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奴隷商人編
13 お嬢様は街へと行く
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モンスター、この世界では魔物と呼ぶべきか。そんなのがいる世界だし、冒険者が居ないとたちまち人が住めなくなる。
それに町の治安維持の役割も担っているのだから、ある程度の冒険者たちは保護されているのだろう。
しかし、違約金というのも少し厄介だな……
「護衛の対象がそれなりの商人。もしくは重要な品物の破損や損失。それだと膨大な金額をギルドが負担できるはずがない。バナンは借金奴隷だから、護衛対象が暗殺でもされたのかしら?」
「お嬢、あんた本当はいくつなんだ?」
「ピッチピチの十歳」
スカートの裾の少し手前を軽く掴み、左足を下げ、首の角度を少しだけ右へ傾ける。
満面の笑みを浮かべ可愛さをアピールする。
しかし、俺のとった行動は、バナンだけではなく周りに居た奴隷達を凍りつかせていた。
彼らはきっと表情を隠せないのだろう。
おぅ。沈黙が辛い。
「かわいい」
「「「え!?」」」
まさかのルビーの発言に、そこにいた誰もが驚きの声を上げていた。
俺もその一人なのだが……俺が可愛いというと、周囲を凍りつかせるが、ルビーが可愛いって言葉を言うほうが破壊力あるってどうなんだろう?
「なにか?」
「え、お、おう。お嬢は可愛いよな、な?」
「あ、ああ。うん、そうだよな。は、ははは」
「そうだよ、よく見りゃかわいいよな。ははっははは」
何だよその乾いた笑いは……もう止めてくれよ。
誤魔化すためとは言え、やるんじゃなかった。
近くの街ということなので歩いていくのかと思ったら、俺だけ馬車に乗せられルビーが御者をしている。ただ、馬車というのもはかなり揺れる。それとも道が整備されていないからかもしれないな。
窓の外を見ると、当然アスファルトのような道ではない。これなら揺れて当然か……他の奴隷は左右に別れ歩いている。
なんというか、俺だけこの高待遇でいいのだろうか?
街の規模は思っていた以上に大きく、建物の数もかなりなものだ。
あの街にはどれだけの人が暮らしているのだろう。
「この辺りの街はどれもあれぐらい大きいのかしら?」
「お嬢、危ないですぜ。その話はついてからにしましょうや」
正論だな。車とは違いこの馬車の乗り心地も、舗装されていない道ではかなり揺れる。
おとなしく街につくまで、窓の外から見える風景を眺めつつ、尻の痛みからクッションが欲しいと頭から離れなかった。
「ここが、プルートの街でございます。お疲れでしたら何処か休めるところを探しますが」
軽く酔ったのと、硬い座席で少し痛みが残る尻を撫でていたことで、余計な心配をさせてしまったな。
だけど、次からもこの馬車に乗るのなら、何かしらのクッションになるものを用意していたほうが良いな。
帰りにも乗ることを考えると、少しばかり気が重くなる。
「大丈夫。ギルドは中央広場の近くだっけ?」
俺だけキョロキョロと、あちらこちらを眺めているせいか皆が足を止めて俺が動くと当然ついてくる。
ルビーからも何も指摘されないので、俺の好きにさせてもらおう。
「なあ、あれは注意しなくてもいいのか?」
「構いません。お嬢様は貴方が思っている以上に聡明ですから、ああやって楽しんでいるように見えて頭の中では、想像もつかないようなことを考えていらっしゃるのです」
「そうだな」
一頻りに街をぶらつき、それほど活気のある街ではなかったが、そんな事を気にすることもなく街の中を進んでいく。
街の人からは、私のように着飾った人達は居ない。
こんな格好をしているが、貴族の娘でもないのだけど、行動や視線から考えて距離を取っているのを感じる。
「ここが冒険者ギルド?」
ルビーに案内を任せて、しばらくすると大きめの建物の前で立ち止まる。
屋敷ほどではないが、三階建てになっていてこの辺りにある家と比べてもかなり大きい。
「お嬢は俺たちが守ってやるから安心しな」
「お嬢様をお守りするのは私の努めです」
これもお約束といえば、お約束なのかな。新参者や、今の俺のように不釣り合いなものが絡まれるという……一昔前の西部劇か?
