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学園編
84 お嬢様は動けない
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ライオが王族ということを踏まえて、私を抱え込もうとする理由は、奴隷たちの利用価値を狙ってのことだと思う。
今探索しているダンジョンの話は、当然国王陛下にも伝わっていてもおかしくはない。
だから、学園長はライオを使って私の反感を抑えようとしているのだろう。
そう考えれば、私をこのクラスにした理由は、ライオと離さないためと考えるのが自然だ。
最初からライオは私のことを気にかけていることからして、そう考えると理解しやすい。
私個人だけであれば、冒険部隊を無しにしても利用価値があるすらない。
「ライオ。水を持ってきてもらえる?」
「構いませんよ。クレアはどうかな?」
「い、いえ私は……」
私の予想も少しは正しいのかもしれない。こんな事を平然と受け入れているのだから。
あの様子からしても、国王陛下が関わっているのは確実と思ったほうがいい。ダンジョンのような、魔物討伐ではなく別のなにかがあると言うの?
「イクミ様。そのようにお料理で遊ぶものではありませんわ」
だけど、クレアはライオに対して畏まっていると言うか、あまり目を合わせようとはしていない。
もしかすると、ライオのことが少し苦手だったりするのかもしれない。私と関わったことで、余計な苦労をかけるのは申し訳ない。
かと言って、あのライオが私から離れるというのも考えにくいわね。
「イクミ様! 何をお考えになっているのかは存じませんが、あまり無作法ですとルビーさんに言いつけますよ?」
「ご、ごめん。ルビーにだけは黙ってて、お願いだから」
「仏の顔も三度までといいますし、今日は見逃してあげます」
「助かった。けど、クレアは意地悪だね」
このままだと学園での生活を報告されかねないわね。
最近ようやく説教の回数も少なくなっているのに、なんとしてでもクレアの口止めをしておく必要がありそうね。
授業は滞りなく終わり、帰り支度をしていたのだが……久しぶりの運動のおかげで、私だけ机に突っ伏し休んでいるところだった。
筋トレに持久走と、クレアの指導はなかなかにハードなもので、明日の筋肉痛を待つ前に疲れすぎて動けない状況だった。
「イクミ様。そろそろお帰りになられないと」
「うん。それは分かっているんだけどね。もう少しだけ休ませて……」
「それは先程も聞きました。このままではルキアさんに失礼ですよ」
そう言われても動きたくない。
運動をあまりしていなかったとはいえ、立っているだけで膝が笑うほどに疲れている。
私の何倍もの訓練をしているのに……なんでそんなに平然としていられるのよ。
「困りましたね」
この状況作り出した元凶がそんな事言わないで。
「私は後で帰るから、二人は先に帰っていいよ」
二人は目を合わせていると、ライオが頷いていた。
ライオが差し出した手に、クレアは持っていた鞄を渡すと背を向けて座っていた。
「では、どうぞ」
どうぞと言われても……リボンの次は、おんぶをするつもりなの?
教室から運んだときもそうだったけど、クレアからすれば私の体重は大して苦労はないらしい。お淑やかな見た目からして想像できない。
ちょっとだけ私よりも大きいからって、余裕ぶってからに……なんて思ってみたものの、クレアの背中に覆いかぶさりバランスを崩すこともなく、平然と立ち上がる。
表情からしても、何の問題も無さそうに見える。
このまま歩けそうにもないので、無理なら良いんだよという言葉を飲み込む。
「では、歩きますので、気をつけてください」
「お願いします」
これが本当に同い年でいいのだろうか?
見る人からすれば、私は幼い妹になってしまうのでは?
そう見られてもおかしくないほどの身長差なのよね。
「本日は申し訳ございません。少し張り切ってしまったみたいで……」
私との実技が、そんなに楽しみしていたとか思えなかったからね。
クレアにぴったりな言葉があるとするのなら鬼教官ね。
いたぶるという目的を持っていなかったにせよ、いきなりアレはないよ。
運動不足だったのは認めるが……開口一番、グラウンドを二十週は流石にない。
「私には走り込みなんて、二周すればいいほうだと思ったのに……その十倍はないよ?」
「ご冗談であのような事を申していたのかと思いまして」
ええ、そうよね。
私が走っている間に走り終えている時点でクレアがただの淑女ではないわよね。
「普段の生活を見ていたらきっと、ドン引きされそうね。一緒に走っていたクレアはケロッとしているし」
以前とは比べて、月曜日にしかまともに運動をしていない。いや、まともと言って良いのかわからないけど、同じようなダンスを一曲踊る程度。動きには流石に慣れているから、大した疲労もないのだけどね。
あれ? 月曜日?
