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奴隷商人編
45 お嬢様のお兄様
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昼食後のお茶をのんびりとテラスで過ごしていると、何処か見覚えのある貴族の方が手を振りながら私の方へとやってきた。
「久しぶりだね。イクミ」
見覚えがあるものの、誰だっけ?
「お久しぶりです……」
私も手を振り返し、当たり障りのない言葉を投げかけるが……全く見当がつかない。
こんな所に来る人なんて限られているから、私の知っている人なんだろうけど。
「お嬢様の兄君に当たる、ラズバード・レフォストール様でございます」
ルビーさん、ナイスアシストです。
相変わらず顔と名前が一致できないのは生まれ変わっても苦手なままだった。
あと、名前が長すぎるというのも覚えづらい要因とも思える。
出迎えるために下へと向かい、何のようでここに来ていたのかを考えていた。
私の兄とは言え、わざわざ領主がこんな所に?
考えなんてまとまることもなく、玄関にたどり着いていた。
「お、お兄様は、何故こちらに?」
「かわいい妹に会いに来た兄では不服かな?」
歯を見せて笑うお兄様は、キラキラと輝いているようにも見えた。
この笑顔なら大半の女性は落とせそうね。
「いえ、そのようなことはありません。またこうして会えて嬉しいです」
ルビーからのお叱りもなさそうだから、一応対応は間違っていないみたいね。
でも、こんなことを毎度毎度やるのも気が重い。
それにしても何か裏がありそうだとは思う……あの父親だしね。
レフォストール領の領主様であるラズ兄さんが、ああは言うもののこの屋敷まで足を運んだのか、ただ義妹に会いに来るなんてことはまずないでしょうね。
さっきは数人で来ていたように思うのだけど……
「先程の……護衛の方たちでしょうか?」
「ああ、屋敷の外で待たせているよ。彼らのことは気にしなくていいよ。もてなしも不要だ」
「わかりました。私に会いに来たということですが。まさか、魔物の被害でもありましたか?」
「いや、そうではないよ。それよりも、部屋には案内をしてくれないのかな?」
この場合どこに案内をするのか迷ったが、いつもの執務室へと向かう。
ラズ兄さんは、部屋を見渡し「ほぅ」と言って何やら関心しているような声を漏らしていた。
「イクミ。これを見てもらってもいいか?」
もっていた革袋から、それなりに使い古された見慣れたものを取り出した。
オセロだね。出来も今とは比べて最初の頃に作られたものかしら?
使われている頻度から考えると女将さんの所にあった物?
そうだとしても、なんでラズ兄さんが持っているんだろう。
「オセロですね。これは、もしかして、宿屋を経営している女将さんの所にあったものですか?」
「よく分かったね。宿屋の女将から少し話を聞いてね。自分の妹にこんな才能があったなんて
正直驚いたよ」
私のことを褒めているようだけど、その目は間違いなく褒めているだけには見えない。
ラズ兄さんが視察の際にたまたま立ち寄ったと言っているけど、女将さんに私が妹だってこと言ってないよね?
ただでは、何かに付けてやたらと持ち上げてくるんだから、これ以上変な気を回されても困るのだけど。
オセロに関しては私のことを秘匿にとは言ったけど、領主様相手じゃ仕方ないよね。
「それならここにもありますよ。こっちがオセロ。こちらが将棋という遊具になります」
「ふむ、他にもあるというのか……さて、これはどうしたものか」
「何か問題でもありましたか? ラズ兄さんは遊ばれましたか?」
「ラズ兄さん?」
思っていたことが声に出てしまい、ラズ兄さん……もとい、お兄様は目を丸くして私を見ている。
後ろからは、何時ため息が聞こえてもおかしくはないわね。
「えっと、ごめんなさい。お兄様」
「いやいや、うん。構わないよ。ラズ兄さんか、悪くない」
何がそんなに嬉しかったのだろう。
本当に嬉しいのか? 笑っているのを手で口元を隠しているようにも見える。
「私はまだやっていないんだ。どうだろう、一度手合わせを願えるかな?」
「それでしたら、細かな説明を踏まえて私がお相手致します」
なんでルビーが?
もしかして、私がまたズルいことをするとでも思っているのかな。誰彼構わずそんな事をするはずがないでしょ?
全く、あんな些細なことを根に持っているの?
そんな事を考えていたら、ルビーからの視線を感じ、おとなしく椅子に座った。
私の心の内って、やっぱり見透かされているのかしら?
もしかして……私と代わったのって勝ったときに、私が調子に乗らないためなの?
負けたばかりの私だから、今なら勝てば間違いなく大笑いしそう。
そそ、そんな事は多分しないよ。
「おや? イクミではないのか?」
「お嬢様はこの遊具の発案者でもあり、私程度では到底敵うわけもないのです。楽しんで頂くには強者よりも、程度の知れた者のほうが少しは分かって頂けるのではないかと思います」
「なるほど。私も腕を磨きいつかイクミと手合わせをしよう」
とても癪に障る嫌味な言い回しだろうか。
とはいえ、ラズ兄さんがいる手前私からは何も言えない。
しかし……だ。
ルビーの超人な強さを前に、ラズ兄さんはどう出るのか見ものよね。
「久しぶりだね。イクミ」
見覚えがあるものの、誰だっけ?