しかし待っていたのは、誰も居ないガランとした空間だった。
右を見ても、左を見ても冒険者らしき人はだれも居ない。
「ああ、出払っているのか。丁度いいぜ」
何が丁度いいのか、皆の様子からして冒険者達が居たというのなら、何が起こるのかは予想できるな。
「ええ、そのようですね。さ、お嬢様、中へどうぞ」
受付に座っている人の所に向かうのだが……カウンターの前には椅子もなく、俺の身長だと顔だけが覗かせる程度だ。
こういうものを見ると、自分が子供だというを実感させられるな。
「おねーさん。冒険者登録ってどうするの?」
「え、えっと。登録は基本的にはどなたでも……一応は、規則で十八歳からなんですが、失礼ですがお幾つなんですか?」
ルビーの顔を見て、バナンの顔を見て、カウンター越しから覗かせている俺を見つけると引きつった笑顔になっていた。
多分声と、人相が合わなくて困惑していたのかな、ごめんね小さくてさ……
「年齢制限があったのか。ちょっと残念だな」
「お嬢様? もしかして、冒険者になるおつもりだったのですか?」
「それも面白い話だけど。質問ですが、冒険者に登録すれば依頼が受けれますよね?」
「はい、登録をして頂いた方にこのようなギルドカードを発行しております。このカードを通じて依頼の受諾、完了にも使用します。魔力での登録になりますので他の方がカードを使うことはできませんよ」
ギルド管理はカード方式か。
魔力で管理しているから不正はできない。しかし、それは依頼受注に限っての話だ。
「では、次の質問です。仮に私が登録を済ませ、あそこにあるよな、薬草の採取や討伐を私でない誰かが、私の指示のもと完了した場合はどうなりますか?」
「つまりどういうことなのですか?」
「ちょっといい方が悪かったのかも。薬草の採集を受けますよね、その薬草をこのバナンが集めて私に譲り、私が完了の報告をした場合これは不正になりますか?」
この話だけで、今後の生活が一変するかもしれない。
できることなら大丈夫であってほしい。
それに町の治安維持の役割も担っているのだから、ある程度の冒険者たちは保護されているのだろう。
しかし、違約金というのも少し厄介だな……
「護衛の対象がそれなりの商人。もしくは重要な品物の破損や損失。それだと膨大な金額をギルドが負担できるはずがない。バナンは借金奴隷だから、護衛対象が暗殺でもされたのかしら?」
「お嬢、あんた本当はいくつなんだ?」
「ピッチピチの十歳」
スカートの裾の少し手前を軽く掴み、左足を下げ、首の角度を少しだけ右へ傾ける。
満面の笑みを浮かべ可愛さをアピールする。
しかし、俺のとった行動は、バナンだけではなく周りに居た奴隷達を凍りつかせていた。
彼らはきっと表情を隠せないのだろう。
おぅ。沈黙が辛い。
「かわいい」
「「「え!?」」」
まさかのルビーの発言に、そこにいた誰もが驚きの声を上げていた。
俺もその一人なのだが……俺が可愛いというと、周囲を凍りつかせるが、ルビーが可愛いって言葉を言うほうが破壊力あるってどうなんだろう?
「なにか?」
「え、お、おう。お嬢は可愛いよな、な?」
「あ、ああ。うん、そうだよな。は、ははは」
「そうだよ、よく見りゃかわいいよな。ははっははは」
何だよその乾いた笑いは……もう止めてくれよ。
誤魔化すためとは言え、やるんじゃなかった。
近くの街ということなので歩いていくのかと思ったら、俺だけ馬車に乗せられルビーが御者をしている。ただ、馬車というのもはかなり揺れる。それとも道が整備されていないからかもしれないな。
窓の外を見ると、当然アスファルトのような道ではない。これなら揺れて当然か……他の奴隷は左右に別れ歩いている。
なんというか、俺だけこの高待遇でいいのだろうか?
