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4.同様ならざる世界
夜宴を彩る美姫達
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パーティーと言う名の我慢大会。
宴と言う名目の身体酷使。
とにかく肉体的にはともかくとして、精神的にガリガリと削られる……それが、貴族様の開く夜会の正体だ。
初めは喜んでいたマリーシェ、サリシュ、カミーラ、バーバラ、セリルだったが、俺の説明を聞いてどんよりとした雰囲気に呑まれてしまっていた……んだが。
人と言うのは、苦痛や苦労と言うものは過ぎ去れば忘れてしまうものらしい。まぁ、それが良い事でもあり悪い事でもあるんだけどな。
……とにかく。
「ねぇねぇ、アレク! これ……どうかなぁ? おかしくない?」
長い…‥長ぁい準備を終えて、女性陣がパーティー会場にやって来た。
時刻は午後の6時30分。パーティー開始まで後30分だ。準備を終えていても、何ら不思議じゃあない。
着飾ったマリーシェが、会場で顔を合わせた途端に擦り寄って来て俺に問い掛けて来たんだ。
「あ……ああ。凄く似合ってる」
頬を赤らめて聞いて来る彼女は、普段とはかけ離れた魅力に溢れていたんだ。
いつもは無造作に後ろへと流している彼女の金髪は、今は綺麗に纏められてアップにされている。それによって、普段は見れない彼女のうなじが露わとなり、なんだかドキドキさせられるな。
綺麗な金髪がより映える様に、身に着けているドレスは美しい蒼だ。ドレスの色が鮮やかであればある程に、彼女の髪は輝きを放っている。
ワンショルダーのドレスは胸繰りが大きく開いていて、彼女の女性らしさを強調していた。
そして信じられないくらいに細められた腰が、少女の華奢な部分を印象付けていたんだ。
……ああ。こうやって見ると、マリーシェも女の子だよなぁ。
そして綺麗に化粧された彼女は、普段見るマリーシェじゃあなく、どこか恋する乙女と言う雰囲気を醸し出していた。
青い瞳がキラキラと煌めいて、まるで宝石を散りばめた様だ。
「……マリーシェだけズルいわぁ。……アレク、ウチは……どう?」
俺の返答を聞いて喜んでいるマリーシェの背後から、今度はサリシュが現れて質問して来た。
俺はまたまた、驚きを隠せなかったんだ。
「……すごく綺麗だよ」
こんな台詞を言うキャラじゃあないとは分かっていても、他に台詞が出て来なかったんだから仕方がない。
何よりも、咄嗟に出た考えなしの言葉だったんだから止め様がなかった。
「……ほ……ほんまにぃ?」
頬に手を当てて照れるサリシュは、いっそ可憐だと言って良かった。
普段は魔法使い用のローブにその身を埋めているんで、彼女の全容を見る事は殆ど無い。でもこうやって改めて見れば、サリシュの魅力があちらこちらで輝いていたんだ。
実は彼女も、漆黒の黒髪を長く伸ばしている。その黒髪を、やはり頭の上で纏め上げていた。
そこから延びる白いうなじは、今はほんのりと上気していてピンク掛かっている。
彼女のドレスは、黒髪とは対照的に純白だった。いっそウェディングドレスではないかという程に、今のサリシュが纏うとこの上なく清楚な印象を受ける。
デコルテのドレスはやはり胸繰りが大きく開いていて、マリーシェほどではないにしろ彼女の胸を強調していた。
前面の露出はそれほど多くないんだが、背面がVバックになっていて彼女の白い肌を惜しげもなく見せつけていたんだ。
うぅ……。余りの純白さに、目がチカチカしちまう。
「私は……どうだろうか?」
マリーシェ達の後ろからオズオズと出て来たのは、見事にドレスアップしたカミーラだ。
どうだろうか……と聞かれても、洒落た言葉なんか出て来やしない。
「……とても可憐だ」
