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3.猛襲のグローイア
波状攻撃
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俺たちは、隊の先頭に襲い掛かっていた盗賊団の制圧に成功した。でも、その数は余りにも少ない。
こんな人数でこれだけの規模の隊列を襲うなんて、ハッキリ言って無計画であり正気の沙汰じゃあないだろう。
「……セリル、バーバラ。大丈夫か?」
マリーシェとカミーラは、引き続き周囲の警戒に神経を向けている。サリシュは、息のある負傷者に簡単な回復魔法を掛けていた。
この辺りは、流石に何も言わなくとも対応してくれている。経験のなせる業だな。
「あ……ああ。だ……大丈夫にき……決まってんだろ」
気丈に答えてくるセリルだけど、その言葉ほどには大丈夫じゃあなさそうだ。
彼らにとっては、これが初めての対人戦闘だろう。
人が斬られて血を流しのたうち回る……それを、俺たちの手で下すんだ。平気どころか、恐怖を感じていて当然だろうな。
「……平気ではないが……戦う事は出来るわ」
そんな中で、初めて人と人が戦う場面を間近で見た割には、こうやって冷静に自分を見つめる事が出来るバーバラは頼もしい。
「よし。どうやらこっちは陽動の様だ。本命は、恐らくシャルルー様のいる中央部だろう。急いで戻るぞ」
ここにはもう増援はなさそうだ。
ならこれは、護衛の混乱と分断を図った作戦だと考えて良いだろうな。
「……しかし、ただの盗賊団がこれほど計画的な行動を取るものであろうか?」
俺の見解を聞いて、カミーラが素朴な疑問を口にしたんだ。
彼女がそう考えるのも当然なんだが、それを言えばこの襲撃自体が不自然だと言える。
……そうだ。どうにも不自然な点が多い。これはやはり「闇ギルド」の関与を否定出来ない……な。
「……アレク。……今すぐ治療したったら助かる人も後何人かおるんやけど」
また一人応急処置を済ませたサリシュが、スッと立ち上がって俺に意見を求めてきた。
人道的に考えれば、この場に留まって治療活動をした方が良いんだろうけどな。
「……いや、ここでの救出活動は中止だ。サリシュも来てくれ」
俺はそんな彼女に同行を求め、サリシュも何の異論も口にせずに頷いた。
「ちょ……ちょっと待てよ! じゃあ、助かるかも知れない人を放って置くってのか!?」
でもそんな俺の決定に、どうやらセリルはご不満な様だ。
彼が言っているのは、倒された戦士達だけの事を言っているんじゃあない。未だ息があり助かりそうな、侍従や馬の口取りの事を気に掛けているんだ。
戦士が戦って命を落とす事には理解出来ても、傷付いた非戦闘員を放置していく事が信じられないんだろう。
うん。一般的人道的な見地から見たら、彼の抗議もおかしいものじゃあないんだけどな。
「ああ、見捨てる。俺たちはここに、人助けに来た訳じゃあ無いからな。それに、肝心の依頼主や護衛対象が死んじまったら、本末転倒だろ?」
そんなセリルに、俺は殊更に冷たい物言いで返したんだ。
レベルは違えど、同年代にこれだけ違う見解を言われたんだ。普通なら反発しそうなもんだろうが、今はそんな事で議論している場合じゃあない。
「そういう事。ウダウダ言ってないで、さっさと行くわよ」
そんな俺に、マリーシェが同調し。
「その事については、また後程話し合えば良いのではないか? 今は、アレクの指示に従うのが最良であろう」
カミーラも同意してくれたんだ。彼女達も随分と「冒険者」に慣れたよなぁ。
余力があったり時間があれば、勿論人助けをするのも悪くはない。俺だって、そこまで割り切ったり擦れてる訳じゃあ無いからなぁ。
でも残念ながら、今はその時間こそ無いんだ。セリルの言う通りにしてやる暇なんて全くない。
「……マリーシェとカミーラの言う通り。……行くわよ」
そして、バーバラも俺たちの意見に賛成な様だ。
