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学園編
85 お嬢様は見た!?
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「グセナーレ様のお屋敷ですか。私も一度拝見をしてみたいですね」
「ライオも来る? 二人共来てよ」
「はい。お招き頂きありがとうございます」
これで確実に、持ち越しが確定する。
毎回やっていて特に問題がないのだから、いっその事月一回にすればいいのよ。
むしろ無くてもいいぐらいだ!
「それでは、お嬢様の言い分は、本日は初めての実技により大変疲れているからマナーレッスンをお休みし、また今後のレッスンを月一回のみにするということでお間違えはございませんか?」
「は、はい。その通りで御座います」
何という重圧。
玄関ホールで待っていたルビーに説明してみたものの、普段であれば顔を下へと向けている。だけど、正面を向いたまま私を鋭い目で見下していた。
それに、言葉の端々から、私の言葉に対しての嘘や目論見を抉るかのようにも聞こえてくる。
後ろに控えているトワロはため息をつき、首を小さく横に振っている。
「いや、今日は本当に疲れていて、歩くだけでも辛いのよ。今日もクレアに送ってもらったし」
「それは存じておりますが、私としましてはそのようなことよりも、本日が初めての実技とはどういうことですか?」
「い、いや。それはわぁ……」
そう言えば何も聞かれていなかったから、何も言ってなかったけど……私が毎回サボっていると思われてもしょうがないよね?
最初は確かにサボってはいたけど、今では学園長からの許可済みの話だし何も問題はないと思いたい。
「き、着替えるのが面倒だったからよ」
「は?」
日本とは違い、制服のまま実技の訓練は開始されている。そのため一応は、女生徒にはスカートからズボンへと履き替える必要はある。生徒の中には、スカートの中にスボンを履くだけという人もいる。
「なるほど、そういうことですか……」
「それに学園長からも、実技は免除を貰っているのだから何も問題はない話よ」
「かしこまりました。ですが、月一回のレッスンは認められません。今週は致し方ないとしましても、それでよろしいですね?」
「わかったわ。それでいいわよ……とりあえず、着替えを済ませるからクレアたちを執務室に連れて行ってあげて」
トワロに案内を任せ、私はルビーに抱えられ寝室へと向かう。
馬車まで連れて行ってもらえば、ルキアが居たことだし……別にクレアを呼ばなくても良かったのでは?
レッスンは免れたものの、できることならこのままベッドにダイブしたい……ここに来て二人を呼んだことに後悔してしまうとは思わなかったよ。ちゃんと説明だけしていれば、今頃はあのベッドの中で休めていたのかもしれない。
* * *
「ここが、グセナーレ家の執務室。思っている以上に立派だね」
「そのようですね」
クレアは何もせず、ソファーへと腰を下ろしイクミが戻ってくるのを待っていたが、ライオは部屋に置かれている内装を見ていた。
イクミが普段から使用をしている部屋に残された二人。ライオが何度か話しかけるが、クレアは視線を向けることもなく、生返事を繰り返していた。
「何か聞きたいことでもあるのかい?」
「殿下……イクミ様のことを、何か知っておられますね?」
「君に申し訳ないのだけど、まだ私からは話せないことなんだ。ごめんね……」
「そう、ですか……この場で言うことではないのですが、婚約破棄の件をそろそろ前向きに」
クレアの思いがけない言葉に、ライオはクレアの隣へと座り抱きしめていた。
抱きしめられたことで、耳まで紅く染まった顔を隠すのがクレアにできる精一杯の抵抗だった。
「私はクレアだけを……以前君が言ったように、確かに親の都合で婚約者になったのは認めたよ。だが、どうすれば私の思いは君に伝わる」
その言葉の意味を理解できないクレアではなかったが、だけどどうしても受け止めるわけにはいかなかった。
二人がまだ七歳の頃に、互いを婚約者として決められていた。
ソルティアーノ公爵家は、王国の中でも大きな権威を持っており、加えて現国王の友人としても広く知られていた。
しかし、元日本人であるクレアにとっても、それが当たり前だということも理解していたが、ライオット殿下との婚約だけは認めることができないでいた。
その為に、何処からか漏れた噂によりライオも、次々と令嬢からのアプローチに辟易していた。
「殿下。離してください。ここは、イクミ様のお屋敷ですよ?」
「クレア。私にとって君はかけがえのない存在なのだ」
震える彼女の手を掴み、ライオは視線を合わせようとしても、目をギュッと閉じて開こうともしていない。
「殿下、お願いですから……」
「ごめん。だけど、君もそんな事は言わないでほしい」
「ですが、いずれそうなるのではないかと……」
「ごめんね、待たせ……失礼しました」
* * *
扉を開けるとまさか二人が抱き合っているなんて思いもしなかった。とっさに方向転換をしたのだけど、まだ疲労が残っていたので倒れそうになっていた所をルキアのおかげで助かった。
ライオには確か婚約者が居たよね?
それなのにあんな事をしているということは、クレアがライオの婚約者ということ?
