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奴隷商人編
33 お嬢様は不機嫌です
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用意されていた、料理が運ばれてくる。
屋敷で食べるようなものと同じで、保存食ではなかった。
「こんな外でも、温かい美味しい料理が食べられるなんて思っても見なかったよ」
「はぅ、お嬢様が私の料理を褒めて……」
「確か料理部の?」
「はい。当然です」
いや、何が当然なの?
奴隷の皆は私が少し褒めると、涙を流したり叫んだりと歓喜している。私にはまだ皆の感覚についていけない。
それから何人かの奴隷たちと話をしつつ過ごしていた。名前さえ覚えていない私に対し誰も咎めるようなことはなく、覚えていない私は申し訳無さを感じていた。
だからかもしれない。私は、私を称える彼らに踏み込めないでいる。
野営を見渡しても、寝床となるテントはたった一つしかない。それが何を意味しているのか、答えは簡単だった。
私だけに設けられたのテント。そしてその内装は、ベッドが用意され床には真新しい白い布で覆われていた。
ルビーに促されるまま布団の中に入る。その日はなかなか寝付くことが出来ないでいた。
普段のようにルビーにの声で目が覚める。
見慣れない光景に、現状を理解するのに少し時間がかかった。
「おはよう……」
「おはようございます。お嬢様、お体は大丈夫ですか?」
「寝る場所が変わると、思っていたより寝起きが悪いみたいね。そんな心配そうな顔をしないで。私は大丈夫だよ」
「無理はなさらないでください」
テントから出ると、整列をした冒険者部隊が私を出迎えてくれる。
こんなには疲労という言葉ばないのかしら? なんで、朝からそんなに元気なのよ……
「皆、おはよう」
「「「「おはようございます」」」」
「今日もよろしくね」
「「「「はい!! お任せください」」」」
こ、声でかい。ところで……肝心のあいつの姿が見当たらない。
奴隷でなくなったリーダーのバナンが先頭にいるはずなのに、部隊の中心にいる彼はサブリーダーなのだろうか?
「ねぇルビー。バナンの姿が見えないのだけど」
「おそらく偵察でしょ」
「それでもおかしいよね。昨日後ろにあった馬車は無くなっているし」
「何をおっしゃっているのですか。馬車ならそこにあります」
私がテントに入ってから、皆が何をしていたのかは知らない。
本来あるはずの馬車と誰かさんを筆頭に何人かの冒険部隊の姿も見えない。
「いやいやいや、それは昨日着いた時からそこにあったから」
「お嬢様……いっそ諦めたほうが気が楽ですよ?」
「何いい笑顔で無茶苦茶なことを言ってるのよ。バナン達に何かあったらどうするの?」
バナンだけじゃない……他の誰かでも同じことだ。
誰も傷ついて欲しくない。誰も……死んで欲しくない。
人を殺した私なんかのために……
野営から出発して、辺りは昨日と変わりがないほど、見渡す限り何もない草原と所々に見える森ばかり。
ゆっくりと流れる風景をただぽけーっと眺めていること以外に、馬車の中で暇を持て余していた。
しばらくそうしていると、外から微かに聞こえる誰かの声。程なくして馬車は停止をしていた。
「あれ、何で止まったの? 休憩にしては早くない?」
辺りを見ると前後の馬車が止まっている。
こちらの馬車に近づいてきた馬に乗っていた青年。
確かサブリーダーの確か、カッシュ?
「どうしました?」
「申し訳ありません。早いですが、少し休憩にしましょう」
「そうですか……わかりました。お嬢様、昨日話されていた遊戯の事をもう少し詳しく聞かせて頂いてもよろしいですか?」
「それはいいのだけど……」
休憩にしては、馬車の外には出してもらえず後方の場所の周りに居た冒険者たちも何人かは姿が見えない。
そして、私には窓の外を見るたびに手を掴み話しかけてくるルビー。
鋭い眼光のまま降りていったクロ。そして、私が率いる冒険者の奴隷たち。
このあたりで何かが起こっている、それが何なのかは容易に想像がついていた。
「休憩ねぇ……どうせ、魔物でも現れたんじゃないの」
「そのような報告は来ておりません。ただの休憩です」
おそらくこの辺りで戦闘があるのだろう。ルビーの言い回しがそれとなくそう思わせる。
皆からすれば私はまだ十歳の子供だ。だから過保護にでもしたいのだろうか?
ルビーと話をしていると、扉が開き何食わぬ顔をしてるクロが対面に座る。
「何が出たの?」
「あっ、いえ。馬が少し疲れていただけですのでご心配なく」
慌てるクロの様子からして、口止めを徹底しているのだろう。
「さ、お嬢様。ちゃんと座ってください、危ないですから」
「ねぇ、ルビー。私は別に気にしてないのだけど……いや、気になるのよ。知らないまま、見せないままにされて」
「はい、おそらくそうなのでしょう。ですが、彼らは懸命さも少しは汲み取ってください」
「いつまで……それが続くのかしら」
クロの視線は辺りを泳いでいるし、彼らがそうしたいというのなら、そうさせるべきなのね。
でも、子供扱いされるのって正直辛い……それでも、報告ぐらいして欲しい。
私自身が子供ではないから、皆の行動が知りたいと思う。けれど、見た目からして子供の私には、皆はそれを必死に隠すだろう。
これまでの報告で、冒険者というものがどけだけ危険を犯しているのか、何となくでしか分かっていない。
今までに数多くの依頼をこなし、今の所誰一人として欠けることもなく私達を生活の要となっている。
ただ、その報告は結果だけであり、彼らの行動を知るには不十分でもあった。
しかし今は、その行動を知る機会でもある……だからこそ知りたいと思っている。
私の行動は、皆にとって本当に正しいことなのかを……
屋敷で食べるようなものと同じで、保存食ではなかった。
「こんな外でも、温かい美味しい料理が食べられるなんて思っても見なかったよ」
「はぅ、お嬢様が私の料理を褒めて……」
「確か料理部の?」
「はい。当然です」
いや、何が当然なの?