彼女は、自分がまだまだ冒険者として経験が足りていない事を良く知っている。
「……分った。……わぁったよ!」
そして、3人の女性陣に反対意見を言われてしまっては、流石のセリルもこれ以上我儘を言える状況ではなかった。
「よし! 走るぞ!」
俺は仲間たちにそう声を掛け、先頭を切って走り出したんだ。
シャルルー嬢の元へと戻って来た俺たちだが、そこは未だに平穏そのものだった。先頭での戦いが、まるで嘘の様だな。
「ふん。戻ってきおったな、冒険者が。先頭の様子はどうであった?」
シャルルー嬢を馬車へと戻し、その周囲を幾重にも護衛兵に囲わせたイフテカールが、俺の顔を見た途端にそう問い質してきたんだ。
その言い様は、さっきの俺の態度をまだ根に持ってるってのがバレバレなものだった。
「ああ、やっぱり賊の襲撃だったんだが、どうにも数が少ない。多分、本命はここだろうな」
そんな護衛隊長に、俺は先ほど対応した隊の先頭で起こった事を話した。
今は、相手の事を好悪している場合じゃあないからな。
「やはり、ただの野盗だったのではないか! 貴様の思い上がった考えに、我らは振り回された訳だ! まったく、冗談ではない!」
俺の報告を聞いて、イフテカールの当てこすりが始まった。これはもしかすると、長くなるかもしれない。
結局、早まったただの野盗の襲撃なら、それはそれで問題ないんだ。俺がここでこいつの相手をしている間に、サリシュ達を戻して救出活動を再開させても良いからな。
「……っ!?」
「……アレク!」
ネチネチとしたイフテカールの話を聞いている最中に、俺は小さな魔力の活性化を感じ取った。それとほとんど同時に、サリシュも反応していた。
魔法を使えるサリシュには、魔力の動きの機微が分かる。勿論、気を付けておかなければ魔法使いだって気付けない様な事でもあるので、これもやはり経験のなせる業だろうな。
そんな魔法使いとは別に、俺には長い経験から何となく魔法の発動兆候を知る事が出来るんだ。
酷く薄っすらとしたかなり曖昧なものなので頼りにするほどの感覚ではないが、今は戦闘直後の昂りで鋭敏になってるのかも知れない。
「な……どうしたのだっ!?」
その直後に、護衛兵の数人がバタバタとその場に倒れ込んだんだ。
恐らくは、睡眠魔法でも仕掛けられたんだろう。これは……明らかに奇襲だ。
「敵襲だよ! お前たちは、馬車を警護しつつアルサーニの街に撤退する用意をしろ! 準備が出来たら、とにかくシャルルー様を連れて街へ撤退するんだ!」
「な……何故、野盗如きに我らが退かねばならんのだっ! 馬鹿も休み休み言えっ!」
ったく、昨日の話の事なんか頭の片隅にもないな……こいつは。やばい状況になったら、とっとと逃げろって言ってあった筈なんだが。
敵に魔法使いがいる時点で、もう十分に非常事態だろうが。
「分かった! なら、シャルルー様を護り切れよ!」
それだけ言って俺はその場を離れ、馬車を挟んで反対側へと回り込んだんだ。
そこには、先ほどの魔法で数名の護衛兵が倒れていて、仲間に起こされようとしている。
ただ残念ながら、魔法で眠らされた者はそれが低位であってもすぐには起きないだろう。
睡眠深度が浅いからそう長い時間目を覚まさないという事も無いだろうけど、仲間が声を掛けた程度で目覚めるなんて事は無いんだ。
つまり……この戦闘中は彼らは戦力にはならない。
そしてその前方……まだ距離があるが、そこに多くの人影が出現した。
多分あれが、盗賊団の本体であり……。
「マリーシェ、カミーラ! 前に出て奴らを迎え撃つぞ!」
俺は左右に追従してきている2人に、殊更に大声で話し掛けた。
周囲にはただの指示か気合を高めている様に映ったろうが、彼女達にはそれ以外の事が伝わった様でスッと身を寄せて来たんだ。
「……出来るだけ、護衛部隊を前面に押し出して戦わせるんだ。俺たちは、その援護と言う位置取りを確保しておいてくれ。不自然じゃあない様にな」