「イクミ殿、大丈夫でしたか?」
「お話の途中、申し訳ございませんでした。こちらはお嬢様の執務室ですので、よろしければ客間にご案内いたしますが」
「結構だ。申し訳ない。場を弁えるべきだった」
「ライオも来る? 二人共来てよ」
「はい。お招き頂きありがとうございます」
これで確実に、持ち越しが確定する。
毎回やっていて特に問題がないのだから、いっその事月一回にすればいいのよ。
むしろ無くてもいいぐらいだ!
「それでは、お嬢様の言い分は、本日は初めての実技により大変疲れているからマナーレッスンをお休みし、また今後のレッスンを月一回のみにするということでお間違えはございませんか?」
「は、はい。その通りで御座います」
何という重圧。
玄関ホールで待っていたルビーに説明してみたものの、普段であれば顔を下へと向けている。だけど、正面を向いたまま私を鋭い目で見下していた。
それに、言葉の端々から、私の言葉に対しての嘘や目論見を抉るかのようにも聞こえてくる。
後ろに控えているトワロはため息をつき、首を小さく横に振っている。
「いや、今日は本当に疲れていて、歩くだけでも辛いのよ。今日もクレアに送ってもらったし」
「それは存じておりますが、私としましてはそのようなことよりも、本日が初めての実技とはどういうことですか?」
「い、いや。それはわぁ……」
そう言えば何も聞かれていなかったから、何も言ってなかったけど……私が毎回サボっていると思われてもしょうがないよね?
最初は確かにサボってはいたけど、今では学園長からの許可済みの話だし何も問題はないと思いたい。
「き、着替えるのが面倒だったからよ」
「は?」
日本とは違い、制服のまま実技の訓練は開始されている。そのため一応は、女生徒にはスカートからズボンへと履き替える必要はある。生徒の中には、スカートの中にスボンを履くだけという人もいる。
「なるほど、そういうことですか……」
「それに学園長からも、実技は免除を貰っているのだから何も問題はない話よ」
「かしこまりました。ですが、月一回のレッスンは認められません。今週は致し方ないとしましても、それでよろしいですね?」
「わかったわ。それでいいわよ……とりあえず、着替えを済ませるからクレアたちを執務室に連れて行ってあげて」
トワロに案内を任せ、私はルビーに抱えられ寝室へと向かう。
馬車まで連れて行ってもらえば、ルキアが居たことだし……別にクレアを呼ばなくても良かったのでは?
レッスンは免れたものの、できることならこのままベッドにダイブしたい……ここに来て二人を呼んだことに後悔してしまうとは思わなかったよ。ちゃんと説明だけしていれば、今頃はあのベッドの中で休めていたのかもしれない。
* * *
「ここが、グセナーレ家の執務室。思っている以上に立派だね」
「そのようですね」
クレアは何もせず、ソファーへと腰を下ろしイクミが戻ってくるのを待っていたが、ライオは部屋に置かれている内装を見ていた。
イクミが普段から使用をしている部屋に残された二人。ライオが何度か話しかけるが、クレアは視線を向けることもなく、生返事を繰り返していた。
「何か聞きたいことでもあるのかい?」
「殿下……イクミ様のことを、何か知っておられますね?」
「君に申し訳ないのだけど、まだ私からは話せないことなんだ。ごめんね……」
「そう、ですか……この場で言うことではないのですが、婚約破棄の件をそろそろ前向きに」
クレアの思いがけない言葉に、ライオはクレアの隣へと座り抱きしめていた。
抱きしめられたことで、耳まで紅く染まった顔を隠すのがクレアにできる精一杯の抵抗だった。
「私はクレアだけを……以前君が言ったように、確かに親の都合で婚約者になったのは認めたよ。だが、どうすれば私の思いは君に伝わる」
その言葉の意味を理解できないクレアではなかったが、だけどどうしても受け止めるわけにはいかなかった。
二人がまだ七歳の頃に、互いを婚約者として決められていた。
ソルティアーノ公爵家は、王国の中でも大きな権威を持っており、加えて現国王の友人としても広く知られていた。
しかし、元日本人であるクレアにとっても、それが当たり前だということも理解していたが、ライオット殿下との婚約だけは認めることができないでいた。
その為に、何処からか漏れた噂によりライオも、次々と令嬢からのアプローチに辟易していた。
「殿下。離してください。ここは、イクミ様のお屋敷ですよ?」
「クレア。私にとって君はかけがえのない存在なのだ」
震える彼女の手を掴み、ライオは視線を合わせようとしても、目をギュッと閉じて開こうともしていない。
「殿下、お願いですから……」
「ごめん。だけど、君もそんな事は言わないでほしい」
「ですが、いずれそうなるのではないかと……」
「ごめんね、待たせ……失礼しました」
* * *
扉を開けるとまさか二人が抱き合っているなんて思いもしなかった。とっさに方向転換をしたのだけど、まだ疲労が残っていたので倒れそうになっていた所をルキアのおかげで助かった。
ライオには確か婚約者が居たよね?
それなのにあんな事をしているということは、クレアがライオの婚約者ということ?
「イクミ殿、大丈夫でしたか?」
「お話の途中、申し訳ございませんでした。こちらはお嬢様の執務室ですので、よろしければ客間にご案内いたしますが」
「結構だ。申し訳ない。場を弁えるべきだった」
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