 茶番はこれぐらいにして、緊急事態です」
緊急事態?
その言葉に、私は立ち上がりトパーズに詰め寄っていく。
「何があったと言うの?」
「続きはベッドの中で……じょ、冗談です。二人共、やめて」
ルビー達は前のことをまだ根に持っているのね。
公爵家でトパーズが私のベッドの中へと忍び込んだときに、ルビーとルキアは用事があったわけもなくトパーズの手によって縛られ、私の馬車の中に隔離されていたのよね。
あれを発見した時の衝撃はすごかった。
「二人共とりあえず離してあげて」
「さすがお嬢様。私のことを一番に考えてくれるだけのことはありますね」
そのポジティブ思考はどっから湧いて出てくるのよ。
渡された紙を受け取り、内容からして緊急事態は全くもって緊急性がないと言うか、別にどうでもいい話だった。
「ルキア、トパーズを縛って一晩庭の木にくくりつけておいて」
「了解しました」
「まって、い、いやーーー」
何が緊急事態よ……渡された紙には『お嬢様成分が足りません。そろそろ、肌と肌を重ねた添い寝を希望します』と書かれていた。
今も私の知らない間に、ベッドの中に入ってきているかもしれないというのに、こんな物納得できるわけがない。
「お嬢様、冗談です。だから許してください」
「あ、そうだ。ルビーが私と添い寝をしてよ。トパーズはそれをただ見ているだけでいいわ」
「あんまりです……ルビーはそんなことはしないわよね?」
「お嬢様。このような者を相手に張り合わないでください。トパーズ……」
ルビーは何を言ったのかしら?
私に聞こえないようにと、耳打ちをして何かを話しているうちにトパーズは顔を青くしていた。いつもとは違って、ルビーに許しを請うている。「それは駄目、絶対に駄目。お願いだから」それとは一体何なの?
状況的に考えれば、どうやら私の知らない所で何かをやらかしているのは確実ということね。
割と本気でトパーズの解雇を考えようかしら?
それが本当にできればもう少し平穏なんだけどね。
揉める要素の多い私を、隔離している可能性もある。それが必ずしもいい結果になるとは思えない。
三月には最優秀の生徒が発表されるのだが……そこに当然のように私の名前が書いてあった。
学園長に詰め寄ろうとしても、逃げ回られ結局そのまま春休みになってしまったのよね。
「私、学園に行く必要ってあるの?」
「お嬢様は学園の生徒ですので当然です」
「それはただの建前でしか無いんじゃ? 学園に名前だけ残して、屋敷でだらだらと過ごしていたいわよ」
「なるほど。お嬢様は旦那様のお約束を、反故になされるおつもりという事でよろしいですか?」
それを持ち出させると何も言えなくなってしまう。
だけど、その肝心のお父上様とは全く連絡というか、ふらっと来ては、すぐに何処かへ行くし。まともに話をする時間もないのよね。
正直、縁談の話だけでもなくしてしまいたい。
「それは分かっているんだけどね。その話が残っているから、私は従うしか無いのよね」
「では、学園にはちゃんと登校してください」
「はい……こんな時にフェルでも居てくれたら、少しは慰めにもなるのにね」
「あれから随分と経ちましたが、クレアローズ様の一件がありますので、まだこちらへと戻すのは難しいでしょう」
ソルティアーノ領にいる分には問題ないと認識されていているのだけどね。そんなフェルをまるで守り神のように扱っているのはどうかと思うわよ。
魔獣から、聖獣のような崇め方なのよね。
フェルとしては、箱に詰め込まれてここに来るよりも、公爵家でそのまま居たほうが楽なのもわかるけど、迷惑かけてないわよね?
私といるよりも、そっちが良いとか言わないよね?
「イクミ様、そろそろ私は帰ります」
「分かったよ……ティアはそのままお泊りでもするの?」
「え!? いいんですか?」
ティアの様子からして、クレアと一緒にいるのが本当に嬉しいみたいね。
あの頃はもっと可愛げがあってよかったのにね。
「言いわけがない」
「まって、ルキア。今は春休みだからさ、学園が始まるまではクレアを護衛することをお願いするわ」
「了解しました」
胸を軽く叩き、かなり嬉しそうな顔をしていた。
あの子はやっぱり護衛向きという感じがしないわね。ルキアがいてくれるおかげで私は助かっているし、何より護衛としてよく似合っている。
融通はそれなりに聞くし、ティアのように我儘はないしね。
「いいのですか?」
「ティアには我慢をさせているからね。ルキアが居てくれるから大丈夫よ」
「わかりました。しばらくの間よろしくおねがいしますね」
「任せてください、クレア」
ティアがクレアの護衛ね……そもそも、クレアに護衛が必要なのかという疑問のほうが大きいけどね。
エルフということもあって、魔法もそれなりに使えるみたいだし、クレアの発散も出来て良いかもしれないわね。
泣き言は許さないけどね?
「お嬢さーまー、愛しのトパーズが参りましたわよ」
「呼んでいないから、自分の部屋に戻ってもいいわよ」
「酷い! 茶番はこれぐらいにして、緊急事態です」
緊急事態?
その言葉に、私は立ち上がりトパーズに詰め寄っていく。
「何があったと言うの?」
「続きはベッドの中で……じょ、冗談です。二人共、やめて」
ルビー達は前のことをまだ根に持っているのね。
公爵家でトパーズが私のベッドの中へと忍び込んだときに、ルビーとルキアは用事があったわけもなくトパーズの手によって縛られ、私の馬車の中に隔離されていたのよね。
あれを発見した時の衝撃はすごかった。
「二人共とりあえず離してあげて」
「さすがお嬢様。私のことを一番に考えてくれるだけのことはありますね」
そのポジティブ思考はどっから湧いて出てくるのよ。
渡された紙を受け取り、内容からして緊急事態は全くもって緊急性がないと言うか、別にどうでもいい話だった。
「ルキア、トパーズを縛って一晩庭の木にくくりつけておいて」
「了解しました」
「まって、い、いやーーー」
何が緊急事態よ……渡された紙には『お嬢様成分が足りません。そろそろ、肌と肌を重ねた添い寝を希望します』と書かれていた。
今も私の知らない間に、ベッドの中に入ってきているかもしれないというのに、こんな物納得できるわけがない。
「お嬢様、冗談です。だから許してください」
「あ、そうだ。ルビーが私と添い寝をしてよ。トパーズはそれをただ見ているだけでいいわ」
「あんまりです……ルビーはそんなことはしないわよね?」
「お嬢様。このような者を相手に張り合わないでください。トパーズ……」
ルビーは何を言ったのかしら?
私に聞こえないようにと、耳打ちをして何かを話しているうちにトパーズは顔を青くしていた。いつもとは違って、ルビーに許しを請うている。「それは駄目、絶対に駄目。お願いだから」それとは一体何なの?
状況的に考えれば、どうやら私の知らない所で何かをやらかしているのは確実ということね。
割と本気でトパーズの解雇を考えようかしら?
それが本当にできればもう少し平穏なんだけどね。
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