そう、俺がわざとらしく大声を上げたのは、彼女達を俺の近くに呼び寄せる合図だったんだ。
近付いて来たマリーシェとカミーラに、俺は小声で先ほどとは違う指示を出した。
俺の事を完全に信頼出来ていなければ、そんな指図にも異議を唱えそうなものなんだが。
「……分ったけど、何かあるの?」
「アレクには、他に懸念する事があるのだな?」
彼女たちは、俺の意図する処を確りと汲み取ってくれていたんだ。うん、本当に彼女達だとやりやすいな。
「……ああ。多分、今迫っている賊共は露払いだ。更に後ろには、真打がいるだろうな。俺たちの相手は、そいつらだ。それまで、乱戦に巻き込まれない様にしていてくれ」
俺が本音を語ると、彼女達はニッと笑って頷き、左右に散って行った。
今の彼女たちのレベル、そして俺が渡した武具を考えれば、あんな野盗どもに後れを取る事なんて有り得ないからな。
「……サリシュ」
そして俺は、戦闘が始まりそうな前衛に加わる前に、後方で待機しているサリシュに声を掛けたんだ。彼女も、スッと身を寄せて来る。
「お前は、いつも通り後方から魔法で援護だ。でももしもの場合は、セリルとバーバラにシャルルー様の馬車をジャスティアの街へ走らせる様に指示するんだ」
俺の言葉に、サリシュは口を開く事なく頷いて応えてくれた。
本当なら、何故アルサーニの街ではなくジャスティアの街なのかぐらいは聞いて来てもおかしくない。それでもサリシュは、そんな疑念を口にする事すらしなかったんだ。
彼女は今のパーティ内で、最も俺の事を信頼してくれているのが分かるからな。俺としても、何かと頼み事をし易い相手だ。
「セリル、バーバラは、前線を抜けてきた奴らの相手を頼む。絶対に、乱戦に巻き込まれるなよ。そして、サリシュの指示に耳を傾けて従うんだ」
セリルとバーバラには、いつも通りサリシュの護衛と抜けて来た賊の対処をお願いしたんだ。
「ああ、任せておけって!」
「……了解」
そして2人もまた、俺の指示に頷いてくれた。
それを確認した俺は、そのままマリーシェ達が戦っている前衛の方へと向かったんだ。
こんな人数でこれだけの規模の隊列を襲うなんて、ハッキリ言って無計画であり正気の沙汰じゃあないだろう。
「……セリル、バーバラ。大丈夫か?」
マリーシェとカミーラは、引き続き周囲の警戒に神経を向けている。サリシュは、息のある負傷者に簡単な回復魔法を掛けていた。
この辺りは、流石に何も言わなくとも対応してくれている。経験のなせる業だな。
「あ……ああ。だ……大丈夫にき……決まってんだろ」
気丈に答えてくるセリルだけど、その言葉ほどには大丈夫じゃあなさそうだ。
彼らにとっては、これが初めての対人戦闘だろう。
人が斬られて血を流しのたうち回る……それを、俺たちの手で下すんだ。平気どころか、恐怖を感じていて当然だろうな。
「……平気ではないが……戦う事は出来るわ」
そんな中で、初めて人と人が戦う場面を間近で見た割には、こうやって冷静に自分を見つめる事が出来るバーバラは頼もしい。
「よし。どうやらこっちは陽動の様だ。本命は、恐らくシャルルー様のいる中央部だろう。急いで戻るぞ」
ここにはもう増援はなさそうだ。
ならこれは、護衛の混乱と分断を図った作戦だと考えて良いだろうな。
「……しかし、ただの盗賊団がこれほど計画的な行動を取るものであろうか?」
俺の見解を聞いて、カミーラが素朴な疑問を口にしたんだ。
彼女がそう考えるのも当然なんだが、それを言えばこの襲撃自体が不自然だと言える。
……そうだ。どうにも不自然な点が多い。これはやはり「闇ギルド」の関与を否定出来ない……な。
「……アレク。……今すぐ治療したったら助かる人も後何人かおるんやけど」
また一人応急処置を済ませたサリシュが、スッと立ち上がって俺に意見を求めてきた。
人道的に考えれば、この場に留まって治療活動をした方が良いんだろうけどな。
「……いや、ここでの救出活動は中止だ。サリシュも来てくれ」
