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7.破滅の呪い
不吉の足音
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『漸くここからが本番だなっ! 行っくぞおぉっ!』
クリーク達の話は、シュロス城に着いた処から始まった。
以前に同行した通り、恐らくは途中の敵を極力……と言うよりも、一切やり過ごしてここまで来たんだろうな。
地下迷宮やら屋内と違って、野外なら大きく迂回さえして不意打ちさえ注意すれば、そうやって戦闘を回避する事も不可能じゃあないからなぁ。
『ちょっと、クリークッ! 大きな声出さないでよっ! 怪物たちに気付かれるじゃないっ!』
『その……ソルシエさんも……もうちょっと静かに……』
そんなクリークに文句を言っているソルシエも、そしてそれに更なるツッコミを入れているダレンも容易に想像出来た。
『みんな……気を抜かないでね……。周囲に……いえ……この城全体から、不吉な気配が漂っているから……』
そんな中でも、きっとイルマは確りと周辺の警戒を怠らなかっただろうなぁ。イルマは優等生だし、俺の言う事にも忠実だし、何よりもみんなの事を一番に考えていたからな。
『わーかってるってっ、イルマッ! 俺は何時だって油断してないぜっ!』
そんなイルマの警告も、きっとクリークは軽く考えてそう答えた事だろう。
くぅっ! クリークの奴めっ! いつも口が酸っぱくなるほど「警戒を怠るな」って言って聞かせて来たのにな!
……まぁこれは彼等の説明から俺が想像した事だから、俺が怒るのも筋違いなんだけどな……ははは……。
『じゃあ、奥へ向かいましょ? ここに来る事だけが、今回の目的じゃないんだからね』
そう……。
クリーク達の目的は、ただこの城へとやって来るだけじゃあないんだ。この城の奥に安置されている「到達の証」を持ち帰る事。これが彼等の目的なんだからな。
ギルドの据え置いた「到達の証」を持ち帰れば、それをGに換金してくれるんだ。駆け出しの冒険者にそれは、是が非でも手に入れたい代物だろうな。
『おっ!? 早速お出ましだなっ!』
まず現れたのは、やはりと言おうか……生ける屍数体だったようだ。
この城全体にはこの様に、不死の怪物が掃いて捨てる程生息しているんだ。
こいつ等だけじゃあないだろうが、この城の何処でこいつ等と鉢合わせてもおかしい話じゃあない。
『ここはまかせてぇ!』
それに対してクリーク達が取った策は、ソルシエの魔法による迎撃だったんだ。
『我が敵を燃やし尽くせ……火炎魔法っ!』
定番通りと言おうか……ソルシエの放った複数回の火炎魔法で、ゾンビ共はクリーク達に接近する事も出来ずに火に呑まれて崩れ落ちた事だろう。
不死者共は総じて火に弱いとされている。
それに間違いはなく、ましてや〝魔女〟とされるソルシエの放った炎弾なんだ。
ただのゾンビがそれに耐えるような能力は持ち合わせていないからなぁ。
ただし……これは悪手だ。
『さっすがソルシエッ! 近づく前に仕留めるとは流石だぜ!』
『……っ! 気を付けてっ! まだ後ろから近づいて来るっ!』
『……と、これでお終いって訳にはいかないか! ダレン、行くぞっ!』
『はいっ! でも……またゾンビです……』
『よく見てっ! 骸骨も混じってる!』
地下迷宮や古城なんかでは、こうやって敵が次々と連なって来る事もおかしな話じゃあない。広い野外なら回避する事も出来るだろうが、狭い場所ではそうもいかないからな。
合流……と言う訳では無いだろうが、連戦を強いられる事なんてよくある事だ。
そして襲い来る敵が、必ずしも1種の怪物だけとは限らない。複数の種族が混成して襲い来るなんて事も、決して珍しい事じゃあないんだ。
『ゾンビはあたしがっ! スケルトンはクリークとダレンに任せたからっ!』
続けざまに襲い来る怪物の集団に対して、ソルシエが即座にそう指示を飛ばした様だ。
そして残念ながらこれも……まずい手としか言えないな。
