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学園編
93 お嬢様のペットは?
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あの様子からして魔獣を見るのは初めてよね。
フェルは大丈夫だと言った所で、そう簡単に理解もできないわよね。
クレアも気に入ってくれるといいのだけどね。
「大丈夫だから。ルキア、クレアの隣りにいてあげて」
「クレア殿、大丈夫です」
「ですが……」
こうして座っていると、かなり大きな犬にしか見えないわね。
相変わらず毛並みが良いことで……ただ、犬とは違い尻尾が揺れ動くことはない。
なんともそれが悲しいよ。
「フェル。待っていてくれたの?」
「ふん、誰がお前のことなど待つか。主のご命令でなければ……ご命令でなくともお前に会いに来るに決まっているだろう! なっ?」
フェルの目は私ではなく、上を見つつ後半の声が大きい。
その様子を察するに、私の頭上の奥に見えるルキアの顔色をうかがっているようね。
いい加減フェルをいじめるのは、良くないとは思うのだけどね。
「ありがとうね。よしよし」
「それは魔獣ですよね。この……この世界だと、魔獣を使役するなんて聞いたことがありません」
使役? 奴隷紋のようなことを指しているのだろうか?
ペットという概念が、こちらでは使役という言葉になるとか?
フェルは、クロとルキアを主と言っているから私とバナンのような関係とは……思えないわね。
「何だその小娘は……儂の贄か?」
「彼女はクレア。私の友達だよ……ニエってなんなの?」
「私を生贄にするおつもりなのですか?」
「ソルティアーノ様は、イクミ様の大切なご友人。犬……お前今なんって言った?」
私がフェルを犬呼ばわりしたことで、クロは怒る時に必ずそうやって貶してたりしている。
今更何を言っても聞いてはくれないし、フェルの悪い所があるから何とも言えなくなる。
「主、お待ち下さい。今のはほんの冗談です。その小娘が怯えていたので……」
「フェル。それだとちょっと擁護できないなよ。罰として、クレアにも撫でられなさい。クレア大丈夫だよ、怖いかもしれないけど、少し口が悪いけどいい子だよ」
私がフェルのお腹の辺りに座ると、背中はすっぽりと収まる。
この時小さくてよかったと思える瞬間だった。このベッドで寝てみたいとは思うけど、ルビーが全然許してはくれない。
クレアは恐る恐る手を伸ばしていた。
「で、では失礼します……」
「そう、怯えることはない。さっきは悪かった。好きに触るが良い」
そう言って、目を閉じることで警戒心を薄れるようにしているのだろう。
最初から素直にしていれば良いものを……毛並みの感触が伝わり、次第にクレアの表情は和らいでいった。
「ふわっ。何これ、すごく気持ちいい。イクミ様はいつも独り占めしていたのですか?」
「いつもじゃないよ。フェルは魔獣だからね、以前とは違いあまり会えないの。それに、少し前まで駆り出されていたから。ありがとうね、お疲れ様」
「おまたせしました。お嬢様、またそのような格好をされて……」
ルビーが来たことで、私の寛ぎ時間が終了してしまう。
何でダメなのかはわからないけど、結構気持ちがいいのに……私が居なくなったことで、代わりにクレアが座っている。
「ソルティアーノ様まで……フェルも久しぶりですし、仕方がありませんか」
「そういうこと」
用意してくれた干し肉を手にとって、フェルに口へと近づけていく。
食べてはくれるのだけど、お前は相変わらずフンと鼻息を漏らすよね。
何が不満なのよ!
「ど、どうぞ」
私の真似をするかのように、クレアが差し出した干し肉を、フェルが食べるだけなのにクレアはすごく嬉しそうだった。
だが……あの尻尾の動きは何なんだ?
やたらとブンブン動いているように思えるのだけど?
あんなの一度たりとも見たことがないんですけど!
「フェルさんの種族とかは何に属しているのですか?」
「種族? 狼?」
「この大きさだと、ダイアウルフでしょうか? 魔法を使えるとしたらルーンウルフ?」
「儂らは、フェンリルという種族だ。個体数も少なく、お前たち人間を見たのも三百年ほど昔のこと。人間が儂を知らぬのも無理はない」
クレアは意外と博識なのね。そんな言葉が平然と出てくるのだから。
私からすればただのおっきな犬にしか見えない。クロ達に無理やり私の相手をさせられているのだから、内心嫌なのかもしれないわね。
「フェンリル……幻狼ともいわれ、その強さは巨大竜にも匹敵すると言われるあのフェンリルですか?」
「そうなの? フェルってそんなに強いんだ」
「知らん。龍と戦ったことすら無い。そもそも意味もなく何故戦う必要がある」
それもそうだ。負ければ死ぬだけなら、あえて戦う必要すらない。
多分それは違うと思うよ。その話が本当なら、クロとルキアはその龍以上に強いということになってしまうからね。どう考えても……ここに来る時のランドドラゴンって、アレも一応は龍に入るのかしら?
