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学園編
148 お嬢様とお出かけ
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ルビー、クレア、ティアと明日の予定を聞いてくる。
私と何かをしたいみたいなのだけど。明日何かがあるというのは私はよく分かっていない。
分かると言えば、ルビーが町に調べ事があるということだけ。
それだとしても、ルビーが勝負事を理由に私にそんなことをお願いしてくるなんて意外よね。
私が出歩くよりも、出歩かない方を優先しているのはいつもルビーの方なのに?
「貴方はエルフ?」
「私はお姉さまの護衛をしております。ティアです」
そう言って自信満々に、胸に拳を当てている。
その意気込みは良いのだけど……先日拗ねていたのはもう良いみたいね。
クロとルキアの二人によってしごかれたティアは、執務室に入ってくるなり号泣していたのよね。
話を聞き出そうにも、泣いてばかりでまともな会話にならなかったし。
「お姉さま? 私はイクミ様の友人で、クレアローズ・ソルティアーノと申します」
お互い自己紹介をしているのに、どう見ても雰囲気が穏やかでないのは気のせいなのかしら?
とはいえ、クレアが差し出した手に握手をしているし……ただ、ティアは顔を少しだけ歪ませている。
握手ってそんなに長い間、掴んでいるものなの?
「はぁ」
そんな二人の様子を見ていたルビーがため息を漏らしているので、私としてもわからない理由をそのままということも出来ない。
「ルビー、明日は何があるというの?」
「この際ですから率直に申し上げます。明日は王国主催による星海祭があるのです」
そう聞いたのだが、クレアから説明されるのだが……握手をしていたはずの二人は、両手を組み、まるで力比べをしているようね。
やめさせようとは思ったのだけど、意地になっているティアを見ているとそんな気も失せていた。
「ほしのうみまつり?」
「はい! 中央広場にある噴水を、星の海を見立て、皆は紙に願いを書いて、止水に託すのです!」
「くっ……つ、つよい」
ああ、やたらと大きい噴水だったのはその祭りのためでもあるのね。
さすがはゲームの世界と言った所なのか……それに似たような風習なら知っているのだけど?
「つまり、七夕みたいなものなのね。それに私を連れ出したいとということね」
ルビーは小さな声で「申し訳ございません」といい、クレアは困ったように笑っている。
ティアがその話を聞いて私を誘うのは分かる……だけど、クレアが私を誘う理由がわからないわね。そういうことなら普通はライオにというよりも、ライオからクレアを誘う話ではないの?
たかがお祭りに、王国が主催となって行うものなの?
ティアは会話に入る余裕すら無く必死に対抗している。クレアにはまだまだ余裕の表情をしている。話をしている時からずっと何をしているのよ……公爵様からバカ娘と言われるだけのことはあるわね。
クレアの猫は一体何時まで散歩をしているのかしらね。
「いたい、痛いです」
「この程度で、イクミ様の護衛などご冗談ですよね?」
クレアも面倒になったのか、ティアは押し負け膝をついていた。
その子の立ち向かおうだなんて……無謀でしかないけど、そもそもなんの対決だったの?
メソメソと泣くティアを他所に、私はルビーの所へと近づいていた。
「ルビー、そういうことなら初めから言ってくれるといいのに」
「ですが、お嬢様は今月は外出されないと申しておりました。星海祭は、止水を作るために色々と準備がありまして、日時がずれるのです」
「だからと言って、理由を聞けば私だって考えも変わるでしょ?」
想像でしか無いのだけど、星の海は噴水の細工でどうにかなると思う。
止水を作り出すというのなら、魔法石でどうにか出来なくはない。見立てたとしても、空が曇りであるのなら気分的にあまりいいものでは無いわよね。
天候がどうこうできるのであれば、ソルティアーノのような出来事もまず起こらないわけだし。
ただ、日時が安定しないというのも考えものよね。
それにしても、お祭りね。
前世ではほぼ無縁なものだったわね。テレビで眺めるか、電車の中で浴衣を着ている人を見かける程度なものだった。
そんな行事があるというのなら、私も行きたいとは思う。
「そういうお祭りがあることは知らなかったし、二人の誘いは嬉しいよ。だけどね、私はルビーと見て回るから元々はそういう約束だったしね」
「お嬢様……私はただ口実なだけですので、何も二人で出かけるとは申しておりません」
なんでそんな事を言うかな……ほら、ここにいる二人が嬉しそうにしちゃっているじゃないの。
この二人はどう考えても問題しか起こさないわよ?
