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学園編
138 お嬢様は王都に帰る
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ソルティアーノ公爵領で私のできることはなくなり、ルビー達は王都へと戻るための準備をしている。
私はまだやるべきことが残っている冒険部隊に事情を説明し、メルに全てを任せることにした。
「お嬢様、私達が付いて行かなくて本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ルキアとクロがずっと近くにいるからね。貴方達はここでやるべきことがあるの。分かって」
「はっ、かしこまりました。お嬢様」
今残っている冒険部隊は、メルがやっている深井戸を作るために残ってて貰う必要がある。
それ以外にも対策を考えているようだけど、私はそれが何なのかを説明を効かなかった。
私が関与するのは冒険部隊だけで、これからの策はメルやクレア兄のものだ。
奴隷たちにとっても、新しい道になってくれるのならそれでも良いと思っている。
「ところで……クレア?」
「何でしょうか?」
「何でしょうかじゃないわよ。離れなさい!」
準備が整うまで、私は本を読んでいたのだけど、クレアは私の後ろにピッタリとくっついて離れようともしない。
私が抵抗をしないのを良いことに、頭を撫でたり抱きついたりと、かなり鬱陶しい。
そもそも抗っていないのは、このバカ力を持つバカ娘に力では叶うはずもない。
「お嬢様。準備が整いました」
「そう、分かったわ」
ルビーに言われるものの私は動けないでいる。ルビーが来たことで、クレアは抱きついて離れない。
「クレア、私は帰るのよ? いい加減離して」
子供じゃあるまいし。
本を閉じて、私の頭の後ろを目掛けてクレアの頭を本で叩く。
手には衝撃を感じるものの、クレアは未だに離すつもりはないらしい。
「学園が始まれば、また一緒だから」
「本当ですか?」
「あー、うん。本当本当」
私にはそんなつもりはないし、クレアと私では、立場が違いすぎる。
ようやく開放された私は、馬車へと向けて歩いていく。
クレアは追いかけてくると、手を繋がれ隣で歩く。
冒険部隊が居ないため護衛が少ない。ルビーからは難色を示されるが、私としてはルキアとクロがいるだけでも十分すぎると思う。
冒険部隊の他にメイド達は奴隷のために残らせ、皆のことを公爵様にお願いすることにした。
「イクミ様。この度は誠に有難うございました」
「頑張ったのは私じゃないけどね。メル、後の事は任せるからね。しっかりアピールするのよ?」
「なっ!?」
隣りにいる、クレア兄を見て頬が染め上がっていく。
それだけ反応していれば、何も問題はないとは思うのよね。
「うん……わかっているわよ」
視線をそらすが、否定をしていたときに比べて関係は良好ね。
いや違うか、ただ、妹からの視線が恥ずかしいだけね。
クレアもいい加減にしないと、ライオのことで色々とやられても文句は言えなくなるよ?
「あ、そうそう。メルに言いたいことがあったのを忘れていたわ」
「なんなの?」
「あの浴場を、町で銭湯として作ってみたらどうかな? 衛生管理さえすれば、もっと過ごしやすくなると思う。それに、少ないけどお金にもなるかもしれないわよ」
「そ、そう言うものは、色々と利権やら結構面倒なのよ!? それに、そんなことを公爵様が許してくれると思っているの?」
「私にはそんなのはどうでもいいのよ。メル、頑張ってね」
不安そうに、額に手を当てているメルの両肩をクレア兄が掴んでいた。
「なるほど。面白そうだ」
「ジェドルト様まで……分からなくはないけど絶対に苦労する話ですよ」
「それじゃ皆、また王都でね」
クロが馬を走らせ、私は見えなくなるまで手を振り続けていた。
王都まではだいたい二日かかる。それは、街を通り抜け野営をしたらということ。
護衛の少ないこの状態で野営をすることはない。そのため、王都に帰るだけでも、町を経由するため少し遠回りになり四日程かかる。
「町では、今度は出歩いてもいいわよね」
「できれば大人しくして頂ければと思いますが……仕方がありません」
「さすがルビーさん。大好きです」
「身に余るお言葉ですが、これほどまでに感情の欠片も感じないとは」
うっ、バレている。
私ではクレアのようにはいかないわね。それもそうよね、あの子は感情豊かだしとても純粋だった。
前世の記憶があるものの、ソルティアーノ公爵家ではクレアは本当にいい子に育てられたわね。ライオの婚約者にはなりたくはないと思いつつも、ライオを守るために体を鍛えて見事に成果を上げている。
まー、その一件以来、他の令嬢は蜘蛛の子を散らすように婚約者候補は逃げたらしい。それがなくても婚約者としてクレアが決まっていただろうけどね。
この話は公爵様から聞いていたのだけど、嬉しいと言うよりも、この先本当に大丈夫なのだろうかという心配が絶えなかったみたい。
何時暴れるのかとヒヤヒヤしているのかしらね。
とはいえ、やりすぎ注意なのはすでにどうしようもない……帰る日の早朝に、クロと本気のぶつかり合いは、とてもあの綺麗なご令嬢からは誰も想像しないでしょうね。
