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学園編
63 お嬢様の専用のお部屋
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屋敷の外では、数人の声が聞こえていた。警護部隊がようやくこちらに来ていたからだ。城門での手続きに色々と問題でもあったのだろうか?
少し物々しいがようやく、私の屋敷らしくもある。
相変わらずルキアは屋根から私を見守り、クロはやって来た隊長と共に屋敷内のことでも話しているのだろうか?
「ルキア。ご飯はまだ食べないの?」
「私のことは、分かっているはずです」
クロとルキアは私と一緒に食事を摂ることは少ない。
慣れない王都であれば、警備の手を緩めることはないわよね。
「王都は……ルキアから見てどう思った?」
「一言で言えば、危険ですね」
私が聞きたいことはそこじゃない。ま、ルキアらしい……
日が落ち、空は暗くなっているが、街のあちこちでは街灯に明かりが灯っていく。
王城があるためか、魔法石を用いた街灯によって、町並みの影が見えている。
「危険ね。私が街を歩きたいというのは、無理なのね」
「はい。数日はご辛抱ください。これだけの規模ですから、周辺の状況確認を優先させている所です」
プルートの街から比べてると、規模は数十倍。
人の数は百倍だとしてもおかしくはない。それだけこの王都は広く発展をしている。
ラズ兄さんの屋敷もそうだけど、爵位持ちがいる所の街は大きい。
ここからでも確認できる巨大な城門。それは、外敵から守るためだ。
私なりに思ったのが、この世界になぜ娯楽がないのか。私の周りが平穏だっただけで、この数年の間だけでも幾つかの村が無くなり、街さえも壊滅的なダメージを受けていた所もあった。
なぜか?
答えは簡単、魔物による被害。
それなのにも関わらず、この国以外にも、当然ながら他国は幾つもある。
隣接している国は三ヵ所あって、過去に何度かの戦争を繰り返している。
そんな環境だから、子供達は遊ぶ余裕すらないのが当たり前。
貴族とはいえ、優雅に振る舞うばかりではなく教養を中心とした教育が施されていた。
だから遊具というものが生まれず、このようなことになっている。
そんな中、私がどれだけ稀な存在か……その話を聞いてようやく理解できた。
「どうした? こむ……何を思いつめている?」
「フェル? どうしてここに?」
「主に無理やり木箱に閉じ込められたのだ。恐らくこむ……お主のことを思ってのことだろう」
「そっか……ありがとうね。うん、いつもの毛並みだね」
「当然だろう。ほれ」
しっぽで私の顔を覆う。
これはこれでたまらない。クロの尻尾とはまた違うのよね。
「おい? なんのつもりだ?」
「ルキア、今良いところなの。これはこれでありだわ」
くすぐったい。
だけど気持ちがいい、それにしても器用なものだ。
しっぽで撫で回すことが出来るだなんて。
「あれは、魔獣?」
「クロとルキアが従える魔獣であり。お嬢様のペットです」
「イクミ殿。今日の夜は冷える。中へお入りください」
「もう少しこうしていたいけど。フェルをあまり連れ出すのは良くないみたいだししょうがないよね。またね」
「まさか、私また木箱に入れられるのか?」
「そうか、剥製になりたいのか……」
「ダメ!!」
ルキアの脅しに屈したのか、飛び出したフェルは自ら箱の中に入り、小さくなっていた。
なんで二人共、もっと優しくしてあげられないのかな?
「あれ? 部屋が温かい?」
「この部屋には魔法石による結界が施してあります。以前お話にありました、クウチョウでしたか、適度な温度を維持できるようにも成功しました」
「結界?」
よくよく見てみれば、四方の柱には数多くの魔法石が埋め込まれていた。
というか、これって一般的じゃないよね?
「この部屋にいれば、私の全力で放った魔法でさえも壊すことは出来ないでしょう。ですが、まだ改良する余地があります」
「いやいや、十分だと思うよ? 貴族の部屋って皆こうなの?」
「わかりませんが、この結界の強度は、私程度が二十人。もしくは属性龍に対抗できるかどうか……そのようなことが起これば、壊れる可能性がありますので、早急に強化する必要があります」
魔力値が元々高いエルフが、二十人も束になって私を襲ってくるという想定と、属性龍ってそれって四大巨龍のことよね?
それこそありえないから!!
あー、何度言い聞かせても理解して貰えないし、ルビー、ルキア、クロの考えることが私には到底理解できない。
「伝え忘れておりましたが」
「ま、まだなにかあるの?」
「この部屋には、イクミ殿は勿論。ルビーとクロ、そして私しか入れないようにもなっております。賊が侵入した場合は、まずこの部屋に逃げ込んでください」
「へー、そーなんだー。すごいねー」
もう、何でも良いよ。考えるだけ無駄すぎる。
結論として、この手のことに関しては関与しないことにするのがいい。
「お嬢様。明日は入学式ですので、お早めにお休みになられたほうがよろしいかと」
「は? 明日? なんで? 何日か前に到着しているんじゃなかったの?」
「湯浴みの準備はできております」
人の話を少しは聞いてよね。
「分かったよ、分かったから」
考えるだけ無駄だった。
私を慕う者たちは、何処かおかしい連中の集まりだから、まともなんて言葉は今は存在していないと思う……
私が非常識だから、皆もきっとそれに染まったのだろう。
そう思えれば、多分この先もきっと楽になれる気がしている……訳がない。
少し物々しいがようやく、私の屋敷らしくもある。
相変わらずルキアは屋根から私を見守り、クロはやって来た隊長と共に屋敷内のことでも話しているのだろうか?
