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学園編
140 お嬢様とあの小さな女の子
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それにしても、こうして辺りを見ていると、本当にのどかね。
あの人が家の中に入っていってから随分と時間が立っている。
のんびりとしている場合でもないわね。
「お姉さま。体はもう平気ですか?」
「ええ、まぁ」
逃げることを考えようにも、あんな速度で来られたら逃げようもない。
なんかもう、私の周りにいる人たちがすごすぎて……いまさら驚きはしないけど、誰一人として負ける自信しかないわよ。
怪しい格好をしているものの、に危害を加えるつもりはないみたいね。
「お初にお目にかかります。私はこの孤児院を管理している、アメテと申します」
「あ、はい。私はイクミ・グセナーレと申します」
立ち上がり軽くお辞儀をする。
孤児院? 察するに、彼女はここの孤児院の出身ということなのだろう。
出稼ぎをして生計に役立てているという話かもしれないわね。
あー、よかった。そういう人なら私に対して、むやみに危害を加えることはなさそうね。
身代金とか言われたら……考えるのはよそう。色々と怖いから。
ただ、私は彼女のお姉さんにはなれないけど……きっとつらい思いをしてきたのね。
こんな小さな私を姉だと思うのは……
「ここで、居られるよりもどうぞ中へ」
「ああ、いえ。私はもう少しここからの景色を見ていたいのだけど」
「そうですか。なら、今お茶をお持ちしますね」
「お構いなく」
院長さんも優しそうだ。
いやー、お茶が染み渡る。
だが……私はこれからどうなるのだ? この人の姉の代わりとして、このままこの孤児院に引き取られるとでも言うの?
そんな事誰も了承はしないだろうし、それよりもここを惨状にしたくもない。
「お姉さまは、ここから見える景色が好きなのですか?」
「好き……か。どうなのかな、のどかでいいなとは思うけど。少しはのんびりと出来るような感じかな?」
「私は結構好きです」
高台というのは、こうやって色んな所が見渡せるという利点があるのね。
アパートの最上階に住んでいたけど、窓を開けてもそびえ立つマンションの壁しか見えなかったし。
ぼーっと辺りを並んでみていたのだけど、彼女は慌てるように席を立つ。
「あれは……ま、まさか!?」
彼女が何かに驚き、後ろへと一歩下がっていた。当然ベンチがあるわけで、後ろに下がることは出来るわけがない。
目を凝らしていくと、遠くの方で何かが砂煙を撒き散らし速いスピードで近づいてくる。
私にはただの砂埃にしか……
「し、師匠」
師匠? あの近づいてくるのが彼女の師匠ということ?
そんなに怖い人なのか、ガクガク膝を鳴らし怯えている。
そして、もう一度砂埃のする方向へと顔を向けると、風圧で目を閉じてしまう。
「見つけぞ!! イクミ殿をさらうとは……百回は死ぬ覚悟ができているのだろうな?」
「あ、ああ」
ルキアさん。普通は一回で終わりですよ?
いやいや、そうじゃない、そうじゃなくて、やばい、怖すぎる。
さっきまで遠くだったはずの砂煙は、瞬く間にこちらへと近づき、細身の剣が彼女の喉元を捉えていた。
ルキアの身体能力は一体どうなっているのよ……そうじゃなくて、ルキアを止めないと。
「師匠ぅ、ご、ごめんなさぃぃぃ」
「何だと? お前はまさか……ここで何をしている?」
私が止めに入ることもなく、ルキアは剣を鞘に戻し呆れた顔をしていた。
何事もなさそうなのでほっと胸をなでおろしていた。確かに、さらわれたようなものだけど、別に何かをされたというわけでもないから。殺さないでいてくれてよかったよ。
だけど、ルキアのことを師匠って……想像しただけで地獄絵図でしかないわね。
「る、ルキアの知り合いなのかしら?」
「何を言っておられるのです? これはティアです」
ティア……ティア……?
私は手を組み合わせ、額を乗せる。
だめだ、さっぱり思い出せない。
「お、お姉さま?」
「お前が、そんな暑くるしい格好をしているからだ」
フードや黒い布を剥ぎ取られると、ルキアと同じ耳をしたエルフが顔を見てせている。
ティア……エルフ。私の脳裏にはあの可愛らしい女の子が映し出されるのだけど……
「ティア!? う、嘘でしょ……」
ティアは少しの間だけ前に居た屋敷で匿っていたエルフの子供だ。
私の隣りにいてよく頭を撫でていた。だと言うのに、たった数年で身長はルキアとさほど変わらなくスラッとしている。
おかしい、私が知っているティアは私よりも低かった。そして、美人ではなく可愛らしい顔をしていた!
「お姉さま、改めましてお久しぶりです」
「ひ、久しぶりね、ティア。元気そうで良かったよ。クレスも近くにいるのかしら?」
「クレスは私とは別行動で、ランドさん達と一緒に行動をしてます」
は!? ええっ……ランド達と一緒なの?
それは、大丈夫なのかしら?
そういえば剣の素振りとか楽しそうにしていたわね。
いやいや、問題はそこじゃない!