再び放たれたソルシエの火炎魔法は、違う事無く数体のゾンビに直撃して燃やし尽くした。ソルシエの魔力と技能なら、これもまぁ当たり前だろうが。
ただし、屋内や閉塞空間で火炎魔法を連発する事は避けるのが定石だ。燃焼の影響で、有毒ガスやら酸素不足が発生する可能性があるからな。
家屋内ならその炎が燃え移って火災となり、自分達が火や煙に巻かれる……何ていう事もあり得る。
如何に目に見えて効果的であっても、使用場所や状況をよく考えなければならない。
それに。
『ちょっと、クリークッ! あんた、スケルトン相手に何やってるのよっ!?』
『う……うるせぇ、ソルシエッ! こいつ……意外に手強いんだよっ! それに、武器が……通らねぇっ!』
『ならダレンッ! あんたも加勢しなさいっ!』
『で……でも、相手があの大きさじゃあ……クリークさんの剣の邪魔に……』
そして骸骨種は、剣やナイフなんかの斬りつけて戦う武器とはすこぶる相性が悪いんだ。
打撃武器等は効果が高いから、本当はクリークも武器の切り替えを行うべきなんだが……。
まだまだ戦闘に不慣れなクリークには、武器を持ち換えて戦うと言う高度な技術は出来ないだろうしすべきじゃあない。
それに何よりも、様々な武器を買う程の資金も無いだろうしなぁ。
でも彼等には、それを補う手段がある。パーティのバリエーションが、相手に効果的なダメージを与える事の出来る編成になってるんだ。
ダレンの打撃なら、骸骨種にも大きなダメージが期待出来るだろう。
だがそれも、初手から誤ってしまった。クリークも苦戦は自覚しているだろうが、如何せん相手が自分と同じくらいの大きさなものだから自らの力で倒す事に固執しちまったんだろう。
『いけないっ! クリークッ! ダレンッ! 一旦退いてっ! 後ろから結構な数の敵がっ!』
そうして手こずっている間に、イルマが新たな警告を出した様だ。こんな戦闘音が響く様な場所じゃあ、他の怪物に気付かれるなって方が無理だからなぁ。
新たに現れたのは……またもや骸骨と生ける屍の混成集団だった。ただし今回は、その数が先程までと比べてはるかに多かった様だ。
『くっそ―――っ! ソルシエッ!』
『バカ言わないでっ! あんな数、あたしだけでどうにか出来る訳ないでしょっ!?』
『クリークとダレンもゾンビの制圧に加わって! 早くしないと、他の怪物もやって来るかも知れないからっ!』
『は……はい―――っ!』
半ば狂乱状態となりそうだったんだが、イルマの檄で何とか統率は取れている様だった。
でも……残念ながら、これも正解じゃあない。
そして。
『もうっ! 倒しても倒してもきりがないわっ!』
『ちぃっ! ゾンビの炎が邪魔で動きが……っ!?』
『で……でも、怪物たちが気にした様子は……ないですねっ!』
そんな大混戦にも拘らず、ソルシエは相変わらず単体攻撃魔法の火炎魔法を選択した様だった。
そしてそれが、クリーク達の動きを阻害していたんだ。
十分な広さでもあれば燃やされて行動不能となった怪物も障害とならないんだが、狭い場所ではその怪物を焼く炎が邪魔になる。
人である限りその身を火に焼かれればダメージを受けるし、何よりも「火」自体に恐怖を感じるものだ。
でも怪物の中には、その「火」をものともしない輩もいる。
実は「不死者種」もその一つだったんだ。
弱点として「火」を持ちながらも、その個体が「火」を恐れる事は無い。感情や思考が殆ど無いんだから、それも考えれば分かる事だ。
例え周囲を火炎で囲っても、不死者達はその身を焦がしながら迫り来るだろう。勿論、ダメージを負っているんだから、場合によってはそのまま行動不能となる訳だが。
今回もそれが災いし、焼かれて倒れ込んだゾンビがクリーク達の行動を妨げる一方、迫りくるゾンビたちがその事を気にした様子もなく倒れた仲間を踏み越えて迫って来るんだ。
『な……何っ!?』
クリーク達の注意が前方にのみ向かっている中、突如不可思議な動きをする怪物にいち早く気づいたのは……ソルシエだったようだ。
『あ……あの怪物……速い……!? それに……壁に……張り付いて!?』