街の規模は思っていた以上に大きく、建物の数もかなりなものだ。
あの街にはどれだけの人が暮らしているのだろう。
「この辺りの街はどれもあれぐらい大きいのかしら?」
「お嬢、危ないですぜ。その話はついてからにしましょうや」
正論だな。車とは違いこの馬車の乗り心地も、舗装されていない道ではかなり揺れる。
おとなしく街につくまで、窓の外から見える風景を眺めつつ、尻の痛みからクッションが欲しいと頭から離れなかった。
「ここが、プルートの街でございます。お疲れでしたら何処か休めるところを探しますが」
軽く酔ったのと、硬い座席で少し痛みが残る尻を撫でていたことで、余計な心配をさせてしまったな。
だけど、次からもこの馬車に乗るのなら、何かしらのクッションになるものを用意していたほうが良いな。
帰りにも乗ることを考えると、少しばかり気が重くなる。
「大丈夫。ギルドは中央広場の近くだっけ?」
俺だけキョロキョロと、あちらこちらを眺めているせいか皆が足を止めて俺が動くと当然ついてくる。
ルビーからも何も指摘されないので、俺の好きにさせてもらおう。
「なあ、あれは注意しなくてもいいのか?」
「構いません。お嬢様は貴方が思っている以上に聡明ですから、ああやって楽しんでいるように見えて頭の中では、想像もつかないようなことを考えていらっしゃるのです」
「そうだな」
一頻りに街をぶらつき、それほど活気のある街ではなかったが、そんな事を気にすることもなく街の中を進んでいく。
街の人からは、私のように着飾った人達は居ない。
こんな格好をしているが、貴族の娘でもないのだけど、行動や視線から考えて距離を取っているのを感じる。
「ここが冒険者ギルド?」
ルビーに案内を任せて、しばらくすると大きめの建物の前で立ち止まる。
屋敷ほどではないが、三階建てになっていてこの辺りにある家と比べてもかなり大きい。
「お嬢は俺たちが守ってやるから安心しな」
「お嬢様をお守りするのは私の努めです」
これもお約束といえば、お約束なのかな。新参者や、今の俺のように不釣り合いなものが絡まれるという……一昔前の西部劇か?
しかし待っていたのは、誰も居ないガランとした空間だった。
右を見ても、左を見ても冒険者らしき人はだれも居ない。
「ああ、出払っているのか。丁度いいぜ」
何が丁度いいのか、皆の様子からして冒険者達が居たというのなら、何が起こるのかは予想できるな。
「ええ、そのようですね。さ、お嬢様、中へどうぞ」
受付に座っている人の所に向かうのだが……カウンターの前には椅子もなく、俺の身長だと顔だけが覗かせる程度だ。
こういうものを見ると、自分が子供だというを実感させられるな。
「おねーさん。冒険者登録ってどうするの?」
「え、えっと。登録は基本的にはどなたでも……一応は、規則で十八歳からなんですが、失礼ですがお幾つなんですか?」
ルビーの顔を見て、バナンの顔を見て、カウンター越しから覗かせている俺を見つけると引きつった笑顔になっていた。
多分声と、人相が合わなくて困惑していたのかな、ごめんね小さくてさ……
「年齢制限があったのか。ちょっと残念だな」
「お嬢様? もしかして、冒険者になるおつもりだったのですか?」
「それも面白い話だけど。質問ですが、冒険者に登録すれば依頼が受けれますよね?」
「はい、登録をして頂いた方にこのようなギルドカードを発行しております。このカードを通じて依頼の受諾、完了にも使用します。魔力での登録になりますので他の方がカードを使うことはできませんよ」
ギルド管理はカード方式か。
魔力で管理しているから不正はできない。しかし、それは依頼受注に限っての話だ。
「では、次の質問です。仮に私が登録を済ませ、あそこにあるよな、薬草の採取や討伐を私でない誰かが、私の指示のもと完了した場合はどうなりますか?」
「つまりどういうことなのですか?」
「ちょっといい方が悪かったのかも。薬草の採集を受けますよね、その薬草をこのバナンが集めて私に譲り、私が完了の報告をした場合これは不正になりますか?」
この話だけで、今後の生活が一変するかもしれない。
できることなら大丈夫であってほしい。
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