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聖女編
162 お嬢様は犯人を突き止める
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「ありがとう、フェル」
怪我はしたものの、フェルのおかげで助かったのは間違いはなかった。
フェルの体を撫でそっぽを向かれているので照れ隠しだと思ったが……相変わらずその尻尾は動かない。
少しぐらいなびいてよね。
「気にすることでもあるまい。それで、これからどうする? 一人で戻るにはもはや危険すぎるだろう。主の所に行くのが良いと思うがな」
確かにそう考えるのが良いかもしれないわね。
目的が何であれ、私を狙ったことに変わりはない。その相手がこの男だけとも限らないのだから……このまま一人でいるのは危険。だけど、ルキアの所に行こうにもフェルがいれば騒ぎにもなる。
「フェル。ここまではどうやって?」
「小娘の声が聞こえたからな。走ってきた」
私の聞きたいこととは違う回答ね。
「なら、私を背負って、誰にも見つからずに……メルの部屋へと戻れるかしら?」
「出来なくはないだろうが……小娘には、無理だろうな」
走って……クレアがフェルにまたがる姿を思い出し、誰にも見つからないほど早く走るというのなら、フェルが言う無理というのも納得できるわね。
戻るよりも、この先にある別館を調べてみるのも良いかもしれないわね。今はフェルが居てくれるのなら、きっと大丈夫よね?
「フェル、貴方は私を守ってくれる?」
「馬鹿なのか? すでに助けただろう」
全く、それはテレということでいいのかしらね。
私をぞんざいに扱わわりにはちゃんと守ってくれるのね。
「今から別館に行くのだけど」
「あえてお前から行くというのか……まあ、いいだろう」
「お願いね」
背中に乗れと言われたけど、倒れて衝撃で頭だけでなく肩を痛めたことで、フェルに乗ることも出来ずゆっくりと別館へと向かう。
フェルは周囲を警戒し、匂いを嗅ぎ分けているのか何度も大きく吸い込んでいた。
「別館に誰かがいるの?」
「ああ、きな臭い連中がな。小娘を狙った所で……」
「そう怒らないの。その人達のところまで案内して」
「主は一体何をしている?」
「クロはここには来ていないし、ルキアは外で馬車を見張っているわ」
大きな鼻息を漏らし、やれやれと言った感じに頭を振っていた。
きっと相手は計画が失敗しているとはまだ思っていないわよね。フェルが私を何処まで守ってくれるのかは分からないけど。今は頼るしか無いわよね。
「下だ」
その言葉に、息を呑んでしまう。
階段を降りていくと、この場所に似つかわしくない男が立っていた。
フェルの大きな体は、相手にすぐ見つかってしまう。
「な、なんだ!」
「チッ」
フェルが声に反応すると、瞬く間に扉の前に立っていた男たちは亡骸へと変わる。
鋭い爪で切り裂かれた、体と壁には大量の血が飛び散っている。
騒ぎを聞きつけ、扉が開かれ、中からは悲鳴が聞こえている。
「フェル!」
私は慌ててその場へと向かう。
部屋の中には、既に四人もの死体があり、部屋中に飛び散る血の匂いが充満している。
あまりにも無残な光景に、少しだけ気持ち悪さが込み上がってくる。
「殺してはだめよ! ソイツだけは絶対に殺してはだめ」
残っている男は六人。一人を守るようにフェルの前に立ちはだかっている。
私の指差した相手を確認し、フェルは私を見て目を細めていた。
「面倒なことを言う。全員殺してしまえばよいではないか」
「なっ……くそっ!」
襲いかかってきた男をフェルは爪を使わず薙ぎ払う。
それでもあんな物を喰らえばひとたまりもないが、辛うじて生きているようだった。まるで、決闘のときのようね
こんな時にも関わらずそんな事を思い出してしまう。
それも無理もないわね。あの後ろで守られている男が……私を?
なんでこんな事をしてまで?
「抵抗するのなら、命の保証はできないわ。武器を捨てて大人しくすることね」
そんなことを言った所でもはや意味はない……こんな場所で捕まれば死刑になってもおかしくはない。
だから、最後まで抗うわね。
私の言葉に耳を傾けることなく、剣を手放そうとはしない。
私が一歩前へと進み、一人の男はナイフを取り出していた。
「フェル。奥にいる男以外は、殺しても構わないわ」
「殺すなと言ったり、殺せと言ったり、我儘な小娘だ!」
私へと投げられたナイフは、フェルの尻尾であしらうように弾き飛ばされる。
鋭い爪が体を引き裂き、斬りかかる剣でさえもその牙によって噛み砕かれる。
誰一人として、フェルを傷つけること無く、最後の一人が押しつぶされる。
残った男は逃げ出すこともなく、フェルから発せられているあの威圧によりガタガタと震えているだけだった。
「く、来るな!」
「そう言うわけには行かないの。ありがとう、フェル」
フェルの隣に立ち、じっと男を見つめていた。
公爵家にどうやって忍び込み、私の殺害、もしくは誘拐。そんな事をしてまで私を狙おうとする理由は何?
それとも、あんな事があったにもかかわらず……私に対しての復讐のつもり?
