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学園編
149 お嬢様とメイド服
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確かに、ライオが来賓の王女とはいえ、他の女性のエスコートをするのならクレアとしては面白くはない。
でもそれは王族としての責務とも言えるはず。ライオに婚約者がいるのは誰もが知っていることだけど、こればっかりは避けられるはずもないわね。
それでライオと一緒に居られないから、私を誘ったということね。
そんなことがなかったら、私の前でイチャイチャしているのを見せつけてくるだけよね。どの道付き合わされる結論にしかなっていないのだけど?
「わかったわ。ルビーとクレアで、一緒に行きましょう」
「わ、私は!?」
「クレアに負けたのでしょ? それで私の護衛が務まると思っているの?」
「そ、そんな……こんな人にどうやって勝てっていうんですか!」
言いたいことは分かる。私もクレアに付き合って何度死にかけたことか……クレアとの実技は本当に付き合いたくない。
今は気が立っているクレアを宥めるためにも、私でいいのなら付き合うしか無いわね。
「イクミ様はご冗談で言っているだけですわ。ティアさんも勿論ご一緒ですわよ」
「本当ですか!?」
パァッと明るい笑顔を見せてくるので、私が一度だけ頷くと嬉しそうに飛び跳ねている。
それにしても賑やかになったわね。ティアが来たことで、メイド達、特にチロなんかはすごく嬉しそうにしていたわね。
ただ、チロに打ち負かされて、その時もかなり拗ねたりもしていたけど。
それにしても、世間知らずのエルフと、見た目からは想像もできないバカ娘。頼むから面倒事だけは止めてよね。
「それではお嬢様。これから、明日の服を選びましょう」
「は?」
「それは良いですね」
祭りとはいえ何かに参加とかはないのよ?
普段の格好で良いはずだと思うのだけど?
ルビーから離れようとするものの、後ろからはクレアに抱きつかれてしまう。
「く、クレア。離して欲しいのだけど?」
「いえいえ、イクミ様はこういうことは逃げようとしますから」
「私が逃げるだなんて……」
「私、足も早いですわよ」
クレアの腕力に私が敵うはずもなく、ルビーに案内されるクレアは私を軽々と持ち上げ連れて行かれ、あの時と同じように衣装が並べられていた。
メルが居ない分、マシかと思えたのだけど……私が選ぼうにも、地に足がついていない。
クレアが先導をしているものだから、有無を言わせないつもりらしいのだが……
ピンク色のふわふわとしたドレスの前に立たされることで、メイドたちが歓喜を上げる。
ライオ……ちゃんとこの子を安心させてあげておいてよ!
喚く私を見るに見かねて、ルビーからはもう少し落ち着いたドレスを選んでくれることになった。
メイドたちも反抗するものの、実際に着せられたことで皆納得をしていた。
結局、皆は何でもいいんじゃないの?
私達が明日のことで浮かれている間。
王都の街では夜のうちに準備されていたのか、大きな中央広場へと続く道には数多くの露天で埋め尽くされている。
朝早くからは多くの人で賑わう声が、屋敷のテラスに居ても聞こえてくる。
午前中から行くのかと思っていたのだけど、広場では王族たちが先に願いを込めるらしく、それを一目見ようと多くの国民が集まっている。
私達はクレアのことを考え午後から行くことにした。
「イクミ様。こちらなど、よろしいのではないですか?」
「全くもってよろしくないです」
そんなわけで、昨日からずっと居るクレアは暇を持て余しているのは分からなくはない。
だけど、私はただでさえいつもとは違う服装なのに、その上装飾品なんて必要ない。
そんなのを付けていたら、耳たぶが伸びそうなのだけど?
「お嬢様ですと、やはりこう言ったものがお似合いではないかと」
「や、やめて!」
ルビーが手にしたものに、私は全力で否定に走る。
なんでそんな物があるのかは疑問だけど……キラキラと多くの光を反射している宝石が、無数に施されたティアラを私に乗せようとしていた。
似合う似合わない以前に、奴隷商人が身につけるものでないのは確かよ。
「それだと、今のドレスには合わないですね」
他のドレスなら似合うとかはなんてそもそもないよ!
どう考えても、それだけは論外でしょ!?
「二人共いい加減にして。付き合う私の身にも成りなさいよ」
「私はただ……イクミ様の事を思って。私にはお見せする相手など……」
「クレアローズ様。なんともおいたわしや」
そう言いつつ私をチラチラと見ている時点で、ライオの事は吹っ切れているのかまだ判断はつかないのだけど……私がそんな手に通用すると思っているのかしら。
そもそも、打ち合わせをしたかのような猿芝居に誰が騙されるのよ。
ティアラなんて私は断固拒否する。
「お姉さま見てください」
「貴方は相変わらず元気ね」
「もちろんです」
「すごく似合っているわよ」
嬉しそうに胸を張るが、私としては私がそれを着たいのですけどね。
ティアが着ている服は、いつもとは違い騎士風な装いをしている。
人が多いため、冒険部隊を護衛にぞろぞろと連れていくことも出来ない。
けど、こういう服装にするだけでも、私達を標的にするのは難しいと周囲に知らしめることはできる。
「ティア。貴様、ここで何をしている?」
ティアと同じ服をしたルキアがやってくると、ティアの首根っこを掴みそのままテラスから降りていった。
護衛としてはまだまだ未熟だろうけど、ルキアとクロがいるのだから問題はないはず。
私はドレス。ルキアもティアも正装をしている。
テーブルには、メイドを呼ぶために置かれているベルを手に取り大きく振る。
「お呼びでしょうか?」
ルビーが居るのにと、呼ばれたメイドは少し戸惑っている。
それでも、私はベルを鳴らし続けた。
「お嬢様一体何を?」
でもそれは王族としての責務とも言えるはず。ライオに婚約者がいるのは誰もが知っていることだけど、こればっかりは避けられるはずもないわね。
それでライオと一緒に居られないから、私を誘ったということね。
そんなことがなかったら、私の前でイチャイチャしているのを見せつけてくるだけよね。どの道付き合わされる結論にしかなっていないのだけど?
