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聖女編
155 お嬢様はだらけたい
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十月になり、夏の暑さが終わり、学園へと向かう朝には肌寒さを感じている。
しかし、今日は休日。
いつもであればメイド達におもちゃにされる日なのだが……今の私はベッドから出たくはない。
この惰眠が心地良いからだ。
ルビーは何やら用事があるということで、この寝室でいくら惰眠を貪ろうとも私の邪魔をする人が居ない。
あれだけ悩んでいた私がこんな事をしているのかと言うと、意見や要望はここのいる屋敷の人達からしても、概ね似たことになる予感がしていた。
だから、こちらからアンケートをだし名前も書かせた。いくつかの提案に対しての回答をしてもらうのだが……結果はほぼ皆が一致。
結論としては今のままで、私の好きにすれば良いのと、今の奴隷生活がどれだけ快適なことかを考えろとまで言われる始末。
私としては、改善できることがあるのならとか、奴隷を辞めたいと思っているのかなとかを考えていたのだけど、こんなくだらないことを考えるぐらいなら、もっと自分を大切にしろなど逆にこちらが指摘される。
夜通しで作っていたことを、誰が言いふらしたのかは明白。
そんなわけで私はこれまで以上に開き直って、我儘を通すことになろうともこちらが気にするだけ無駄でしか無い。
今の環境でも改善できそうなことはあると思うのだけど……そんなことはもう考えることを放棄している。
ただ、トワロからのびっしりと書かれた、私の行動による抗議と提言。アレには読む気が失せるほど色々と書かれていた。数日はトワロから厳しい指摘を受けつつ、下がっていた淑女レベルを半強制的に引き上げられてしまう。
好きにしていいとはいえ、トワロを解雇してはダメなのかしら? なんてチラッと考えてしまった。怖いから絶対に言わないけど。
「はぁふー。温度が一定だから暑くも寒くもなく快適なのよね」
窓から差し込む光が、何ともいえない心地よさを演出してくれる。
この部屋の前にメイドたちがノックしていようとも私には聞こえない。ルキアにはホント感謝だよね。
「イクミ殿」
「ああ、ルキア。おはよう……どうしたの?」
寝ぼけたまま、返事をしていると抱えていた布団は剥ぎ取られ、脇を掴まれたかと思うと廊下へと放り出されてしまう。
床に倒れることはなかったのだけど、私の体はメイド達の腕に受け止められている。
「さ、お嬢様。そろそろ起きる時間ですわよ」
「もう少しだけ寝ていたいのよ」
「何を仰るのですか、もう十一時なのですよ!」
「イクミお嬢様、グセナーレ家次期当主にならなれる御方が……メイド達を前にして惰眠を要求するとは」
その声の持ち主に私は氷付き、ゆっくりと視線を向けていく。
執事のトワロ。見た目はただのおじいさんだが、あれでもティアなんかよりもよっぽど強い。
なにより、あのアンケートを境に私の言うことを聞いてくれないこともある。私の意見を聞いてくれるルビーのほうがよっぽど優しい。
「お、おはようございます」
「はい、おはようございます。イクミお嬢様、今日のご予定は如何なされますかな?」
「今日は、執務室で仕事でもしているわ」
「左様でございますか。では、午後一時から二時までの間をお仕事と致しましよう。お前達、連れていきなさい」
なんでたったの一時間なの?
これからの仕事が始まるまでの時間、私をどうするつもりなのよ!
そんな心の叫びを、声にした所で誰も聞いてくれるはずがないように思える。
メイドたちは私に尽くすことが当然の責務であり、何もさせないことのほうが辛いらしい。
あのアンケートは皆の為を思ってやったことなのに、私のことを指摘され、今ではこうして強要されることもしばしば増えている。
「さぁ、お嬢様。まずは入浴からですよ」
以前は私が一人でやっていた。子供のような体になったからか、とにかくこそばゆい。彼女たちもそうならないように努力をしてくれているが……足はかなり酷い。
入浴は結構拷問に近い。
「お嬢様の髪は、本当に綺麗ですね」
「私がと言うよりも、皆の手入れが良いからだよ」
私がやっていたときに比べて、髪や肌の質がまるで違うものにすら感じる。
だからまた一人でとふざけて言ったとしても、猛抗議が始まるのが目に見えている。せっかくここまで手入れをしてきたのだから、壊されたくはないよね。
とはいえ、私の周りには美人が多く、並ぶ私はただの妹程度でしかない存在だ。
「それでは本日のメイン……んんっ、失礼しました。本日はどちらになされますか?」
別に言い直さなくてもいいわよ。本当に皆は着替えさせるのが好きよね。
ただ、ここ最近どれだけ酷い目に合っているのか分かっているのかしら?
