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3.聖霊神殿へ
レベル付与の儀
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ルルディアの身の振り方と、今後のデジール族への対応については一段落した。
彼女を俺たちが引き取りこの地より連れ出す事が、双方にとって良い結果になる事は間違いないからな。俺の判断は間違ってないだろう。
「魔王から現地で対応する人員が送られてくるまで、この聖霊神殿で過ごすのが良いだろうな」
俺はデジール族のリーダー格……クールソルと言う男に今後の指示を与えた。
アヴィドが前族長並びに実力者たちを軒並み葬っちまってたんで、未だこの部族には纏め役がいない。
それはこれから彼らが決めりゃあ良い話で、とにかく俺の要望やら今後の行動を指揮する者は必要だろう。
「……感謝します」
短くそう答えたクールソルだったが、その顔にはとても納得した様子は伺えなかった。
部族の処置については問題無いんだろうけど、やっぱり引っ掛かってるのはルルディアの事か。
もう出て行くんだから、いつまでも気にした所でしょうがないだろうに。
とは言え、そんな簡単に割り切れないのも人情って処かな。こりゃあ、早いとこ退散した方が良さそう……なんだが。
「ああ……。それと、暫くの間この礼拝堂を借りたいんだ。全員、この場から出て行ってもらえるかな?」
そう簡単に、すぐにこの場をお暇するって訳にはいかないんだよなぁ。
だから俺は、早速要件を済ませる為にクールソルへ向けて要望……と言うか指示を出した。
彼は怪訝な表情を浮かべたけど、今更部族の救い主である俺に楯突く筈もない。小さく頷くとそれをみんなに伝え、それを聞いたその場の者たちはゾロゾロと出て行ったんだ。
この場に残ったのが俺たち4人だけともなると、この空間は嫌にだだっ広い。
そんな俺たちは、目的を遂行する為に聖霊ヴィス様を模した像の前に立っていた。
その目的は勿論、メニーナとパルネにレベルの恩恵を与える為……だったんだが。
「おい、ルルディア。これからも俺たちに……メニーナたちに付いて行動するって言うなら、お前にもレベルの恩恵を授ける様に聖霊様へ頼んでみるけど……ルルディア?」
俺は急遽、ルルディアにもレベルの恩恵を与える事を思いついたんだ。
強い仲間は、幾ら居ても問題ない。それと同様に、これから強くなっていくだろう者たちも多いに越した事は無い。
彼女もこれから行く当てもないって話だし、メニーナと共に冒険を続けるなら俺の目の届く範囲って事にもなるしな。
それにしても……。
「……あ……うん。その……おと……いえ、あなたがそう言うのなら……」
さっきから何だか、ルルディアの様子がおかしいんだよなぁ。
どこかモジモジしてるって言うか、所在無さげに身を捩っていると言うか。
それにこのやり取りにしても、妙に素直と言うかなんと言うか……。
「ええぇ!? この子と一緒にいぃ!?」
それに比べれば、メニーナは全くブレないな。
嫌っているって訳でもないみたいだけど、どうにも気を許しているって感じがしない。
それはパルネも同じみたいで、どっちかって言うと苦手って感じだ。
「私だって、別にあんた達と一緒じゃなくても良いんだから。でもその……おと……この人がそうしろって言うなら……」
ルルディアも心底納得している訳じゃあないみたいだけど、どうやら俺の事は認めて従ってくれるようだ。
でもまぁ、従順なのは助かる話だよな。
「よし。兎に角、今から聖霊ヴィス様にお越し頂くんだ。失礼のないようにな」
今はメニーナの苦情を聞いている場合でもないし、そんな時間も惜しい。
俺は文句タラタラなメニーナを無視して、早速聖霊像へと向き直った。
「……聖霊ヴィス様。その姿をお見せください」
そして俺は目を瞑り、気を静めてヴィス様をお呼びした。
彼女をこの場に出現させるのに、特別な呪文や儀式などは必要ない。定められた場所で呼びかければ、誰であれ会ってくれるって話だったからな。
そう時間を置かずして。
「……わぁ!」
「……綺麗」