思わずそのまま魅入ってしまいそうな心を奮い起こして出た言葉が……これだった。
俺の感想を聞いて、カミーラはボンッと音がしそうなほど瞬間的に顔を真っ赤にしてしまった。
マリーシェやサリシュ程、胸元はそれほど開いていないオフショルダーのドレスを纏い、背面もクローズドバックで露出は殆ど無い。でもそれが、実にカミーラらしい。
彼女の髪も、やはり綺麗に整えられてアップにされていて、スッと伸びている首筋のラインが美しい。
そしてそのドレスは……深紅! 彼女の紫色の髪と相まって、とても神秘的な色合いを醸し出していた。
いや……それ等も、付随的なものでしか無いのかも……。
髪の色よりも、ドレスよりも、更に宝石を見紛う麗紫の瞳が何よりも強調されていたんだ。
マリーシェ達よりも慎ましい胸だけど、それだけに彼女のスラッとしたスタイルが強調されていた。
そんな彼女がモジモジと恥ずかしそうにしている様は、普段の凛々しさとのギャップで更に可愛らしさも演出していた。
「……だから……こんなドレスは……着たくなかったんだ」
そんな愚痴が聞こえて、最後尾に位置していたバーバラの存在に気付いた。
彼女はもう、不機嫌そうな表情を隠そうともしていない。
「は……ははは」
でも俺は、その言葉の意味をバーバラの姿を見る事で理解していたんだ。
恐らくは、この4人の中で最も視線を集めているのは間違いなく……彼女だな。
普段は、いっそ無造作と言って良い薄い青の髪を、今は綺麗に整えてまとめ上げアップにしている。気付かないもので、こういう髪形をするだけで途端に彼女の隠された魅力が滲み出ていたんだ。
もっともそれらを台無しにしている沈んだ様な両眼は健在で、胡乱な緑の瞳を湛えている。もっと明るい表情でもすれば、きっと驚くほどの美人なんだろうけどなぁ。
それでも、それを補って余りあるものが彼女には……ある!
美しい緑色のドレスを身に纏っている。それ自体は、他の3人と同じだろう。
凶悪なのは、そのドレスがホルターネックになっており、彼女の豊満な胸が強調されているどころか、今にも零れ落ちそうだ!
しかも背面は、大きく開いたUバック! 他の3人の誰よりも、間違いなく妖艶な雰囲気を振りまいていたんだ!おいおい、本当に14歳なのかよ!?
そして、バーバラが何故開口一番に愚痴ったのかが……これで分かると言うものだろう。
このパーティー会場に入って来て、彼女を見ない男性はいなかった筈なんだ。しかも……下心を剥き出しの眼でな。
元々、コミュニケーションが苦手で人の視線に敏感な彼女だ。そんな厭らしい視線に晒されれば、バーバラが帰りたいと考えるのも仕方がないな。
「で……でも、とても魅力的だよ」
気分的には不機嫌だろうバーバラだが、ここで何も言わないと言うのは逆に失礼だ。
俺は、嫌そうな視線を向けられる覚悟で彼女を褒めたんだ……が。
「……あ……ありがとう」
予想に反して彼女は、頬を赤らめてお礼まで口にしたんだ。
あれ? これで正解だったのかな?
「おおぉっ! みんな、すっげぇ綺麗じゃんっ!」
そしてセリルは、そんな4人に大声で賞賛を送ったんだ。
古今東西で、綺麗だと言われて喜ばない女性はいない。
普段は兎も角として、今だけは彼女達もセリルの誉め言葉に頬を赤らめて喜んでいる。もっとも、バーバラだけはそんなセリルに冷ややかな視線を送っていたのだが。
その理由も、同じ男の俺なら……分かる。
セリルの誉め言葉は、実に欲望に忠実な部分へと視線を向けながら放たれた言葉だったんだ。
浮かれ気味のマリーシェ達はその事に気付かなかったんだろうが、バーバラだけはその事に気付きいつも通りの眼をセリルに向けていたんだ。
おい……セリルよ。あんまり胸だの腰だのお尻だのばっかりに視線を向けていると、そのうち袋叩きに合うぞ?