ソルシエが目撃したその怪物は、正しく彼女達を絶望へと叩き落とす……不吉な魔物だったんだ。
クリーク達の話は、シュロス城に着いた処から始まった。
以前に同行した通り、恐らくは途中の敵を極力……と言うよりも、一切やり過ごしてここまで来たんだろうな。
地下迷宮やら屋内と違って、野外なら大きく迂回さえして不意打ちさえ注意すれば、そうやって戦闘を回避する事も不可能じゃあないからなぁ。
『ちょっと、クリークッ! 大きな声出さないでよっ! 怪物たちに気付かれるじゃないっ!』
『その……ソルシエさんも……もうちょっと静かに……』
そんなクリークに文句を言っているソルシエも、そしてそれに更なるツッコミを入れているダレンも容易に想像出来た。
『みんな……気を抜かないでね……。周囲に……いえ……この城全体から、不吉な気配が漂っているから……』
そんな中でも、きっとイルマは確りと周辺の警戒を怠らなかっただろうなぁ。イルマは優等生だし、俺の言う事にも忠実だし、何よりもみんなの事を一番に考えていたからな。
『わーかってるってっ、イルマッ! 俺は何時だって油断してないぜっ!』
そんなイルマの警告も、きっとクリークは軽く考えてそう答えた事だろう。
くぅっ! クリークの奴めっ! いつも口が酸っぱくなるほど「警戒を怠るな」って言って聞かせて来たのにな!
……まぁこれは彼等の説明から俺が想像した事だから、俺が怒るのも筋違いなんだけどな……ははは……。
『じゃあ、奥へ向かいましょ? ここに来る事だけが、今回の目的じゃないんだからね』
そう……。
クリーク達の目的は、ただこの城へとやって来るだけじゃあないんだ。この城の奥に安置されている「到達の証」を持ち帰る事。これが彼等の目的なんだからな。
ギルドの据え置いた「到達の証」を持ち帰れば、それをGに換金してくれるんだ。駆け出しの冒険者にそれは、是が非でも手に入れたい代物だろうな。
『おっ!? 早速お出ましだなっ!』
まず現れたのは、やはりと言おうか……生ける屍数体だったようだ。
この城全体にはこの様に、不死の怪物が掃いて捨てる程生息しているんだ。
こいつ等だけじゃあないだろうが、この城の何処でこいつ等と鉢合わせてもおかしい話じゃあない。
『ここはまかせてぇ!』
それに対してクリーク達が取った策は、ソルシエの魔法による迎撃だったんだ。
『我が敵を燃やし尽くせ……火炎魔法っ!』
定番通りと言おうか……ソルシエの放った複数回の火炎魔法で、ゾンビ共はクリーク達に接近する事も出来ずに火に呑まれて崩れ落ちた事だろう。
不死者共は総じて火に弱いとされている。
それに間違いはなく、ましてや〝魔女〟とされるソルシエの放った炎弾なんだ。
ただのゾンビがそれに耐えるような能力は持ち合わせていないからなぁ。
ただし……これは悪手だ。
『さっすがソルシエッ! 近づく前に仕留めるとは流石だぜ!』
『……っ! 気を付けてっ! まだ後ろから近づいて来るっ!』
『……と、これでお終いって訳にはいかないか! ダレン、行くぞっ!』
『はいっ! でも……またゾンビです……』
『よく見てっ! 骸骨も混じってる!』
地下迷宮や古城なんかでは、こうやって敵が次々と連なって来る事もおかしな話じゃあない。広い野外なら回避する事も出来るだろうが、狭い場所ではそうもいかないからな。
合流……と言う訳では無いだろうが、連戦を強いられる事なんてよくある事だ。
そして襲い来る敵が、必ずしも1種の怪物だけとは限らない。複数の種族が混成して襲い来るなんて事も、決して珍しい事じゃあないんだ。
『ゾンビはあたしがっ! スケルトンはクリークとダレンに任せたからっ!』
続けざまに襲い来る怪物の集団に対して、ソルシエが即座にそう指示を飛ばした様だ。
そして残念ながらこれも……まずい手としか言えないな。
再び放たれたソルシエの火炎魔法は、違う事無く数体のゾンビに直撃して燃やし尽くした。ソルシエの魔力と技能なら、これもまぁ当たり前だろうが。
ただし、屋内や閉塞空間で火炎魔法を連発する事は避けるのが定石だ。燃焼の影響で、有毒ガスやら酸素不足が発生する可能性があるからな。
