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学園編

70 お嬢様は学園長に呼び出される

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 学園生活も、あれから二週間が過ぎ。
 新しい屋敷にも慣れはじめ、トワロとの約束もとりあえずは何とかこなせている。

 また、冒険部隊の拠点が王都に変わったことで、収入が少し下がっている。
 私の護衛を減らすという案は、見事に全員一致で拒否されてしまう。

 以前の屋敷であれば、休憩の部隊とフェルが居たということもあって、それに出かけるとしてもプルートの街だったので比較的安全だから遠征へと行ける部隊も多い。
 だけど、私が学園に行く時や屋敷の警護とクロやルキアだけではなく、周辺警戒のために人員を割り当てられている。

 もちろんそんな事する必要は無さそうにも思えるが、今の現状ですら皆はあまり納得していない。
 ここに来る間に不必要なまでに素材を集めていたことで、今の水準を維持するのは数ヵ月は問題はないらしい。

「私としては、そこまでする必要はやっぱりないとは思うよ」

 収入が減ったとはいえ今のところ、冒険部隊は問題はないということらしい。
 郊外にある宿舎も出来上がり、今では畑の開拓を進めているらしい。

 鶏や羊も手に入れることが出来たおかげで、家畜の方は今はまだ手探り感が多いのだけど、特に大きな問題は出ていない。
 王都に出歩くことは禁止されたままなので、視察の件もまだ許されていないから、書類だけでの話なんだよね……

「はぁー、やっぱりここでの生活は退屈よね」

 屋敷でなら、仕事もありそれなりに充実している。
 だけど、学園の時間があるために、遅くまで仕事はできなくなっているし、それなりに溜まったままになっているのが申し訳ない所だ。

 学園生活はと言うと……私のことは、見事なまでに避けられている。
 無視は当たり前だし、突き飛ばされること数しれず。

 食堂でも開いている席に付けば、私に周りにいた生徒は無言のまま席を立つ。
 実技の授業は、私は出席することもなく教室で本を眺めているだけだ。

『生徒の呼び出しをします。一年Aクラス。イクミ・グセナーレ様。大変申し訳ございませんが、学園長室までお越しください。繰り返します……』

 スピーカーのようなものはないけど……そんな内容が聞こえてきた。
 私が呼び出し?
 特に見に覚えもないのだけど……とはいえ、このまま放置というわけにも行かないよね。

 お昼途中だったのに、残すのも申し訳ない……相手は学園長?
 だとすると、私の素行に指摘でもされるのかしらね。

「すみません、呼び出されたみたいですね。残すようになってしまい申しわけございません」

 返却口に居た料理人さんにお詫びを済ませたあと、学園長室を目指したのだが場所がまったくもってわからない……
 この広い校舎の把握なんて、自分の教室と図書室ぐらいしか分かっていない。

「すみません。少しよろしいですか?」

「はい、私に何か?」

 たまたま一人で歩いていた、女子生徒に声を掛けたのだが……素直に教えてくれないと思ったほうが良いわね。

「大変申し訳無いのですが、学園長室とはどちらにあるのですか?」

「先程、放送で呼ばれていた方ですか?」

「はい、そうです。イクミ・グセナーレと申します。それで、もしお分かりになるのでしたら案内して頂けると助かるのですが……」

 これぞまさしくお嬢様って感じがする。
 淑女というのはこういうものなのかしらね?
 この姿を見てルビーにも現実というものを知って欲しいものね。

 私には到底真似もできそうにないよ。
 私が週に一度だけおこなっている、貴族としてのマナーを自然に振る舞う日。
 かなり集中して私はやっているのだけど、この人はそれが当たり前のようになっている。

「構いませんわ。申し遅れました」

 スカートの裾を掴み、優雅に挨拶をしている。
 これを見たら、私のは本当に子供だましに近いわね……これだと、何時ルビー達が私に対して徹底的に仕込まれるのも時間の問題よね。
 彼女の姿を見たことで、私はもう少しだけ頑張ろうと思ってしまう。

「ソルティアーノ公爵家次女、クレアローズ・ソルティアーノでございます」

「はい、よろしくおねがいします」

 不格好ながらも、私はスカートを広げることもなく、深く頭を下げる。
 彼女からすれば私の振る舞いは、面白いのか手の甲を口に当ててクスリと笑っていた。

 ソルなんとか公爵の方につれられ学園長を案内されるのだが、何か話したほうがいいのかと後も無言で歩くのは、貴族としては普通なのだろうか?
 公爵のご令嬢ともなると、歩き方一つでも私とは違うものなのね……

「一つ聞いてもよろしいですか?」

「はい。私に分かる内容でしたら」

「なぜ貴方様は、学園長に呼び出しをされたのでしょうか?」

「それは私も聞きたいところですね。特に悪いことをしたというのも記憶にないですし、どのみち校長に呼び出されるなんて。良いことなんてないよ」

 私がそういうと、何処が面白かったのか。
 さっきとは違い、私に背を向け両手で口を隠して笑っている。今の内容のどこが面白かったの?

「私おかしなことを言いましたか?」

「いえ、ごめんなさい。着きましたわ、こちらになります」

「本当に有難うございました。この御礼はいつかまたの機会にでも」

「いえいえ、お気になさらないでください。それでは、失礼します」

 あんな人もいるんだね。
 クラスに居る人達とは違う人みたいね。

 彼女が友達だったら、もしくはクラスに居たら少しはこの学園も楽しいのに……いや、それはありえないわね。
 扉をノックすると思っていたよりも、かなり若い声が中から聞こえてきた。

「イクミ・グセナーレです」

「どうぞ、お入りください」

 扉を開けると学園長らしき人、大きな机に座っているから多分そうだと思う。
 若いのはもちろんだけど……テーブルで紅茶を飲んでいるこの強面の人は一体?
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