「なんで村から出たのよ!? 私はそのために……」
「はい。助けて頂いたのは感謝してます。ですが……」
懐から取り出した袋から、掌のに落ちる無残な形をした輪っかのようなものだった。
エルフたちは他種族との交流を嫌う。
あの人が家の中に入っていってから随分と時間が立っている。
のんびりとしている場合でもないわね。
「お姉さま。体はもう平気ですか?」
「ええ、まぁ」
逃げることを考えようにも、あんな速度で来られたら逃げようもない。
なんかもう、私の周りにいる人たちがすごすぎて……いまさら驚きはしないけど、誰一人として負ける自信しかないわよ。
怪しい格好をしているものの、に危害を加えるつもりはないみたいね。
「お初にお目にかかります。私はこの孤児院を管理している、アメテと申します」
「あ、はい。私はイクミ・グセナーレと申します」
立ち上がり軽くお辞儀をする。
孤児院? 察するに、彼女はここの孤児院の出身ということなのだろう。
出稼ぎをして生計に役立てているという話かもしれないわね。
あー、よかった。そういう人なら私に対して、むやみに危害を加えることはなさそうね。
身代金とか言われたら……考えるのはよそう。色々と怖いから。
ただ、私は彼女のお姉さんにはなれないけど……きっとつらい思いをしてきたのね。
こんな小さな私を姉だと思うのは……
「ここで、居られるよりもどうぞ中へ」
「ああ、いえ。私はもう少しここからの景色を見ていたいのだけど」
「そうですか。なら、今お茶をお持ちしますね」
「お構いなく」
院長さんも優しそうだ。
いやー、お茶が染み渡る。
だが……私はこれからどうなるのだ? この人の姉の代わりとして、このままこの孤児院に引き取られるとでも言うの?
そんな事誰も了承はしないだろうし、それよりもここを惨状にしたくもない。
「お姉さまは、ここから見える景色が好きなのですか?」
「好き……か。どうなのかな、のどかでいいなとは思うけど。少しはのんびりと出来るような感じかな?」
「私は結構好きです」
高台というのは、こうやって色んな所が見渡せるという利点があるのね。
アパートの最上階に住んでいたけど、窓を開けてもそびえ立つマンションの壁しか見えなかったし。
ぼーっと辺りを並んでみていたのだけど、彼女は慌てるように席を立つ。
「あれは……ま、まさか!?」
彼女が何かに驚き、後ろへと一歩下がっていた。当然ベンチがあるわけで、後ろに下がることは出来るわけがない。
目を凝らしていくと、遠くの方で何かが砂煙を撒き散らし速いスピードで近づいてくる。
私にはただの砂埃にしか……
「し、師匠」
師匠? あの近づいてくるのが彼女の師匠ということ?
そんなに怖い人なのか、ガクガク膝を鳴らし怯えている。
そして、もう一度砂埃のする方向へと顔を向けると、風圧で目を閉じてしまう。
「見つけぞ!! イクミ殿をさらうとは……百回は死ぬ覚悟ができているのだろうな?」
「あ、ああ」
ルキアさん。普通は一回で終わりですよ?
いやいや、そうじゃない、そうじゃなくて、やばい、怖すぎる。
さっきまで遠くだったはずの砂煙は、瞬く間にこちらへと近づき、細身の剣が彼女の喉元を捉えていた。
ルキアの身体能力は一体どうなっているのよ……そうじゃなくて、ルキアを止めないと。
「師匠ぅ、ご、ごめんなさぃぃぃ」
「何だと? お前はまさか……ここで何をしている?」
私が止めに入ることもなく、ルキアは剣を鞘に戻し呆れた顔をしていた。
何事もなさそうなのでほっと胸をなでおろしていた。確かに、さらわれたようなものだけど、別に何かをされたというわけでもないから。殺さないでいてくれてよかったよ。
だけど、ルキアのことを師匠って……想像しただけで地獄絵図でしかないわね。
「る、ルキアの知り合いなのかしら?」
「何を言っておられるのです? これはティアです」
ティア……ティア……?
私は手を組み合わせ、額を乗せる。
だめだ、さっぱり思い出せない。
「お、お姉さま?」
「お前が、そんな暑くるしい格好をしているからだ」
フードや黒い布を剥ぎ取られると、ルキアと同じ耳をしたエルフが顔を見てせている。
ティア……エルフ。私の脳裏にはあの可愛らしい女の子が映し出されるのだけど……
「ティア!? う、嘘でしょ……」
ティアは少しの間だけ前に居た屋敷で匿っていたエルフの子供だ。
私の隣りにいてよく頭を撫でていた。だと言うのに、たった数年で身長はルキアとさほど変わらなくスラッとしている。
おかしい、私が知っているティアは私よりも低かった。そして、美人ではなく可愛らしい顔をしていた!
「お姉さま、改めましてお久しぶりです」
「ひ、久しぶりね、ティア。元気そうで良かったよ。クレスも近くにいるのかしら?」
「クレスは私とは別行動で、ランドさん達と一緒に行動をしてます」
は!? ええっ……ランド達と一緒なの?
それは、大丈夫なのかしら?
そういえば剣の素振りとか楽しそうにしていたわね。
いやいや、問題はそこじゃない!
「なんで村から出たのよ!? 私はそのために……」
「はい。助けて頂いたのは感謝してます。ですが……」
懐から取り出した袋から、掌のに落ちる無残な形をした輪っかのようなものだった。
エルフたちは他種族との交流を嫌う。
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