「ルキア。ご飯はまだ食べないの?」
「私のことは、分かっているはずです」
クロとルキアは私と一緒に食事を摂ることは少ない。
慣れない王都であれば、警備の手を緩めることはないわよね。
「王都は……ルキアから見てどう思った?」
「一言で言えば、危険ですね」
私が聞きたいことはそこじゃない。ま、ルキアらしい……
日が落ち、空は暗くなっているが、街のあちこちでは街灯に明かりが灯っていく。
王城があるためか、魔法石を用いた街灯によって、町並みの影が見えている。
「危険ね。私が街を歩きたいというのは、無理なのね」
「はい。数日はご辛抱ください。これだけの規模ですから、周辺の状況確認を優先させている所です」
プルートの街から比べてると、規模は数十倍。
人の数は百倍だとしてもおかしくはない。それだけこの王都は広く発展をしている。
ラズ兄さんの屋敷もそうだけど、爵位持ちがいる所の街は大きい。
ここからでも確認できる巨大な城門。それは、外敵から守るためだ。
私なりに思ったのが、この世界になぜ娯楽がないのか。私の周りが平穏だっただけで、この数年の間だけでも幾つかの村が無くなり、街さえも壊滅的なダメージを受けていた所もあった。
なぜか?
答えは簡単、魔物による被害。
それなのにも関わらず、この国以外にも、当然ながら他国は幾つもある。
隣接している国は三ヵ所あって、過去に何度かの戦争を繰り返している。
そんな環境だから、子供達は遊ぶ余裕すらないのが当たり前。
貴族とはいえ、優雅に振る舞うばかりではなく教養を中心とした教育が施されていた。
だから遊具というものが生まれず、このようなことになっている。
そんな中、私がどれだけ稀な存在か……その話を聞いてようやく理解できた。
「どうした? こむ……何を思いつめている?」
「フェル? どうしてここに?」
「主に無理やり木箱に閉じ込められたのだ。恐らくこむ……お主のことを思ってのことだろう」
「そっか……ありがとうね。うん、いつもの毛並みだね」
「当然だろう。ほれ」
しっぽで私の顔を覆う。
これはこれでたまらない。クロの尻尾とはまた違うのよね。
「おい? なんのつもりだ?」
「ルキア、今良いところなの。これはこれでありだわ」
くすぐったい。
だけど気持ちがいい、それにしても器用なものだ。
しっぽで撫で回すことが出来るだなんて。
「あれは、魔獣?」
「クロとルキアが従える魔獣であり。お嬢様のペットです」
「イクミ殿。今日の夜は冷える。中へお入りください」
「もう少しこうしていたいけど。フェルをあまり連れ出すのは良くないみたいだししょうがないよね。またね」
「まさか、私また木箱に入れられるのか?」
「そうか、剥製になりたいのか……」
「ダメ!!」
ルキアの脅しに屈したのか、飛び出したフェルは自ら箱の中に入り、小さくなっていた。
なんで二人共、もっと優しくしてあげられないのかな?
「あれ? 部屋が温かい?」
「この部屋には魔法石による結界が施してあります。以前お話にありました、クウチョウでしたか、適度な温度を維持できるようにも成功しました」
「結界?」
よくよく見てみれば、四方の柱には数多くの魔法石が埋め込まれていた。
というか、これって一般的じゃないよね?
「この部屋にいれば、私の全力で放った魔法でさえも壊すことは出来ないでしょう。ですが、まだ改良する余地があります」
「いやいや、十分だと思うよ? 貴族の部屋って皆こうなの?」
「わかりませんが、この結界の強度は、私程度が二十人。もしくは属性龍に対抗できるかどうか……そのようなことが起これば、壊れる可能性がありますので、早急に強化する必要があります」
魔力値が元々高いエルフが、二十人も束になって私を襲ってくるという想定と、属性龍ってそれって四大巨龍のことよね?
それこそありえないから!!
あー、何度言い聞かせても理解して貰えないし、ルビー、ルキア、クロの考えることが私には到底理解できない。
「伝え忘れておりましたが」
「ま、まだなにかあるの?」
「この部屋には、イクミ殿は勿論。ルビーとクロ、そして私しか入れないようにもなっております。賊が侵入した場合は、まずこの部屋に逃げ込んでください」
「へー、そーなんだー。すごいねー」
もう、何でも良いよ。考えるだけ無駄すぎる。
結論として、この手のことに関しては関与しないことにするのがいい。
「お嬢様。明日は入学式ですので、お早めにお休みになられたほうがよろしいかと」
「は? 明日? なんで? 何日か前に到着しているんじゃなかったの?」
「湯浴みの準備はできております」
人の話を少しは聞いてよね。
「分かったよ、分かったから」
考えるだけ無駄だった。
私を慕う者たちは、何処かおかしい連中の集まりだから、まともなんて言葉は今は存在していないと思う……
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そう思えれば、多分この先もきっと楽になれる気がしている……訳がない。
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