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学園編
119 お嬢様が知らない秘密
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「こ、これはどういうことですか!?」
ゼムレーディオ・レイネフォン子爵は、近衛兵によって取り押さえられていた。
ライオットが案内した場所には既に騎士が配備されていたことにより、子爵が入ると同時に、待ち構えていた騎士によって取り押さえられ縄を使い拘束されていた。
ライオットは、レイネフォン子爵を怒りの目で睨みつける。
「当然のことだ。グセナーレ様に対しての非道な行いの結果だ」
「ソルティアーノ様。貴方様は私ではなく、あの小娘を庇うおつもりですか?」
「そんな事すら、いちいち私の口から聞きたいのか?」
ジェドルトは、そう言い放ちメルティアの肩を抱き寄せる。
ここに来るまでの間、メルティアはジェドルトに婚約者のフリを提案しそれを快く受け入れていたが、ジェドルトにとってはその提案に乗じることを考えていた。
メルティアはいくらフリとはいえ、ここまでしてくれることに戸惑いを覚えていた。
「ジェドルト様」
「メルティアは、何も気にするな。私がお前を守ってやる」
ライオットは騎士が携えている剣を抜き、剣先を子爵へと向けた。
今にも斬りつけてもおかしくない様子に、騎士たちは固唾を呑んでいた。
それほどまでにライオットは、この場で起きたことに怒り心頭している。
貴族たちの揉め事は、こう言った場では多い。だが、今回のことは知らなかったで済まされない。
「なぜこんな事になったのかを、何も考えないとは……」
「で、殿下。何をなされるのですか、殿下のあの忌み子を庇うというのですか!」
「忌み子などと……王命が出されたというのに、私の前でよく言えたな!」
ライオットの怒りに満ちた声に気圧され、子爵は口籠っていた。
ルディストラ王国では、数年前にイクミのように髪と瞳の色違いは忌み子として扱われたが、王命によってその者達は何も変わらないように扱うようにと命令が下された。
これには、多くは貴族これに反発もあったが、王族が率先したことにより、半ば強制的に執行される。
「イクミ・グセナーレ。グセナーレ家は爵位はない。だがしかし、私の叔母上に対して、貴殿の振る舞いは王国の反逆になりうる」
「なっ……まさか。あれが……前国王の?」
「例え、彼女のことを知らないなどという話が、通用するとでも思っているわけでは無いだろう?」
あの時、イクミの前に現れた老人こそ前国王である、ルードリッヒ・ルディストラ。
イクミには徹底的に事情は伏せられ、一部の者だけにしかまだ公開はされていない。
忌み子は今まで蔑まされていたことで、何も出来ないと確約されていた。
しかし、イクミに期待をしていたルードリッヒの思惑通りに、イクミの存在は各方面では多大な称賛が作られていた。
「レイネフォン領にも、グセナーレ様によって派遣された冒険者により多くの被害が軽減されたはず。それを知らないとは、お前は領主である資格もない」
バナンを筆頭に各地にいる魔物の鎮圧。飢餓に苦しむ平民への支援。
奴隷たちがイクミの名前を各方面に触れ回ることで、平民達からは絶大な支持を人知れず得ていた。
どんな人物かを知らなくても、貴族の間から王国に報告が上がるほどにまでなっていることもある。その波を止めないためにも、イクミには事実を秘匿にされ自由にさせていた。
「メルティア。お前のあの者と面識があるのだろう。今すぐに誤解であることを行って来い」
「お父様、それは出来ません」
「なんだと?」
「この度こちらへと赴いたのは、私とルルの廃嫡をお願いするためだけです」
あれだけのことをしていたにも関わらず、メルティアはどの面を下げて許しを得られるのかと、怒りに満ちていた。
いくら前世の記憶があるため、元から父親とは思えない。
しかし、事実として父親である人物を、これほど深く恨むことはなかった。
設定だからと諦めていた所もあったが、今となってはこれからのことを考えていく中で邪魔な足かせにすぎない。
そんな彼女の心を読みとったのか、ジェドルトは宥めるように頭に手を置く。
「メルティア。グセナーレ様の所へと行こう。もちろん、ゴミは片付けた後にな」
「なんだと……私の許可がなければ、お前たちの婚姻など」
「廃嫡をすればいいだけだ。もう、会うこともない」
そう言い残し、ライオットに全てを任せ、そのまま部屋から退出していった。
廊下には、クレアが待っていて案内されて行く。
「なぜこのような……諍いがあっただけでこのような扱いは、不当極まりございません。殿下、眼をお覚ましください」
「ほう、私の妹に手を上げ、怪我をさせただけではなく、多くの面前の前で蔑む。貴族としてもあるまじき行為でしか無い」
