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学園編

130 お嬢様と朝の訓練

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 いつもより早い時間に目が覚める。
 私が体を起こしたことで、その音に反応したのか三人もそれぞれ起きて身支度をしている。

「おはよう、起こしてごめんね」

「おはようございます。お嬢様」

「いえ、私達にそのようなお気遣いは無用です」

「イクミ様は昨日のお休みはいつも早い時間でしたから。大丈夫です」

 そりゃそうでしょ。だってすることがないのよ。
 なんて言えば、ルビーになんて言われるか分かったものじゃない。
 まだ六時にもなっていないのね。

「庭を少し散歩でもするかな?」

「かしこまりました。私は少しやることがあります。ルキア、クロ。お嬢様とご一緒してください」

「わかったわ」

 ルビーがやることってなんだろう?
 それを気にしても、どうせ私関連のことだからすぐに分かるよね。

 魔法石か……ルキアは魔法石を使い水を温めている。

 温められた水にタオルを付けて、暖かくなったタオルで私の体を拭いていく。
 この屋敷でも、温めようとするのなら、かまどに薪を入れる。

「薪を使わないだけでも、自然的には良いのだろうけど」

 魔法石の材料は魔石が必要になる。
 だが、魔石は作れるものではなく一部の魔物の体内から取り出す必要がある。

 その魔石を加工して出来上がったものが魔法石であり、加工ミスをすれば使い物にならなくなってしまうため、出来上がった魔法石は高価になってしまう。
 だから、水を暖めるのなら薪で十分となってしまう。

「それでは、行ってらっしゃいませ」

 屋敷の中はしんと静まっていて、メイドたちは裏方で作業をしているのだろう。
 流石に公爵家ともなれば、絵画やランプもかなりの装飾が施されている。
 私の所とは違い、それなりに人を招くのだからこれぐらいは当然か?

「この時間だとそれなりに涼しいわね。

「その前に、帽子をかぶってくださいね」

 かなり大きめの帽子を被せられる。私は気にしないのだけど……日焼けをするのはあまり良くないとのことらしい。
 何に対して良くないのか?
 詳しくは考えたくもないが、こんなことでルビーからの小言も聞きたくはない。
 
「それでは、こちらを」

 ルキアからは真っ白なローブを被せられ、これも日焼け対策のつもりなのだろうか?
 正面が重なっているだけで、開いているから手を出すのにそれほど邪魔にもならない。
 相変わらず徹底しているわね。

 帽子があるにも関わらず、ルキアは日傘を持って私に日陰になるようにしてくれる。それをするのなら、できればルキアの日陰に入ってくれると良いのだけど。
 折角の色白の美人なのに……

「あれ? クレア!」

 髪はいつもとは違い、後ろで結んでいるがあの色からしてもクレアだというのは遠くからでも分かった。

「イクミ様!? どうしたのですかこんなお時間に。こちらで用意したベッドが合いませんでしたか?」

「そんなことはなかったよ。すぐに寝ちゃったから、早く起きただけのことよ」

 へー、クレアは朝になると剣の訓練をしていたのね。それはいいのだけど、その振り回していたのは角材のように四角だったが……どう見ても鉄の塊にしか見えない。

「随分と重そうに見えるのだけど……実際は軽いのよね?」

 できればそうだと言って!

「はい、今はそれほど重くはないです。もい少し重いぐらいでも良いのですが」

「ほう。イクミ殿、よろしければ私の持っている武器をクレアローズ様に貸してもよろしいか?」

「それはいいけど、ルキアの武器が無くなるよ?」

 そういうと、彼女は外套を開き腰には細身の剣を見ている。

「なるほどね。けど、クレアには重いでしょ?」

「いいのですか!?」

 両刃の大剣に目を輝かせる公爵令嬢は、持っていた鉄の棒らしき物を床に落とし、鈍い音を立てている。
 そして、楽しそうにその剣をブンブンと振り回す。
 流れるようなその仕草は、舞のように見えなくもない。だがしかし、持っているのが巨大な大剣だから、舞というには程遠い。

「いいですね」

「私には役目がある。そう言うことなら、クロに頼むのだな」

「私? 相手は公爵令嬢なのですよ?」

「なら、これでいいだろう」

 そう言って、近くにある木に落ちていた小さな枝を持ってくる。
 というか、三人は何の話をしているの?

「それでは、イクミ殿。少し下がりましょう」

 私達が離れると、クレアは剣を構え対するクロは小枝をくるくる回して遊んでいる。
 そういうことなのね。もっとわかりやすい会話はなかったの?

「イクミ殿。合図を」

「合図? えっと、それじゃ。始め!」

 そう言うと、クレアは一気に距離を詰め大剣が振り払われる。そこにはクロの姿はなく、小枝が、クレアの頭に触れる。
 クレアが負け、クロの勝ちとなるのだけど……クレアは楽しそうに笑っていた。

「もう一度です」

「何時でもどうぞ」

 さっきの攻撃は、本気ではなかったようで、実力の出せる相手に高揚しているみたいだったが……私には早すぎてよく分からない。
 私は、二人をそのままにして、奴隷たちの所へと向かい。

 少しだけ雑談をして過ごしていた。冒険部隊の皆は以前と比べ、多分一人でも食べていけるほどに強くなっている。しかし相変わらず、私の奴隷を辞めたいという者は誰一人としていない。

 私が来たことで、握手を求められたり、女性陣からは抱きしめられたりと和やかにな朝にも関わらず、再び庭全体に響き渡る怒号が鳴り響く。

「ああ、やっぱりそうなるのね」

「そのようです」

 あの声の持ち主は公爵様だ。大方、嬉々として大剣を振り回すバカ娘を叱っていたのだろう。
 クロも一緒に怒られていなければ良いのだけど……私は心配になり様子を見に行く。
 クロにはお咎めはないみたいだけど、かなり絞られているわね。
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