俺はそんな彼女に同行を求め、サリシュも何の異論も口にせずに頷いた。
「ちょ……ちょっと待てよ! じゃあ、助かるかも知れない人を放って置くってのか!?」
でもそんな俺の決定に、どうやらセリルはご不満な様だ。
彼が言っているのは、倒された戦士達だけの事を言っているんじゃあない。未だ息があり助かりそうな、侍従や馬の口取りの事を気に掛けているんだ。
戦士が戦って命を落とす事には理解出来ても、傷付いた非戦闘員を放置していく事が信じられないんだろう。
うん。一般的人道的な見地から見たら、彼の抗議もおかしいものじゃあないんだけどな。
「ああ、見捨てる。俺たちはここに、人助けに来た訳じゃあ無いからな。それに、肝心の依頼主や護衛対象が死んじまったら、本末転倒だろ?」
そんなセリルに、俺は殊更に冷たい物言いで返したんだ。
レベルは違えど、同年代にこれだけ違う見解を言われたんだ。普通なら反発しそうなもんだろうが、今はそんな事で議論している場合じゃあない。
「そういう事。ウダウダ言ってないで、さっさと行くわよ」
そんな俺に、マリーシェが同調し。
「その事については、また後程話し合えば良いのではないか? 今は、アレクの指示に従うのが最良であろう」
カミーラも同意してくれたんだ。彼女達も随分と「冒険者」に慣れたよなぁ。
余力があったり時間があれば、勿論人助けをするのも悪くはない。俺だって、そこまで割り切ったり擦れてる訳じゃあ無いからなぁ。
でも残念ながら、今はその時間こそ無いんだ。セリルの言う通りにしてやる暇なんて全くない。
「……マリーシェとカミーラの言う通り。……行くわよ」
そして、バーバラも俺たちの意見に賛成な様だ。
彼女は、自分がまだまだ冒険者として経験が足りていない事を良く知っている。
「……分った。……わぁったよ!」
そして、3人の女性陣に反対意見を言われてしまっては、流石のセリルもこれ以上我儘を言える状況ではなかった。
「よし! 走るぞ!」
俺は仲間たちにそう声を掛け、先頭を切って走り出したんだ。
シャルルー嬢の元へと戻って来た俺たちだが、そこは未だに平穏そのものだった。先頭での戦いが、まるで嘘の様だな。
「ふん。戻ってきおったな、冒険者が。先頭の様子はどうであった?」
シャルルー嬢を馬車へと戻し、その周囲を幾重にも護衛兵に囲わせたイフテカールが、俺の顔を見た途端にそう問い質してきたんだ。
その言い様は、さっきの俺の態度をまだ根に持ってるってのがバレバレなものだった。
「ああ、やっぱり賊の襲撃だったんだが、どうにも数が少ない。多分、本命はここだろうな」
そんな護衛隊長に、俺は先ほど対応した隊の先頭で起こった事を話した。
今は、相手の事を好悪している場合じゃあないからな。
「やはり、ただの野盗だったのではないか! 貴様の思い上がった考えに、我らは振り回された訳だ! まったく、冗談ではない!」
俺の報告を聞いて、イフテカールの当てこすりが始まった。これはもしかすると、長くなるかもしれない。
結局、早まったただの野盗の襲撃なら、それはそれで問題ないんだ。俺がここでこいつの相手をしている間に、サリシュ達を戻して救出活動を再開させても良いからな。
「……っ!?」
「……アレク!」
ネチネチとしたイフテカールの話を聞いている最中に、俺は小さな魔力の活性化を感じ取った。それとほとんど同時に、サリシュも反応していた。
魔法を使えるサリシュには、魔力の動きの機微が分かる。勿論、気を付けておかなければ魔法使いだって気付けない様な事でもあるので、これもやはり経験のなせる業だろうな。
そんな魔法使いとは別に、俺には長い経験から何となく魔法の発動兆候を知る事が出来るんだ。
酷く薄っすらとしたかなり曖昧なものなので頼りにするほどの感覚ではないが、今は戦闘直後の昂りで鋭敏になってるのかも知れない。
「な……どうしたのだっ!?」
その直後に、護衛兵の数人がバタバタとその場に倒れ込んだんだ。