「へ、陛下……それは事実ではございません」
「黙れ。後は父上にお任せることにする」
再び剣を突きつけるが、頬を掠めたことで血がにじむ。
剣を騎士に返し、イクミの所にいるクレアの元へとライオットは部屋から出て行った。
レイネフォン子爵は連行される間、何かに取り憑かれたかのようにぶつぶつと何かをつぶやいていた。
ゼムレーディオ・レイネフォン子爵は、近衛兵によって取り押さえられていた。
ライオットが案内した場所には既に騎士が配備されていたことにより、子爵が入ると同時に、待ち構えていた騎士によって取り押さえられ縄を使い拘束されていた。
ライオットは、レイネフォン子爵を怒りの目で睨みつける。
「当然のことだ。グセナーレ様に対しての非道な行いの結果だ」
「ソルティアーノ様。貴方様は私ではなく、あの小娘を庇うおつもりですか?」
「そんな事すら、いちいち私の口から聞きたいのか?」
ジェドルトは、そう言い放ちメルティアの肩を抱き寄せる。
ここに来るまでの間、メルティアはジェドルトに婚約者のフリを提案しそれを快く受け入れていたが、ジェドルトにとってはその提案に乗じることを考えていた。
メルティアはいくらフリとはいえ、ここまでしてくれることに戸惑いを覚えていた。
「ジェドルト様」
「メルティアは、何も気にするな。私がお前を守ってやる」
ライオットは騎士が携えている剣を抜き、剣先を子爵へと向けた。
今にも斬りつけてもおかしくない様子に、騎士たちは固唾を呑んでいた。
それほどまでにライオットは、この場で起きたことに怒り心頭している。
貴族たちの揉め事は、こう言った場では多い。だが、今回のことは知らなかったで済まされない。
「なぜこんな事になったのかを、何も考えないとは……」
「で、殿下。何をなされるのですか、殿下のあの忌み子を庇うというのですか!」
「忌み子などと……王命が出されたというのに、私の前でよく言えたな!」
ライオットの怒りに満ちた声に気圧され、子爵は口籠っていた。
ルディストラ王国では、数年前にイクミのように髪と瞳の色違いは忌み子として扱われたが、王命によってその者達は何も変わらないように扱うようにと命令が下された。
これには、多くは貴族これに反発もあったが、王族が率先したことにより、半ば強制的に執行される。
「イクミ・グセナーレ。グセナーレ家は爵位はない。だがしかし、私の叔母上に対して、貴殿の振る舞いは王国の反逆になりうる」
「なっ……まさか。あれが……前国王の?」
「例え、彼女のことを知らないなどという話が、通用するとでも思っているわけでは無いだろう?」
あの時、イクミの前に現れた老人こそ前国王である、ルードリッヒ・ルディストラ。
イクミには徹底的に事情は伏せられ、一部の者だけにしかまだ公開はされていない。
忌み子は今まで蔑まされていたことで、何も出来ないと確約されていた。
しかし、イクミに期待をしていたルードリッヒの思惑通りに、イクミの存在は各方面では多大な称賛が作られていた。
「レイネフォン領にも、グセナーレ様によって派遣された冒険者により多くの被害が軽減されたはず。それを知らないとは、お前は領主である資格もない」
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どんな人物かを知らなくても、貴族の間から王国に報告が上がるほどにまでなっていることもある。その波を止めないためにも、イクミには事実を秘匿にされ自由にさせていた。
「メルティア。お前のあの者と面識があるのだろう。今すぐに誤解であることを行って来い」
「お父様、それは出来ません」
「なんだと?」
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あれだけのことをしていたにも関わらず、メルティアはどの面を下げて許しを得られるのかと、怒りに満ちていた。
いくら前世の記憶があるため、元から父親とは思えない。
しかし、事実として父親である人物を、これほど深く恨むことはなかった。
設定だからと諦めていた所もあったが、今となってはこれからのことを考えていく中で邪魔な足かせにすぎない。
そんな彼女の心を読みとったのか、ジェドルトは宥めるように頭に手を置く。
「メルティア。グセナーレ様の所へと行こう。もちろん、ゴミは片付けた後にな」
「なんだと……私の許可がなければ、お前たちの婚姻など」
「廃嫡をすればいいだけだ。もう、会うこともない」
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剣を騎士に返し、イクミの所にいるクレアの元へとライオットは部屋から出て行った。
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