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学園編
116 お嬢様とクレアの兄
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王宮でのパーティーは貴族たちの集まりでもあり、当然メルの父親である子爵も来ると予想できる。
でも問題はそれだけではなく、メルには二つ上に姉が居てそちらは正妻の娘であり、かなり大事にされている。
しかしながら、性格に難があるためか、子爵のやっていることが周りに知れ渡っているかはまではわからないけど、婚約者が居ないため訪れている可能性は高い。
それに立ち向かうメルはすごいと感心すら思えるよ。
そういや……クレアから屋敷で待っているように言われたのだけど?
一緒に行きたいとかそんな話なのだろうけど……こっちにも馬車はあるのに。
先日のことがなにか関係でもあるのかしらね?
今から一週間ほど前に、クレアにメルのことは話しをしている。メルは子爵令嬢だがパーティーに参加するにも、爵位持ちの人間の招待でもなければ会場へと入ることは出来ない。
そのため公爵に取り合ってもらうようにいうと、その日のうちに許可をもらってきたのは流石にびっくりした。
だからと言って、クレアと一緒に公爵がここに来るなんてことはないよね?
「考えただけで、具合が悪くなってきた」
「どうしたの?」
「クレアが来るってことは、ついでに公爵も来るんじゃないかって考えたら」
メルがここで暮らすようになり、何かとクレアの泊まりも多くなった。それなのに、私自身一度たりとも、クレアの父である公爵と会ったことがない。
クレアからは『大丈夫ですよ』と言われているが、具体的に何がどう大丈夫なのかがわからない。
「クレアローズ・ソルティアーノ様がご到着されました」
つ、ついに来た……
玄関ホールで待っているらしいのだけど、私がこのままここに居る訳にもいかない。
重い足取りで、ホールへと行くとクレアだけではなく、一人の男性も一緒に来ていた。
「おまたせ、クレア」
メルでもすごいとは思っていたけど……クレアに至ってはまるで別人のように綺麗よね。
クレアはスカートを広げ、優雅にお辞儀をしている。
「可愛いですわ、イクミ様」
「それならいいのだけど、この方は?」
「妹がいつも世話になっている。ジェドルト・ソルティアーノだ」
「イクミ・グセナーレです」
「メルティア・レイネフォンでございます」
つまり兄ってことでいいのよね。
私達を見て少しだけ軽く礼をするだけで、何も話をするつもりはないみたいね。
ぶっきらぼうだけど、公爵に変わってここを視察へと着たのかしら?
それともただクレアに付いてきただけ? 表情からは何も分かりそうにもないわね。
クレアと比べて、髪と瞳の色は少し濃い青なのね。
「こちらこそ、クレアにはいつもお世話になっております。私の我儘に付き合って頂きいつも感謝しております」
「妹のことを気にかける必要はない。父も貴方様には感謝しておりますので」
公爵が私に感謝? 何を言っているのだろうかクレアは……ご飯のこと?
それだったらメルになるよね?
ここ最近なら、少しは話をする程度でいつも二人でいることのほうが多いのよね。私にはあんなに甘いものは入らないのに……女の子になりきれていない証拠なのかもしれない。
「イクミ様。お帽子可愛いですね」
「ああ、これね。メルが作ってくれたのよ。私的には、更に幼く見えそうで嫌なのだけど」
「そんなことはありませんですわ」
うん。クレアも絶対にそう思ったわね。
髪に隠れているのだけど、実際はカチューシャになっていて小さな帽子を斜めにつけるのがポイントらしい。
ルビーが考案した、無駄に大きいリボンよりかはマシなのよね。
「それよりも、時間は少し早くないかしら?」
「そのことなのですが……兄がこちらのお屋敷にある魔法石を拝見したいと言って聞かなくて」
魔法石?
私の寝室のことじゃないよね? メルに話をしたときには絶対に誰にも知られないようにするのよと何度言われたことか……私の屋敷はどうも規格外らしいのよね。
まあ、少しは分かっていたつもりだけど。
「差し出がましいですが、私がご案内いたします」
「そうか。では、頼むとしよう」
そう言って、一階にある厨房へとお兄さんを連れて行った。
あそこなら私が行くよりも、普段から使用していているから私よりも説明はできるよね。
「お嬢様。お時間があるのでしたら、執務室ではなく応接室へとご案内されてはいかがでしょうか?」
「それもそうね。トワロ、貴方はメルの所へと行って伝えてもらえるかしら」
「かしこまりましたお嬢様」
その時に奥にある食堂の扉が勢いよく開く。
「浴場はあちらです」
「そうか、では案内を頼む」
出てきたメルはスカートを持ち上げバタバタと走り出し、その後をクレア兄が追いかけて行く。乱暴にドアを開け放し、何やら話し始めていると、メイドたちが使っている浴場からは、歓喜に満ちたような雄叫びが聞こえてきていた。
「ぅぉぉおおおお。すばらしいぃぃぃ!!」
「一体何なのかしら?」
「兄が申し訳ございません」
クレアは恥ずかしそうに俯いて謝罪をしているけど……あの声はクレア兄?