「……こ……この方は……!?」
聖霊ヴィス様が、淡い光と共にその姿を現したんだ。
俺なんかは既に何度もその容姿を目にしているけど、初めて見る者はこんな反応なんだなぁ。
相変わらず露出の高い衣服を纏い、それが恥ずかしいのか身を捩り頬を赤らめた彼女は美しく且つどこか妖艶だ。
「あ……あの……。は……初めまして。……して、勇者様……この子供たちが?」
それでいて、聖霊ヴィス様はどこか引っ込み思案で人見知りが激しいって感じだからなぁ。それが、相手が子供でも同じみたいだ。
「はい、ヴィス様。メニーナ、アカパルネ、ルルディアです。まだ子供ですが、俺の目に留まった将来有望な子供たちです。彼女達に、レベルの加護を授けて貰えますか?」
俺はヴィス様に、3人の少女たちを紹介しする。
ヴィス様は柔らかい眼差しを彼女達へと向け、それを受けたメニーナたちはどこか恥ずかしそうにしている。多分ヴィス様は、女の子が見ても魅力的な女神なんだろう。
しばし3人を見つめていたヴィス様が、スッと俺へ向けて視線を戻した。
「こ……この娘たちは、とても高い将来性を感じますね。……レベルを付与するのに不足はないでしょう」
やはり男性である俺にはどうにも照れてしまうのか、言葉を詰まらせながら彼女はそう口にした。
レベルの付与に資格……ってのはない筈なんだが、人族みたいに誰にでも……ってのは問題があるかも知れない。
ただでさえ強力な力を得る事が出来るんだ。ある程度選定しても仕方がないよな。
それに、無制限に時間がある訳でもない。
まだ子供でもあるメニーナたち3人は、今後の伸びしろは十分にあると考えられる。
それでも今の時点で何かしらの問題が露呈しているなら、そこを聖霊様は指摘してくれるはずだ。
「それじゃあ、早速お願い致します。……メニーナ、パルネ、ルルディア」
それが無いって事は、彼女達にレベルを付与しても問題無い……どころか、推奨してくれていると考えて良いだろうな。
だから俺は、今度はメニーナたちの方へと向き直った。
よくよく考えたら、まだ彼女達には詳しい話をしていなかったしな。ルルディアに至っては、さっき知り合ったばっかりだし。
俺に話を振られて、3人はキョトンとしている。
「これからお前たち3人には、聖霊様よりレベルの加護を授けて貰う。これでお前たちは、更に強くなれる可能性を得る事が出来るんだ」
「えっ!? えっ!? レベル!? 強くなれるって!?」
「……もっと……強くなれる? ……レベル?」
「……強く」
俺の話を聞いたメニーナ、パルネ、ルルディアの反応はそれぞれだったけど、良く分からないってのが一致した見解みたいだ。
レベルなんて、こっちでは浸透していない言葉だからな。困惑するのも無理はない。
「とりあえず、3人並んで聖霊様の前に立つんだ」
でもまぁ、百聞は一見に……って奴だな。
これから彼女達が納得するまで話しだしたら、それこそいつまで掛るか分かったもんじゃあない。
それでも子供ってのは素直なもんで、俺の言う事に首を捻りながらも従いヴィス様の前に整列する。
そしてやや不安そうにしている3人に向けて、ヴィス様は優しく微笑みながら静かに目を閉じた。
すると即座に、ヴィス様に変化が訪れた。彼女の身体から、淡い光が発しだしたんだ。そしてそれは、まるで伝播するみたいにメニーナたちの身体も発光しだした。
「わわわっ!?」
「こ……これは!?」
「え……!?」
その変化を目の当たりにして、メニーナたち3人が即座に慌てだしたんだ。
そりゃあ、初めての経験な上に自分の身体が光り出したんだからな。びっくりするなってのが無理な話だろう。
困惑顔で俺の方を見てくるメニーナ、パルネ、ルルディアに向けて、俺は出来るだけ落ち着ける笑顔で頷いて応えたんだが……。
彼女達の表情を見る限りでは、どうやらそれは上手くいっていない様だ。更に困惑の度合いを深めて、何だか悲しそうな表情まで浮かべている……。
うぅん……何だかなぁ……。
もっとも、それもそう長い時間ではなかったんだがな。
「あ……あれ?」
「……光が」
「……消えた?」
ユックリとヴィス様が目を開くと同時に、彼女達の身体から発していた光は消え失せたんだ。