奴隷の皆は私が少し褒めると、涙を流したり叫んだりと歓喜している。私にはまだ皆の感覚についていけない。
それから何人かの奴隷たちと話をしつつ過ごしていた。名前さえ覚えていない私に対し誰も咎めるようなことはなく、覚えていない私は申し訳無さを感じていた。
だからかもしれない。私は、私を称える彼らに踏み込めないでいる。
野営を見渡しても、寝床となるテントはたった一つしかない。それが何を意味しているのか、答えは簡単だった。
私だけに設けられたのテント。そしてその内装は、ベッドが用意され床には真新しい白い布で覆われていた。
ルビーに促されるまま布団の中に入る。その日はなかなか寝付くことが出来ないでいた。
普段のようにルビーにの声で目が覚める。
見慣れない光景に、現状を理解するのに少し時間がかかった。
「おはよう……」
「おはようございます。お嬢様、お体は大丈夫ですか?」
「寝る場所が変わると、思っていたより寝起きが悪いみたいね。そんな心配そうな顔をしないで。私は大丈夫だよ」
「無理はなさらないでください」
テントから出ると、整列をした冒険者部隊が私を出迎えてくれる。
こんなには疲労という言葉ばないのかしら? なんで、朝からそんなに元気なのよ……
「皆、おはよう」
「「「「おはようございます」」」」
「今日もよろしくね」
「「「「はい!! お任せください」」」」
こ、声でかい。ところで……肝心のあいつの姿が見当たらない。
奴隷でなくなったリーダーのバナンが先頭にいるはずなのに、部隊の中心にいる彼はサブリーダーなのだろうか?
「ねぇルビー。バナンの姿が見えないのだけど」
「おそらく偵察でしょ」
「それでもおかしいよね。昨日後ろにあった馬車は無くなっているし」
「何をおっしゃっているのですか。馬車ならそこにあります」
私がテントに入ってから、皆が何をしていたのかは知らない。
本来あるはずの馬車と誰かさんを筆頭に何人かの冒険部隊の姿も見えない。
「いやいやいや、それは昨日着いた時からそこにあったから」
「お嬢様……いっそ諦めたほうが気が楽ですよ?」
「何いい笑顔で無茶苦茶なことを言ってるのよ。バナン達に何かあったらどうするの?」
バナンだけじゃない……他の誰かでも同じことだ。
誰も傷ついて欲しくない。誰も……死んで欲しくない。
人を殺した私なんかのために……
野営から出発して、辺りは昨日と変わりがないほど、見渡す限り何もない草原と所々に見える森ばかり。
ゆっくりと流れる風景をただぽけーっと眺めていること以外に、馬車の中で暇を持て余していた。
しばらくそうしていると、外から微かに聞こえる誰かの声。程なくして馬車は停止をしていた。
「あれ、何で止まったの? 休憩にしては早くない?」
辺りを見ると前後の馬車が止まっている。
こちらの馬車に近づいてきた馬に乗っていた青年。
確かサブリーダーの確か、カッシュ?
「どうしました?」
「申し訳ありません。早いですが、少し休憩にしましょう」
「そうですか……わかりました。お嬢様、昨日話されていた遊戯の事をもう少し詳しく聞かせて頂いてもよろしいですか?」
「それはいいのだけど……」
休憩にしては、馬車の外には出してもらえず後方の場所の周りに居た冒険者たちも何人かは姿が見えない。
そして、私には窓の外を見るたびに手を掴み話しかけてくるルビー。
鋭い眼光のまま降りていったクロ。そして、私が率いる冒険者の奴隷たち。
このあたりで何かが起こっている、それが何なのかは容易に想像がついていた。
「休憩ねぇ……どうせ、魔物でも現れたんじゃないの」
「そのような報告は来ておりません。ただの休憩です」
おそらくこの辺りで戦闘があるのだろう。ルビーの言い回しがそれとなくそう思わせる。
皆からすれば私はまだ十歳の子供だ。だから過保護にでもしたいのだろうか?
ルビーと話をしていると、扉が開き何食わぬ顔をしてるクロが対面に座る。
「何が出たの?」
「あっ、いえ。馬が少し疲れていただけですのでご心配なく」
慌てるクロの様子からして、口止めを徹底しているのだろう。
「さ、お嬢様。ちゃんと座ってください、危ないですから」
「ねぇ、ルビー。私は別に気にしてないのだけど……いや、気になるのよ。知らないまま、見せないままにされて」
「はい、おそらくそうなのでしょう。ですが、彼らは懸命さも少しは汲み取ってください」
「いつまで……それが続くのかしら」
クロの視線は辺りを泳いでいるし、彼らがそうしたいというのなら、そうさせるべきなのね。
でも、子供扱いされるのって正直辛い……それでも、報告ぐらいして欲しい。
私自身が子供ではないから、皆の行動が知りたいと思う。けれど、見た目からして子供の私には、皆はそれを必死に隠すだろう。
これまでの報告で、冒険者というものがどけだけ危険を犯しているのか、何となくでしか分かっていない。
今までに数多くの依頼をこなし、今の所誰一人として欠けることもなく私達を生活の要となっている。
ただ、その報告は結果だけであり、彼らの行動を知るには不十分でもあった。
しかし今は、その行動を知る機会でもある……だからこそ知りたいと思っている。
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