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学園編

151 お嬢様と星海祭

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 祭りでは、様々なの催しが行われている。
 私が興味を示したのは大道芸であり、クレアにはあまり興味がないようだった。
 珍しい品々を見て回り楽しんでいた。

 それにしても、以前のような出来事があったためか……私はルビーに手を繋がれている。それをどう勘違いしたのかクレアにも手を繋がれ、私は身動きが取れない状態になっている。

「イクミ様。あれはどう思われます?」

 クレアが指差した所は、女将さんが出しているお店でかなり賑わっている様子が見て取れる。
 気になった私は中の様子を確認すると、この人達は何をやっているのだろうかと頭をひねる。
 長いテーブルに、三人が対面で座りオセロをしているのだが……周りが白熱している意味がわからない。

「ただオセロをしているだけのようにも思われますが?」

「クレアからもそう見えるわよね?」

 だとしても、この盛り上がりは何?
 勝敗が決まると、勝った人たちが声を張り上げて喜ぶ。
 観客は、喜ぶものと、頭を抱えるものとに分かれる。なるほど……三対三のオセロ勝負ということね。それで、この観客は賭けでもしているようね。

「発案者でないとは言え、こんなことになるなんて普通は思わないでしょ」

「おや、イクミじゃないか。今日は随分と可愛らしい格好をしているね」

「ラズ兄さん? なんでこんな所で?」

「それは、ここが君の御用達だからね。ついでに会えればと思っていたのだよ。今は丁度新しい賭け事でも始めようかと思ってね」

 私が作った遊具を使ってギャンブルをしているなんて……最初は何を考えているのだろうと不思議に思ったけど。
 これが思いの外成功しているのが不思議なのよね。娯楽が少ないからこうなるものなの?

「ら、ラスバード様!?」

「構わないよ、私に頭を下げる必要はない。それよりもだ……そろそろイクミの実力を見せてもらおうか?」

 私の為に設けられたテーブルへと座らされ、楽しそうな顔をしてオセロの準備をしていくが、私としてはこの観客に見守られてやりたいものではない。
 クレアからは頑張ってと言われ、ルビーは私を見ることもなく困り果てていた。

「イクミに先行を譲ろうか」

「は、はい」

 女将さんがカウンターで、私達の試合の掛札を売っている。本当にたくましい人よね……だけど、私が勝つと思っている人なんていない。
 ここには私の奴隷たちが居るので、私の凄さを誇らしげに語っている。
 お願いだからハードルを上げないでよ。

 私とラズ兄さんの勝負の行方は、私の惨敗に終わる。
 こうなりそうだったから嫌だったのよ。私がやっているのは暇つぶし程度。
 一方ラズ兄さんは、暇さえあれば時間をつぶすためにやっているらしい。

「ようやくイクミに勝てたな。それとも、私の顔を立ててくれたのかな?」

「いえいえ、私の完敗です。お見事でした」

 私の周りは、中盤辺りからは絶望の声しか聞こえてこない……本当にごめんなさい。
 手を抜いたら抜いたで、もう一回か別のゲームをさせられかねない。
 私が席を立つと、ラズ兄さんはクイクイと指で合図を送っている。私に勝ったことで、以前敗北をさせられたルビーを指名しているのだ。

「相手はラズ兄さんだし、諦めたほうがいいわよ」

「かしこまりました」

 ルビーが私の代わりに座ると、気乗りはしていないようにみえるわね。
 それにしても懲りない人たちね……賭けで儲かるというよりも、勝ったら景気づけに飲むわで、結局女将さんが儲かっているみたいだから良いけどね。

「随分と綺麗なものだな」

「お褒めに預かり、恐悦至極にございます」

「あれからイクミは何かを作ったりは?」

 そう言って、私へと視線を送られるが、私はそっぽを向くしか無い。
 トランプの試作は作ったものの、あのままではまだ問題点が多い。作れたとするのなら、五目並べだけど……他にもラズ兄さんに見せて良いものなのかを確定はしていない。

 以前に、違ったやり方はないのかと聞かれ、四人将棋を教えてみたけどなかなか好評だったらしく、このオセロもそこから考えたものかもしれないわね。

「今日の所は良いだろう。それでは一戦お願いするとしようか」

 ルビーは強いとは思っていたけど……まさかあのルビーが負けるなんてね。
 一体どれだけの時間と経験を積んできたのよ。

「今日はわざわざすまなかったね。また今度にでも屋敷にお邪魔させてもらうからね」

「は、はい」

「私に見せる前に広めないようにね」

「はい! わかりました」

 私は店から出ると一人頭を抱えていた。
 絶対あの人のことだから、明日来てもおかしくはない。
 今から屋敷に戻って色々と隠そうにも、クレアが居るし……それにルビーとの約束もある。どうしたものか。

「イクミ様。どうかされましたか?」

「い、いや、まあ、大丈夫」

 それからまた色んな所へと歩き、不安は残ったものの時間がそれを忘れさせてくれていた。
 辺りは次第に暗くなっていき、星が見え始めると行き交う人達が星を眺めている。
 私達はすっかり暗くなった頃にあの噴水の所へと向かう。

「なるほどね」

 噴水の水面には幾つもの星が映っている。
 実際には、魔法石からの光なのだろうけど……それでも悪くはない。

「まるで、プラネタリウムのようね」

「言われてみれば……」

 しかし、水面に映っているわけではないのよね……この光は水の中から光っている。
 見ようによっては、止水に映る夜空の星々。これを子供だましと見るか、幻想的と見るかで大きく変わってくるわね。

「そろそろお時間です」

「イクミ様、戻りましょうか」

 多くの人がここを見に来るため、私達の後ろにはまだまだ多くの人が並んでいる。
 王国主催。いまでは、王宮で何かをやっているのでしょうね。
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