家屋内ならその炎が燃え移って火災となり、自分達が火や煙に巻かれる……何ていう事もあり得る。
如何に目に見えて効果的であっても、使用場所や状況をよく考えなければならない。
それに。
『ちょっと、クリークッ! あんた、スケルトン相手に何やってるのよっ!?』
『う……うるせぇ、ソルシエッ! こいつ……意外に手強いんだよっ! それに、武器が……通らねぇっ!』
『ならダレンッ! あんたも加勢しなさいっ!』
『で……でも、相手があの大きさじゃあ……クリークさんの剣の邪魔に……』
そして骸骨種は、剣やナイフなんかの斬りつけて戦う武器とはすこぶる相性が悪いんだ。
打撃武器等は効果が高いから、本当はクリークも武器の切り替えを行うべきなんだが……。
まだまだ戦闘に不慣れなクリークには、武器を持ち換えて戦うと言う高度な技術は出来ないだろうしすべきじゃあない。
それに何よりも、様々な武器を買う程の資金も無いだろうしなぁ。
でも彼等には、それを補う手段がある。パーティのバリエーションが、相手に効果的なダメージを与える事の出来る編成になってるんだ。
ダレンの打撃なら、骸骨種にも大きなダメージが期待出来るだろう。
だがそれも、初手から誤ってしまった。クリークも苦戦は自覚しているだろうが、如何せん相手が自分と同じくらいの大きさなものだから自らの力で倒す事に固執しちまったんだろう。
『いけないっ! クリークッ! ダレンッ! 一旦退いてっ! 後ろから結構な数の敵がっ!』
そうして手こずっている間に、イルマが新たな警告を出した様だ。こんな戦闘音が響く様な場所じゃあ、他の怪物に気付かれるなって方が無理だからなぁ。
新たに現れたのは……またもや骸骨と生ける屍の混成集団だった。ただし今回は、その数が先程までと比べてはるかに多かった様だ。
『くっそ―――っ! ソルシエッ!』
『バカ言わないでっ! あんな数、あたしだけでどうにか出来る訳ないでしょっ!?』
『クリークとダレンもゾンビの制圧に加わって! 早くしないと、他の怪物もやって来るかも知れないからっ!』
『は……はい―――っ!』
半ば狂乱状態となりそうだったんだが、イルマの檄で何とか統率は取れている様だった。
でも……残念ながら、これも正解じゃあない。
そして。
『もうっ! 倒しても倒してもきりがないわっ!』
『ちぃっ! ゾンビの炎が邪魔で動きが……っ!?』
『で……でも、怪物たちが気にした様子は……ないですねっ!』
そんな大混戦にも拘らず、ソルシエは相変わらず単体攻撃魔法の火炎魔法を選択した様だった。
そしてそれが、クリーク達の動きを阻害していたんだ。
十分な広さでもあれば燃やされて行動不能となった怪物も障害とならないんだが、狭い場所ではその怪物を焼く炎が邪魔になる。
人である限りその身を火に焼かれればダメージを受けるし、何よりも「火」自体に恐怖を感じるものだ。
でも怪物の中には、その「火」をものともしない輩もいる。
実は「不死者種」もその一つだったんだ。
弱点として「火」を持ちながらも、その個体が「火」を恐れる事は無い。感情や思考が殆ど無いんだから、それも考えれば分かる事だ。
例え周囲を火炎で囲っても、不死者達はその身を焦がしながら迫り来るだろう。勿論、ダメージを負っているんだから、場合によってはそのまま行動不能となる訳だが。
今回もそれが災いし、焼かれて倒れ込んだゾンビがクリーク達の行動を妨げる一方、迫りくるゾンビたちがその事を気にした様子もなく倒れた仲間を踏み越えて迫って来るんだ。
『な……何っ!?』
クリーク達の注意が前方にのみ向かっている中、突如不可思議な動きをする怪物にいち早く気づいたのは……ソルシエだったようだ。
『あ……あの怪物……速い……!? それに……壁に……張り付いて!?』
ソルシエが目撃したその怪物は、正しく彼女達を絶望へと叩き落とす……不吉な魔物だったんだ。
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