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学園編
129 お嬢様はバカ娘を観察する
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今一番の問題は水不足による畑の心配だ。
備蓄を考えれば、この夏ぐらいなら何の問題はない。
問題は冬になる。
現代社会のような環境があれば、他国からの輸入で被害があったとしてもなんとかやっていける。
ここではそんな事はできそうにもない。
領民に必要な食料は領内で生産をし、決められた分の生産物は王都へと流れている。
このソルティアーノ領は大きいとはいえ、日照りの影響はここだけに留まらず隣接する領地にも影響が出ている。
川の水を使うにも、雨が降っていないことで水位は低くなっていると思われる。
あれ事と思案を巡らせても、現状の把握が必要になってくる。
時間は瞬く間に過ぎていき、夕食に時間となる。
「長旅でさぞお疲れでしょう。どうぞおかけになってください」
「いえ、それほど疲れてはいないですね。むしろ、私の奴隷たちとフェルのことで返ってご迷惑をおかけしました」
私がそう言ってのけると、公爵様は困った顔をしている。
対面にいるクレア、隣りにいるメルからは私を蔑むような視線を感じる。
二人が怒られてことはともかく、ここに来るまでの間、私が何をしていたのか知っているはずだと思うのだけど。
「グセナーレ様は、何も気を使わなくてもよろしいのです」
私はただゴロゴロしていただけだから、疲れるなんて全く無い。
暑いのに走り回っていた彼女たちと一緒にしないでもらいたいわね。
メルが言うには私の普通は、普通じゃない。
それは理解しているつもりだったのだけどね。
毎度毎度あの状況をしていれば、今が普通になってしまうものなのよね。
「お待たせしました」
遅れてやって来たクレアのお兄さんに対して、公爵様は呆れたようなため息を漏らす。
「ジェドルト。研究もいいが、客人が居る手前もあるのだ。もう少しなんとかならんものか」
「申し訳ございません、父上。皆様方もお待たせしてしまいました」
うん。
私としても遅れてくる事自体は別に良いのだけど……ルルの肩を叩き、クレアの隣に移動させメルの隣に座るのはどうなのかしら?
この場合、公爵家側である対面に座るよね?
クレアは、隣にやって来たルルと笑い合っている。
メルに至っては……気恥ずかしそうにしていて、公爵様の顔色をうかがったりしている。。
予想していない出来事にかなり困っているようだけど。
私の知ったことではないわね。
「メルティア。食事が終わったら、話をいいだろうか?」
「は、はい、分かりました」
クレアとルルはその言葉を聞いて、目を輝かせる。
二人とも多分そういうことじゃないと思うわよ。メルは私よりも魔法石に詳しい。私の予想ではその話がメインだと思うのよね。
公爵様が合図を送ると、料理が運び込まれていく。
そう言えば……クレアのお母さんは?
運ばれてくる料理はここに居る私達の分だけ……壁にある肖像画はクレアに似ているけど、クレアではなさそうね。余計な詮索にもなるだろうから、何も聞かないでおこう。
「お口に合いますかな?」
「はい、とても……ただ、我儘を言って申し訳ないのですが」
料理自体はどれも美味しいと思う。
この人数だからというものことか、これがここの普通なのかはわからない。
「何でしょうか?」
「私にはこれだけで十分です。元々あまり食べませんので……申し訳ございません」
皿に乗せられた料理の量だけで、私には十分すぎる。
テーブルにある数々の料理は最終的にどう処分をするのかしらね。
「お気になさらずとも、分かりました」
私の屋敷の時とは違って、実家だからなのか……クレアは、外では猫をかぶっていたというわけね。
クレアとの食事はこれまでも何度もあった。しかし、今の彼女は飼いならしていたはずのその猫は何処かに遊びに行っているようで、彼女だけ用意された料理は倍以上になっている。
所作は丁寧であるものの、フォークが口に行くペースが早い。
それにしても、次の料理を持っているメイドが後ろで待機をしている。
ソルティアーノ公爵家ではこれが当たり前のようね。
「最初から言ってくれれば、良いものを……」
「グセナーレ様、何かございましたか?」
「いえいえ、私の家でお出しした量では、ご息女には物足りなかったのではないかと思っただけです。次からは、料理長に申し付けておきますので……」
そう言うと、クレアは恥ずかしがることもなく、満面の笑顔を見せてくる。
二人の話から聞いた、乙女ゲームの世界ではクレアローズは悪役令嬢だった。しかし、今のクレアの様子は、戦闘民族になっているのかしらね。
口うるさく公爵様に叱られるものの、あまり効果もなさそうで、「おまえはどうして」と、呆れ果てている。
普段からあれだけ食べていたにも関わらず、あのスリムな体型。
私を軽々と持ち上げるのも、これまでボロボロになるまで使われてきたあの数々の剣、ライオを助けた件からして、何をしていたのかを容易に想像できるわね。
それでいて公爵家のご令嬢として、ほぼ完璧に何事にもそつなくこなすクレアだから公爵様としてもあまり強くは言えないのだろうね。