「クレア。だいたいそういうイベントなら普通、私ではなくてライオと一緒……に」
クレアはライオの名前を聞くと、カッと大きく目を見開いている。
ち、違うよ? 私は別に誂うつもりはなかったのだけど。
そんなに怒るとは思わなかったわ。
「あ、いや。そうそう、メルやクレアのお兄さんは戻ってこないの?」
「お姉さまは、まだ井戸の掘削やポンプの制作と何かと忙しそうですわ」
「クレアのお兄さんがメルを手伝っているということね。それなら一安心ね」
そんな事を言っている私に、クレアからは低い声で「ハァ?」と突き刺さってくる。
クレアは情緒不安定なの? この数日の間に一体何があったの。
ライオの話をすると睨まれ、クレア兄とメルのことを聞けば怒りに満ちた目をしている。
「クレアどうしたの? ライオと何かあった?」
「お嬢様、少しこちらへ」
そう言われ、部屋の隅へと連れて行かれる。
「どうしたの?」
「星界祭は王国主催ですので、今年はルンセイド王国より来賓がございまして」
「王国主催なら他国から来てもおかしくはないわね」
「それで、ライオット殿下は、ルンセイドからは王女様が来られるようなのです」
「ええ、そうですわ。ライオ様はその御方のエスコートをなされます」
怖い怖い、クレアさんすごく怖いですよ。
離れて小声だと言うにも関わらず、私達の会話に割って入ってきていた。
私と何かをしたいみたいなのだけど。明日何かがあるというのは私はよく分かっていない。
分かると言えば、ルビーが町に調べ事があるということだけ。
それだとしても、ルビーが勝負事を理由に私にそんなことをお願いしてくるなんて意外よね。
私が出歩くよりも、出歩かない方を優先しているのはいつもルビーの方なのに?
「貴方はエルフ?」
「私はお姉さまの護衛をしております。ティアです」
そう言って自信満々に、胸に拳を当てている。
その意気込みは良いのだけど……先日拗ねていたのはもう良いみたいね。
クロとルキアの二人によってしごかれたティアは、執務室に入ってくるなり号泣していたのよね。
話を聞き出そうにも、泣いてばかりでまともな会話にならなかったし。
「お姉さま? 私はイクミ様の友人で、クレアローズ・ソルティアーノと申します」
お互い自己紹介をしているのに、どう見ても雰囲気が穏やかでないのは気のせいなのかしら?
とはいえ、クレアが差し出した手に握手をしているし……ただ、ティアは顔を少しだけ歪ませている。
握手ってそんなに長い間、掴んでいるものなの?
「はぁ」
そんな二人の様子を見ていたルビーがため息を漏らしているので、私としてもわからない理由をそのままということも出来ない。
「ルビー、明日は何があるというの?」
「この際ですから率直に申し上げます。明日は王国主催による星海祭があるのです」
そう聞いたのだが、クレアから説明されるのだが……握手をしていたはずの二人は、両手を組み、まるで力比べをしているようね。
やめさせようとは思ったのだけど、意地になっているティアを見ているとそんな気も失せていた。
「ほしのうみまつり?」
「はい! 中央広場にある噴水を、星の海を見立て、皆は紙に願いを書いて、止水に託すのです!」
「くっ……つ、つよい」
ああ、やたらと大きい噴水だったのはその祭りのためでもあるのね。
さすがはゲームの世界と言った所なのか……それに似たような風習なら知っているのだけど?