「わかったわ。ルビーとクレアで、一緒に行きましょう」
「わ、私は!?」
「クレアに負けたのでしょ? それで私の護衛が務まると思っているの?」
「そ、そんな……こんな人にどうやって勝てっていうんですか!」
言いたいことは分かる。私もクレアに付き合って何度死にかけたことか……クレアとの実技は本当に付き合いたくない。
今は気が立っているクレアを宥めるためにも、私でいいのなら付き合うしか無いわね。
「イクミ様はご冗談で言っているだけですわ。ティアさんも勿論ご一緒ですわよ」
「本当ですか!?」
パァッと明るい笑顔を見せてくるので、私が一度だけ頷くと嬉しそうに飛び跳ねている。
それにしても賑やかになったわね。ティアが来たことで、メイド達、特にチロなんかはすごく嬉しそうにしていたわね。
ただ、チロに打ち負かされて、その時もかなり拗ねたりもしていたけど。
それにしても、世間知らずのエルフと、見た目からは想像もできないバカ娘。頼むから面倒事だけは止めてよね。
「それではお嬢様。これから、明日の服を選びましょう」
「は?」
「それは良いですね」
祭りとはいえ何かに参加とかはないのよ?
普段の格好で良いはずだと思うのだけど?
ルビーから離れようとするものの、後ろからはクレアに抱きつかれてしまう。
「く、クレア。離して欲しいのだけど?」
「いえいえ、イクミ様はこういうことは逃げようとしますから」
「私が逃げるだなんて……」
「私、足も早いですわよ」
クレアの腕力に私が敵うはずもなく、ルビーに案内されるクレアは私を軽々と持ち上げ連れて行かれ、あの時と同じように衣装が並べられていた。
メルが居ない分、マシかと思えたのだけど……私が選ぼうにも、地に足がついていない。
クレアが先導をしているものだから、有無を言わせないつもりらしいのだが……
ピンク色のふわふわとしたドレスの前に立たされることで、メイドたちが歓喜を上げる。
ライオ……ちゃんとこの子を安心させてあげておいてよ!
喚く私を見るに見かねて、ルビーからはもう少し落ち着いたドレスを選んでくれることになった。
メイドたちも反抗するものの、実際に着せられたことで皆納得をしていた。
結局、皆は何でもいいんじゃないの?
私達が明日のことで浮かれている間。
王都の街では夜のうちに準備されていたのか、大きな中央広場へと続く道には数多くの露天で埋め尽くされている。
朝早くからは多くの人で賑わう声が、屋敷のテラスに居ても聞こえてくる。
午前中から行くのかと思っていたのだけど、広場では王族たちが先に願いを込めるらしく、それを一目見ようと多くの国民が集まっている。
私達はクレアのことを考え午後から行くことにした。
「イクミ様。こちらなど、よろしいのではないですか?」
「全くもってよろしくないです」
そんなわけで、昨日からずっと居るクレアは暇を持て余しているのは分からなくはない。
だけど、私はただでさえいつもとは違う服装なのに、その上装飾品なんて必要ない。
そんなのを付けていたら、耳たぶが伸びそうなのだけど?
「お嬢様ですと、やはりこう言ったものがお似合いではないかと」
「や、やめて!」
ルビーが手にしたものに、私は全力で否定に走る。
なんでそんな物があるのかは疑問だけど……キラキラと多くの光を反射している宝石が、無数に施されたティアラを私に乗せようとしていた。
似合う似合わない以前に、奴隷商人が身につけるものでないのは確かよ。
「それだと、今のドレスには合わないですね」
他のドレスなら似合うとかはなんてそもそもないよ!
どう考えても、それだけは論外でしょ!?
「二人共いい加減にして。付き合う私の身にも成りなさいよ」
「私はただ……イクミ様の事を思って。私にはお見せする相手など……」
「クレアローズ様。なんともおいたわしや」
そう言いつつ私をチラチラと見ている時点で、ライオの事は吹っ切れているのかまだ判断はつかないのだけど……私がそんな手に通用すると思っているのかしら。
そもそも、打ち合わせをしたかのような猿芝居に誰が騙されるのよ。
ティアラなんて私は断固拒否する。
「お姉さま見てください」
「貴方は相変わらず元気ね」
「もちろんです」
「すごく似合っているわよ」
嬉しそうに胸を張るが、私としては私がそれを着たいのですけどね。
ティアが着ている服は、いつもとは違い騎士風な装いをしている。
人が多いため、冒険部隊を護衛にぞろぞろと連れていくことも出来ない。
けど、こういう服装にするだけでも、私達を標的にするのは難しいと周囲に知らしめることはできる。
「ティア。貴様、ここで何をしている?」
ティアと同じ服をしたルキアがやってくると、ティアの首根っこを掴みそのままテラスから降りていった。
護衛としてはまだまだ未熟だろうけど、ルキアとクロがいるのだから問題はないはず。
私はドレス。ルキアもティアも正装をしている。
テーブルには、メイドを呼ぶために置かれているベルを手に取り大きく振る。
「お呼びでしょうか?」
ルビーが居るのにと、呼ばれたメイドは少し戸惑っている。
それでも、私はベルを鳴らし続けた。
「お嬢様一体何を?」
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