「私が選んでいいというわけね……あの、えっとね?」
私は用意されている服ではなく、仕舞われている服を見たいのよ。
肩を掴まれくるっと反転させられる。やっぱりここから選ぶしか無いのよね。
メイドたちもいちいち四つも用意するのが面倒になったため今では二つしか用意されていない。そんな理由ではなく、これまでに棒倒し、目隠しをされどっちかを選ぶなど。強要されるものだから、あえて二つだけしか用意されていない。
しかし、今日は休日。
いつもであればメイド達におもちゃにされる日なのだが……今の私はベッドから出たくはない。
この惰眠が心地良いからだ。
ルビーは何やら用事があるということで、この寝室でいくら惰眠を貪ろうとも私の邪魔をする人が居ない。
あれだけ悩んでいた私がこんな事をしているのかと言うと、意見や要望はここのいる屋敷の人達からしても、概ね似たことになる予感がしていた。
だから、こちらからアンケートをだし名前も書かせた。いくつかの提案に対しての回答をしてもらうのだが……結果はほぼ皆が一致。
結論としては今のままで、私の好きにすれば良いのと、今の奴隷生活がどれだけ快適なことかを考えろとまで言われる始末。
私としては、改善できることがあるのならとか、奴隷を辞めたいと思っているのかなとかを考えていたのだけど、こんなくだらないことを考えるぐらいなら、もっと自分を大切にしろなど逆にこちらが指摘される。
夜通しで作っていたことを、誰が言いふらしたのかは明白。
そんなわけで私はこれまで以上に開き直って、我儘を通すことになろうともこちらが気にするだけ無駄でしか無い。
今の環境でも改善できそうなことはあると思うのだけど……そんなことはもう考えることを放棄している。
ただ、トワロからのびっしりと書かれた、私の行動による抗議と提言。アレには読む気が失せるほど色々と書かれていた。数日はトワロから厳しい指摘を受けつつ、下がっていた淑女レベルを半強制的に引き上げられてしまう。
好きにしていいとはいえ、トワロを解雇してはダメなのかしら? なんてチラッと考えてしまった。怖いから絶対に言わないけど。
「はぁふー。温度が一定だから暑くも寒くもなく快適なのよね」
窓から差し込む光が、何ともいえない心地よさを演出してくれる。
この部屋の前にメイドたちがノックしていようとも私には聞こえない。ルキアにはホント感謝だよね。
「イクミ殿」
「ああ、ルキア。おはよう……どうしたの?」
寝ぼけたまま、返事をしていると抱えていた布団は剥ぎ取られ、脇を掴まれたかと思うと廊下へと放り出されてしまう。
床に倒れることはなかったのだけど、私の体はメイド達の腕に受け止められている。
「さ、お嬢様。そろそろ起きる時間ですわよ」
「もう少しだけ寝ていたいのよ」
「何を仰るのですか、もう十一時なのですよ!」
「イクミお嬢様、グセナーレ家次期当主にならなれる御方が……メイド達を前にして惰眠を要求するとは」
その声の持ち主に私は氷付き、ゆっくりと視線を向けていく。
執事のトワロ。見た目はただのおじいさんだが、あれでもティアなんかよりもよっぽど強い。
なにより、あのアンケートを境に私の言うことを聞いてくれないこともある。私の意見を聞いてくれるルビーのほうがよっぽど優しい。
「お、おはようございます」
「はい、おはようございます。イクミお嬢様、今日のご予定は如何なされますかな?」
「今日は、執務室で仕事でもしているわ」
「左様でございますか。では、午後一時から二時までの間をお仕事と致しましよう。お前達、連れていきなさい」
なんでたったの一時間なの?
これからの仕事が始まるまでの時間、私をどうするつもりなのよ!
そんな心の叫びを、声にした所で誰も聞いてくれるはずがないように思える。
メイドたちは私に尽くすことが当然の責務であり、何もさせないことのほうが辛いらしい。
あのアンケートは皆の為を思ってやったことなのに、私のことを指摘され、今ではこうして強要されることもしばしば増えている。
「さぁ、お嬢様。まずは入浴からですよ」
以前は私が一人でやっていた。子供のような体になったからか、とにかくこそばゆい。彼女たちもそうならないように努力をしてくれているが……足はかなり酷い。
入浴は結構拷問に近い。
「お嬢様の髪は、本当に綺麗ですね」
「私がと言うよりも、皆の手入れが良いからだよ」
私がやっていたときに比べて、髪や肌の質がまるで違うものにすら感じる。
だからまた一人でとふざけて言ったとしても、猛抗議が始まるのが目に見えている。せっかくここまで手入れをしてきたのだから、壊されたくはないよね。
とはいえ、私の周りには美人が多く、並ぶ私はただの妹程度でしかない存在だ。
「それでは本日のメイン……んんっ、失礼しました。本日はどちらになされますか?」
別に言い直さなくてもいいわよ。本当に皆は着替えさせるのが好きよね。
ただ、ここ最近どれだけ酷い目に合っているのか分かっているのかしら?
「私が選んでいいというわけね……あの、えっとね?」
私は用意されている服ではなく、仕舞われている服を見たいのよ。
肩を掴まれくるっと反転させられる。やっぱりここから選ぶしか無いのよね。
メイドたちもいちいち四つも用意するのが面倒になったため今では二つしか用意されていない。そんな理由ではなく、これまでに棒倒し、目隠しをされどっちかを選ぶなど。強要されるものだから、あえて二つだけしか用意されていない。
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