そういうセリルも、正装をして口を閉ざしていると、まるで貴族の子息と見紛う程だった。
元々、顔の造りは良いんだ。それを彩る金髪も、本当に貴族然としている。
事実、すでに会場入りしている何人かの令嬢は、セリルを見て何やら内緒話をしている。もしかすれば、ダンスの誘いでも期待しているのかも知れないな。
まぁ……それにセリルが気付いているかどうかは不明な訳だが。
煌々とした明かりが闇夜を照らし、それに女性陣が彩りを添える。
作られた一夜の幻想が、今まさに始まろうとしていたのだった。
宴と言う名目の身体酷使。
とにかく肉体的にはともかくとして、精神的にガリガリと削られる……それが、貴族様の開く夜会の正体だ。
初めは喜んでいたマリーシェ、サリシュ、カミーラ、バーバラ、セリルだったが、俺の説明を聞いてどんよりとした雰囲気に呑まれてしまっていた……んだが。
人と言うのは、苦痛や苦労と言うものは過ぎ去れば忘れてしまうものらしい。まぁ、それが良い事でもあり悪い事でもあるんだけどな。
……とにかく。
「ねぇねぇ、アレク! これ……どうかなぁ? おかしくない?」
長い…‥長ぁい準備を終えて、女性陣がパーティー会場にやって来た。
時刻は午後の6時30分。パーティー開始まで後30分だ。準備を終えていても、何ら不思議じゃあない。
着飾ったマリーシェが、会場で顔を合わせた途端に擦り寄って来て俺に問い掛けて来たんだ。
「あ……ああ。凄く似合ってる」
頬を赤らめて聞いて来る彼女は、普段とはかけ離れた魅力に溢れていたんだ。
いつもは無造作に後ろへと流している彼女の金髪は、今は綺麗に纏められてアップにされている。それによって、普段は見れない彼女のうなじが露わとなり、なんだかドキドキさせられるな。
綺麗な金髪がより映える様に、身に着けているドレスは美しい蒼だ。ドレスの色が鮮やかであればある程に、彼女の髪は輝きを放っている。
ワンショルダーのドレスは胸繰りが大きく開いていて、彼女の女性らしさを強調していた。
そして信じられないくらいに細められた腰が、少女の華奢な部分を印象付けていたんだ。
……ああ。こうやって見ると、マリーシェも女の子だよなぁ。
そして綺麗に化粧された彼女は、普段見るマリーシェじゃあなく、どこか恋する乙女と言う雰囲気を醸し出していた。
青い瞳がキラキラと煌めいて、まるで宝石を散りばめた様だ。
「……マリーシェだけズルいわぁ。……アレク、ウチは……どう?」
俺の返答を聞いて喜んでいるマリーシェの背後から、今度はサリシュが現れて質問して来た。
俺はまたまた、驚きを隠せなかったんだ。
「……すごく綺麗だよ」
こんな台詞を言うキャラじゃあないとは分かっていても、他に台詞が出て来なかったんだから仕方がない。
何よりも、咄嗟に出た考えなしの言葉だったんだから止め様がなかった。
「……ほ……ほんまにぃ?」
頬に手を当てて照れるサリシュは、いっそ可憐だと言って良かった。
普段は魔法使い用のローブにその身を埋めているんで、彼女の全容を見る事は殆ど無い。でもこうやって改めて見れば、サリシュの魅力があちらこちらで輝いていたんだ。
実は彼女も、漆黒の黒髪を長く伸ばしている。その黒髪を、やはり頭の上で纏め上げていた。
そこから延びる白いうなじは、今はほんのりと上気していてピンク掛かっている。
彼女のドレスは、黒髪とは対照的に純白だった。いっそウェディングドレスではないかという程に、今のサリシュが纏うとこの上なく清楚な印象を受ける。
デコルテのドレスはやはり胸繰りが大きく開いていて、マリーシェほどではないにしろ彼女の胸を強調していた。
前面の露出はそれほど多くないんだが、背面がVバックになっていて彼女の白い肌を惜しげもなく見せつけていたんだ。
うぅ……。余りの純白さに、目がチカチカしちまう。
「私は……どうだろうか?」
マリーシェ達の後ろからオズオズと出て来たのは、見事にドレスアップしたカミーラだ。
どうだろうか……と聞かれても、洒落た言葉なんか出て来やしない。
「……とても可憐だ」
思わずそのまま魅入ってしまいそうな心を奮い起こして出た言葉が……これだった。
俺の感想を聞いて、カミーラはボンッと音がしそうなほど瞬間的に顔を真っ赤にしてしまった。