ただ、その模擬戦は公爵様の胃にはあまりよろしくなかったようで、ガックリと肩を落として屋敷に入っていたのよね。
誰もあんな令嬢と対立なんてしたくはないわよね……私なら一瞬でミンチだわ。
私はまだやるべきことが残っている冒険部隊に事情を説明し、メルに全てを任せることにした。
「お嬢様、私達が付いて行かなくて本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ルキアとクロがずっと近くにいるからね。貴方達はここでやるべきことがあるの。分かって」
「はっ、かしこまりました。お嬢様」
今残っている冒険部隊は、メルがやっている深井戸を作るために残ってて貰う必要がある。
それ以外にも対策を考えているようだけど、私はそれが何なのかを説明を効かなかった。
私が関与するのは冒険部隊だけで、これからの策はメルやクレア兄のものだ。
奴隷たちにとっても、新しい道になってくれるのならそれでも良いと思っている。
「ところで……クレア?」
「何でしょうか?」
「何でしょうかじゃないわよ。離れなさい!」
準備が整うまで、私は本を読んでいたのだけど、クレアは私の後ろにピッタリとくっついて離れようともしない。
私が抵抗をしないのを良いことに、頭を撫でたり抱きついたりと、かなり鬱陶しい。
そもそも抗っていないのは、このバカ力を持つバカ娘に力では叶うはずもない。
「お嬢様。準備が整いました」
「そう、分かったわ」
ルビーに言われるものの私は動けないでいる。ルビーが来たことで、クレアは抱きついて離れない。
「クレア、私は帰るのよ? いい加減離して」
子供じゃあるまいし。
本を閉じて、私の頭の後ろを目掛けてクレアの頭を本で叩く。
手には衝撃を感じるものの、クレアは未だに離すつもりはないらしい。
「学園が始まれば、また一緒だから」
「本当ですか?」
「あー、うん。本当本当」
私にはそんなつもりはないし、クレアと私では、立場が違いすぎる。
ようやく開放された私は、馬車へと向けて歩いていく。
クレアは追いかけてくると、手を繋がれ隣で歩く。
冒険部隊が居ないため護衛が少ない。ルビーからは難色を示されるが、私としてはルキアとクロがいるだけでも十分すぎると思う。
冒険部隊の他にメイド達は奴隷のために残らせ、皆のことを公爵様にお願いすることにした。
「イクミ様。この度は誠に有難うございました」
「頑張ったのは私じゃないけどね。メル、後の事は任せるからね。しっかりアピールするのよ?」
「なっ!?」
隣りにいる、クレア兄を見て頬が染め上がっていく。
それだけ反応していれば、何も問題はないとは思うのよね。
「うん……わかっているわよ」
視線をそらすが、否定をしていたときに比べて関係は良好ね。
いや違うか、ただ、妹からの視線が恥ずかしいだけね。
クレアもいい加減にしないと、ライオのことで色々とやられても文句は言えなくなるよ?
「あ、そうそう。メルに言いたいことがあったのを忘れていたわ」
「なんなの?」
「あの浴場を、町で銭湯として作ってみたらどうかな? 衛生管理さえすれば、もっと過ごしやすくなると思う。それに、少ないけどお金にもなるかもしれないわよ」
「そ、そう言うものは、色々と利権やら結構面倒なのよ!? それに、そんなことを公爵様が許してくれると思っているの?」
「私にはそんなのはどうでもいいのよ。メル、頑張ってね」
不安そうに、額に手を当てているメルの両肩をクレア兄が掴んでいた。
「なるほど。面白そうだ」
「ジェドルト様まで……分からなくはないけど絶対に苦労する話ですよ」
「それじゃ皆、また王都でね」
クロが馬を走らせ、私は見えなくなるまで手を振り続けていた。
王都まではだいたい二日かかる。それは、街を通り抜け野営をしたらということ。
護衛の少ないこの状態で野営をすることはない。そのため、王都に帰るだけでも、町を経由するため少し遠回りになり四日程かかる。
「町では、今度は出歩いてもいいわよね」
「できれば大人しくして頂ければと思いますが……仕方がありません」
「さすがルビーさん。大好きです」
「身に余るお言葉ですが、これほどまでに感情の欠片も感じないとは」
うっ、バレている。
私ではクレアのようにはいかないわね。それもそうよね、あの子は感情豊かだしとても純粋だった。
前世の記憶があるものの、ソルティアーノ公爵家ではクレアは本当にいい子に育てられたわね。ライオの婚約者にはなりたくはないと思いつつも、ライオを守るために体を鍛えて見事に成果を上げている。
まー、その一件以来、他の令嬢は蜘蛛の子を散らすように婚約者候補は逃げたらしい。それがなくても婚約者としてクレアが決まっていただろうけどね。
この話は公爵様から聞いていたのだけど、嬉しいと言うよりも、この先本当に大丈夫なのだろうかという心配が絶えなかったみたい。
何時暴れるのかとヒヤヒヤしているのかしらね。
とはいえ、やりすぎ注意なのはすでにどうしようもない……帰る日の早朝に、クロと本気のぶつかり合いは、とてもあの綺麗なご令嬢からは誰も想像しないでしょうね。
ただ、その模擬戦は公爵様の胃にはあまりよろしくなかったようで、ガックリと肩を落として屋敷に入っていたのよね。
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