「クロ。悪いのだけど、クレアを送ってあげて」
「わかりました」
「そうですね。今日は色々と有難うございました」
フェルがいつものように箱へと入っていくと、クレアも一緒に入るものだから、私以上に犬好きなのかもしれないわね。
フェルは大丈夫だと言った所で、そう簡単に理解もできないわよね。
クレアも気に入ってくれるといいのだけどね。
「大丈夫だから。ルキア、クレアの隣りにいてあげて」
「クレア殿、大丈夫です」
「ですが……」
こうして座っていると、かなり大きな犬にしか見えないわね。
相変わらず毛並みが良いことで……ただ、犬とは違い尻尾が揺れ動くことはない。
なんともそれが悲しいよ。
「フェル。待っていてくれたの?」
「ふん、誰がお前のことなど待つか。主のご命令でなければ……ご命令でなくともお前に会いに来るに決まっているだろう! なっ?」
フェルの目は私ではなく、上を見つつ後半の声が大きい。
その様子を察するに、私の頭上の奥に見えるルキアの顔色をうかがっているようね。
いい加減フェルをいじめるのは、良くないとは思うのだけどね。
「ありがとうね。よしよし」
「それは魔獣ですよね。この……この世界だと、魔獣を使役するなんて聞いたことがありません」
使役? 奴隷紋のようなことを指しているのだろうか?
ペットという概念が、こちらでは使役という言葉になるとか?
フェルは、クロとルキアを主と言っているから私とバナンのような関係とは……思えないわね。
「何だその小娘は……儂の贄か?」
「彼女はクレア。私の友達だよ……ニエってなんなの?」
「私を生贄にするおつもりなのですか?」
「ソルティアーノ様は、イクミ様の大切なご友人。犬……お前今なんって言った?」
私がフェルを犬呼ばわりしたことで、クロは怒る時に必ずそうやって貶してたりしている。
今更何を言っても聞いてはくれないし、フェルの悪い所があるから何とも言えなくなる。
「主、お待ち下さい。今のはほんの冗談です。その小娘が怯えていたので……」
「フェル。それだとちょっと擁護できないなよ。罰として、クレアにも撫でられなさい。クレア大丈夫だよ、怖いかもしれないけど、少し口が悪いけどいい子だよ」
私がフェルのお腹の辺りに座ると、背中はすっぽりと収まる。
この時小さくてよかったと思える瞬間だった。このベッドで寝てみたいとは思うけど、ルビーが全然許してはくれない。
クレアは恐る恐る手を伸ばしていた。
「で、では失礼します……」
「そう、怯えることはない。さっきは悪かった。好きに触るが良い」
そう言って、目を閉じることで警戒心を薄れるようにしているのだろう。
最初から素直にしていれば良いものを……毛並みの感触が伝わり、次第にクレアの表情は和らいでいった。
「ふわっ。何これ、すごく気持ちいい。イクミ様はいつも独り占めしていたのですか?」
「いつもじゃないよ。フェルは魔獣だからね、以前とは違いあまり会えないの。それに、少し前まで駆り出されていたから。ありがとうね、お疲れ様」
「おまたせしました。お嬢様、またそのような格好をされて……」
ルビーが来たことで、私の寛ぎ時間が終了してしまう。
何でダメなのかはわからないけど、結構気持ちがいいのに……私が居なくなったことで、代わりにクレアが座っている。
「ソルティアーノ様まで……フェルも久しぶりですし、仕方がありませんか」
「そういうこと」
用意してくれた干し肉を手にとって、フェルに口へと近づけていく。
食べてはくれるのだけど、お前は相変わらずフンと鼻息を漏らすよね。
何が不満なのよ!
「ど、どうぞ」
私の真似をするかのように、クレアが差し出した干し肉を、フェルが食べるだけなのにクレアはすごく嬉しそうだった。
だが……あの尻尾の動きは何なんだ?
やたらとブンブン動いているように思えるのだけど?
あんなの一度たりとも見たことがないんですけど!
「フェルさんの種族とかは何に属しているのですか?」
「種族? 狼?」
「この大きさだと、ダイアウルフでしょうか? 魔法を使えるとしたらルーンウルフ?」
「儂らは、フェンリルという種族だ。個体数も少なく、お前たち人間を見たのも三百年ほど昔のこと。人間が儂を知らぬのも無理はない」
クレアは意外と博識なのね。そんな言葉が平然と出てくるのだから。
私からすればただのおっきな犬にしか見えない。クロ達に無理やり私の相手をさせられているのだから、内心嫌なのかもしれないわね。
「フェンリル……幻狼ともいわれ、その強さは巨大竜にも匹敵すると言われるあのフェンリルですか?」
「そうなの? フェルってそんなに強いんだ」
「知らん。龍と戦ったことすら無い。そもそも意味もなく何故戦う必要がある」
それもそうだ。負ければ死ぬだけなら、あえて戦う必要すらない。
多分それは違うと思うよ。その話が本当なら、クロとルキアはその龍以上に強いということになってしまうからね。どう考えても……ここに来る時のランドドラゴンって、アレも一応は龍に入るのかしら?
「クロ。悪いのだけど、クレアを送ってあげて」
「わかりました」
「そうですね。今日は色々と有難うございました」
フェルがいつものように箱へと入っていくと、クレアも一緒に入るものだから、私以上に犬好きなのかもしれないわね。
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