マリーシェやサリシュ程、胸元はそれほど開いていないオフショルダーのドレスを纏い、背面もクローズドバックで露出は殆ど無い。でもそれが、実にカミーラらしい。
彼女の髪も、やはり綺麗に整えられてアップにされていて、スッと伸びている首筋のラインが美しい。
そしてそのドレスは……深紅! 彼女の紫色の髪と相まって、とても神秘的な色合いを醸し出していた。
いや……それ等も、付随的なものでしか無いのかも……。
髪の色よりも、ドレスよりも、更に宝石を見紛う麗紫の瞳が何よりも強調されていたんだ。
マリーシェ達よりも慎ましい胸だけど、それだけに彼女のスラッとしたスタイルが強調されていた。
そんな彼女がモジモジと恥ずかしそうにしている様は、普段の凛々しさとのギャップで更に可愛らしさも演出していた。
「……だから……こんなドレスは……着たくなかったんだ」
そんな愚痴が聞こえて、最後尾に位置していたバーバラの存在に気付いた。
彼女はもう、不機嫌そうな表情を隠そうともしていない。
「は……ははは」
でも俺は、その言葉の意味をバーバラの姿を見る事で理解していたんだ。
恐らくは、この4人の中で最も視線を集めているのは間違いなく……彼女だな。
普段は、いっそ無造作と言って良い薄い青の髪を、今は綺麗に整えてまとめ上げアップにしている。気付かないもので、こういう髪形をするだけで途端に彼女の隠された魅力が滲み出ていたんだ。
もっともそれらを台無しにしている沈んだ様な両眼は健在で、胡乱な緑の瞳を湛えている。もっと明るい表情でもすれば、きっと驚くほどの美人なんだろうけどなぁ。
それでも、それを補って余りあるものが彼女には……ある!
美しい緑色のドレスを身に纏っている。それ自体は、他の3人と同じだろう。
凶悪なのは、そのドレスがホルターネックになっており、彼女の豊満な胸が強調されているどころか、今にも零れ落ちそうだ!
しかも背面は、大きく開いたUバック! 他の3人の誰よりも、間違いなく妖艶な雰囲気を振りまいていたんだ!おいおい、本当に14歳なのかよ!?
そして、バーバラが何故開口一番に愚痴ったのかが……これで分かると言うものだろう。
このパーティー会場に入って来て、彼女を見ない男性はいなかった筈なんだ。しかも……下心を剥き出しの眼でな。
元々、コミュニケーションが苦手で人の視線に敏感な彼女だ。そんな厭らしい視線に晒されれば、バーバラが帰りたいと考えるのも仕方がないな。
「で……でも、とても魅力的だよ」
気分的には不機嫌だろうバーバラだが、ここで何も言わないと言うのは逆に失礼だ。
俺は、嫌そうな視線を向けられる覚悟で彼女を褒めたんだ……が。
「……あ……ありがとう」
予想に反して彼女は、頬を赤らめてお礼まで口にしたんだ。
あれ? これで正解だったのかな?
「おおぉっ! みんな、すっげぇ綺麗じゃんっ!」
そしてセリルは、そんな4人に大声で賞賛を送ったんだ。
古今東西で、綺麗だと言われて喜ばない女性はいない。
普段は兎も角として、今だけは彼女達もセリルの誉め言葉に頬を赤らめて喜んでいる。もっとも、バーバラだけはそんなセリルに冷ややかな視線を送っていたのだが。
その理由も、同じ男の俺なら……分かる。
セリルの誉め言葉は、実に欲望に忠実な部分へと視線を向けながら放たれた言葉だったんだ。
浮かれ気味のマリーシェ達はその事に気付かなかったんだろうが、バーバラだけはその事に気付きいつも通りの眼をセリルに向けていたんだ。
おい……セリルよ。あんまり胸だの腰だのお尻だのばっかりに視線を向けていると、そのうち袋叩きに合うぞ?
そういうセリルも、正装をして口を閉ざしていると、まるで貴族の子息と見紛う程だった。
元々、顔の造りは良いんだ。それを彩る金髪も、本当に貴族然としている。
事実、すでに会場入りしている何人かの令嬢は、セリルを見て何やら内緒話をしている。もしかすれば、ダンスの誘いでも期待しているのかも知れないな。
まぁ……それにセリルが気付いているかどうかは不明な訳だが。
煌々とした明かりが闇夜を照らし、それに女性陣が彩りを添える。
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