紡ぐ赤い糸

クッキーバニラ

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唐突の告白

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電車+歩きでで30分足らずの場所にあるとあるファミレス

ここが今回、パーティで迷惑をかけてしまった荒川さんと会おうと決めた場所だった

互いに一体一出会うのは気が引けたし、正直気まずい為に人のそこそこ集まるここにしようと決めた...のだが


「やっぱり怖ッ...」


持ってきたカバンの紐をキュッと握る

いやだって、顔もハッキリ覚えてない人だよ?どんな顔して会えばいいのか...

どうも西条紡です。以前はヒートを起こしてしまいすみませんでしたって?結構厳しいなぁ...


一応ファミレスの入り口近くに来たものの、扉を親の仇のように睨みつけながら俺は悶々としていた


「ふぅ...よし!」


一度深呼吸をしてから中に入ると、冷房の涼しい風で包まれる

もう先にいるのか?と辺りを見渡してると、もしかして西条紡さんですか?と後ろから声をかけられた


その声を聞いた瞬間胸がキュゥとなったが、それには気づかないフリをする


後ろを振り返ると丁度誰かの胸板が広がっており、少々驚いたもののあぁ、背が高いのかと上を見上げる

その顔は確かにあの時見たような気がするという顔でこの人が荒川さんなんだなと納得した


顔を見た時もなんだか胸が変になったが、そんな訳ない


とりあえず互いに挨拶をし、荒川さんが元々座っていた席に案内してもらった

荒川さんは既に注文を終えていたようで、机の上に乗っているオレンジジュースに人は見かけによらないなぁと思いながらも俺もドリンクバーを頼んでコーヒーを片手に座った


「お待たせしてすみません」

「いえ。そもそもまだ集合時間にもなっていませんし」


その言葉に時計を見ると、確かに五分程まだ猶予があった

でも待たせたのは確かだし...ってかこの人一体いつからいたんだろう


何から話せばいいのか分からず、とりあえず自己紹介をと名前、年齢、職業などを伝え名刺を渡す

すると向こうも同じように返してきたので名刺を受け取り目を通す


やっぱりこの人社長なんだ...ってか年齢29って...二つしか変わらないんだな


社長って20代多いのかな?と幼なじみを思い出しながら名刺をしまった

そして話題がなくなってしまった為にとりあえずドリンクを飲もうとちまちまコーヒーを飲んでいると、急にあのっと話しかけられた


「はい?」

「パーティでは、すみません。自分の意思じゃ止めることが出来なくて...」

「あ、いえ全然!というか、僕の方も何故か急にヒートになってしまって...ご迷惑をおかけしてすみません」


頭を下げるとこちらこそすみませんでしたと頭を下げられた

そしてスっと頭を上げ、ドリンクを飲む


さぁて、この無言キツイぞ~


多分俺の顔は今頃チベスナ顔になっていることだろう

コミュ障にこの沈黙はきついものがある


特に向こうから話が振られる訳でもないので暇になり、なんとなく顔を覗く


...イケメンだな


男の俺も惚れ惚れしてしまう顔に恨み半分憧れ半分で眺めていると、バチッと目が合って思わず背筋が伸びる


「あの、何か?」

「いえ、あの、荒川さんってかっこいいなぁって」

「かっこいい...」


何故か下を向いてオレンジジュースを見たまま黙ってしまった荒川さんに俺変な事言った!?と心の中で大パニックが起こる

そうだよね!急にかっこいいですねって言われても反応出来ませんよね!


「あ、あの、急にすみません。いや、謝るのも変か...?あぁただ、俺は思った事を言っただけで」


何とかフォローしないとと慌てて言い訳するも全てが空回りしてそうで涙が出てくる

いや、実際には泣いてないけど心の中では大号泣

せめて何か反応を返して~っと飲みすぎて既に空になってしまったコップを手でギュッと掴んでいると、そっと伸びてきた手が俺の手を包んだ


うわぁ、手大きい...


自分の考えに勝手に照れてるとキュッと握られたので何かあるのかと顔を見上げる

そしてこっちを見ていた荒川さんの真剣な表情を見て少しときめいてしまった


...いや、これはときめきじゃない。見られた事に対する緊張のドキドキだ。絶対にそうだ。うん


「西条さん」

「あ、はい何でしょう?」

「俺と番になってもらってもいいですか?」






時が止まった






この人は一体何を言った?

番になって?番ってあの番だよな...アルファとオメガの...


「はぁ!?!?」


大声で周りの視線が集中したが、そんな事どうでもいい

...やっぱりどうでもよくない。視線は嫌だ

周りにペコペコしつつなるべく前に身を乗り出して小声で話す


「あなた急すぎませんか...!?」

「?何故小声で...?」

「そこはいいんです...!!」


疑問に思いながらも俺の真似をして身を乗り出した荒川さんに可愛いと思ってしまったが慌てて首を振る


「番って、意味わかってるんですか...!?」

「はい。分かってます」

「でも僕達会ってまだ二日...ってか話したのは今日が初めてですよ!?何を急に...」

「一目惚れしました」


その言葉に俺は目を見開く

ふざけてるのかとも思ったが、荒川さんの表情は真剣で、あ、本当なんだと素直に思った


「初めて見た時、一目見ただけで何故か俺のものにしたいと強く思ったんです。自分でもよく分からないんですが...」


荒川さんも戸惑っているようで気まずい表情をしながら首の後ろをかいている


「このような言い方は失礼だと思うのですが、初めはあなたのヒートに当てられたからだと思いました。ですが、どこかで違うと思ったんです」


言いたい事がまとめられないのか目が泳ぎながらも必死に言葉を繋ぐ様子を静かに眺める


「なので謝罪を兼ねてもう一度会ってみようと、そうすれば分かるかもしれないと思い、西条さんのご友人を経由しこの場を設けていただきました」


一度目を瞑って深呼吸をした後こちらを見た荒川さんと目が合う


「そして今日...先程入り口でお会いした時に、その、可愛いと思ったんです。そばにいて欲しいと、一緒にいたいと思いました」


あぁ、今俺の顔真っ赤なんだろうな


穴があきそうなほど見つめられながら、どこか他人事のように思う

だって、こんな事初めてでいまいち実感がわかない


それに...何故か嬉しいとも思ってる


「西条紡さん。俺と番になってくれませんか?」


周りがガヤガヤと騒がしい中、この場所だけ音が無くなる

しばらく頭の中で事を整理し、断ろうと思った


だって、付き合うとか俺は興味無いし、ちゃんと顔を合わせたのは今日が初めてのやつと付き合うなんて


そう思ったが、口を開こうとした時に言葉が出なかった


なんで...なんで断る事がこんなに嫌なんだろう

何故か俺も一緒にいたいと思ってる。共に過ごしたいと...


番になりたいと思ってる


「あの、」


俺が話すと荒川さんの肩が目に見えて震えた

それがおかしくて少し笑うと、強ばっていた肩が自然と力が抜けて、これまた自然と言葉が出ていた


「すみませんが、まだよく知らない方と番になるつもりはありません」


そう、ですか...と肩を落とした荒川さんに慌ててでもっと繋げる


「...お付き合いから、なら」
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