「つまり、七夕みたいなものなのね。それに私を連れ出したいとということね」
ルビーは小さな声で「申し訳ございません」といい、クレアは困ったように笑っている。
ティアがその話を聞いて私を誘うのは分かる……だけど、クレアが私を誘う理由がわからないわね。そういうことなら普通はライオにというよりも、ライオからクレアを誘う話ではないの?
たかがお祭りに、王国が主催となって行うものなの?
ティアは会話に入る余裕すら無く必死に対抗している。クレアにはまだまだ余裕の表情をしている。話をしている時からずっと何をしているのよ……公爵様からバカ娘と言われるだけのことはあるわね。
クレアの猫は一体何時まで散歩をしているのかしらね。
「いたい、痛いです」
「この程度で、イクミ様の護衛などご冗談ですよね?」
クレアも面倒になったのか、ティアは押し負け膝をついていた。
その子の立ち向かおうだなんて……無謀でしかないけど、そもそもなんの対決だったの?
メソメソと泣くティアを他所に、私はルビーの所へと近づいていた。
「ルビー、そういうことなら初めから言ってくれるといいのに」
「ですが、お嬢様は今月は外出されないと申しておりました。星海祭は、止水を作るために色々と準備がありまして、日時がずれるのです」
「だからと言って、理由を聞けば私だって考えも変わるでしょ?」
想像でしか無いのだけど、星の海は噴水の細工でどうにかなると思う。
止水を作り出すというのなら、魔法石でどうにか出来なくはない。見立てたとしても、空が曇りであるのなら気分的にあまりいいものでは無いわよね。
天候がどうこうできるのであれば、ソルティアーノのような出来事もまず起こらないわけだし。
ただ、日時が安定しないというのも考えものよね。
それにしても、お祭りね。
前世ではほぼ無縁なものだったわね。テレビで眺めるか、電車の中で浴衣を着ている人を見かける程度なものだった。
そんな行事があるというのなら、私も行きたいとは思う。
「そういうお祭りがあることは知らなかったし、二人の誘いは嬉しいよ。だけどね、私はルビーと見て回るから元々はそういう約束だったしね」
「お嬢様……私はただ口実なだけですので、何も二人で出かけるとは申しておりません」
なんでそんな事を言うかな……ほら、ここにいる二人が嬉しそうにしちゃっているじゃないの。
この二人はどう考えても問題しか起こさないわよ?
「クレア。だいたいそういうイベントなら普通、私ではなくてライオと一緒……に」
クレアはライオの名前を聞くと、カッと大きく目を見開いている。
ち、違うよ? 私は別に誂うつもりはなかったのだけど。
そんなに怒るとは思わなかったわ。
「あ、いや。そうそう、メルやクレアのお兄さんは戻ってこないの?」
「お姉さまは、まだ井戸の掘削やポンプの制作と何かと忙しそうですわ」
「クレアのお兄さんがメルを手伝っているということね。それなら一安心ね」
そんな事を言っている私に、クレアからは低い声で「ハァ?」と突き刺さってくる。
クレアは情緒不安定なの? この数日の間に一体何があったの。
ライオの話をすると睨まれ、クレア兄とメルのことを聞けば怒りに満ちた目をしている。
「クレアどうしたの? ライオと何かあった?」
「お嬢様、少しこちらへ」
そう言われ、部屋の隅へと連れて行かれる。
「どうしたの?」
「星界祭は王国主催ですので、今年はルンセイド王国より来賓がございまして」
「王国主催なら他国から来てもおかしくはないわね」
「それで、ライオット殿下は、ルンセイドからは王女様が来られるようなのです」
「ええ、そうですわ。ライオ様はその御方のエスコートをなされます」
怖い怖い、クレアさんすごく怖いですよ。
離れて小声だと言うにも関わらず、私達の会話に割って入ってきていた。
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