恐らくは、睡眠魔法でも仕掛けられたんだろう。これは……明らかに奇襲だ。
「敵襲だよ! お前たちは、馬車を警護しつつアルサーニの街に撤退する用意をしろ! 準備が出来たら、とにかくシャルルー様を連れて街へ撤退するんだ!」
「な……何故、野盗如きに我らが退かねばならんのだっ! 馬鹿も休み休み言えっ!」
ったく、昨日の話の事なんか頭の片隅にもないな……こいつは。やばい状況になったら、とっとと逃げろって言ってあった筈なんだが。
敵に魔法使いがいる時点で、もう十分に非常事態だろうが。
「分かった! なら、シャルルー様を護り切れよ!」
それだけ言って俺はその場を離れ、馬車を挟んで反対側へと回り込んだんだ。
そこには、先ほどの魔法で数名の護衛兵が倒れていて、仲間に起こされようとしている。
ただ残念ながら、魔法で眠らされた者はそれが低位であってもすぐには起きないだろう。
睡眠深度が浅いからそう長い時間目を覚まさないという事も無いだろうけど、仲間が声を掛けた程度で目覚めるなんて事は無いんだ。
つまり……この戦闘中は彼らは戦力にはならない。
そしてその前方……まだ距離があるが、そこに多くの人影が出現した。
多分あれが、盗賊団の本体であり……。
「マリーシェ、カミーラ! 前に出て奴らを迎え撃つぞ!」
俺は左右に追従してきている2人に、殊更に大声で話し掛けた。
周囲にはただの指示か気合を高めている様に映ったろうが、彼女達にはそれ以外の事が伝わった様でスッと身を寄せて来たんだ。
「……出来るだけ、護衛部隊を前面に押し出して戦わせるんだ。俺たちは、その援護と言う位置取りを確保しておいてくれ。不自然じゃあない様にな」
そう、俺がわざとらしく大声を上げたのは、彼女達を俺の近くに呼び寄せる合図だったんだ。
近付いて来たマリーシェとカミーラに、俺は小声で先ほどとは違う指示を出した。
俺の事を完全に信頼出来ていなければ、そんな指図にも異議を唱えそうなものなんだが。
「……分ったけど、何かあるの?」
「アレクには、他に懸念する事があるのだな?」
彼女たちは、俺の意図する処を確りと汲み取ってくれていたんだ。うん、本当に彼女達だとやりやすいな。
「……ああ。多分、今迫っている賊共は露払いだ。更に後ろには、真打がいるだろうな。俺たちの相手は、そいつらだ。それまで、乱戦に巻き込まれない様にしていてくれ」
俺が本音を語ると、彼女達はニッと笑って頷き、左右に散って行った。
今の彼女たちのレベル、そして俺が渡した武具を考えれば、あんな野盗どもに後れを取る事なんて有り得ないからな。
「……サリシュ」
そして俺は、戦闘が始まりそうな前衛に加わる前に、後方で待機しているサリシュに声を掛けたんだ。彼女も、スッと身を寄せて来る。
「お前は、いつも通り後方から魔法で援護だ。でももしもの場合は、セリルとバーバラにシャルルー様の馬車をジャスティアの街へ走らせる様に指示するんだ」
俺の言葉に、サリシュは口を開く事なく頷いて応えてくれた。
本当なら、何故アルサーニの街ではなくジャスティアの街なのかぐらいは聞いて来てもおかしくない。それでもサリシュは、そんな疑念を口にする事すらしなかったんだ。
彼女は今のパーティ内で、最も俺の事を信頼してくれているのが分かるからな。俺としても、何かと頼み事をし易い相手だ。
「セリル、バーバラは、前線を抜けてきた奴らの相手を頼む。絶対に、乱戦に巻き込まれるなよ。そして、サリシュの指示に耳を傾けて従うんだ」
セリルとバーバラには、いつも通りサリシュの護衛と抜けて来た賊の対処をお願いしたんだ。
「ああ、任せておけって!」
「……了解」
そして2人もまた、俺の指示に頷いてくれた。
それを確認した俺は、そのままマリーシェ達が戦っている前衛の方へと向かったんだ。
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