「今日って月曜日よね?」
「そうですよ。それがどうかしましたか?」
どうしたもこうしたも……こんな状態で、マナーレッスンは絶対に無理。
今すぐにでも布団の中に入りたいのに、ダンスはもちろん、テーブルマナーですらやりたくない。というか、まともにできると思えないから、トワロの説教が始まるのは必然とも言える。
「く、クレア。今から私の屋敷に遊びにこない?」
「これからですか? 私は構いませんが、何かあるのでしょうか?」
何かが個人的にはある。
ルビー達といえど、公爵令嬢を放っておいてそんな事をしている訳にもいかない。
これはきっと使える。
今探索しているダンジョンの話は、当然国王陛下にも伝わっていてもおかしくはない。
だから、学園長はライオを使って私の反感を抑えようとしているのだろう。
そう考えれば、私をこのクラスにした理由は、ライオと離さないためと考えるのが自然だ。
最初からライオは私のことを気にかけていることからして、そう考えると理解しやすい。
私個人だけであれば、冒険部隊を無しにしても利用価値があるすらない。
「ライオ。水を持ってきてもらえる?」
「構いませんよ。クレアはどうかな?」
「い、いえ私は……」
私の予想も少しは正しいのかもしれない。こんな事を平然と受け入れているのだから。
あの様子からしても、国王陛下が関わっているのは確実と思ったほうがいい。ダンジョンのような、魔物討伐ではなく別のなにかがあると言うの?
「イクミ様。そのようにお料理で遊ぶものではありませんわ」
だけど、クレアはライオに対して畏まっていると言うか、あまり目を合わせようとはしていない。
もしかすると、ライオのことが少し苦手だったりするのかもしれない。私と関わったことで、余計な苦労をかけるのは申し訳ない。
かと言って、あのライオが私から離れるというのも考えにくいわね。
「イクミ様! 何をお考えになっているのかは存じませんが、あまり無作法ですとルビーさんに言いつけますよ?」
「ご、ごめん。ルビーにだけは黙ってて、お願いだから」
「仏の顔も三度までといいますし、今日は見逃してあげます」
「助かった。けど、クレアは意地悪だね」
このままだと学園での生活を報告されかねないわね。
最近ようやく説教の回数も少なくなっているのに、なんとしてでもクレアの口止めをしておく必要がありそうね。
授業は滞りなく終わり、帰り支度をしていたのだが……久しぶりの運動のおかげで、私だけ机に突っ伏し休んでいるところだった。
筋トレに持久走と、クレアの指導はなかなかにハードなもので、明日の筋肉痛を待つ前に疲れすぎて動けない状況だった。
「イクミ様。そろそろお帰りになられないと」
「うん。それは分かっているんだけどね。もう少しだけ休ませて……」
「それは先程も聞きました。このままではルキアさんに失礼ですよ」
そう言われても動きたくない。
運動をあまりしていなかったとはいえ、立っているだけで膝が笑うほどに疲れている。
私の何倍もの訓練をしているのに……なんでそんなに平然としていられるのよ。
「困りましたね」
この状況作り出した元凶がそんな事言わないで。
「私は後で帰るから、二人は先に帰っていいよ」
二人は目を合わせていると、ライオが頷いていた。
ライオが差し出した手に、クレアは持っていた鞄を渡すと背を向けて座っていた。
「では、どうぞ」
どうぞと言われても……リボンの次は、おんぶをするつもりなの?
教室から運んだときもそうだったけど、クレアからすれば私の体重は大して苦労はないらしい。お淑やかな見た目からして想像できない。
ちょっとだけ私よりも大きいからって、余裕ぶってからに……なんて思ってみたものの、クレアの背中に覆いかぶさりバランスを崩すこともなく、平然と立ち上がる。
表情からしても、何の問題も無さそうに見える。
このまま歩けそうにもないので、無理なら良いんだよという言葉を飲み込む。
「では、歩きますので、気をつけてください」
「お願いします」
これが本当に同い年でいいのだろうか?
見る人からすれば、私は幼い妹になってしまうのでは?
そう見られてもおかしくないほどの身長差なのよね。
「本日は申し訳ございません。少し張り切ってしまったみたいで……」
私との実技が、そんなに楽しみしていたとか思えなかったからね。
クレアにぴったりな言葉があるとするのなら鬼教官ね。
いたぶるという目的を持っていなかったにせよ、いきなりアレはないよ。
運動不足だったのは認めるが……開口一番、グラウンドを二十週は流石にない。
「私には走り込みなんて、二周すればいいほうだと思ったのに……その十倍はないよ?」
「ご冗談であのような事を申していたのかと思いまして」
ええ、そうよね。
私が走っている間に走り終えている時点でクレアがただの淑女ではないわよね。
「普段の生活を見ていたらきっと、ドン引きされそうね。一緒に走っていたクレアはケロッとしているし」
以前とは比べて、月曜日にしかまともに運動をしていない。いや、まともと言って良いのかわからないけど、同じようなダンスを一曲踊る程度。動きには流石に慣れているから、大した疲労もないのだけどね。
あれ? 月曜日?
「今日って月曜日よね?」
「そうですよ。それがどうかしましたか?」
どうしたもこうしたも……こんな状態で、マナーレッスンは絶対に無理。
今すぐにでも布団の中に入りたいのに、ダンスはもちろん、テーブルマナーですらやりたくない。というか、まともにできると思えないから、トワロの説教が始まるのは必然とも言える。
「く、クレア。今から私の屋敷に遊びにこない?」
「これからですか? 私は構いませんが、何かあるのでしょうか?」
何かが個人的にはある。
ルビー達といえど、公爵令嬢を放っておいてそんな事をしている訳にもいかない。
これはきっと使える。
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