私なんて今までどれだけ怒られたことか……今のクレアを見て、私以上に叱られてそうね。
備蓄を考えれば、この夏ぐらいなら何の問題はない。
問題は冬になる。
現代社会のような環境があれば、他国からの輸入で被害があったとしてもなんとかやっていける。
ここではそんな事はできそうにもない。
領民に必要な食料は領内で生産をし、決められた分の生産物は王都へと流れている。
このソルティアーノ領は大きいとはいえ、日照りの影響はここだけに留まらず隣接する領地にも影響が出ている。
川の水を使うにも、雨が降っていないことで水位は低くなっていると思われる。
あれ事と思案を巡らせても、現状の把握が必要になってくる。
時間は瞬く間に過ぎていき、夕食に時間となる。
「長旅でさぞお疲れでしょう。どうぞおかけになってください」
「いえ、それほど疲れてはいないですね。むしろ、私の奴隷たちとフェルのことで返ってご迷惑をおかけしました」
私がそう言ってのけると、公爵様は困った顔をしている。
対面にいるクレア、隣りにいるメルからは私を蔑むような視線を感じる。
二人が怒られてことはともかく、ここに来るまでの間、私が何をしていたのか知っているはずだと思うのだけど。
「グセナーレ様は、何も気を使わなくてもよろしいのです」
私はただゴロゴロしていただけだから、疲れるなんて全く無い。
暑いのに走り回っていた彼女たちと一緒にしないでもらいたいわね。
メルが言うには私の普通は、普通じゃない。
それは理解しているつもりだったのだけどね。
毎度毎度あの状況をしていれば、今が普通になってしまうものなのよね。
「お待たせしました」
遅れてやって来たクレアのお兄さんに対して、公爵様は呆れたようなため息を漏らす。
「ジェドルト。研究もいいが、客人が居る手前もあるのだ。もう少しなんとかならんものか」
「申し訳ございません、父上。皆様方もお待たせしてしまいました」
うん。
私としても遅れてくる事自体は別に良いのだけど……ルルの肩を叩き、クレアの隣に移動させメルの隣に座るのはどうなのかしら?
この場合、公爵家側である対面に座るよね?
クレアは、隣にやって来たルルと笑い合っている。
メルに至っては……気恥ずかしそうにしていて、公爵様の顔色をうかがったりしている。。
予想していない出来事にかなり困っているようだけど。
私の知ったことではないわね。
「メルティア。食事が終わったら、話をいいだろうか?」
「は、はい、分かりました」
クレアとルルはその言葉を聞いて、目を輝かせる。
二人とも多分そういうことじゃないと思うわよ。メルは私よりも魔法石に詳しい。私の予想ではその話がメインだと思うのよね。
公爵様が合図を送ると、料理が運び込まれていく。
そう言えば……クレアのお母さんは?
運ばれてくる料理はここに居る私達の分だけ……壁にある肖像画はクレアに似ているけど、クレアではなさそうね。余計な詮索にもなるだろうから、何も聞かないでおこう。
「お口に合いますかな?」
「はい、とても……ただ、我儘を言って申し訳ないのですが」
料理自体はどれも美味しいと思う。
この人数だからというものことか、これがここの普通なのかはわからない。
「何でしょうか?」
「私にはこれだけで十分です。元々あまり食べませんので……申し訳ございません」
皿に乗せられた料理の量だけで、私には十分すぎる。
テーブルにある数々の料理は最終的にどう処分をするのかしらね。
「お気になさらずとも、分かりました」
私の屋敷の時とは違って、実家だからなのか……クレアは、外では猫をかぶっていたというわけね。
クレアとの食事はこれまでも何度もあった。しかし、今の彼女は飼いならしていたはずのその猫は何処かに遊びに行っているようで、彼女だけ用意された料理は倍以上になっている。
所作は丁寧であるものの、フォークが口に行くペースが早い。
それにしても、次の料理を持っているメイドが後ろで待機をしている。
ソルティアーノ公爵家ではこれが当たり前のようね。
「最初から言ってくれれば、良いものを……」
「グセナーレ様、何かございましたか?」
「いえいえ、私の家でお出しした量では、ご息女には物足りなかったのではないかと思っただけです。次からは、料理長に申し付けておきますので……」
そう言うと、クレアは恥ずかしがることもなく、満面の笑顔を見せてくる。
二人の話から聞いた、乙女ゲームの世界ではクレアローズは悪役令嬢だった。しかし、今のクレアの様子は、戦闘民族になっているのかしらね。
口うるさく公爵様に叱られるものの、あまり効果もなさそうで、「おまえはどうして」と、呆れ果てている。
普段からあれだけ食べていたにも関わらず、あのスリムな体型。
私を軽々と持ち上げるのも、これまでボロボロになるまで使われてきたあの数々の剣、ライオを助けた件からして、何をしていたのかを容易に想像できるわね。
それでいて公爵家のご令嬢として、ほぼ完璧に何事にもそつなくこなすクレアだから公爵様としてもあまり強くは言えないのだろうね。
私なんて今までどれだけ怒られたことか……今のクレアを見て、私以上に叱られてそうね。
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