そしてヴィス様が、俺の方へと顔を向け頷きかけてきた。
それはそのまま、レベル付与の儀が終了した事を指していた。
彼女を俺たちが引き取りこの地より連れ出す事が、双方にとって良い結果になる事は間違いないからな。俺の判断は間違ってないだろう。
「魔王から現地で対応する人員が送られてくるまで、この聖霊神殿で過ごすのが良いだろうな」
俺はデジール族のリーダー格……クールソルと言う男に今後の指示を与えた。
アヴィドが前族長並びに実力者たちを軒並み葬っちまってたんで、未だこの部族には纏め役がいない。
それはこれから彼らが決めりゃあ良い話で、とにかく俺の要望やら今後の行動を指揮する者は必要だろう。
「……感謝します」
短くそう答えたクールソルだったが、その顔にはとても納得した様子は伺えなかった。
部族の処置については問題無いんだろうけど、やっぱり引っ掛かってるのはルルディアの事か。
もう出て行くんだから、いつまでも気にした所でしょうがないだろうに。
とは言え、そんな簡単に割り切れないのも人情って処かな。こりゃあ、早いとこ退散した方が良さそう……なんだが。
「ああ……。それと、暫くの間この礼拝堂を借りたいんだ。全員、この場から出て行ってもらえるかな?」
そう簡単に、すぐにこの場をお暇するって訳にはいかないんだよなぁ。
だから俺は、早速要件を済ませる為にクールソルへ向けて要望……と言うか指示を出した。
彼は怪訝な表情を浮かべたけど、今更部族の救い主である俺に楯突く筈もない。小さく頷くとそれをみんなに伝え、それを聞いたその場の者たちはゾロゾロと出て行ったんだ。
この場に残ったのが俺たち4人だけともなると、この空間は嫌にだだっ広い。
そんな俺たちは、目的を遂行する為に聖霊ヴィス様を模した像の前に立っていた。
その目的は勿論、メニーナとパルネにレベルの恩恵を与える為……だったんだが。
「おい、ルルディア。これからも俺たちに……メニーナたちに付いて行動するって言うなら、お前にもレベルの恩恵を授ける様に聖霊様へ頼んでみるけど……ルルディア?」
俺は急遽、ルルディアにもレベルの恩恵を与える事を思いついたんだ。
強い仲間は、幾ら居ても問題ない。それと同様に、これから強くなっていくだろう者たちも多いに越した事は無い。
彼女もこれから行く当てもないって話だし、メニーナと共に冒険を続けるなら俺の目の届く範囲って事にもなるしな。
それにしても……。
「……あ……うん。その……おと……いえ、あなたがそう言うのなら……」
さっきから何だか、ルルディアの様子がおかしいんだよなぁ。
どこかモジモジしてるって言うか、所在無さげに身を捩っていると言うか。
それにこのやり取りにしても、妙に素直と言うかなんと言うか……。
「ええぇ!? この子と一緒にいぃ!?」
それに比べれば、メニーナは全くブレないな。
嫌っているって訳でもないみたいだけど、どうにも気を許しているって感じがしない。
それはパルネも同じみたいで、どっちかって言うと苦手って感じだ。
「私だって、別にあんた達と一緒じゃなくても良いんだから。でもその……おと……この人がそうしろって言うなら……」
ルルディアも心底納得している訳じゃあないみたいだけど、どうやら俺の事は認めて従ってくれるようだ。
でもまぁ、従順なのは助かる話だよな。
「よし。兎に角、今から聖霊ヴィス様にお越し頂くんだ。失礼のないようにな」
今はメニーナの苦情を聞いている場合でもないし、そんな時間も惜しい。
俺は文句タラタラなメニーナを無視して、早速聖霊像へと向き直った。
「……聖霊ヴィス様。その姿をお見せください」
そして俺は目を瞑り、気を静めてヴィス様をお呼びした。
彼女をこの場に出現させるのに、特別な呪文や儀式などは必要ない。定められた場所で呼びかければ、誰であれ会ってくれるって話だったからな。
そう時間を置かずして。
「……わぁ!」
「……綺麗」
「……こ……この方は……!?」
聖霊ヴィス様が、淡い光と共にその姿を現したんだ。
俺なんかは既に何度もその容姿を目にしているけど、初めて見る者はこんな反応なんだなぁ。
相変わらず露出の高い衣服を纏い、それが恥ずかしいのか身を捩り頬を赤らめた彼女は美しく且つどこか妖艶だ。