どちらにしても、私が彼に対して、情けも憐れむ必要はどこにも感じられない。
男は足元に転がっていた剣を掴み取り、私へと向けられた剣は、フェルの前足が振り下ろされことで腕ごと剣が転がる。
「う、うでが」
何処までも馬鹿な人だ。
怪我はしたものの、フェルのおかげで助かったのは間違いはなかった。
フェルの体を撫でそっぽを向かれているので照れ隠しだと思ったが……相変わらずその尻尾は動かない。
少しぐらいなびいてよね。
「気にすることでもあるまい。それで、これからどうする? 一人で戻るにはもはや危険すぎるだろう。主の所に行くのが良いと思うがな」
確かにそう考えるのが良いかもしれないわね。
目的が何であれ、私を狙ったことに変わりはない。その相手がこの男だけとも限らないのだから……このまま一人でいるのは危険。だけど、ルキアの所に行こうにもフェルがいれば騒ぎにもなる。
「フェル。ここまではどうやって?」
「小娘の声が聞こえたからな。走ってきた」
私の聞きたいこととは違う回答ね。
「なら、私を背負って、誰にも見つからずに……メルの部屋へと戻れるかしら?」
「出来なくはないだろうが……小娘には、無理だろうな」
走って……クレアがフェルにまたがる姿を思い出し、誰にも見つからないほど早く走るというのなら、フェルが言う無理というのも納得できるわね。
戻るよりも、この先にある別館を調べてみるのも良いかもしれないわね。今はフェルが居てくれるのなら、きっと大丈夫よね?
「フェル、貴方は私を守ってくれる?」
「馬鹿なのか? すでに助けただろう」
全く、それはテレということでいいのかしらね。
私をぞんざいに扱わわりにはちゃんと守ってくれるのね。
「今から別館に行くのだけど」
「あえてお前から行くというのか……まあ、いいだろう」
「お願いね」
背中に乗れと言われたけど、倒れて衝撃で頭だけでなく肩を痛めたことで、フェルに乗ることも出来ずゆっくりと別館へと向かう。
フェルは周囲を警戒し、匂いを嗅ぎ分けているのか何度も大きく吸い込んでいた。
「別館に誰かがいるの?」
「ああ、きな臭い連中がな。小娘を狙った所で……」
「そう怒らないの。その人達のところまで案内して」
「主は一体何をしている?」
「クロはここには来ていないし、ルキアは外で馬車を見張っているわ」
大きな鼻息を漏らし、やれやれと言った感じに頭を振っていた。
きっと相手は計画が失敗しているとはまだ思っていないわよね。フェルが私を何処まで守ってくれるのかは分からないけど。今は頼るしか無いわよね。
「下だ」
その言葉に、息を呑んでしまう。
階段を降りていくと、この場所に似つかわしくない男が立っていた。
フェルの大きな体は、相手にすぐ見つかってしまう。
「な、なんだ!」
「チッ」
フェルが声に反応すると、瞬く間に扉の前に立っていた男たちは亡骸へと変わる。
鋭い爪で切り裂かれた、体と壁には大量の血が飛び散っている。
騒ぎを聞きつけ、扉が開かれ、中からは悲鳴が聞こえている。
「フェル!」
私は慌ててその場へと向かう。
部屋の中には、既に四人もの死体があり、部屋中に飛び散る血の匂いが充満している。
あまりにも無残な光景に、少しだけ気持ち悪さが込み上がってくる。
「殺してはだめよ! ソイツだけは絶対に殺してはだめ」
残っている男は六人。一人を守るようにフェルの前に立ちはだかっている。
私の指差した相手を確認し、フェルは私を見て目を細めていた。
「面倒なことを言う。全員殺してしまえばよいではないか」
「なっ……くそっ!」
襲いかかってきた男をフェルは爪を使わず薙ぎ払う。
それでもあんな物を喰らえばひとたまりもないが、辛うじて生きているようだった。まるで、決闘のときのようね
こんな時にも関わらずそんな事を思い出してしまう。
それも無理もないわね。あの後ろで守られている男が……私を?
なんでこんな事をしてまで?
「抵抗するのなら、命の保証はできないわ。武器を捨てて大人しくすることね」
そんなことを言った所でもはや意味はない……こんな場所で捕まれば死刑になってもおかしくはない。
だから、最後まで抗うわね。
私の言葉に耳を傾けることなく、剣を手放そうとはしない。
私が一歩前へと進み、一人の男はナイフを取り出していた。
「フェル。奥にいる男以外は、殺しても構わないわ」
「殺すなと言ったり、殺せと言ったり、我儘な小娘だ!」
私へと投げられたナイフは、フェルの尻尾であしらうように弾き飛ばされる。
鋭い爪が体を引き裂き、斬りかかる剣でさえもその牙によって噛み砕かれる。
誰一人として、フェルを傷つけること無く、最後の一人が押しつぶされる。
残った男は逃げ出すこともなく、フェルから発せられているあの威圧によりガタガタと震えているだけだった。
「く、来るな!」
「そう言うわけには行かないの。ありがとう、フェル」
フェルの隣に立ち、じっと男を見つめていた。
公爵家にどうやって忍び込み、私の殺害、もしくは誘拐。そんな事をしてまで私を狙おうとする理由は何?
それとも、あんな事があったにもかかわらず……私に対しての復讐のつもり?
どちらにしても、私が彼に対して、情けも憐れむ必要はどこにも感じられない。
男は足元に転がっていた剣を掴み取り、私へと向けられた剣は、フェルの前足が振り下ろされことで腕ごと剣が転がる。
「う、うでが」
何処までも馬鹿な人だ。
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