「お久しぶりです……」
私も手を振り返し、当たり障りのない言葉を投げかけるが……全く見当がつかない。
こんな所に来る人なんて限られているから、私の知っている人なんだろうけど。
「お嬢様の兄君に当たる、ラズバード・レフォストール様でございます」
ルビーさん、ナイスアシストです。
相変わらず顔と名前が一致できないのは生まれ変わっても苦手なままだった。
あと、名前が長すぎるというのも覚えづらい要因とも思える。
出迎えるために下へと向かい、何のようでここに来ていたのかを考えていた。
私の兄とは言え、わざわざ領主がこんな所に?
考えなんてまとまることもなく、玄関にたどり着いていた。
「お、お兄様は、何故こちらに?」
「かわいい妹に会いに来た兄では不服かな?」
歯を見せて笑うお兄様は、キラキラと輝いているようにも見えた。
この笑顔なら大半の女性は落とせそうね。
「いえ、そのようなことはありません。またこうして会えて嬉しいです」
ルビーからのお叱りもなさそうだから、一応対応は間違っていないみたいね。
でも、こんなことを毎度毎度やるのも気が重い。
それにしても何か裏がありそうだとは思う……あの父親だしね。
レフォストール領の領主様であるラズ兄さんが、ああは言うもののこの屋敷まで足を運んだのか、ただ義妹に会いに来るなんてことはまずないでしょうね。
さっきは数人で来ていたように思うのだけど……
「先程の……護衛の方たちでしょうか?」
「ああ、屋敷の外で待たせているよ。彼らのことは気にしなくていいよ。もてなしも不要だ」
「わかりました。私に会いに来たということですが。まさか、魔物の被害でもありましたか?」
「いや、そうではないよ。それよりも、部屋には案内をしてくれないのかな?」
この場合どこに案内をするのか迷ったが、いつもの執務室へと向かう。
ラズ兄さんは、部屋を見渡し「ほぅ」と言って何やら関心しているような声を漏らしていた。
「イクミ。これを見てもらってもいいか?」
もっていた革袋から、それなりに使い古された見慣れたものを取り出した。
オセロだね。出来も今とは比べて最初の頃に作られたものかしら?
使われている頻度から考えると女将さんの所にあった物?
そうだとしても、なんでラズ兄さんが持っているんだろう。
「オセロですね。これは、もしかして、宿屋を経営している女将さんの所にあったものですか?」
「よく分かったね。宿屋の女将から少し話を聞いてね。自分の妹にこんな才能があったなんて
正直驚いたよ」
私のことを褒めているようだけど、その目は間違いなく褒めているだけには見えない。
ラズ兄さんが視察の際にたまたま立ち寄ったと言っているけど、女将さんに私が妹だってこと言ってないよね?
ただでは、何かに付けてやたらと持ち上げてくるんだから、これ以上変な気を回されても困るのだけど。
オセロに関しては私のことを秘匿にとは言ったけど、領主様相手じゃ仕方ないよね。
「それならここにもありますよ。こっちがオセロ。こちらが将棋という遊具になります」
「ふむ、他にもあるというのか……さて、これはどうしたものか」
「何か問題でもありましたか? ラズ兄さんは遊ばれましたか?」
「ラズ兄さん?」
思っていたことが声に出てしまい、ラズ兄さん……もとい、お兄様は目を丸くして私を見ている。
後ろからは、何時ため息が聞こえてもおかしくはないわね。
「えっと、ごめんなさい。お兄様」
「いやいや、うん。構わないよ。ラズ兄さんか、悪くない」
何がそんなに嬉しかったのだろう。
本当に嬉しいのか? 笑っているのを手で口元を隠しているようにも見える。
「私はまだやっていないんだ。どうだろう、一度手合わせを願えるかな?」
「それでしたら、細かな説明を踏まえて私がお相手致します」
なんでルビーが?
もしかして、私がまたズルいことをするとでも思っているのかな。誰彼構わずそんな事をするはずがないでしょ?
全く、あんな些細なことを根に持っているの?
そんな事を考えていたら、ルビーからの視線を感じ、おとなしく椅子に座った。
私の心の内って、やっぱり見透かされているのかしら?
もしかして……私と代わったのって勝ったときに、私が調子に乗らないためなの?
負けたばかりの私だから、今なら勝てば間違いなく大笑いしそう。
そそ、そんな事は多分しないよ。
「おや? イクミではないのか?」
「お嬢様はこの遊具の発案者でもあり、私程度では到底敵うわけもないのです。楽しんで頂くには強者よりも、程度の知れた者のほうが少しは分かって頂けるのではないかと思います」
「なるほど。私も腕を磨きいつかイクミと手合わせをしよう」
とても癪に障る嫌味な言い回しだろうか。
とはいえ、ラズ兄さんがいる手前私からは何も言えない。
しかし……だ。
ルビーの超人な強さを前に、ラズ兄さんはどう出るのか見ものよね。
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