「あ……あの……。は……初めまして。……して、勇者様……この子供たちが?」
それでいて、聖霊ヴィス様はどこか引っ込み思案で人見知りが激しいって感じだからなぁ。それが、相手が子供でも同じみたいだ。
「はい、ヴィス様。メニーナ、アカパルネ、ルルディアです。まだ子供ですが、俺の目に留まった将来有望な子供たちです。彼女達に、レベルの加護を授けて貰えますか?」
俺はヴィス様に、3人の少女たちを紹介しする。
ヴィス様は柔らかい眼差しを彼女達へと向け、それを受けたメニーナたちはどこか恥ずかしそうにしている。多分ヴィス様は、女の子が見ても魅力的な女神なんだろう。
しばし3人を見つめていたヴィス様が、スッと俺へ向けて視線を戻した。
「こ……この娘たちは、とても高い将来性を感じますね。……レベルを付与するのに不足はないでしょう」
やはり男性である俺にはどうにも照れてしまうのか、言葉を詰まらせながら彼女はそう口にした。
レベルの付与に資格……ってのはない筈なんだが、人族みたいに誰にでも……ってのは問題があるかも知れない。
ただでさえ強力な力を得る事が出来るんだ。ある程度選定しても仕方がないよな。
それに、無制限に時間がある訳でもない。
まだ子供でもあるメニーナたち3人は、今後の伸びしろは十分にあると考えられる。
それでも今の時点で何かしらの問題が露呈しているなら、そこを聖霊様は指摘してくれるはずだ。
「それじゃあ、早速お願い致します。……メニーナ、パルネ、ルルディア」
それが無いって事は、彼女達にレベルを付与しても問題無い……どころか、推奨してくれていると考えて良いだろうな。
だから俺は、今度はメニーナたちの方へと向き直った。
よくよく考えたら、まだ彼女達には詳しい話をしていなかったしな。ルルディアに至っては、さっき知り合ったばっかりだし。
俺に話を振られて、3人はキョトンとしている。
「これからお前たち3人には、聖霊様よりレベルの加護を授けて貰う。これでお前たちは、更に強くなれる可能性を得る事が出来るんだ」
「えっ!? えっ!? レベル!? 強くなれるって!?」
「……もっと……強くなれる? ……レベル?」
「……強く」
俺の話を聞いたメニーナ、パルネ、ルルディアの反応はそれぞれだったけど、良く分からないってのが一致した見解みたいだ。
レベルなんて、こっちでは浸透していない言葉だからな。困惑するのも無理はない。
「とりあえず、3人並んで聖霊様の前に立つんだ」
でもまぁ、百聞は一見に……って奴だな。
これから彼女達が納得するまで話しだしたら、それこそいつまで掛るか分かったもんじゃあない。
それでも子供ってのは素直なもんで、俺の言う事に首を捻りながらも従いヴィス様の前に整列する。
そしてやや不安そうにしている3人に向けて、ヴィス様は優しく微笑みながら静かに目を閉じた。
すると即座に、ヴィス様に変化が訪れた。彼女の身体から、淡い光が発しだしたんだ。そしてそれは、まるで伝播するみたいにメニーナたちの身体も発光しだした。
「わわわっ!?」
「こ……これは!?」
「え……!?」
その変化を目の当たりにして、メニーナたち3人が即座に慌てだしたんだ。
そりゃあ、初めての経験な上に自分の身体が光り出したんだからな。びっくりするなってのが無理な話だろう。
困惑顔で俺の方を見てくるメニーナ、パルネ、ルルディアに向けて、俺は出来るだけ落ち着ける笑顔で頷いて応えたんだが……。
彼女達の表情を見る限りでは、どうやらそれは上手くいっていない様だ。更に困惑の度合いを深めて、何だか悲しそうな表情まで浮かべている……。
うぅん……何だかなぁ……。
もっとも、それもそう長い時間ではなかったんだがな。
「あ……あれ?」
「……光が」
「……消えた?」
ユックリとヴィス様が目を開くと同時に、彼女達の身体から発していた光は消え失せたんだ。
そしてヴィス様が、俺の方へと顔を向け頷きかけてきた。
それはそのまま、レベル付与の儀が終了した事を指していた。
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