でも問題はそれだけではなく、メルには二つ上に姉が居てそちらは正妻の娘であり、かなり大事にされている。
しかしながら、性格に難があるためか、子爵のやっていることが周りに知れ渡っているかはまではわからないけど、婚約者が居ないため訪れている可能性は高い。
それに立ち向かうメルはすごいと感心すら思えるよ。
そういや……クレアから屋敷で待っているように言われたのだけど?
一緒に行きたいとかそんな話なのだろうけど……こっちにも馬車はあるのに。
先日のことがなにか関係でもあるのかしらね?
今から一週間ほど前に、クレアにメルのことは話しをしている。メルは子爵令嬢だがパーティーに参加するにも、爵位持ちの人間の招待でもなければ会場へと入ることは出来ない。
そのため公爵に取り合ってもらうようにいうと、その日のうちに許可をもらってきたのは流石にびっくりした。
だからと言って、クレアと一緒に公爵がここに来るなんてことはないよね?
「考えただけで、具合が悪くなってきた」
「どうしたの?」
「クレアが来るってことは、ついでに公爵も来るんじゃないかって考えたら」
メルがここで暮らすようになり、何かとクレアの泊まりも多くなった。それなのに、私自身一度たりとも、クレアの父である公爵と会ったことがない。
クレアからは『大丈夫ですよ』と言われているが、具体的に何がどう大丈夫なのかがわからない。
「クレアローズ・ソルティアーノ様がご到着されました」
つ、ついに来た……
玄関ホールで待っているらしいのだけど、私がこのままここに居る訳にもいかない。
重い足取りで、ホールへと行くとクレアだけではなく、一人の男性も一緒に来ていた。
「おまたせ、クレア」
メルでもすごいとは思っていたけど……クレアに至ってはまるで別人のように綺麗よね。
クレアはスカートを広げ、優雅にお辞儀をしている。
「可愛いですわ、イクミ様」
「それならいいのだけど、この方は?」
「妹がいつも世話になっている。ジェドルト・ソルティアーノだ」
「イクミ・グセナーレです」
「メルティア・レイネフォンでございます」
つまり兄ってことでいいのよね。
私達を見て少しだけ軽く礼をするだけで、何も話をするつもりはないみたいね。
ぶっきらぼうだけど、公爵に変わってここを視察へと着たのかしら?
それともただクレアに付いてきただけ? 表情からは何も分かりそうにもないわね。
クレアと比べて、髪と瞳の色は少し濃い青なのね。
「こちらこそ、クレアにはいつもお世話になっております。私の我儘に付き合って頂きいつも感謝しております」
「妹のことを気にかける必要はない。父も貴方様には感謝しておりますので」
公爵が私に感謝? 何を言っているのだろうかクレアは……ご飯のこと?
それだったらメルになるよね?
ここ最近なら、少しは話をする程度でいつも二人でいることのほうが多いのよね。私にはあんなに甘いものは入らないのに……女の子になりきれていない証拠なのかもしれない。
「イクミ様。お帽子可愛いですね」
「ああ、これね。メルが作ってくれたのよ。私的には、更に幼く見えそうで嫌なのだけど」
「そんなことはありませんですわ」
うん。クレアも絶対にそう思ったわね。
髪に隠れているのだけど、実際はカチューシャになっていて小さな帽子を斜めにつけるのがポイントらしい。
ルビーが考案した、無駄に大きいリボンよりかはマシなのよね。
「それよりも、時間は少し早くないかしら?」
「そのことなのですが……兄がこちらのお屋敷にある魔法石を拝見したいと言って聞かなくて」
魔法石?
私の寝室のことじゃないよね? メルに話をしたときには絶対に誰にも知られないようにするのよと何度言われたことか……私の屋敷はどうも規格外らしいのよね。
まあ、少しは分かっていたつもりだけど。
「差し出がましいですが、私がご案内いたします」
「そうか。では、頼むとしよう」
そう言って、一階にある厨房へとお兄さんを連れて行った。
あそこなら私が行くよりも、普段から使用していているから私よりも説明はできるよね。
「お嬢様。お時間があるのでしたら、執務室ではなく応接室へとご案内されてはいかがでしょうか?」
「それもそうね。トワロ、貴方はメルの所へと行って伝えてもらえるかしら」
「かしこまりましたお嬢様」
その時に奥にある食堂の扉が勢いよく開く。
「浴場はあちらです」
「そうか、では案内を頼む」
出てきたメルはスカートを持ち上げバタバタと走り出し、その後をクレア兄が追いかけて行く。乱暴にドアを開け放し、何やら話し始めていると、メイドたちが使っている浴場からは、歓喜に満ちたような雄叫びが聞こえてきていた。
「ぅぉぉおおおお。すばらしいぃぃぃ!!」
「一体何なのかしら?」
「兄が申し訳ございません」
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